3月24日に石原産業が業績予想を下方修正したことを発表、新聞各紙に掲載されました。「回収費用として197億円と見積もり一括計上したが、125億円の追加引当を特別損失に計上することを決定」というもの。
新聞記事はいずれリンク切れになるので、会社発表分にリンクしておきつつ、要点を紹介します。
「2005年度においてフェロシルト問題が発生し、フェロシルトの回収に巨額の費用を要する見込みで」という相変わらずの他人ごとのような表現には呆れます。
平成18年3月24日 石 原 産 業 株 式 会 社
平成18年3月期 業績予想の修正について
最近の業績の動向等を踏まえ、平成18 年3 月期中間決算発表時(平成17年11月18日)に公表した業績予想について、下記のとおり修正します。
記
平成18 年3 月期業績予想の修正(平成17年4月1日~平成18年3月31日)
(1)連結 (2)単独 (・・・・ここでは略)
(3)修正の理由
当期につきましては、販売面において主力製品である酸化チタン、農薬等の販売の維持、拡販に努めるとともに、コスト削減に取り組んでまいりました。
この結果、売上高、経常利益においては前回予想値を達成する見通しにあり、連結売上高1,040億円、連結経常利益103億円の見込みであります。
しかしながら、フェロシルト回収損失引当金につきましては、平成18年3月期中間決算において今後発生する回収費用として197億円と見積もり一括計上いたしましたが、今般、平成18年3月期決算において125億円の追加引当を特別損失に計上することを決定したこと及び法人税等調整額などを見直したことにより、遺憾ながら、連結純利益は118億円の損失となる見込みであります。
なお、単独業績につきましては、売上高770億円、経常利益78億円、当期純損失164億円となる見込みであります。
第三次中期経営計画(2006~2008 年度)~復興と成長への挑戦~
【前中期経営計画の総括】
当社グループは、コア事業である有機化学、無機化学の各事業の基盤強化による成長性ある企業への変革を主要課題とした前中期経営計画「新三カ年中期経営計画」(2003~2005年度)で掲げた目標達成に取組んでまいりました。
この結果、事業収益面では概ね所期していた利益計画を達成しうる見通しにありますが、前中期経営計画の最終年度である2005年度においてフェロシルト問題が発生し、フェロシルトの回収に巨額の費用を要する見込みで、この費用を一括引当計上することから、同年度の最終損益が大幅に悪化するという遺憾な結果となりました。
【第三次中期経営計画の概要】
今回の中期経営計画は、「復興と成長への挑戦」をキーワードに企業体質の改革と各事業の成長戦略を推進します。
先ずフェロシルト問題に鑑み、フェロシルトの早期回収に全力を尽くして取組むとともに、今後二度と不祥事を起こさないよう社内のコンプライアンス体制を真に確立し、社会の信頼と企業価値の回復を図ることを最重点課題として取組みます。
各事業については、研究開発と生産に主体を置いたメーカーとしての成長を目指し、よりアクティブな企業活動、攻めの経営を遂行し、企業価値の持続的な向上を実現してまいります。
1. 経営目標
2. 経営方針
(1)社会からの信頼回復、フェロシルトの早期回収、コンプライアンス体制の確立
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ヤフー 掲示板 では
怖い 2006/ 3/27 19:31 [ No.7829 / 7873 ]
業績下方修正だしたにもかかわらず株価があがってるので怖くなって利確させていただきました。ほんとにどうなっているんだろう?
