昨年一月に「寝たきりの8歳の娘」を放置して死亡させたとの件

　まずは数件の記事を引用。

TBS News Dig “１人で介護”の母親　寝たきりの８歳娘を『たん吸引』せず１７時間以上外出か　娘は窒息死　兵庫・姫路市　2024年11月24日(日) 17:32

「去年１月、兵庫県姫路市の集合住宅で、寝たきりで痰の吸引が必要な当時８歳の娘を置き去りにし、窒息死させたとして、保護責任者遺棄致死の疑いで３２歳の母親が逮捕されました」

　こちらはこの母親の名を記事中に明記している。実際、引用しようとすると文中に出てくるので、避けようとしてもなかなかに手間がかかる。

Yahoo！News（MBS News） 【速報】寝たきりの8歳娘『たん吸引』必要なのに置き去りにされ死亡　母親を逮捕　少なくとも17時間以上外出　兵庫・姫路市　11/23(土) 14:16配信

「当時、家には島田容疑者と娘の2人だけがいたということですが、自ら「子どもが息をしていない」と119番通報していました」

　他方、朝日新聞は匿名とする。ここは朝日新聞の見解の出るところかと思う。この母親を（わりと強度に）保護されるべきものと理解するわけだ。

朝日新聞 8歳の娘のたん吸引を放置、窒息死させた疑いで母親を逮捕　兵庫県警　原晟也2024年11月23日 21時00分

「寝たきりで気道確保のためにたんの吸引が必要な当時8歳の娘を自宅に置き去りにし死亡させたとして、兵庫県警は23日、姫路市内の会社員の母親（32）を保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕し、発表した。認否について「言いたくありません」と供述しているという」

「母親は昨年1月27日正午ごろ～午後5時ごろに外出。後天性の脳障害のある娘を、当時住んでいた姫路市内の集合住宅の部屋に置き去りにし、翌28日午前9時40分ごろまでの間に窒息死させた疑い」

「同日午前10時40分ごろに「子どもが息をしていない」と119番通報。当時の調べに対し、「必要以外の外出はしていない」と話していたという」

　以上。
「子供を死なせてしまったので、動揺から自傷するだろうことを阻止するための逮捕」の見解は成り立たない。当初あったとしても、この、いわば本式の逮捕は「去年１月」の事故が事件であったと認識しての、警察の主体的な判断ということだろう。判断根拠の一つは記事タイトルに見られるように「17時間以上外出」という数字だろう。

　また「当時、家には島田容疑者と娘の2人だけがいたという」からには、つまり

「母親は子ども3人の4人暮らしで、主に1人で介護していたという」（朝日新聞）

　残りの二人は別のところにやっていたわけである。
　親らしい配慮と言おうか、障碍者の娘を死なす決意をし、確実に死なせるために、補助を試みることができるほかの子たちを―補助をしそこなって姉ないし妹を死なせてしまって心を病まないよう―遠ざけておく計画性。そこが問われたわけだろう。

　2年近くも捜査がなされた。他方で「当時の調べに対し、「必要以外の外出はしていない」と話していた」（朝日新聞）というのは、「普通」ならそれで通った可能性を示唆するものか。

　そりゃそうだ。渋滞にうっかりつかまって、1時間で帰れるはずが3時間かかっちゃった、ああこの隙に娘が逝ってしまった…という母親を処罰するのは、そりゃあ…あんまりにも可哀そうじゃないか、というので合意は広くとれそうだ。罪状としてはおなじ保護責任者遺棄致死であっても、なんというか、執行猶予半年とか、そういう温情判決がでそうだ。しくじりミスによるものなら再起を支援するとの意味で、なるほど実名報道は避けようというのは、そりゃあ尤もなことだ。

　ということで、これは「逮捕は妥当」と評されるべきかと思う。実名報道も、まあアリだろう。そこは各報道機関の判断。残された子供たちの扱いが心配―ということはあるが（だから母親の実名報道を避ける判断はアリ）、そこは何らかの支援が必要なところだろう。

　追加

例の痰吸引事件、アンフェには怒られそうだけど、ワシは仮に故意だったとしても罪に問うべきじゃ無いと思うんよな、変な話、保護責任者遺棄の範囲が広がりすぎてるから、家族「訴訟回避的に老人を受診」、施設「訴訟回避的に老人を受診」、医者「訴訟回避的に検査」のベルトコンベアーが出来上がってる

— チーナちゃん (@cheena_chan) November 25, 2024

　そこで「自傷を避けるための緊急逮捕」と、不審な点がない場合は”事実上の無罪放免”とのセットが運用されているのでは―と疑うのだ。朝日新聞の実名報道を避ける態度も一脈、通じているかと思う。…今回は、かなーり恣意性が高いとのことでこうしたコースになって、これはやむを得ないことと私としては考えた。…私も、そのうち同様の状況に陥るかもしれず、その点も含めてそう思うことにする。