私の癌の治療がなかなかぴったりと決まらず、腫瘍マーカーが上昇、主治医はハラハラ、という段階。
治療につき、別の方向の可能性も進めたいという当事者(こちら)側の希望で、ゲノム検査も進めている。
その新しい概念や方法のゲノム検査について、少しでも身近に考えて欲しいと、内容などをお伝えするために、整理しているこの数日。
癌ゲノム検査の話の (1)は、
★≪なぜ遺伝子まで調べるのか/現代医学の標準治療では手段がなくなりつつあるから/検査の意義/去勢抵抗性前立腺がんに対するPARP阻害剤リムパーザの承認(12月25日)≫
(2)は、
★≪標準治療 ハイリスク患者の場合は、いずれ手段がなくなる=癌難民/抗がん剤さえも効かなかった私の癌≫
そして、今日は(3)として「私のかかっている名大病院による、ゲノム医療、検査についての説明」。
この後半にのせるけど、そのタイトル、小見出しだけを列記すると以下。
(なお、次の(4)は、医師との具体的なやり取りを整理して載せるつもり。)
●-1 まず復習すると
●-2 検査の「結果」が希望通りなる確率は高くはないけど、残された一つの道とでも
(1) 「保険適用」の検査と「自由診療」の検査
(2) まだまだ、レアではあるけれど
●-3 前立腺がんの場合の注意点
(1) 「保険適用」か「自由診療」か
(2) そもそも、前立腺がんでは「癌細胞」をとることは難しい
●-4 実際のゲノム検査のための手続き、説明
◆がんゲノム医療とは
◆これまでのがん治療は「臓器別の治療」をする
◆遺伝子パネル検査
◆腫瘍組織を用いたがんパネル検査の対象
◆血液をもとにしたがんパネル検査の対象
◆ゲノム医療の利益・不利益
◆利益 ★不利益
●-5 保険適用と自由診療の検査の概要や費用
◆当院で可能ながんパネル検査
●-6 自由診療の検査の説明の詳細
◆がんクリニカルシーケンス検査で調べられること
■Guardant360の対象となる患者さん
■費用
資料※ 「日本臨床 2020年6月1日/特集 前立腺癌治療update 最新の診断と治療」≪リキッドバイオプシーの現状と今後/京都大学大学院医学研究科泌尿器科学講座≫ (注・リキッドバイオプシーとは、血液や体液で診断する方法)
※ この「癌ゲノム検査の話」シリーズの投稿データ (1)と(2) の小見出しの再掲(リンクあり)
なお、昨日1月10日の私のブログへのアクセスは「閲覧数5,545 訪問者数803」。
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●-1 まず復習すると
現代医学の標準治療が、①手術 ②放射線 ③化学療法(薬、抗がん剤など) とみることが基本的な癌という病気の治療の流れの考え方。
そこに、ごごく最近、④免疫療法 ⑤ 遺伝子に対応した治療、という方向も加わってきた。
既に、その治療で大幅に改善した人も相当数いるはず。
他方で、未だに、薬が開発されないとか、外国では認可されていて、日本では保険適用となっていないので使えない、という人もいる。
私の場合は、八検査、告知された時点で、根治のための ①手術 ②放射線はできない進行がん。 ③化学療法(薬、抗がん剤など) の治療を進めてきて、12月1日と28日に2回の抗がん剤・ドセタキセルを投与した。通常は4クールは投与していくのだけれど、私の場合は効果がなく、2回で打ち切ることになった。
前立腺がんは「ドセタキセル」でダメなら、抗がん剤「カバジタキセル」が「最後の一枚」のカード。それで効かなければ、あるいは効いても、わりと短月日で再燃することが経験的に分かっている。
もう、こんな段階になると、④免疫療法 ⑤ 遺伝子に対応した治療、が現実のこととなる。
そして、ちょうど、名大病院が拠点病院になっているから、すんなりと血液検査でガンの元となっている遺伝子異常を見つけようという流れに入れた。(これが、街中のかかりつけ医やローカル病院からだと、少し日数がかかる雰囲気)
そこで、少しでも多くの人に、あるいは当事者や関係者の人に「自らこんな方法も試せるよ」という視点で整理している。
8日ブログの(1)では、「癌の細胞の遺伝子検査」意味や現状
昨日10日ブログの(2)では、「がん遺伝子パネル検査の基本」と「現代医学の標準治療 前立腺がんの化学療法の概略 抗がん剤が効かなかった私の癌」のことなどを整理した。
●-2 検査の「結果」が希望通りなる確率は高くはないけど、残された一つの道とでも
(1) 「保険適用」の検査と「自由診療」の検査
8日の(1)に記したように、ゲノム検査には、「保険適用」の検査と「自由診療(保険適用にならない場合)」がある。
