tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

頑張るUAW、連合の来春闘は?

2023年10月14日 14時59分53秒 | 労働問題
先月の18日にアメリカで9月15日に始まったUAW(全米自動車労組)のストライキを取り上げました。
ストが始まってもう1カ月ですが、労使はともに譲らず、ストは続いているようです。

最大の争点は勿論賃上げで、UAWの要求はこれからの4年協定で今年は20%、来年以降は年5%で、累計39%(通常4年で40%と言われている)です。ビッグ3(GM、フォード、ステランティス)の方は4年で20~23%(今年8%、後3年は4%と推定)を提示しているようですがストは続いています。

UAWの要求根拠は昨年から年10%レベルのインフレで去年の分も入れて今年は20%、来年からはインフレは5%以下だろうというような計算と推測でき、ビッグ3の方は過去は別で、インフレはピークで8%、来年以降は3~4%という見方でしょう。

第三者の目から見れば、如何にもUAWの要求は、力ずくで大幅賃上げを勝ち取ろうという感じですが、労働組合としては、これまでの4年間いろいろと我慢して来たという思いは強いのでしょう。

アメリカ経済の好調もあり、アマゾンその他の組合結成の動きもあったりして、この際労組の力を取り戻そうという意気込みもあり、アメリカの労働運動の代表ともいえるUAWは頑張っているのでしょう。

しかし、要求の幅はいかにも大きすぎて、実現すれば、アメリカの自動車産業のコストは高過ぎて、国際競争に太刀打ちできないという事になるでしょう。

更には、こうした高賃上げが波及し、物価上昇を誘発すればFRBは金利を引き上げて円高、企業サイドにはますます不利になるといった読みもあるのでしょう。

問題は、アメリカ経済自体の国際収支の赤字体質、高コスト、インフレ体質といった恒常的な問題があるにもかかわらず、UAWは何とか無理な要求も押し通そうと、ビッグ3全てでストに入るという初めての総がかりともいうべきストを、その範囲も拡大させながら続けるという強硬さです。

どう決着するかは解りませんが、そこで考えてしまうのが、日本の労働組合の連合との対比です。

日本の労働組合は、今春闘で頑張って賃上げしたつもりが17カ月連続の実質賃金低下という惨状にあります。

しかも、日本は万年経常黒字国で、それでありながらこの所は大幅円安で、国際競争力は強化されるばかり、しかし実質賃金の低下で、消費需要は低迷、家計は改めて緊縮の動きを見せ、低賃金の非正規労働者が家計を支える貧困家庭は増加傾向、マクロ経済で見れば、消費需要の不足が低成長の元凶と言われる状態です。

政府や企業サイドから賃上げも必要といった声も聞こえる中(賃上げ不足による消費不振で低迷する)年々の経済成長率を基準にした賃上げを生真面目に守り続けているのです。

較べてみますと、まさに、典型的な「やり過ぎ」と「やらな過ぎ」の日米労組といった感じではないでしょうか。

「やり過ぎ」のアメリカはかつてスタグフレーションに呻吟、労働組合も「やり過ぎ」を反省して何とか復活しました。

日本(連合)は、国際経済の環境変化の中で「やらな過ぎ」になり、アベノミクスも、岸田流「成長と分配の好循環」も起動せず、低迷を続けることになってしまっています。

そろそろここいらで「やらな過ぎ」を脱して、やるべき事はやるという所に上らないと、今の国際経済環境では、時代遅れの真面目さで、損ばかりすることになりそうな気がします。
来春闘に向けて連合がどんな賃金要求を打ち出すか、最大限の興味を持って見守っています。

減税より補助金、政府は「神の手」を持っているのか?