Re: 追加125億円計上!下方修正。 2006/ 3/28 19:20 [ No.7852 / 7872 ]
あなたの分析素晴しい。ここ、儲からない産廃多い硫酸法酸化チタンから、その逆国内トップシェア塩素法酸化チタンにシフトすべく塩素法増強工事してるとか。
対外的アピールも有ると思うが余裕なきゃ出来ない。ここにとちゃ硫酸法やめるいい口実(ユーザーに対して)くらいにしか考えてないかも。
いづれにせよ農薬メインの会社だし、材料メーカーの強み(一般人がユーザーではない)かな。今買わなきゃ後悔しそう。
Re: フェロシルト 2006/ 3/29 12:07 [ No.7863 / 7873
勝手に持ってくるな
企業のモラルがないよ石原産業は
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今日は11時から岐阜地裁で住民訴訟のラウンドテーブル。
午後1時半からは県庁で文書の公開。今年1月の最高裁での、岐阜県の首都機能移転関係の委託事業についての情報の大部分公開命令の確定を受けて、です。
これは、あらためて、報告します。
ところで、遂に住基ネット情報がWinnyを介して流出しました。
昨日の毎日新聞朝刊をみて驚くとともに、「やっぱり」の感。
ちょうど、先の議会でも議論したところでした。
● 先の山県市の3月議会では、指定管理者制度の導入に関連して、情報公開条例とともに個人情報保護条例の改正が議論されました。
3月13日の本会議質疑で提案者に、次の趣旨で問いました。
(寺町)「個人情報の保護に関して、条例案の第25条の2で指定管理者に対して『実施機関と同様の義務を負うものとする』と規定している。これは、指定管理者を職員と同様に義務を負わせる規定として理解できる。
では、そもそも情報漏えいなどに関して、罰則規定を今回あらたに職員に対して追加するというが、悪意の場合つまり犯罪の場合は当然として、個人の消極的な失敗の場合、不注意の場合に条例の罰則は適用されるのか。ウィニーなどのソフトの関係で警察の捜査情報などや民間会社の情報の流出が続いてる。
改正案の規定の文言では、悪質、故意な場合だけを規定しているものと私は読み取る。職員個人の消極的な失敗の場合、不注意の場合などどうするのか」
(提案者)「検察庁とも相談した。指摘の部分、即答できないので、検討して回答する」
その後の回答の要点は次のよう。
「改正案の規定では、確かに悪意などの場合で、不注意などの場合の情報流出は含まれない。各地の条例を調べてみたが、多くが山県市と同様であり、一部には、指摘の部分まで含むものもあった。とりあえず、今回はこれで。」
ということなので、3月22日の最終日の議案の討論では、私は改正案に反対しました。討論の要点は「罰則を加えることは良いことだ。が、改正の出発から行政側の認識が甘いし、条例は一度改正したらなかなか改正しないのが常。いま、厳しい方向で改正しておくべき。」
なお、この条例の規定は、文末に掲載しておきます。
● ところで、 自治体情報政策研究所 を進めている黒田さんが関連情報をたくさん表しています。
「北海道斜里町職員によるWinnyを介した住基ネット情報流出事件」についても、整理されました。とてもよく経過がわかります。
住基ネットワークをめぐる事件のページ
●毎日新聞 2006年3月29日
ウィニー:住基ネット情報流出 北海道斜里町職員PCから
操作マニュアルや接続パスワードなど住基ネットに関する情報が、ファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」を介してネット上に流出したことが28日、分かった。北海道斜里町職員の自宅パソコンが暴露ウイルスに感染したためとみられる。既存の業務ネットワークと住基ネットとの橋渡しをするコミュニケーションサーバー(CS)や端末パソコンの不備を修正するマニュアルなども含まれていた。訴訟が提起されるなど住基ネットの情報の扱われ方への不安が出ているなか、重要情報を自宅に持ち帰った今回のケースに批判が出るのは必至だ。
毎日新聞が入手した資料によると、「住基ネット」というフォルダーなどに約20のファイルが入っていた。住民基本台帳の個人情報は含まれていないが、中にはCS端末の操作担当者が不在の際に使うとみられるマニュアルがあった。
・・また住基ネット全国センター(東京都)が、各市区町村の住基ネット担当課長に送った「セキュリティホール(防御の弱い部分)の対策について」という通知文もあった。04年8月3日付文書で、CSとCS端末で使うブラウザー(閲覧ソフト)のぜい弱性を説明、速やかに対応することを求める記述があり、対策をとらないと攻撃者にパソコン制御を乗っ取られる危険性があるとしていた。
同センターは、この通知文について関係者だけが持つ内部資料であることを認め、「今後も緊急を要するセキュリティー対策が、外部に漏れる可能性がある。町に厳重に抗議したい」と話した。
