空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

ポスドク問題(備忘録)

2012-02-17 21:25:23 | Weblog
 まず:

@Takashi_Shiina 椎名高志 「めんどくせえので簡単にマジレスすると、人生というのは偶然や選択の連続で、最終的にはひとつのストーリーになる。いいことも悪いことも失敗も成功も曲がり角もある。「いい人生」と解釈できるストーリーのヒキダシが少ないやつが簡単に人を勝ちとか負けに分けるのだとワタシは思うよ。」(2012/2/15)

 なるほど大した言葉であると感心したが,しかし例えば(働き盛りの頃に)明確に失脚した人とかいるよなあとか思い起こせば,むーん。私もヒキダシの多い方ではないなあ…。

 …基本,私には帰るところがないからなあ。実家に帰っても単に詰むだけだし。



 誰かのtwitter記事かなにかを経由して既に概要は読んでおり,また報告書を印刷はしておいたのだが:

文部科学省 科学技術政策研究所 第1調査研究グループ ポストドクター等の雇用・進路に関する調査-大学 ・ 公的研究機関への全数調査 (2009 年度実績)- 2011 年 12 月

 しっかり読んではいない。というかどっかに埋もれた。それどころじゃないほど問題が山と出来しましてですね。
 でまあ,この種の問題だとここが:

大「脳」洋航海記 ポスドクからテニュアの大学教員になれるのは毎年2%弱だけ:不完全ながらも重要なデータとなったポスドクの実態調査より 2012年2月14日

 扱うわけだ。「実態調査としては大体こんなもんでしょう」とあるが,そうですね,まあこんなもんでしょう。

 私としては(たしか)2009年4月からテニュア職なのでこの統計には私は反映されていない計算。
 あと,これ,調査対象は所謂「ポスドク」なので。「雇用」状態にあるひとのことなので。私はそもそも計算に入らないわけですよあははははは(※Dr.は頂いたが無給無勤務,籍だけ名のみの研究員でした)。 

本文を読むと、「ポスドクから大学教員となった者1,239人中で常勤の大学教員(非常勤・特任・職階不明のものを除く)に就いた者は784人」であることが分かります。これは母数の15,200人に対して僅かに5%程度に過ぎません

 時にダンナ,ポスドクにさえなれない人がいるわけですが(泣)。
 非常勤講師にもなれない人がいるわけですが(大いに泣)。

 そーゆー人(具体的に言って私とか私とか私だ)まで含めて勝負しないといけないので,ものっそ狭き門だということは,若者は知っておくべきではあります。いや私みたいなのは基本,勝負の場に乗っては来ないわけだが,まあ何かのはずみで科研費取れたりとか一本釣りされたりとかないわけではない。

 そんなこんなで実力あっても実績あってもいま一歩越え切れないままなんてひと,ざらにあります,が。

 でも,しょうがないんだ。
 始めてしまったし,止まらない。
 何かの都合で止まるまでこのままだろう。

 その「何か」が何かは分からない。―壁にぶつかるなんて思わない,なんて,聞きようによってはものすごい傲慢なせりふを堂々といった学生もいたことだ(※私ではない)。

 たとえば,端的には能力の壁ってあるけど,じつはこれ,気付かないふりしてやり過ごすことができるみたい。特に,就職しちゃえば。
「彼らは気づけない」と私のボスは言った。本当は,状況的には気付かないはずはないのだけど,うまぁく心理的に処理できるみたい。

 ―処理しきれない人は,心からの恨みごとを言いもする―そしてそれが不当な恨みごとだと自覚さえできる。悲しいことかもしれないが,でもそれは,まだ力があるからだ(まるで初代ガンダム主題歌だが)。それを望ましい方向に仕上げればいい。

 匿名記事の気安さでついでに書くが,その彼は来年度は,私と同じ会場で発表してくれるかもしれない。私は彼をその学会に誘ったんだ。そうなればそれは,私にとって喜びとなり,彼にとっては喜びにも業績にもなり,本学にとっては誇りとなろう。私はそれを心から望む。

 他に壁は,まー例えば親が死んで跡を継がないとダメだとか,学業のための資金が尽きるとか。

 あと自分の病気。学者ゆーのは,如何に倒れず耐えきるかとゆー,耐久レースじみた所もある(いやだって私が生き残ってるのには『倒れ(てい)ない』ってのもすっごい大きな理由になってるだろう…)。