2023年10月13日 16時58分50秒 | 経済
臨時国会での政策論争がどんな展開になるのかわかりませんが、政府は多分補助金を中心に、国民の生活を何かと援助をしようという政策を並べるのではないでしょうか。

そうした予想の中で出てきている議論に、補助金が良い政策なのか、それとも減税の方が適切な政策なのんかという論争があります。

補助金も減税もそれだけ国民の使えるカネを多くして、物価高騰の折から、生計費の上昇に困っている国民の生活を援助しようという政策には変わりありありません。

それでは、どこが違うかという事です。
端的に言ってしまえば、補助金は政府がカネを出して困っている国民の生活を援助しようという事です。

減税の方は、政府が国民から徴収している税金を減らすことによって、国民が税金を払う分が減りその分は国民が自分の生活費に使えることになるという事です。

補助金は日本の経済活動に使うカネの中で、政府の使う部分を増やすという事で、減税は逆に政府の使う部分を減らすという事です。

特に政府が赤字でカネがない時は、国債発行で補助金の原資を調達しますから財政赤字も増えることになり、そのあと始末もまた大変です。

減税は、消費税でも所得税でも減税を決めるだけで、余計な手間はかかりません。所得税の場合は税金を払っていない人には効果はないわけで、消費税ならすべての人に効果があるというような議論にもなります。

政府は、減税より補助金の方が好きのようですが、これは補助金をもらう人の喜ぶ顔が見たいとか、選挙があれば与党の得票に繋がるのではといった考えもありそうです。

こうしたことは世俗的な見方ですが、もっと大事な議論をすれば、経済活動において最も基本的は原則である「価格機構」の働き、経済理論でいえば、アダム・スミスの「神の見えざる手」を生かして使わずに「オレが決めてオレがやる」という傲慢な発想という事ではないでしょうか。

例えば、消費税の減税をすれば、政府の収入は減りますが。その分のおカネは国民一人ひとりが自分の最も望ましいと思う使い方をするでしょう。それが全体として「見えざる神の手」として調和のある経済を齎すのです。

補助金というのは、その「神の手」の代わりに、限られた人間の頭脳の判断で、政治的配慮のもとにおカネを配るのですから実は合理的な経済活動を妨げている事が多いのです。

例えば、エネルギー関係の補助金は、省エネの工夫や努力を妨げています。電力ガスの補助金は、消費者物価の高騰を低く見せて(4%台→3%台)、日本の物価上昇はアメリカより低いと勘違いさせます。    

そのほか、まだまだ、いろいろ問題はありますが、補助金を出せば、赤字国債発行も、国民は大目に見てくれる可能性が高いとか、「減税の財源は赤字国債で、結局は国民負担です」とは言いにくいので、多少は自分たちも節約しなければならなくなるのではないかと恐れるのかもしれません。

そんなケチな考えの選良はいないと思いますが、やっぱり臨時国会では赤字国債論議でしょうか。

波乱含み、為替と物価の現状

2023年10月12日 16時16分39秒 | 経済
為替と物価についての動きが波乱含みの中で日銀は「注視」を続けていますが、その視線の先はFRBの動向でしょう。

インフレを退治し、更に再発の芽も摘もうというパウエル議長の意気込みが効果を持ったようで、FRBの中でもこれ以上の金利引き上げについては意見が分かれていようです。

今日はまた円レートは149円台ですが、149円10銭台で、150円に迫るといった状態ではないようです。

日本にとってはこの円安が輸入物価の上昇に繋がり、それが国内物価に転嫁されて物価上昇が収まらないというのが政府・日銀の最も苦慮するところでしょう。

そんな今日、日銀から輸入物価指数、企業物価指数などの主要物価統計が発表になりました

早速これまでのグラフを延長してみました。

     輸入物価、企業物価、消費者物価(東京都区部)3指数の推移

                    資料:日銀 総務省統計局

ご覧のように輸入物価は上昇に転じました。2021初頭からの動きを見て頂けばお解りの様に、輸入物価が上がり始めればそれは次第に企業物価に波及してきます。

しかし、今回の輸入物価上昇は、国際価格が上がったのではなく、円安で日本だけの値上がりです。契約通貨ベースでは上がっていません。
当然、アメリカの金利はどうなるという事になります。日本の円安→インフレはアメリカの金利次第です。

ですから日銀は、アメリカの金利動向を注視し、アメリカが金利を上げなくなり、円レートが130円、120円に戻れば日本の物価も収まると見て、それを待つわけです。日銀には主導権はありません。