・・・この職員のパソコンからは住基ネット関連以外にも、水道料の未納者リストや税の収納状況文書など642人分の町民の個人情報を含む計1813件の情報も流出していた。02年4月~04年10月にかけて作成されたファイルで、午来昌町長は「当事者に多大なご迷惑をかけ、心からおわびしたい」と陳謝した。
◇安全性…国や他の自治体にも大きな影響
北海道網走管内斜里町の行政情報がファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」を介してインターネット上に流出していた問題で、28日会見した町は、厳密な管理が必要な住基ネット関連の資料流出を明らかにしなかった。流出の事実関係の公表も総務省から通報を受けてから10日以上経過しており、町の情報管理の甘さを浮き彫りにした。
同町によると、流出したのは02年4月~04年10月にかけて作成された住基ネット関連のマニュアルのほか、水道料の未納者リストなど642人分の町民の個人情報を含む計1813件の情報。職員が自宅で仕事をするため、データを持ち帰ったが、私用パソコンが暴露ウイルスに感染し、流出した。
個人情報には、97年から03年にかけての水道料の未納者リスト(3人分)のほか、税の収納状況を確認した文書17件(232人分)自治会名簿(58人分)などがあった。
総務省から15日に同町に通報があり、調べた結果、流出が分かった。しかし「調査のため」などとして、公表は28日にずれこんだ。また、ウィニーによる公的機関からの情報流出が社会問題となっていたが、同町では今回の問題が発覚後の15日になって、職員に情報の持ち出しやファイル交換ソフトの使用を禁止した。
午来昌町長は会見で「現時点で、情報の不正使用等の事実は確認されていない。当事者に多大なご迷惑をかけ、心からおわびしたい」と陳謝した。しかし、町幹部は毎日新聞の取材に対し「住基ネットのパスワードが出たことがそれほど重要なこととは思わなかった」と認識不足をあらわにした。今回の情報流出は、これまで住基ネットの安全性を訴えていた国や他の自治体に大きな影響を与えそうだ。【水戸和郎、柴沼均】
● 山県市個人情報保護条例 条例全文
改正(案)として次の罰則の章を全部追加。
3月22日に賛成多数で可決成立。
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第7章 罰則
第32条 次に掲げる者が、正当な理由がないのに、個人の秘密に属する事項が記録された個人情報ファイル(一定の事務の目的を達成するために特定の個人情報を電子計算機を用いて体系的に構成したものをいい、その全部又は一部を複製し、又は加工したものを含む。)を提供したときは、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
(1)実施機関の職員又は職員であった者
(2)第25条第1項の受託業務に従事している者又は従事していた者
(3)第25条の2第1項の管理業務に従事している者又は従事していた者
第33条 前条各号に規定する者が、その業務に関して知り得た個人情報を自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で提供し、又は盗用したときは、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
′
第34条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関して前2条の罪を犯したときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科する。
第35条 実施機関の職員がその職権を濫用して、専らその職務の用以外の用に供する目的で個人の秘密に属する事項が記録された文書、図画、写真及びフィルム並びに電磁的記録を収集したときは、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
第36条 第32条から前条までの規定は、本市の区域外にある者に対しても適用する。
第37条 偽りその他不正の手段により、開示決定に基づく個人情報の開示を受けた者は、5万円以下の過料に処する。
附 則
この条例は、平成18年4月1日から施行する。
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知事が替わって、県組織も 大幅な機構改革。
既に方向を決めていた知事は、仕事がしやすいから早く組織替えをしたい、旨の発言をしていたらしい。
平成18年度春の人事異動等について 2006年3月28日(火)発表
平成18年度春の人事異動等について(10分39秒)
平成18年度春の人事異動の概要
育児等退職者の復職制度について
県警本部移転に伴う県庁舎の有効活用と組織改革等に伴う再配置について
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地 元紙である岐阜新聞がさすがに詳しい(抜粋して紹介)。
