今日の午前10時半からの岐阜地裁での住民訴訟。
山県市の市民生活のゴミを市が処理する義務があるところ、処理施設を現在のように岐阜市と共同処理するか、市単独でするかの分かれ道。
単独の方が経費も維持費も割高なのは明らか。
しかし、市長は、岐阜市と組むと山県市内に施設建設を要求されるからと、単独を選んだ。そんな無駄使いはダメと起こした住民訴訟。
岐阜市と羽島市は現在はごみの共同処理。しかし、3年前の自治体合併話のこじれで、羽島はゴミ処理も単独で行くとした。が、結局は、一緒にやることで昨年末に合意した。場所も羽島市内に建設する。
財政破綻直前の山県市が、羽島市と同様にしていいのに、とは当然のこと。
それらを主張した。
次回は5月16日10時半~。
それまでに被告の反論の書面。
こちらは、「市長」を証人として申請する書面を出す、とした。
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●平成18年(行ウ)第13号 山県市ごみ処理計画差止請求事件
原告 寺町知正 外5名
被告 山県市 代表者市長平野元
2007年3月27日
原告準備書面(3)
岐阜地方裁判所 民事第2部 御中
原告選定当事者 寺町知正
第1 岐阜市と羽島市のごみ広域処理施設の新規建設の経緯
1. 合併協議の破綻
(1) 従前より、岐阜市と羽島市は、自治体の一般ごみ処理を両市の境の岐阜市内における焼却施設を用いて共同処理してきた歴史がある。
(2) 岐阜広域合併協議会は、平成15年4月1日に岐阜市・羽島市・柳津町・笠松町・北方町の2市3町で設置、平成15年6月24日に岐南町が加入し2市4町で協議を行ってきた(甲第34号証-1)。
しかし、岐阜市内での「善商」による全国最悪の一つとされる大規模な不法投棄事件が発覚し、その事後処理費用が100億円を超えるとも目されたことなどから、羽島市民や羽島市議会に「広域合併」反対の声が強まった。
そこで、羽島市において住民投票が行われ、その結果合併反対が多数を占めたことで、その結果に従って羽島市は平成16年6月30日をもって協議会を脱退した
(甲第34号証-2)。
(3) 羽島市の主要プロジェクトの説明の「市町村合併」の項目にも経過の説明がある。
「羽島市における合併問題の取り組み状況について・・住民投票の結果、羽島市は岐阜広域合併協議会から脱退し、単独での行政運営を継続することになりました。・・平成16年5月19日・・・」(甲第35号証)。
(4) この時点で、羽島市は、ごみ処理も単独で進めることを決意し表明した。広域化計画を進めていた岐阜県は非常に困惑した。
2. ごみ広域処理
(1) その後、感情的なしこりの解けた羽島市は、単独行政を進める場合にあたって市政の事務事業の全般において財政負担を軽減しなければならないところ、ごみ処理施設の単独建設・維持のあまりに高負担に気づき、岐阜市との協議を再開した。
(2) 岐阜市長は、2006年12月15日に羽島市との共同処理の検討状況を公表した。現在使用している焼却炉の耐用期限や期限後の撤退の覚書・確認など「22年問題」は、本件山県市・岐阜市の場合とまったく同様の事情である。施設の規模も、岐阜市・山県市で200tということと同様である。
記者会見の質疑及び同資料が詳しい。
(3) 岐阜羽島衛生施設組合次期ごみ処理施設の建設について。
市長の記者会見は以下である(甲第36号証-1)。
市長):
岐阜羽島衛生施設組合を、現在の場所で平成22年まで操業させていただくという覚書を地元住民と結んでいる、いわゆる「22年問題」について、これまで議論を続けてきたが、次期ごみ処理施設の建設候補地として、羽島市とすることを発表する。
今後のスケジュールだが、まず地元の合意を得ることが最優先であり、その後環境影響評価などに3年ほど、施設の建設等に3年ほどかかり、操業には最低で7年はかかるのではないかと思っている。
質疑応答
記者):「22年問題」だが、最低でも7年を要するということは、操業は22年を過ぎてしまうことになるが、覚書を反故にするのか。
市長):覚書を遵守すべく議論を進めてきたが、場所の選定などに時間を要した。その間には、市町合併構想に絡んでいろいろな可能性が出てきたこともあり、結果として議論に時間がかかったもので、意図的に覚書を反故にするということはまったくない。
記者):覚書を交わした住民に対する説明は。
