2月3日の私の投稿に「乳がん、温めるとがん細胞が増える」という「東京医科大学」の研究に関する「日経新聞」の記事があった旨のコメントをいただいた。適時なコメントをいただき、ありがとうございます。
癌の温熱療法にそれなりに興味がある私は、その記事などをネットで見てみた。
その記事の前提の研究のことなど、発表資料などもネットにあったので、それらのことについて、素人として観点を幾つか整理してみた。
★≪その研究の 要点
●-1 今回の研究は、3種の細胞株で温度が細胞増殖に及ぼす影響を比較検討した。(35度、37度、39度)
その結果、「転移能が高く悪性度も高いとされる乳がん細胞株MDA-MB-231」でのみ高温下で細胞増殖が促進されており 、細胞の移動能(遊走能)や浸潤能も温度依存的に増えた。
●-2 MDA-MB-231を温度別に培養したところ、細胞間のコミュニケーションツールの一つのエクソソームの放出量は温度依存的に増加した。
●-3 温度帯ごとに乳がん細胞の遺伝子発現を網羅的に解析した結果、温度依存的なエクソソーム分泌に低比重リポ蛋白質レセプター(LDLR)遺伝子が関与していた。
⇒ これらの結果を踏まえ、今後、乳がんの悪性度に関わる新たな分子機構の解明と新たな治療標的の同定に向けた研究の進展が期待される ≫
ということで
★≪私の想い この研究は、ほとんど未知の「癌細胞の転移や能力と温度」の関連を調べ、原因の一つの遺伝子レベルへの研究の進みも示す興味あること。ただ、従来から言われているし、「がんは『熱』に弱い」ということとは、次元、ステージが違う話で、例えば「ハイパーサーミア」という高温での治療が相当程度に医療現場で実施されていることとは別のことではないか。≫
≪他の癌などでも、同様の研究が進められ、遺伝子などの共通性や違いも明らかになってほしい・・・≫
と考えた。この後には、当該論文や報道へリンク、抜粋などしておくので、興味ある人はどうぞ。
日々、癌の個別化の状況が解明されていくことがうれしい。
なお、昨日2月4日の私のブログへのアクセスは「閲覧数2,849 訪問者数877」。
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●悪性乳がん細胞、高い温度で増殖
日経 2021年1月25日
東京医科大学 落谷孝広教授と大塚蔵嵩客員研究員らは悪性度が高い乳がんの細胞が温度が高くなるにつれて増えやすくなるのを発見した。温度が上がると働く遺伝子を特定できれば、新しい治療法の開発に役立ちそうだ。
研究グループは転移や増殖をしやすいヒトの乳がんの細胞と、ふつうのがん細胞をセ氏35~39度まで温度を変えて培養した。
悪性度が高い乳がんでは、温度が高くなると細胞の増...
●「温度」が乳がんの悪性化に寄与
メディカルトリビューン 2021年2月3日
・・・略・・・
● そこで落谷氏らは今回、
<1>ヒトの乳腺上皮細胞株MCF10A
<2>比較的悪性度が低く転移能も低いとされる乳がん細胞株MCF-7(ホルモンレセプター陽性、HER2陰性)
<3>転移能が高く悪性度も高いとされる乳がん細胞株MDA-MB-231(ホルモンレセプター陰性、HER2陰性)―
の3種の細胞株を用いて、温度が細胞増殖に及ぼす影響を比較検討した。
その結果、MDA-MB-231でのみ高温下で細胞増殖が促進されており (図1) 、細胞の移動能(遊走能)や浸潤能も温度依存的に増えていた。
●近年、細胞から分泌される50~150nmのエクソソームが、細胞間のコミュニケーションツールの1つとして、転移先の微小環境(前転移ニッチ)形成などに関与することで転移を促すことが知られている。今回の検討では温度がエクソソームに与える影響を調べるために、MDA-MB-231を温度別に培養したところ、エクソソームの放出量は温度依存的に増加していた (図2)
●温度帯ごとに乳がん細胞の遺伝子発現を網羅的に解析した結果、温度依存的なエクソソーム分泌に低比重リポ蛋白質レセプター(LDLR)遺伝子が関与していることもわかった。
⇒ これらの結果を踏まえ、同氏らは「今後、乳がんの悪性度に関わる新たな分子機構の解明と新たな治療標的の同定に向けた研究の進展が期待される」と述べている。(編集部)
・・・・・・・・・・・・・・
●乳がん悪性化に温度依存的なエクソソーム分泌関連遺伝子が関与-東京医科大ほか
医療ニュース 2021年01月06日(QLifePro編集部)
進行乳がんほど高温の所見、悪性化との関連は不明
東京医科大学は1月5日、 がんの周辺環境因子の1つである温度が、乳がんの悪性度に寄与することを発見し、転移を促進するなどがん微少環境に影響を与えるエクソソーム分泌が温度依存的に増加するメカニズムの一部を解明したと発表した。
・・・(略)・・・
がん細胞を取り巻く周辺環境因子はさまざまに存在し、その中でもがんの発達に影響を与える酸素や栄養条件などに関して多くの研究がなされてきたが、温度変化に関する知見は少ないのが現状だ。
乳がん症例の腫瘍部は一般的に皮膚温が上昇していることが多く、特に進行した乳がんほど高温の所見を呈する傾向があることが報告されていた。
1960年代よりその特徴を活かしてサーモグラフィなどによる乳がんの早期発見の試みが行われており、1990年代にはサーモグラフィから得られた乳がん部の温度の上昇が悪性化や予後との関連を示唆することが報告されている。
しかし、温度が乳がんの悪性度に寄与するのか、また温度が乳がん細胞の表現型や悪性化に関与するとしてどのような影響を及ぼすか、その分子機構などに関しては未解明だった。