 家庭生活に喜びを見出す向きもある(たぶんこれは人間的には正解―尤も,普通は学問と矛盾しない。普通は。普通は(泣))。


 ―そして多くの人が現実に覚めて現実に戻ってゆく。
 その方が幸せなんだと,時には気付かないままで。

 私はたぶん,普通の幸せへの憧れや理解を持ってるんだろう(そのせいか,私を誰ぞとくっつけようと暗躍するかもしれない同僚がいる。先方に迷惑かからなきゃいいが)。そこのあたり,半醒半睡といったところなんだろうけど,やはり私は夢の中の人であって,他の誰かのぶんまで夢の中を生きるのだろう。



 いや文学的に書いてるけど散文的事実としては普通の人が夢見る時間に作業を続けていたりしていてですね。
 しかもこれ私の夢の分じゃねえぞ真剣に本来は他の人の分だぞオイ的な(恩義もあるから引き受けますが)。

 …うちはボスができた人なのでいろいろと分け前くれる(共著者名に入れてくれる)からいいんですけどね。
 この辺はもう運か。

 …あと,勤務校の基礎研究費が潤沢かどうかは大きな差異だな。某C大は年間9万円という伝説を聞いたことがあるが,それでは国内出張1回で終わる。
 ……これは本気で運だな。どこの席が空いて誰が応募できるか入れるか,重点校になるかどうかとか,それはもう時の流れとかいろいろ。


@kenjiitojp 伊藤憲二 「博士課程の場合、日本国内では就職が絶望的であることが、英語か他の言語で学位論文を書いたり、あるいはそれらの言語でトレーニングをうけることのインセンティブになったりはしないのかな。」(2012/2/15) 

 いやだって就職することが目的なんじゃないもの。学問するのが目的なんだもの。それにふさわしい対応をするんじゃないか。

 そ先ほどの「大「脳」洋航海記」「ポスドクからテニュアの大学教員になれるのは毎年2%弱だけ:不完全ながらも重要なデータとなったポスドクの実態調査より」には「あくまでも元のNISTEPのデータからの試算値ですので勿論これが正確な数字だとは言えませんが、以前は「ポスドクから大学教員になれるのは3割程度」と言われてきたのが現在はもっと厳しいかもしれないという事実を物語っているようにも見えます。仮にその1.9%を1年ごとに積算していったとしても、確率的にはポスドクを5年続けてようやく10%弱しかテニュアになれないわけです。恐らくポスドクは10年ぐらいが上限だと思われますが、それでもテニュアに就ける確率は20%弱。いやはや、狭き門です」とある。

 博士号を頂いて,27歳くらいとしよう。それからPDに採用されて,渡り歩いて5年,32歳くらいまでで10人に1人ほどの就職が見込める。そこからさらに五年でもう一人くらい。流石に,これは厳しい数字かな。

 勿論,新卒一般就職戦線と直接の比較はできなかろうが,それでも彼らは,厳しいとされる昨今でも1/2の割合くらいで”常勤”になってはいるわけだ。博士持ちの人たちとすれば,『だって僕ら,こんなに修行積んできたのに!』っていう思いもあろう(勉強の成果がそのまま素で評価されるのは中学まで,精々大学受験までという気はするが)。

 しかし,私の博士コースの同級生は1/3が既に職にありついた。思うに同じDr.号ではあれ,どこで・誰が出したかということには意味があること,個々人の運命を具体的に論じる場合は意識する必要があるか。

 本当に,いろいろなこれまでの組み合わせが「こぅ」なっている。それは運でもあり,納得しがたい外的条件でもありえる。例えば私の先生が彼でなければどうだったろう? もし彼が某大学で教え続けていれば,私をこう仕上げた訓練(の相当部分)は存在しなかった。私はこのレベルに達せなかっただろう。

 例えば私がまかり間違ってX大など受けて通っていたらどうだろう。やはりこのレベルには達せなかった。

 なんで私がXY大かと言えば,偏差値的に通らないでもないレベルで,自宅から通える範囲で,やってみたかった学科がここにしかなかったからだ。

 そして訓練が進む中,多くの先輩たちが,後輩たちも,去っていった。
 お父様が亡くなって跡を継がないといけなくなった人だけでも2人かな。
 留学までしたけど,体調を崩して学問から引退した人もある(この人からは大量に本を譲られた)。
 訓練途中で抜けざるを得なかった先輩もいる(どうも私に目をかけてくれたらしく,そのことは今も恩義に思う)。
 博論完成直前で交通事故死した先輩もいる。
 療養生活で後れをとった人もいる。仕事が余りに忙しすぎて学問に戻れない人もいる。

 去っていった人たちは,まだ未練を残しているだろうか? 少なくとも,引退した建前になってる某先輩はまだ,論文を書こうとしている。
 私は,まだしも学問の出来る状況にある。
 予算も,わりと恵まれている。

 ならば仕事するほか,何があろう。
 だからおねがいもんだいおこさないでかいぎになっちゃうのじかんがつぶれるのよぅ。
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