日本も金利を上げれば円安は止まりますが、金利を上げれば、日本の景気がもっと悪くなると政府も日銀も考えていますからそれも出来ません。

ただ円安は日本の国際競争力を強めますから、輸出が増え、インバウンドも増えることでいい事もあると思っている面もあるのではないでしょうか。
先日も「しらたき」の輸出が何倍も増えてニコニコなどという話もありました。

外国から見て高い物価は下がりますが、安い物価が上がるのは、経済では当然のことですが、円安がいつまで続くかがアメリカ次第という所が一番困るところでしょう。

そんな中での物価の動きを1年前と比較してというのが下のグラフですが、最近の動きはまちまちで、未だ傾向的な判断は出来ないようです。ただ企業物価が消費者物価より低くなったというのは、国際価格の上昇による輸入物価の上昇が終わった事の結果でしょう。(図では消えていて済みません、右端の消えた企業物価の対前縁上昇率はは2.0です。数字2..8は消費者物価、)

輸入物価、企業物価、消費者物価(東京都区部)指数の対前年上昇率(%)

               資料:上に同じ

今現在の問題である「円安」といったマネーの世界の現象は短期と思ったものが長期になったり基軸通貨国の金融政策の影響で、政策担当者の意識次第という面もあり、迷惑しても当面静観という事になるのでしょうか。

出来れば日本は日本自体の自立した経済運営を企図し、今の日本に必要な政策を取ることで、独自の経済展開を進めるという方法もあると思いますが、それを実行する日本の各経済主体、政策当局の構想力と事効力が問われているという事なのかも知れません

地球柑が色づいてそろそろ見頃です

2023年10月11日 14時49分31秒 | 環境
9月13日に、我が家の狭い庭に鉢植えから地植えに移した地球柑(しまだいだい)が6年ぶりにやっと実を付けたところを写真に撮りました。

今年は本当に暑い夏ですたが、やっと秋らしく朝晩はひんやりするようになりました。

涼しくなるにつれて、地球柑も少しずつ色を変え、緑の縞と柑橘本来の黄色い肌のコントラストが目立つようになってきました。

          <いくつ見えますか> 

                      (答:5個)
やっぱりこう色分けがはっきりしてくると、その縞模様が地球儀のように見え、地球柑らしくなります。

考えてみれば、鉢植えで2~3個の実が生っていたころ、これが1人前の木になって、枝々にこの縦縞のある実が生ったら、さぞ面白いだろうと思っていた光景が、まさに実現したのです。

「面白い実ですね」と見てくれる人がいるといいのですが、若い人は皆スマホを見ていますし、年配の人は足元に注意しているようで、なかなか他人の狭い庭まで覗いてくれません。



念の為に数えてみましたら全部で18個なっていました。

柑橘はこの時期に新芽が伸びるのでしょうか。緑に白のツートーンの大きな葉をつけた枝が伸びていましたので、来年も沢山実が生ってくれるように願いながら、秋空の下、素人流の剪定も少ししてみました。

政府・日銀に出来ることは何なのか

2023年10月10日 20時40分35秒 | 労働問題
政府・日銀に出来ることは何なのか
日銀が苦境に立っています。半分は金融政策の限界によるもの、半分は国際為替戦争についての戦略不足でしょう。

今の日本のインフレは、かなり特殊です。昨年までは、アベノミクス下で8年ほど、世界の物価は上り、日本の輸入価格もじりじり上ってきました(原油などは乱高下)。しかし日本では、「世論や労組からの賃上げ圧力は弱く」、家計は、常に防衛的で、支出を抑え「将来不安・老後不安に備えて貯蓄」という状況が続きました。

消費は伸びず、低成長が続き、値上げ出来る状態ではありませんでした。こうした「我慢の経済」の限界が2021年に来たのでしょう、平均消費性向が反発上昇、消費者物価指数の上昇が始まっています。