市長):これから説明していく。
記者):新しい処理場ができるまでは、22年以降も今の場所を使うのか。
市長):これは、地域住民の了解が必要であり、候補地が決まったことをもって、これから理解を求めていく。
記者):もともと候補地はどのくらいあったのか
市長):6か所の候補地を選び、その中から絞り込んでいった。
記者):この地域に決まった大きな理由は何かあるか。
市長):先ほどの6か所について、交通の便や人口密度など様々な条件を地域ごとに評価して、候補地を2つに絞り込んだ上で、最終的に一番良い所を選んだ。
記者):22年というのは、物理的な問題か。それとも契約上の問題か。
市長):物理的には現在の機械がまだ使えると思っている。当時の事情をすべて知っているわけではないが、処理場を建設するにあたって、地元の方々と協議を重ねた中で決まった条件と理解している。
記者):現施設の地元住民や次期候補地の地域住民へ説明をする主体は岐阜市か。それとも羽島市か。
市長):現施設の今後について、岐阜市民に対しては岐阜市が、岐南町や笠松町の住民にはそれぞれの町が説明していく。羽島市においては、現施設の説明のほか、次期候補地の地域住民との交渉も進められるということで、各市町で手分けして行うことになる。しかし、衛生施設組合の事業であることから、組合としての説明等が必要な場合は、組合で対応していく。
(4) 岐阜羽島衛生施設組合次期ごみ処理施設の建設について
記者会見で配布された資料よれば以下である(甲第36号証-2)。
1 次期ごみ処理施設建設候補地
○羽島市(木曽川沿い南部北東地域)
3 建設候補地の選定経緯
4 建設計画スケジュール
○建設には地元合意が最優先であり、その後環境影響評価等に3年間、施設建設に3年間で最低7年の期間を要する。
5 敷地面積
○約30,000平方メートル(緑地帯等含む)
(4) このことは新聞報道もされている。
◎ 建通新聞 「岐阜羽島衛生施設組合、次期ごみ処理施設(2006/11/02)」「・・1995年に完成。建設にあたって地元住民らと、10年度末で稼動を停止し、現在地以外に施設を建設するという覚書が交わされた。・・」(甲第37号証-1)。
◎ 建通新聞 「次期ごみ処理施設を羽島市南部北東地域に(2006/12/21)」
「・・具体的な地名は明らかにしていないが、羽島市下中町とみられる。今後、地権者ら地元と協議し、合意の形成を目指す。・・」(甲第37号証-2)。)」(甲第37号証-2)。
◎ 毎日新聞 「岐阜羽島衛生施設組合:次期ごみ処理施設の建設、候補地に羽島市」(2006/12/16)
「・・現在のごみ処理場(岐阜市境川)は1995年稼働。その際に地元の一部団体と10年度末までに稼働を停止し、別の場所に移転する内容の覚書を交わしていた。・・稼働時期は地元住民との合意や環境影響評価作業などで最短でも14年度を予定している。覚書にある10年度末までに新施設建設が間に合わないことから、同組合は現施設の地元住民らに継続操業に向けて理解を求めていくという。」(甲第38号証-1)。
◎ 岐阜新聞 「ごみ焼却施設、羽島市が建設候補地に」(2006/12/16)
「・・市長は『現施設を継続利用できるよう、地元の皆さんに理解を求めていきたい』と話した。・・施設建設時に地元住民と『10年度末には焼却機能を停止し、現地以外の場所に建設する』という内容の覚書を交わしている。・・今後、地元住民に説明する。環境影響評価や施設建設などで最短でも7年かかり、稼働は14年度以降になる見通し。細江市長は『覚書を順守するよう進めてきたが、さまざまな事情もあって候補地選定に時間がかかった。(現施設の周辺住民には)理解してもらえるよう説明に努めたい』と話した。」(甲第38号証-1)
◎ 朝日新聞 「羽島市南部に新ゴミ処理場 計画大幅にずれ込む」(206/12/16)
「・・地元住民にはこれから説明する・・」(甲第38号証-2)
◎ 中日新聞 「中島中(羽島)校区に絞る 用地買収交渉へ」(206/12/16)
「・・施設が設置されている茜部自治会連合会の馬場清会長は『・・(覚書の通り)撤去してほしいが、いろんな情勢を考えないといけない。今月末に市と協議することになっている。校区の住民とも話し合いたい』・・」(甲第38号証-2)
第2 国・県が認めても違法の認定は出る
被告の主張には、本件事業につき、国や県が認めているから違法性はない旨が読み取れる。