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●《岐阜新聞3月29日付朝刊一面》
県職員3358人異動/全職員の45%/組織を抜本改革
県は二十八日、二〇〇六(平成十八)年度春の定期人事異動(四月一日付)を発表した。異動規模は全職員の約45%に当たる三千三百五十八人で、前年度を一千人余上回り、組織の抜本的な改革に伴って大規模な異動となった。
県は政策総点検を踏まえ、政策本位で分かりやすいスリムな組織とするため、九部二知事直轄部門に再編する。昨年十月には産業労働部、農政部、林政部を先行的に立ち上げ、四百七十五人の異動を実施した。・・・・次長級ポストには外部の人材を積極的に登用。危機管理副統括監に前中津川署長の安田豊氏、総合企画部の少子化対策担当次長に古川芳子中部学院大学短期大学部教授、環境生活部次長に総務省の細田大造大臣官房秘書課課長補佐を迎える。
各部の主幹課長に相当する政策課長には若手を積極的に登用。次長級のポストでは、名古屋事務所長に平田芳子産業労働部参事兼ぎふブランド振興課長を充てるなど、三ポストで初めて女性を起用した。
●《岐阜新聞3月29日付朝刊一面》
県教委事務系は355人
県教育委員会は二十八日、総勢三百五十五人の事務系職員の人事異動(四月一日付)を発表した。異動規模は前年並み。内訳は県教委事務局関係百八十五人、高校・特殊教育諸学校関係百七十人。
人事異動と併せ、重要施策、特定プロジェクトを推進するため組織再編を実施。中・長期計画で養護学校を整備するため特別支援教育課を新たに設置するほか、スポーツ健康課は二〇一二(平成二十四)年開催の岐阜国体に向け、選手強化体制を充実させるため、担当教職員を現行の三人から五人に増やす。
●《岐阜新聞3月28日付朝刊一面》
県教職員4456人異動/教員の採用大幅増/定年退職増に対応
県教育委員会は二十七日、教員系職員の定期人事異動(四月一日付)を発表した。異動総数は四千四百五十六人で、ほぼ例年並みの規模。来春以降の定年退職の増加に備え、新規採用は前年より約六十人多い五百十二人となった。
教職員の採用は定年退職の増加に対応していくため、長期的な視点で計画的に実施していく。今春採用の教員は、過去十年で最大規模となる四百六十四人となった。
今回の異動では、学校の活性化を図るため、新年度も校種間や地域間の異動を促進。へき地校には過去五年で二番目に多い三十二人の中堅教員を派遣する。
また、少人数学級の導入に合わせ本年度実施した小学校と幼稚園の人事交流を継続。小学校から市町村立幼稚園に四人、同幼稚園から小学校に二人を異動させ、初等教育の一層の充実を図る。学校事務職員と市町村教委の人事交流も続ける。六年目となる長期社会体験研修では、主任級の教員四人を民間企業へ一年間派遣する。また、中高の連携、特別支援教育を推進するため、中学校と高校・特殊教育諸学校の交流を継続。鹿児島、宮城、高知県との人事交流も引き続き実施する。
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引越しシーズン、借りた部屋を返すときに、大家が敷金を返してくれないということをよく聞きます。納得できないから、自分で少額訴訟を起こして返させたということも時に聞きます。
賃貸借契約についての昨年12月の最高裁判決が波紋をよんでいます。
ひとことで言えば、住んでいたことによる通常程度のイタミは修理して返す義務はなく、特別に合意していない限りは敷金などは返すべき、ということです。
判決の核心の要約は次になると思います。
「賃借人は,賃貸借契約が終了した場合には,賃借物件を原状に回復して賃貸人に返還する義務があるところ,賃借物件の損耗の発生は,賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものである。それゆえ,建物の賃貸借においては,賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少は,通常,減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われている。そうすると,賃借人に原状回復義務が認められるためには,少なくとも,賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか,仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には,賃貸人が口頭により説明し,賃借人がその旨を明確に認識し,それを合意の内容としたものと認められるなど,その旨の特約が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である。」
インターネットでみると、ある大家さんの言い分
大家のひとりごと どう受け取りますかね?