消費不況、ゼロ成長の中で輸入品と賃金は、じりじりとコストアップ、8年分をこの2年で取り返そうという「超長周期のコストインフレ」が2021年から起きたようです。

しかもその折、原油価格上昇、ロシアのウクライナ侵攻が起き、輸入物価が上昇、最低賃金が連年3%上昇(今年は4%)のコストプッシュ、他方、コロナ終息気配もあり節約疲れから平均消費性向が上向き、さらにとインバウンド増加で、これらはデマンドプル要因になり、生活必需品、それに外食、宿泊料などは急上昇、これが昨年来でしょう。

これに追い打ちをかけたのが昨年、今年の大幅円安による輸入品価格の急上昇、輸入インフレです。

今のインフレは複合要因ですが、賃金コストインフレは最低賃金部分を除いて極く一部です。今春闘でも、家計調査の世帯主定期収入は昨年比で減少です。

8年間のコスト上昇を纏めて取り返そうというインフレは、そろそろ終了だったはずです。
しかしこの所深刻化している大幅円安による新しい輸入インフレは、アメリカの金利政策次第です。
アメリカのインフレはすでに収まっていますが、FRBは異常な執念で、インフレの根を断とうというのでしょうか金利引き上げの観測は消えません。。

という事で最後に問題になるのは、アメリカの金利引き下げがいつ始まるかです。日本で何が起きようと、自国の都合しか頭にないFRBですから、これは大変です。

こうした現象からいくつかの視点が浮かび上がります。
先ず、日本がアベノミクス第1弾黒田バズーカで、円安(円レート80円→120円)の時輸入インフレを国内インフレに転嫁しなかったのはなぜか。これは労使の共犯です。

円高の時はあんなに必死に賃金を抑え、非正規増やして賃金コストを下げたのに、円安になっても連合は円安に見合う賃上げを要求せず、経営は非正規の正規化をせず、低賃金のままで、企業は利益と資本蓄積ばかりに目が行っていたようです。

結果は家計の購買力が伸びず消費不況でゼロ成長の連続です。政府は歳入が増えない中、赤字公債で財政政策、国民はこれでは将来の年金も危ないと貯蓄に懸命です。

一方、日銀は、おカネをジャブジャブにして景気回復へと異次元金融緩和継続です。
金融引締めは経済活動の抑制には効きますが、景気の刺激策には異次元記入緩和が限界です。黒田さんは異次元金融緩和で回復を待つだけでした。
しかし、8年周期のコストインフレも、それだけなら、そろそろ終わりだったでしょう。

新たな問題は、最後に加わってきた円安の影響です。これはインフレ心配のアメリカが金利を引き下げるまで続きます。
今日銀が直面しているのは、その結果の日米金利差による円安です。一見これは金融政策の問題で、賃金には関係ないように思われます。

しかし、日米金利差を齎したのは、日米の賃金決定の違いです。問題の基本は賃金問題に帰って来るのです。

金利差の問題と言っても、日銀に打つ手があるのでしょうか。やっぱり日銀は注視して待つ姿勢継続なのでしょう。そして、これは「来春闘の問題です」という事になるのでしょう。

結論は、問題解決の主役は「労使」であって、政府、日銀の打つ手は限られている」という事になるようです。
問題の本質は、「その意識が労使にあるか」ではないでしょうか。

消費者物価上昇4%でも日銀が動かないわけ

2023年10月09日 15時08分45秒 | 経済
8月の消費者物価の上昇は3.2%(総合)でした。この「総合」の数字は1月の4.3%上昇が2月3.3%上昇に下がっています。これは政府が、電気・ガス会社に補助金を出したからで、補助金を止めれば、消費者物価上昇率は4.2%(アメリカ8月3.7%)になります。

更に中身を見ますと生鮮食品とエネルギーを除く総合」が4.3%で、総合より高い要因は、食品8.6%、生鮮を除く食品9.2%といった生活必需品の上昇です。

一方で、日銀のインフレ目標は2%です。これは消費者物価上昇が2%になったらゼロ金利を辞め、金利を上げて、金融正常化を行うという前提での目標です。
しかし日銀は、金融正常化に動く気配はありません。何故でしょうか。