しかし、経済的観点からの合理性や違法性の判断は別ものである。国や県が認めた市の起債に関して、大津地裁、大阪高裁は次の判示をした。
第一審平成18年(行ウ)第2号 起債行為差止請求事件大津地裁の
2007年3月1日の大阪高裁判決の報道は以下である。
大阪高裁控訴棄却「仮線は対象外」 (京都新聞 2007年3月2日)
「栗東市内の新幹線新駅計画をめぐり、JR東海が迂回線路として造る仮線建設に、市が道路工事を名目に約四十三億円を起債して充てるのは地方財政法に違反するとして、住民八人が国松正一市長に、起債の差し止めを求めた訴訟の控訴審判決が一日、大阪高裁であった。若林諒裁判長は、起債の差し止めを命じた一審の大津地裁判決を支持し、市長の控訴を棄却した。
判決は、・・仮線工事費が約八十七億円かかり、市の本来の目的とする道路工事費の約六億円を大幅に上回ることなどを挙げ、「(栗東市の)論理は世間を納得させるものではない」とした。
第3 被告準備書面(1)への反論
1. 単独選択に合理性はない
被告は、
「岐阜市の要望が、山県市民に受け入れられる可能性に乏しい、というやむを得ぬ事情により断念せざるを得なかった」(同書面第1の2の5行目)、
「山県市民が容認できないと合理的に解される協議内容が提案された」(同書面第1の5の2行目)、
「『山県市民の理解を得ることは極めて難しい」と合理的な判断を行い、やむなく岐阜市との協議を中断した」(同書面第1の3の5行目)、
などと主張する。
しかし、第1で述べたとおり、羽島市長は羽島市内での建設で合意し、実際に羽島市民は合意する見込みである。
被告の「受け入れられる可能性に乏しい」「容認できないと合理的に解される」「『極めて難しい』と合理的な判断を行い」との言い分は、なんら根拠のない不合理で独断・偏狭なものである。
これは、例えば、岐阜市民が、岐阜市関係の最終処分場について、現行の葉所で継続しての新規建設を容認していることからも、容易にうかがえる(甲第39号証)。
2. 被告の歪曲
被告は、
「『山県郡の町村合併も影響があり、・・合併後も岐阜市に頼るということはおかしいのではないか」という意見も岐阜市から出された」(同書面第2の1の5行目)、
とする。が、原告準備書面(2)で、岐阜市との協議の経過を詳細に述べたとおり、岐阜市にそのような記録はない。
被告の一部主張に岐阜市議会の共同の否定的意見が述べられている。それがあったのは事実としても、そのことは、岐阜市と羽島市の共同に関して自治体合併を拒否した羽島とごみ共同処理に批判的な岐阜市議がいたことの方がはるかに重大な障害であるところ、第1のとおり、岐阜市長も羽島市長もなんら躊躇していない。
さらに、被告は、
「平成22年以降、岐阜市の山県市に対するごみ処理に係る関与はなされないこととなった」(同書面第2の1、(4ページの上から)6行目)、
とするが、第1の羽島との共同実現と比較すれば、山県市の拒否がなければ共同処理、しかも、羽島と同様に期限の一部延期も十分に検討されていくレベルのことである。
被告は、それら羽島・岐阜の事情のこと、そして山県・岐阜においても同レベルの事情であることを歪曲している。
3. 虚偽の説明と議会承認の不存在
(1) 被告は、
「平成15年12月2日の山県市議会全員協議会でごみ処理を単独で行う旨の説明を行い、議会の承諾を得て、単独処理を決定している」(同書面第1の3の8行目)、
「平成15年12月2日開催の『山県市議会全員協議会』に、ごみ処理の単独処理の方針を説明し、議会の承諾を得ることができた」(同書面第2の2の4行目)、
とする。
しかし、このとき、被告は、「岐阜市が(岐阜市の自治体合併を捨てて山県郡単独で合併した)山県市とは共同処理しないと言っている」と説明し、議員らをして、単独やむなしと思わせるような説明をしたのである。
(2)被告は、議会の「承諾」を強調する。
しかし、地方自治法上、議会は議案についての意思決定はでき、その他いくつかについて議決等すね権限を有する(地方自治法第96条所定)。被告のいう「承諾」は、これらに該当しないのは明白であるから議会意思ではない。単に被告が議員らに説明した、というだけのことである。
4. 経過の歪曲
被告は、
「山県市が一方的に広域処理を拒否した事実はない」(同書面第2の1、(4ページの上から)14行目)、