個別の場合に具体的にどう考えたらよいかについては、財団法人不動産適正取引推進機構が出している 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン が、法令の基準ではありませんが、目安となっているようです。
「当機構では、賃貸住宅退去時の原状回復と費用負担の問題について、紛争の実態と望ましいガイドラインをとりまとめた「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(改訂版)を1部900円(消費税を含む)で販売しております。」
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※この部分は翌27日に追記。 卯月さん のコメントで『敷金バスターズ』なるものがあることを知りました。紹介しておきます。
サンタ引越しセンター
敷金返還サポートサービス
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ということで、 その最高裁判決を紹介しておきます。
最高裁・判例
判例 平成17年12月16日 第二小法廷判決 平成16年(受)第1573号 敷金返還請求事件
要旨:
賃借建物の通常の使用に伴い生ずる損耗について賃借人が原状回復義務を負う旨の特約が成立していないとされた事例
内容:
件名 敷金返還請求事件 (最高裁判所 平成16年(受)第1573号 平成17年12月16日 第二小法廷判決 破棄差戻し)
原審 大阪高等裁判所 (平成15年(ネ)第2559号)
主 文
原判決を破棄する。
本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
理 由
1 原審の確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1) 被上告人は,地方住宅供給公社法に基づき設立された法人である。
(2) 「本件住宅」が属する「本件共同住宅」は,特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律2条の認定を受けた供給計画に基づき建設された特定優良賃貸住宅であり,被上告人がこれを一括して借り上げ,各住宅部分を賃貸している。
(3) 被上告人は,平成9年12月8日,本件共同住宅の入居説明会を開催した。同説明会においては,参加者に対し,本件共同住宅の各住宅部分についての賃貸借契約書,補修費用の負担基準等についての説明が記載された「すまいのしおり」と題する書面等が配布され,約1時間半の時間をかけて,被上告人の担当者から,特定優良賃貸住宅や賃貸借契約書の条項のうち重要なものについての説明等がされたほか,退去時の補修費用について,賃貸借契約書の別紙「大阪府特定優良賃貸住宅and・youシステム住宅修繕費負担区分表(一)」の「5.退去跡補修費等負担基準」(以下「本件負担区分表」という。)に基づいて負担することになる旨の説明がされたが,本件負担区分表の個々の項目についての説明はされなかった。
上告人は,自分の代わりに妻の母親を上記説明会に出席させた。同人は,被上告人の担当者の説明等を最後まで聞き,配布された書類を全部持ち帰り,上告人に交付した。
(4) 上告人は,平成10年2月1日,被上告人との間で,本件住宅を賃料月額11万7900円で賃借する旨の賃貸借契約を締結し,その引渡しを受ける一方,同日,被上告人に対し,本件契約における敷金約定に基づき,敷金35万3700円を交付した。
なお,上告人は,本件契約を締結した際,本件負担区分表の内容を理解している旨を記載した書面を提出している。
(5) 本件契約書22条2項は,賃借人が住宅を明け渡すときは,住宅内外に存する賃借人又は同居者の所有するすべての物件を撤去してこれを原状に復するものとし,本件負担区分表に基づき補修費用を被上告人の指示により負担しなければならない旨を定めている(以下,この約定を「本件補修約定」という。)。
(6) 本件負担区分表は,補修の対象物を記載する「項目」欄,当該対象物についての補修を要する状況等(以下「要補修状況」という。)を記載する「基準になる状況」欄,補修方法等を記載する「施工方法」欄及び補修費用の負担者を記載する「負担基準」欄から成る一覧表によって補修費用の負担基準を定めている。このうち,「襖紙・障子紙」の項目についての要補修状況は「汚損(手垢の汚れ,タバコの煤けなど生活することによる変色を含む)・汚れ」,「各種床仕上材」の項目についての要補修状況は「生活することによる変色・汚損・破損と認められるもの」,「各種壁・天井等仕上材」の項目についての要補修状況は「生活することによる変色・汚損・破損」というものであり,いずれも退去者が補修費用を負担するものとしている。また,本件負担区分表には,「破損」とは「こわれていたむこと。また,こわしていためること。」,「汚損」とは「よごれていること。または,よごして傷つけること。」であるとの説明がされている。
(7) 上告人は,平成13年4月30日,本件契約を解約し,被上告人に対し,本件住宅を明け渡した。被上告人は,上告人に対し,本件敷金から本件住宅の補修費用として通常の使用に伴う損耗(以下「通常損耗」という。)についての補修費用を含む30万2547円を差し引いた残額5万1153円を返還した。