「保険適用」となるのは、実際に、現物としての癌細胞が標本として採取できている場合。ガンやその人の進行状況などによっては、生検や手術で癌細胞が採取できることもあろう。
(2) まだまだ、レアではあるけれど
8日のブログで整理した「がんパネル検査」の「医療保険」の適用、つまり日本として制度化したのはまだ2019年のこと。
その、適用外の場合に行う「自由診療」は、もっとレアな利用だろう。
実際に、最初の「患者への説明」の担当者は、そんな表現だった。
それだけなじみのない制度を利用しようというわけだし、そもそも遺伝子異常の「結果」が決してスパッとこちらの希望通りなると思うのは控えた方が良い。
●-3 前立腺がんの場合の注意点
(1) 「保険適用」か「自由診療」か
前立腺がんの場合、手術は進行が初期で、根治コースだから、私のように、対処する方法が減ってきたから、ということではない。つまり、組織はあるかもしれないが、そもそもゲノム検査は不要ともいえよう。
もちろん、「保険適用」の検査に該当する人たちもそれなりに居よう。だから、私の主治医は、前立腺生検、と転移している骨生検をして、遺伝子を調べようと提案されたのだから。
ただ、私の場合は、前立腺部分の生検でも、骨シンチの画像検査でも骨転移の場所の中でも「一番活発そうに映し出されている」ところの腰の骨を採って細胞を調べる「骨生検」でも、癌細胞は見つからなかった。どちらからも「癌細胞は見つからなかった(昨年11月の検査)」。
だから、私の場合は「保険適用」のゲノム検査の道は閉ざされた。
残る方法は「自由診療」しかない。
(2) そもそも、前立腺がんでは「癌細胞」をとることは難しい
前立腺がんの「癌細胞」でゲノム検査をすることについて、先日読んだ本には次の旨が書いてあった。
「前立腺がんの骨転移では、骨は固くてガン細胞を採ることは難しい」と。
別にも、2日前に読んだ専門書でも指摘してあった(興味深い文献なので、今日のブログ末に詳しく引用、再掲しておく ※)。
「最初の時期の前立腺の生検の標本では、今現在のガンの遺伝子は取れない。転移が多い前立腺がんでは、『転移巣』で新しい遺伝子の変異ができていくから。さらに、治療を進めるほどに、『その変異が進んでいく』からだ」との旨。・・ということは、私のように何種類かの薬物の治療を進めてきた患者の今現在の癌細胞から遺伝子を撮ることは、今の技術では至難の業、ということになるらしい。
・・・なんとなんと、もともとそんな専門家の認識があったのか、とあとで思う私。
●-4 実際のゲノム検査のための手続き、説明
自由診療でゲノム検査をしたいとの旨を表明し手続きの書類を1月4日に出したら、日程調整の結果として、早速、1月6日に名古屋大学病院の化学療法部所属の医師から説明を受けた。
(検査のことを具体的に理解してもらうために、医師の説明資料の簡略なレジメに寺町が文字などを補足した)
●がんゲノム医療とは
・「ゲノム」とは = すべての遺伝子情報
・「がんゲノム」とは = がんの遺伝子情報
・「がんゲノム医療」とは = がん患者さんの遺伝子を調べて最適な薬や治療法を選ぶこと
●これまでのがん治療は「臓器別の治療」をする
肺がんなら肺がんの薬、胃がんなら胃がんの薬、大腸がんならその薬というように、「臓器別」の治療をする
「がんゲノム医療」は「遺伝子異常別に治療」をする
遺伝子異常別に、例えば「胃がん、大腸がん」に共通の治療薬とか、「肺がん、胃がん、大腸がん」に共通の治療薬とか、というように、癌の原因となっている遺伝子の異常に応じて薬を使い分けた治療をする。
●遺伝子パネル検査
がん組織からDNAを抽出、遺伝子異常を調べて報告書を作成。
治験や臨床試験にエントリーする
予後にかかる情報の入手 など
(予後=「病気や治療などの医学的な経過についての見通しのこと(国立がんセンター)」)
● 腫瘍組織を用いたがんパネル検査の対象
<対象となる患者さん>
①標準治療がない固形がん患者さん、
または局所進行もしくは転移が認められ標準治療が終了となった固形がん患者さん(終了が見込まれる患者さんを含む)
②全身状態及び臓器機能等から、がん遺伝子パネル検査施行後に化学療法の適応となる可能性が高いと主治医が判断した患者さん
● 血液をもとにしたがんパネル検査の対象
<対象となる患者さん>
検査に用いる腫瘍組織がない患者さん
保険診療によるがん遺伝子パネル検査の対象とならない患者さん など
●ゲノム医療の利益・不利益
★利益
・検査の結果により実施できる治療がみつかる
(⇒ 治験や臨床試験,適応外治療につながる可能性がでてくる)
★不利益
・組織の不良などにより、そもそも、結果が得られないこともある