「平成15年12月22日に岐阜市長に・・・報告した」(同書面第2の2の5行目)、
とする。
しかし、原告準備書面(2)第1で述べたとおり、
「(岐阜市)
15年12月22日付け山県市より22年から当市でごみ処理は行うとの文書も頂いている。交付金制度移行に伴い、岐阜市として山県市の動向を考え、17年5月に県地域振興局へ出向いた。難関が予想される中、同じ地或の仲間として協力することは惜しまない。」
という事情であり、17年春に岐阜市幹部が山県市に共同処理の提案に訪れているのである。
第4 判例
本件においては、被告の単独処理の決定という判断に関して、自治体の職員として許された裁量の範囲かが一つの争点になる。よって、裁量の違法を指摘した判決を例示する。
(1) 福岡高等裁判所 平成9(行コ)6 損害賠償請求控訴事件 平成10年5月28日判決
「・・その裁量権の行使において,交換を選択したことが著しく合理性を欠くとか,正当な理由もなく,交換の目的財産相互について適正価格に比して著しく不均衡な価格決定をしたなどの事情があるときは,長による財産取得の契約締結には裁量権の逸脱又は濫用があったものとして,違法と評価すべきものである・・著しく不均衡な価格決定をすることに正当な理由があったとはいえないから,町長が同契約を締結したことは,その裁量権を逸脱又は濫用した違法な行為であるというべきであって,これに基づく前記支出命令も違法である・・」
(2) 横浜地方裁判所 昭和51(行ウ)30 損害賠償代位請求事件 昭和55年5月28日判決
「・・被告が本件取得地を随意契約により売却処分したことについて前示の
ように疑惑を抱かれるようなかどは見受けられないが、市長が地方自治体たる市と委任関係にあることに鑑みれば、被告が本件取得地を売却するに当って著しく注意義務を欠いたとのそしりは免れ得ないから、本件売却処分は違法であるといわざるを得ない。・・」
(3) 千葉地方裁判所 平成6(行ウ)32 損害賠償請求事件 平成10年3月25日
「・・市職員の職務に専念する義務の特例に関する規則2条8号に基づく職務専念義務の免除の承認も,市長の完全な自由裁量にゆだねられているわけではなく・・前記措置は完全週休2日制による週40時間勤務制の実現に向けての試行として実施されたものであるが・・少なくとも前記勤務制が実施されるまでの間は,同措置が同号の趣旨を著しく逸脱してされた違法なものであったと認めることはできないものの,同勤務制が実現された時点において,同措置の試行的な措置としての目的は達成され,勤務時間短縮の方便として実施された同措置を正当化し得る根拠は失われたから,同時点以降も同措置を継続したことは市長に与えられた裁量の範囲を著しく逸脱したものであり・・前記給与額の支給は違法である・・」
第5 山県市の財政は破綻直前
(1) 2006年10月に、山県市の財政は破綻直前であることのデータが出された(甲第40号証)。
山県市の実績に基づく「中期財政予測」の公式データでは、市の財源は、2009年(H21年)度に初めて赤字となり、同年は1年間で約6億円の財源不足、2010年(H22年)度は1年間で19億円、2011年は同21億円が見込まれている。来年度予算の編成方針にも「平成23年度累積財源不足額約46億円」と警告されている。
しかも、おおむね年間20億円台の地方債を起こしているところ、2009年(H21年)の24億円を最後に、翌年からは7億円の起債に大幅ダウンさせるという前提での予測だ。つまり、ほとんど、新規事業は何もできないような状態で、なお、赤字が累積していくという予測だ。
(2) H19年度の予算編成方針で、厳しく職員に求めた(甲第41号証)。
「一般会計での平成23年度(2011年度)累積財源不足額約46億円を
今後5年間で解消していく
19年度予算編成で10億円を減額目標
2 経常経費については 15%減」
(3) 以上の通り、ゴミ処理施設建設が市の財政逼迫に重くのしかかっている。このような状況の中で、経費及び維持費の高くつく単独の処理を選択した被告の裁量の著しい逸脱は明白である。
単独で自治体運営することを選んだ羽島市と同様に共同処理を阻む要因が何も存在しないことを考えれば、その逸脱はもはや違法というしかないのである。
以上
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