2 本件は,上告人が,被上告人に対し,被上告人に差し入れていた本件敷金のうち未返還分30万2547円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案であり,争点となったのは,
① 本件契約における本件補修約定は,上告人が本件住宅の通常損耗に係る補修費用を負担する内容のものか,
② ①が肯定される場合,本件補修約定のうち通常損耗に係る補修費用を上告人が負担することを定める部分は,法3条6号,特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律施行規則13条等の趣旨に反して賃借人に不当な負担となる賃貸条件を定めるものとして公序良俗に反する無効なものか,
③ 本件補修約定に基づき上告人が負担すべき本件住宅の補修箇所及びその補修費用の額の諸点である。
3 原審は,前記事実関係の下において,上記2の①の点については,これを肯定し,同②の点については,これを否定し,同③の点については,上告人が負担すべきものとして本件敷金から控除された補修費用に係る補修箇所は本件負担区分表に定める基準に合致し,その補修費用の額も相当であるとして,上告人の請求を棄却すべきものとした。以上の原審の判断のうち,同①の点に関する判断の概要は,次のとおりである。
(1) 賃借人が賃貸借契約終了により負担する賃借物件の原状回復義務には,特約のない限り,通常損耗に係るものは含まれず,その補修費用は,賃貸人が負担すべきであるが,これと異なる特約を設けることは,契約自由の原則から認められる。
(2) 本件負担区分表は,本件契約書の一部を成すものであり,その内容は明確であること,本件負担区分表は,上記1(6)記載の補修の対象物について,通常損耗ということができる損耗に係る補修費用も退去者が負担するものとしていること,上告人は,本件負担区分表の内容を理解した旨の書面を提出して本件契約を締結していることなどからすると,本件補修約定は,本件住宅の通常損耗に係る補修費用の一部について,本件負担区分表に従って上告人が負担することを定めたものであり,上告人と被上告人との間には,これを内容とする本件契約が成立している。
4 しかしながら,上記2の①の点に関する原審の上記判断のうち(2)は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1) 賃借人は,賃貸借契約が終了した場合には,賃借物件を原状に回復して賃貸人に返還する義務があるところ,賃貸借契約は,賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするものであり,賃借物件の損耗の発生は,賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものである。それゆえ,建物の賃貸借においては,賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は,通常,減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われている。そうすると,建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは,賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから,賃借人に同義務が認められるためには,少なくとも,賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか,仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には,賃貸人が口頭により説明し,賃借人がその旨を明確に認識し,それを合意の内容としたものと認められるなど,その旨の特約(以下「通常損耗補修特約」という。)が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である。
(2) これを本件についてみると,本件契約における原状回復に関する約定を定めているのは本件契約書22条2項であるが,その内容は上記1(5)に記載のとおりであるというのであり,同項自体において通常損耗補修特約の内容が具体的に明記されているということはできない。また,同項において引用されている本件負担区分表についても,その内容は上記1(6)に記載のとおりであるというのであり,要補修状況を記載した「基準になる状況」欄の文言自体からは,通常損耗を含む趣旨であることが一義的に明白であるとはいえない。したがって,本件契約書には,通常損耗補修特約の成立が認められるために必要なその内容を具体的に明記した条項はないといわざるを得ない。被上告人は,本件契約を締結する前に,本件共同住宅の入居説明会を行っているが,その際の原状回復に関する説明内容は上記1(3)に記載のとおりであったというのであるから,上記説明会においても,通常損耗補修特約の内容を明らかにする説明はなかったといわざるを得ない。そうすると,上告人は,本件契約を締結するに当たり,通常損耗補修特約を認識し,これを合意の内容としたものということはできないから,本件契約において通常損耗補修特約の合意が成立しているということはできないというべきである。