転移能、悪性度いずれも高い乳がん細胞株は高温下で細胞増殖促進
研究グループは初めに、ヒトの乳腺上皮細胞株MCF10A、一般的に悪性度が高くなく転移能が低いとされる乳がん細胞株MCF-7(ホルモンレセプター陽性、Her2陰性)、転移能が高く悪性度も高いとされる乳がん細胞株MDA-MB-231(ホルモンレセプター陰性、Her2陰性)の細胞増殖に温度が与える影響を調べた。その結果、MDA-MB-231のみ高温下で細胞増殖が促進されることがわかり、細胞の移動能(遊走能)や浸潤能も温度依存的に増えることも見出した。
温度依存的なエクソソーム分泌に関与する遺伝子を発見
がんの遠隔転移があると生存率が非常に低くなることから、がん細胞の転移能も重要だ。近年、細胞から分泌される50〜150nmの小胞(エクソソーム)が、細胞間のコミュニケーションツールの1つとして、転移先の微小環境(前転移ニッチ)形成などに関与することにより、がんの転移を促すことが報告されている。これまでの研究により、乳がんから分泌されるエクソソームが前転移ニッチの形成を促し、がん細胞から放出されるエクソソームの量や質ががんの転移に寄与することが知られていた。
そこで研究グループは、温度がエクソソームに与える影響を調べるため、温度変化に応答する、上記の転移能が高く悪性度も高いとされる乳がん細胞(MDA-MB-231)を温度別に培養し、エクソソーム量を調べた。その結果、放出量が温度依存的に増えることがわかった。また、エクソソームに存在するマーカータンパク質を調べたところ、その量も温度依存的に変化することが示唆され、温度がエクソソームの量と質に影響を与えることも明らかになった。さらに、温度帯ごとに乳がん細胞の遺伝子発現を網羅的に解析し、温度依存的に発現が変化する遺伝子の中から温度依存的なエクソソーム分泌に関与する遺伝子も見出した。
がん細胞の周辺環境因子の1つである温度変化に着目し、原発巣の腫瘍発達、遊走・浸潤、転移など、今後乳がんの悪性化に関与する遺伝子など分子機構の解明を行っていくことで、新たな治療標的の探索が進展していく可能性がある。研究グループは、「エクソソームのバイオロジーに関する知見を蓄積していくことにより、転移の新しいメカニズムの解明につながることや、新規のバイオマーカーの同定、エクソソームを標的としたがん治療研究戦略にも貢献できることが期待される」と、述べている。
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国立研究開発法人国立がん研究センターのWEB
・・・(略)・・・温度が乳がんの悪性度に寄与するのか、また温度が乳がん細胞の表現型や悪性化に関与するとしてどのような影響を及ぼすか、その分子機構などに関しては未解明のままでした。
はじめにヒトの乳腺上皮細胞株MCF10A、一般的に悪性度が高くなく転移能が低いとされる乳がん細胞株MCF-7(ホルモンレセプター陽性、Her2陰性)、転移能が高く悪性度も高いとされる乳がん細胞株MDA-MB-231(ホルモンレセプター陰性、Her2陰性)の細胞増殖に温度が与える影響を調べました。その結果、MDA-MB-231のみ高温下で細胞増殖が促進されることが分かり(図1)、細胞の移動能(遊走能)や浸潤能も温度依存的に増えることも見いだしました(図2)。
本研究では、温度がエクソソームに与える影響を調べるために、温度変化に応答する上記の転移能が高く悪性度も高いとされる乳がん細胞(MDA-MB-231)を温度別に培養し、エクソソーム量を調べたところ、その放出量が温度依存的に増えることが分かりました(図3) 。また、エクソソームに存在するマーカータンパク質を調べたところ、その量も温度依存的に変化することが示唆され、温度がエクソソームの量と質に影響を与えることも分かりました(図3)。さらに、温度帯ごとに乳がん細胞の遺伝子発現を網羅的に解析し、温度依存的に発現が変化する遺伝子の中から温度依存的なエクソソーム分泌に関与する遺伝子も見いだすこともできました。
●がんは「熱」に弱い
アドメテック 熱による新しい「がん治療」(高温ハイパーサーミア)の研究と、その治療を実現する医療機器の開発
がんにも弱点があります。それは「熱に弱い」というこです。がん細胞は、約43度の温度で死にはじめます。
1.加熱による細胞の生存曲線生存曲線2.加熱によるがん組織と正常組織の血流量の変化加熱によるがん組織と正常組織の血流量の変化
1のグラフをみてください。がん細胞は、42.5度を超えると、極端に生存率が低下します。
また2のグラフを見ると、がん細胞は、温度が上がっても血流がほとんど増えていないことがわかります。皮膚と筋肉部分は血管拡張により、42.5度を超えて45度付近まで血流量が増え続けますが、がんの部分は血管が拡張しないため、血流が増えません。つまり、がん細胞は「熱」を逃がす仕組みが弱いのです。
がん細胞は、温まりやすく、熱に弱い性質があるといえます。・・・(以下、略)・・・
「ハイパーサミア」というは、患部を42〜44度程度に30〜60分加温する治療法です
●がん温熱療法(ハイパーサーミア)とは─
「がん温熱療法(ハイパーサーミア)」パンフレット 一般社団法人日本ハイパーサーミア学会。
ヒトの細胞は42.5(~43)℃以上に温度が上がると急速に死んでしまうので、この原理を利用して、“がん”細胞の温度を選択的に上昇させて、“がん”を死滅させてしまおうと考案された治療法です。
・・・(以下、略)・・・
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