・治療がみつからないこともある
・治療がみつかっても適応外治療であることもある
・「血液からの検査」の結果(=具体的な証拠ではない)が、「(癌の)組織」として再現(=具体的な証拠である)できないと治療に結び付かない可能性がある
・家族への影響(遺伝)が判明する可能性がある
(この場合、遺伝カウンセリングによる説明がある) |
●-5 保険適用と自由診療の検査の概要や費用
●当院で可能ながんパネル検査
・NCCオンコパネルシステム…・医療保険
費用:約17万円(保険で3割負担の本人負担額)
検査遺伝子数:114
提出試料:がん組織検体十血液検体(正常サンプリング目的)
・FoundaJonOne CDx・…医療保険
費用:約17万円(保険で3割負担の本人負担額)
検査遺伝子数:324
提出試料:がん組織検
・Guardant360…自由診療
費用:約36万円(保険が使えないから、全額が本人負担額)
検査遺伝子数:74
提出試料:血液検体(血中循環腫瘍DNA測定用)
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●-6 自由診療の検査の説明の詳細
●Guardant360患者さん向け説明書v2018 (名古屋大学医学部附属病院)
がんクリニカルシーケンス検査 「Guardant360」説明書
■Guardant360で調べられること
Guardant360は、がんに罹患した患者さんの血液中に流れているがん細胞由来のDNA(血中循環腫瘍DNA:ctDNA)をもとに、がん細胞で起きているがん関連遺伝子バリアント(遺伝子型の違い)を解析する検査です。がんは遺伝子の変化によって引き起こされる病気ですが、同じ臓器に発生しても、がん細胞の遺伝子に起きている遺伝子の変化は患者さんごとに異なります。ある遺伝子の変化によっては、抗がん薬の効果に影響をおよばす事が分かっており、遺伝子検査が実際に患者さんの治療方針決定に使用されているものもあります。
Guardant360でがん関連遺伝子で起こっている遺伝子バリアントを一度に調べる事ができます。そしてGuardant360で得られた遺伝子の結果から、あなたのがんの治療に役立つ可能性がある情報がないか解析を行います。
この検査の結果で見つかる薬剤の中には、国内では未承認で臨床研究中の薬剤や保険適応外の薬剤が含まれます。
■Guardant360の対象となる患者さんについて
Guardant360は以下の患者さんを対象としています。
1. 進行期の固形がん(ステージⅢ~Ⅳ)
2. 遺伝子検査のための組織が不足している患者
■費用について
Guardant360は保険診療の対象外となるため自費診療で以下の費用を負担して頂く必要があります。
初回検査費用:¥357480(税込)
2回日以降の検査費用:¥262440(税込)
【重要】検査後の治療費や診察費は含まれません。
Guardant360の結果によって治療を行う場合は、担当の医師と相談のうえ実施することになります。保険適応外の場合は、希望されても対応できないことがあります。詳細は担当医にご相談ください。
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※ 「日本臨床 2020年6月1日/特集 前立腺癌治療update 最新の診断と治療」≪リキッドバイオプシーの現状と今後/京都大学大学院医学研究科泌尿器科学講座≫
「・・・各段階でどのような遺伝子異常が蓄積しているかの概要が次々と明らかになっている。さらにこれらの解析によって,前立腺癌の不均一性(heterogeneity)および治療によるクローン進化(clonal ev01ution)の詳細が分かってきた。
限局性前立腺癌では同一前立腺内に遺伝的背景の異なる複数のがんが発症するが,そのうち転移を来すのは限られたクローンのみである。
このため,未治療の転移性前立腺癌では,転移巣の多くは原発巣と類似した遺伝的背景をもち.比較的均一である。
しかし前立腺癌は,アンドロゲン除去療法や化学療法などの治療ストレスにさらされると,各がん細胞がさまざまな遺伝子変化を伴い治療に抵抗しようとする。
そして各転移先で生き残ったクローンが転移巣ごとに増殖して,場合によってはさらなる転移を引き起こす。
このため治療開始前は比較的均一であった各転移先の遺伝的背景も去勢抵抗性前立腺がん・CRPCとなった際には転移巣ごとに大きく異なっている。
さらにこれらの違いは,2次治療,3次治療と治療を続けるにつれてどんどん大きくなる。すなわち,CRPCではがんゲノムは空間的,時間的にダイナミックに変化する.
