北海道の斜里町職員によるWinny(ウィニー)を介した住基ネット情報流出事件のことを 2006年3月30日 でまとめました。
このブログにときどきご意見を頂く hiroyuki さんが、ご自分の経験をコメントしてくださいました。現状について示唆的なので、ブログ上でご了解を得て、本文に掲載します。
● 個人が接した個人情報保護法
施行以来、個人の情報が保護されると思い、法を利用しようとしましたが、どうも期待と実態には差が有るようです。経験した事例を紹介します。それぞれ最終的には解決しましたが、途中で疑問に思った点を述べます。
個人情報の消去はできない!
家族が訪問販売で商品購入に際し住所氏名を記載したら、連鎖販売業の会員登録を兼ねていたようです。定期的に会報が送られてくるので業者に対し個人情報の削除を求めたら個人情報保護法では削除義務は無いと言われました。所轄の県庁経営管理部文書法務室情報公開グループに相談したら確かに「個人情報に関する法律に申し出に応じての削除義務は無い」そうです。正確には法律の文言での削除は訂正等に行われる追加削除にあたり(第二十六条)、業者が所有する個人情報を無くすのは消去と表現され(第二十七条)、消去は違法に取得された場合に限り業者に消去義務があるそうです。
利用目的さえ明示すれば収集や利用は範囲内では無制限
ある業者に個人情報を伝えたらそこの取引先まで個人情報が伝わっていました。業者に第三者提供ではと問いただしたら「個人情報の利用目的を『購買事業の業務遂行に必要な範囲で行う業務提携先等への提供』として公表しているので第三者提供に当たらない」という返答でした。個人情報保護法を調べたら第十五条から第十八条で利用目的を特定し通知して取得すれば利用目的内の個人情報利用に制限は無いようです。
苦情はまず取り扱い事業者へ
苦情を文書法務室に申し出たら、まず取り扱い事業者へ申し出て下さいといわれました。そこで解決しない場合に文書法務室に苦情相談先を聞いて欲しいそうです(苦情相談先は内容により県や国と多岐に分かれるのでその都度問い合わせてほしいそうです)。
取り扱い事業者の対応に問題があるのに(問題のある業者だから苦情があるのに)、まず取り扱い事業者へ申し出るのは無駄なような気がします。
地方自治体の苦情受け付け体制
古物営業業者に関して文書法務室に苦情相談先として岐阜県警察本部生活安全総務課を示されて相談したら「こちらは古物営業法担当なので個人情報保護法は文書法務室へ」と返されました。文書法務室は「業者の個人情報保護法に関する相談は、業者を所轄する行政窓口が担当する」という方針なのに、各行政窓口は「こちらは所轄業者に関わる法律担当なので個人情報保護法に関する苦情は文書法務室へ」と誤解しているきらいがあるようです。
国の苦情受け付け体制
「お宅の家屋の航空写真を撮影したので購入しませんか」と訪問勧誘する業者が来たので、「自分の家と分る写真は個人情報では。また無断撮影に当たらないか。」と思い、内閣府国民生活局企画課個人情報保護推進室に問い合わせました。「写真自体は個人情報ではないが、撮影において写真は撮影場所(住所)情報と共に収集するので、これらを組み合わせにより個人が特定されるので個人情報といえる」という回答を貰い、管轄省庁として国土交通省航空局管理部総務課を紹介されました。国土交通省に申し出たら「個人情報保護法との関係に関しましては、所管されます内閣府にご相談頂きますようお願い申し上げます。」という返答で、地方自治体の苦情受け付け体制と同様に各窓口の誤解やたらい回しのきらいがあるようです。
● 私の主観による経験談なので、法的に正しいかどうかの保証は出来ませんが。
追伸で少々。
◇個人情報の保護に関する法律をよく読むと、「個人の情報」を保護する法律ではなく、「個人情報取扱事業者が保有する個人データ」を保護する法律ではと思えます。正当に取得した事業者が保有する個人情報は、当の個人が望んでも事業者に消去の義務が無いのは法の不備ではと思えます。実情に応じたこまめな改正が必要と感じました。
◇自分の個人情報を守る手段としては、法施行前と同様に「不必要な個人情報の提供は断る」しかないようです。利用目的さえ具体的に明示すれば業者が収集するのは制限されないようです。
事例としてスーパーでおせち料理を予約したら住所氏名を求められました。単に連番が記載された引換券を貰えれば予約という目的は達せられるのに、個人情報の利用目的に「商品の引き換え時の確認、DMの発送、商品の案内」と示されていました。個人側に利用目的を制限する権限は無いので、DMに利用されるのが嫌なら予約しないかスーパーと個別に任意で交渉するしかないようです。
◇個人情報を求められたら「利用目的を具体的に示して下さい」「個人情報取扱事業者としての個人情報の取扱いに関する苦情の申し出先を示して下さい」と聞けば、半端な理由で取得されるのはかなり防げるのではと思います。
● 追伸の追伸。
インターネットのおかげで「個人情報の保護に関する法律」「国の個人情報担当部門」「県の個人情報担当部門」が容易にわかり、電子メールで簡単に問い合わせができました。便利な世の中になったものです。
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