その理由を日銀は説明していますが「2%インフレ目標は『賃金上昇を伴う物価上昇です』というだけです。

しかし、賃金も上がっています、統計で見れば、実質賃金は下がっていますが、名目賃金は毎年上がっています。今春闘では賃金上昇も高まり毎月勤労統計では5月・6月はそれぞれ3%、2%の上昇です。

最低賃金もこの所毎年3%、今年も10月から4%上がります。
そしてそれに合わせるように10月から4千数百品目の生活物資の値上げが報道されています。

これでも「賃上げを伴う物価上昇ではない」と日銀は言うのです。
日銀は、理由は言いません。思うに、日銀は、もっと顕著な賃金上昇、賃金インフレでなければ。「注視している」だけでいいと考えているのでしょうか。

そこで、まず基本的なことを考えてみましょう。「インフレが起きる状況、起きる原因は何か」という事です。

古典的には、モノとカネのバランスで起きる、モノより金が多くなるとインフレになるという基本的な理解(貨幣数量説)があります。

これは基本論で、応用編ではその通り行かないこともあります。おカネが一部の人に集まってしまった場合とか、おカネが入っても節約して使わない人が多いといった場合にはインフレは起きません。
考えてみれば、日本でもそんな状況も一部に出ているような気もします。

次に、もう少し具体的な面からインフレの原因を分類している見方がないかと言えば、インフレの原因は通常「輸入インフレ」と「賃金インフレ」だという見方です。

輸入インフレは輸入品の値上がりが国内価格に影響して起きるインフレです。賃金インフレは、国内で賃金が上がることで起きるインフレです。

輸入インは2つの場合がります。1つは世界中で、原油や穀物の値段が上がったといった場合です。もう一つは、円安になって、日本だけ輸入品の値段が上がる場合です。
前者は世界共通の問題ですが。後者は日本だけの問題です。

賃金インフレの場合は、賃金が上がることは、コストの面から見れば、コストプッシュ・インフレ、購買力の面から見ればデマンドプル・インフレの2つの側面を持ちます。

さて、これらの要因の組み合わせの上に、経済政策、為替理論、消費行動、雇用構造、企業経営学などの問題が絡み合って、今の日本の状態が起きているので、政府も日銀も、その複雑さから説明が上手くできないので、曖昧な説明で済ますので、何を考えているのかわからないという結果になっているのでしょう。

次回は、このブログで今まで書いて来た事を整理し、何処まで的確に解り易く説明できるか、全力でトライしてみます。

補正予算は20兆円の国債発行で賄うのですか

2023年10月07日 16時52分42秒 | 政治
先日も書きましたが、岸田政権(自民党政権)は、国債の発行は無尽蔵に可能と思っているのでしょうか。

国債発行で財政破綻はないというMMT(現代貨幣理論)は成立するかと言いますと、これはアメリカと日本に当てはまりそうだからという事から出てきたもののようです。

アメリカの場合は解らない事もありません。アメリカは基軸通貨国で、万年赤字です。しかし、世界中の赤字国の赤字の合計と、黒字国の黒字の合計は等しいのです。
そして黒字国は、基軸通貨国の貨幣を買って外貨準備にします。つまり世界の黒字は、アメリカの国債を買って外貨準備にするという形で、アメリカに還流するのです。

日本の場合は、いわば不思議な国で、どんなに経済が悪くマイナス成長・ゼロ成長でも国際収支は黒字なのです。これは国民が真面目で、常に収入の範囲内で生活し、国民所得を使い切らずその分国際収支は黒字になりますので、その分を政府が借りて(国債発行)、財政政策を打つ余裕が常に生まれているという実績のお蔭です。

それ以外の国は、経済が悪くなると国際機関や外国から借金しますから、早晩IMFがこれは危険だと判断し、IMF管理になり、経済緊縮の苦労の末、赤字を脱して漸く放免というプロセスを辿ります。

という事で、日本を見てMMTが生まれ、その変な「理論」を日本の政府が信用し(半信半疑かな)赤字国債を出しているというおかしなブーメラン効果になっています。

これは、はっきりって「日本人は節度を守る」とい神話を世界が信じ、一時「有事のドル」が「何かあれば円」などという事もあるほど、日本の真面目さへの「信用」があった(今でもまだある?)からという事でしょう。

