空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

平行と並行/並行と平行 1

2007-05-07 22:52:10 | 国語
「並行」は1.並んでゆくこと,2.同時に行われること。「平行」は1.《数学》同じ平面上にある二つの直線,あるいは空間の直線と平面,または平面と平面がいくら延長しても交わらないこと,2.→並行(旺文社『国語辞典 改訂新版』1986+,1089中より引用)。「平行」は寧ろ数学の用語であること,空間的関係を言い表すことで特徴的であるか。「並行」は空間的関係も時間的関係も言い表しうる点に注意すべきである。「並行」は,進行方向に意識するところがあるようである。この点,「平行」とは区別されるか。

 即ち,「平行」については:

「主室の長い側壁には両壁とも二条の水平の線を平行に刻んでいる」(宮治昭『バーミヤーン,遥かなり』187頁)

 などが典型的用例といえる(私の読書範囲においては)。

 河川と道とはしばしば並んで進む:「バーミヤーン川にほぼ並行して,北側にメイン・ストリートが走っていて」(宮治昭『バーミヤーン,遥かなり』23頁)。河川と道の関係は,断崖と街道の関係に類似する。それ故,「…バーミヤーン主崖窟に平行する街道の東のはずれを南に折れて…」(宮治昭『バーミヤーン,遥かなり』178頁)は少々難があるものと思われる。

 道については「並行」が用いられた。思考や論理の道筋,方針などについても,二つ(以上)が同時並行する場合,「並行」が用いられるべきであろう:

「この二つのルートを同時並行的にたどり,その意味や影響を考えることをほとんど忘れて」(高木仁三郎『プルトニウムの恐怖』p.12)
「対ソ攻撃に関する討議は,数か月にわたって,イギリス上陸作戦の計画と並行して行われた」(マウ/クラウスニック,内山敏訳『ナチスの時代』岩波新書,p.135)
「しかし,結局,二つの路線が並行して追求され,外務人民委員部とコミンテルンは,両者間の矛盾を全く感じることなく各自の道を進んだのである」(塩川伸明訳,E.H.カー『ロシア革命』岩波現代文庫版,p.267)

 絡まりあっては平行とはいくまい。以下の例は疑問:

「不幸なことに,自由主義的民主氏のイデオロギーには二つの両立しにくい思想潮流が密接に絡まりあって綯いこまれている。法の支配を尊重すること,…これと平行して,そこには国際関係における力の行使である戦争,にたいする深い嫌悪が存在しており…」(鈴木博信訳,E.H.カー『ナポレオンからスターリンへ』p.29上)

「平行」は相互に交わらないことを特徴とするだろうからだ。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« CD販売もダメですか?:パキ... | トップ | カテゴリ新設 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

国語」カテゴリの最新記事