前立腺癌では通常,診断時に前立腺生検で組織採取を行うが,上記の理由により診断時の前立腺生検組織ではCRPC時のがんゲノム医療には全く不十分と言わざるを得ない。
CRPCにおいて,がんゲノム医療を遂行するためにはCRPCに対する新規の薬物治療前に転移巣を生検し,その組織のゲノム解析を行う必要がある.
しかし,前立腺癌が最も転移しやすい部位は骨であり,侵襲性から転移巣生検は容易ではない。また,骨生検ではゲノム解析を行うのに必要十分な組織を回収するのは,しばしば困難である。
筆者らの施設では,倫理委員会承認のもとCRPC時に前立腺の局所生検を行い,それをがんゲノム医療に用いることができないか検討してきた(未発表データ)。
しかし,驚くべきことに局所進展が明らかな一部の症例を除いて,CRPCでは多くの薬剤に抵抗性で転移巣の病変が,かなり進行した状態であっても局所生検ではがんを検出できない, もしくは検出できてもゲノム解析に必要な量のがん細胞を認めなかった。すなわち,がんパネル検査が可能になったとは言うものの,現時点では肝臓転移や鼠径,頸部などの生検が容易なリンパ節の転移がない
限り,がんパネル検査を用いたCRPCのプレシジョン医療は遂行できない。
最近,組織生検にとって代わる,もしくは組織生検を補完する手段として,リキッドバイオプシー(体液診断)が注目されている。」 (注・リキッドバイオプシーとは、血液や体液で診断する方法)
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※ この「癌ゲノム検査の話」シリーズの投稿データ (1)と(2)
● 2021年1月8日ブログ ⇒ ◆癌ゲノム検査の話-(1) なぜ遺伝子まで調べるのか/現代医学の標準治療では手段がなくなりつつあるから/検査の意義/去勢抵抗性前立腺がんに対するPARP阻害剤リムパーザの承認(12月25日)
上記投稿の本文の小見出し。
●-1 まず、なぜ「まとめる」ことにしたのか
(1) ブログに書くことの一般的な意味
(2) 私の実例、事情
(3) 実際の反応も。
●-2 癌の細胞の遺伝子検査に関して、3回に分けて整理するつもり
(1) そのことの意味や現状をまず、整理してから
(2) 私のかかっている名大病院による、ゲノム医療、検査についての説明
(3) 具体的な私の場合についての医師とのやりとりやこちらの思い、捉え方など
●-3 「癌の細胞の遺伝子検査」意味や現状
●-4 ≪遺伝子検査について/国立がん研究センター中央病院の解説≫
●-5 ≪自由診療について/同上≫
●-6 ≪先進医療機関/同上≫
●-7 ≪家族性腫瘍の可能性がわかるか/同上≫
●-8 ≪PARP阻害剤の効果とBRCA遺伝子変異が関係あるか/同上≫
●- 9 ≪なんと、昨年12月25日に新しい薬が日本で認可されたから≫
≪前立腺がんの遺伝子変異に関する新しい治療薬、しかも、前立腺がんとしては初めて「遺伝子変異」関係の薬が認可された。それは、私の治療としての抗がん剤投与が進行中の昨年末12月25日。≫
(寺町の補足-1) PARP阻害薬(オラパリブなど)の解説|
(寺町の補足-2) 前立腺がんに対して日本で初めて承認されたPARP阻害剤 リムパーザ(オラパリブ) |
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