(3) 以上によれば,原審の上記3(2)の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は,この趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,通常損耗に係るものを除く本件補修約定に基づく補修費用の額について更に審理をさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 中川了滋 裁判官 滝井繁男 裁判官 津野 修 裁判官 今井 功 裁判官 古田佑紀)
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このほど、第10回全国情報公開度ランキングが発表されました。(都道府県・政令指定都市)
調査は全国市民オンブズマン連絡会議。昨日のテレビや今朝の新聞にも出ています。
発表データの全文へのリンク
今回を含めて、過去の毎年のランキングデータのPDF版はこちら
全国オンブズ とは
団体会員は今、全国で84団体のようですが、私が事務局を担っている「くらし・しぜん・いのち 岐阜県民ネットワーク」も会員になっています。
毎年のこのランキング、自治体はすごく気にしています。
都道府県の 情報公開度ランキング過去9回の総合順位 を見て私が思うこと。
当然ですが、例年安定して順位が高い宮城県だとか三重県、岩手県などは、実際に情報公開度が高い県といえます。逆に安定して低い県は、実際に情報公開度が低い県。
岐阜県のように上がったり下がったりという県は、決して高いとはいえません。なぜかというと、ランキングの項目が年により少しずつ替わっていくわけですが、
この新しい項目にヒットすると得点が増える、中には、意図的にここでかせぐ自治体もあるように感じます。
岐阜県の場合、知事が替わって自分で即決断のできる交際費の使途やそのインターネット公開は高い得点でトップクラス。これは知事の姿勢のあらわれ。その他の点では、知事が2年目に入ったこれから、岐阜県の情報公開全体をどう進めていくのか、知事の姿勢が明らかになります。
情報公開制度という法律や条令で定められたシステムの面白い側面は、どの地方公共団体も国も、「非公開とする場合の理由」をほとんど同じ主旨の文言で定めているところ、実際の情報公開度は、自治体のトップ=首長の判断や姿勢で大きく異なっていることです。
どうしてそうなるかというと、情報公開制度は、「非公開とする場合の理由」の文言をどう解釈し運用していくかの自由度がきわめて高い制度だからです。それぞれの地方公共団体や国がそれぞれ自分の議会の議決で作った制度なので、他団体の判断に関係なく独自に公開・非公開の判断をすることが可能。トップが「公開する」といえば、「非公開理由に該当する情報」というのはほとんどなくなります。
ちなみに私の山県市はというと。 山県市情報公開条例
情報公開度は、極めて高いんです(個人情報は除く)。
一部の職員に非公開体質を感じますが、上層部の意識は公開度が高い。
てらまちさんと裁判したくない、というのがホンネかな。
無論、というか、しかも、県でも市でも、「情報公開」とは別に、内外から実態が伝えられるのも「現場にいる」おもしろさ。
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1年前に知事が替わった岐阜県では、機構改革が進められています。
2月に大きく報道されました。あと数日で、新しい機構と人事の公表。
(追記。公表のとき)
●2006年2月16日 読売新聞
県組織改革 不法投棄監視課 新設
大幅スリム化・・・149所属から半減
県は15日、新年度の組織改革について発表した。現在の6部12局1総監149所属(課、室など)から、9部2知事直轄の73所属へと大幅にスリム化する。さらに、現地機関も科学技術振興センターを廃止するなど136機関から119機関に減らす。
組織改革は、政策総点検の議論をもとに実施する。政策企画立案の強化や職員の資質向上ができる組織体制づくりが狙い。
情報公開の要望が増えているため、「法務・情報公開課」を設けるほか、政策総点検について検証する「行政改革課」、不法投棄事案の発生防止や早期発見を目的とする「不法投棄監視課」を設置することなどが特徴だ。
また、感染症に対する関心が高まっていることから保健医療課内に「感染症対策企画監」を配置する。
●2006年2月16日 中日新聞
・・産廃不法投棄や土壌埋め戻し材「フェロシルト」問題などを受け、現行の不適正処理対策室を「不法投棄監視課」に格上げ。担当職員は5人増の11人とし、現地期機関も県警OBを増やすなどして24時間の監視体制を敷く。森林の違法開発問題でも「森林監視指導監」を新設する。情報公開対策では新たに「訟務対策監」を設ける。同県が被告となった訴訟で敗訴が続き・・
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