空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

福島民報「バクテリアの除染に効果」記事について

2011-08-04 00:08:29 | Weblog
 単純に文系らしく文章を批判的に読んでみることとしよう―

 承前「何か確認するポイント等ありましたら@robo7c7c」,「robo氏あて2

 富山新聞(放射性物質吸い取る細菌 タンザニアで発見 5月27日03時02分)は

手始めにタンザニア全土の約100地点で計測し、バヒと周辺で放射性物質濃度が顕著に高いことを確かめた田崎名誉教授は、バヒの水田土壌を採取して調査した。電子顕微鏡による観察では、体長数百マイクロメートル(マイクロメートルはミリの1千分の1)の細長い糸状菌の生息が確認された。菌体の周りには粘土鉱物の塊が多く付着しており、この粘土は周りの土壌に比べて極めて高濃度のウランやトリウムなどの放射性物質を含んでいた

 と書いており,問題の「細長い糸状菌」はタンザニアで確認されたものと明言されている。
 ところで福島民報(バクテリアの除染に効果 飯舘の水田、線量が大幅低下 2011/08/03 09:42)は

南相馬市、飯舘村で微生物を活用した除染実験に取り組んでいる田崎和江金沢大名誉教授(67)は2日、放射性物質を取り込む糸状菌のバクテリアを発見した同村長泥の水田の放射線量が大幅に下がったと発表した

 とあって,「放射性物質を取り込む糸状菌のバクテリア」を発見したのは飯館村長泥の水田であると形容句を付している。

 …まず間違いなくこの時点で福島民報アウトだろjk。
 田崎教授に係る形容句を掛け違った単純ミスと理解するのが妥当だろうjk。

 そこはまあ広い心で読み過ごしてあげるとしても,第一パラグラフで「放射性物質を取り込む糸状菌」と言っているにも関わらず,第二パラグラフで「田崎名誉教授はバクテリアの代謝によって放射性セシウムがバリウムに変わったとみている(福島民報)」とあって―放射性物質を取り込むことと代謝との関係が不明瞭。

 あと先ほども書いたことだが,「バクテリアと、粘土のカオリナイト、ケイ藻土の粉末を使って稲を栽培、除染効果を確認(福島民報)」と書いていることの意味。記者は菌の培養器として理解したものだろうか? 

 ちょっとgoogle先生にお伺いを立てたらこの福島民報記事をめぐってあれこれ言う人がいるようで,常識的に考えて記者が間違ったに違いないのだが―

3.11東日本大震災後の日本 8/3 ネットは大騒ぎ!放射性物質を取り込む糸状菌と土壌の放射線量低下の関係は? 2011/08/03(水)

この記事に関しては、記者が先生の言ったことをよく理解できずに誤って解釈して書いた可能性が高いと私は思います

 富山新聞と福島民報でエライ記事の内容が違う(当該教授の「主張」がエライ違う)ことにも注意が必要

Togetter バクテリアの代謝がセシウムをバリウムに変える?

 いやだからおまいら学者相手なんだから論文の一つ二つくらい読めよ(泣)。

 そんなこんなで,ものすごく久しぶりにトラックバックとか送ってみることにする。「田崎先生の文献などは確認していませんので、間違った情報も含まれているかもしれません」とか言われてますが,今どきは無料で即座に論文読めますから,数編くらいみてみるのが吉。
 正直に申し上げまして,一般人相手に駄文売りしてる御商売の方々とは一線を画する真っ当な学者さんかと思います,この田崎先生は。まあそういう人の日本語はしばしば理解され難いんですけどね,ええ。

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2 コメント

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Unknown (k)
2011-08-05 10:47:03
色々と調べていってたどり着きましたが
光合成細菌にもこの様な現象が観測されるようです。
ロシアの論文にもよく似た記載があります。


ご参考まで
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k氏に対する個人授業 (teiresias@教育者モード)
2011-08-05 14:20:24
> 光合成細菌にもこの様な現象が観測されるようです。

福島民報の当該記者の日本語能力が表現と理解と双方について低いことを指摘する文脈で「光合成細菌にもこの様な現象が観測されるようです」と言われても困る。
k氏についても,「この様な現象」がどの様な現象なのか指摘しない過失がある。福島民報の伝える現象について言うのか? 富山新聞の伝える現象についていうのか?
「この様な」などという,極めて文脈に依存する語を,複数の見解が乱れ飛ぶ文脈で不用意に使うべきではない,ましてやk氏は句読点含めて62字しか書いていない。内容を限定する根拠として挙げるのは

> ロシアの論文にもよく似た記載があります。

のみ。
問題1,その「ロシアの論文」とは何ものか。ロシアの科学誌に載った論文なのか,ロシア人の論文なのか。その(科学誌自体,ないし当該学者の)評価は。
問題2,「よく似た記載」とは何がどの程度どのように似ているのか。「似過ぎているのはむしろ違う証拠」ということも分野によってはありうる。
 
> ご参考まで

とあるが,参考にするべき材料を示さず何を「ご参考」すればよいのか。

つまりまあ,ひとつひとつ証拠を挙げて話をするということ,言葉の定義をそこそこ決めて話をするということ,こういう訓練が欠けてる実例だねえということで,私としては教育者として責任を感じるものである。
まあ訓練しようと思っても授業時間もこっちの時間も足りないわけだが。つきっきりで教わらないと分からないものだしなあ。

だからk氏が,もし学生なら,ちゃんとした先生につくといいよ。ちゃんと学生に教育してくれる人ね。
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