今、17カ月の実質賃金赤字が続く中で、日本国民は、政府が「賃上げ、賃上げ」と言っても、インフレを恐れて、賃上げはほどほどで、後は家計が消費抑制、貯蓄指向に切り替えて、経済は成長しなくても、黒字は増えて、政府のために赤字国債発行の環境お整え始めたようです。

本当に日本国民は健気ですが、これでは日本経済は成長しそうにありません。
それでも外国から見れば、インフレは低く、万年黒字は続いているので、円は安全だろうという「神話」は続くのでしょう。

国債増発の余地も、家計の節約が生み出し、政府がバラマキで支持率向上の可能性を作っているようです。

勿論これには低インフレとゼロ金利という環境がなければなりません。
若し、国債に3.1%の金利を付ければ、借金は12年で5割増え、20年で2倍に膨らみます。既発債は減価して日銀は巨大な評価損を抱えます。

低成長、低物価上昇、ゼロ金利、家計の節約というアベノミクス型の経済が今後も続くことを国民が許すでしょうか。
しかしこの「ゆでガエル」ならぬ「冷やしガエル」状態が何かのきっかけで崩れる時、何が起きるかという事も考えておく必要がありそうです。

日本の信用という「神話」が現実であるためには現状を続けることが大事ですが、岸田総理は、「冷温経済を適温経済へ」、「貯蓄から投資へ」、「賃上げが必要」などいろいろ言われます。しかし、これと金利水準、赤字国債発行などのバランスをどう理解しているのかは不明です。

信用の崩壊がいつ起きるかは、必ずしも理論や数字では解りません。バブルの崩壊でも、金融機関の破綻でも、不測のきっかけで起きるのです。そして、きっかけは後から解るのです。

日本もこれから、物価、賃金、金利、国際収支、外国人投資家の眼、それに、国際紛争(防衛予算)などに十分注意して、経済の運営をする必要が、次第に出て来るのではないでしょか。
もう失敗は許されないと考えて、万全の安全対策をお願いしたいものです。

2023年8月「家計調査」:平均消費性向が再び低下へ

2023年10月06日 15時29分15秒 | 経済
今日、総務省から2023年8月度の「家計調査、家計収支編」が発表になりました。

いつも通り主要な数字をさらっと追ってみましたが、直感したのは「これは良くない兆しでは・・・」という感じでした。

最後に出ている勤労者世帯の「平均消費性向」は、前月に続いて矢張り昨年8月より下がっていました。

平均消費性向の推移(2人以上勤労者世帯:%)

          資料:総務省統計局「家計調査」

上の図を見て頂くと明らかですが、一昨年の青い柱に比して昨年の赤い柱は3月、11月、12月を除いて9カ月が上昇です、消費者物価が上がり始めた時期ですが、元気に伸びた赤い柱が消費需要の復活を示し、景気を明るくしてきました。

政府も連合も経団連も、この状況に気を良くし、経団連会長も「賃上げ容認」を言い、今年の春闘を盛り上げました。

結果は前年プラス1%程度の2.8%の賃上げでした。ところが平均の賃上げ率が(希望的)予想より低かった事に加えて、消費者物価の上昇の方が勢いづき実質賃金はマイナス幅を広げ、「この程度の賃上げでは」という事になったようです。

民間消費支出は腰折れ状態になってしまったようです。緑の柱が赤い柱を越えなくなった様子が8月の結果で見えて来たのではないでしょうか。

平均消費性向は、収入も支出も名目値ですから、手取収入の増加より消費支出の増加の方が小さい(前年同月比)という事で、物価上昇にめげて、買い控え、節約、消費より当面貯金という家計の生活防衛型の心理への転換を反映し始めたようです。

「平均消費性向」が計算出来るのは、収入の統計のある2人以上の勤労者世帯だけですので、それでは2人以上全所帯の方はどうかと見ますと、こちらは消費支出だけですが、矢張り傾向は同じで、前年同月に較べて、名目値の消費支出の伸びが僅か1.1%、物価上昇を差し引いた実質消費支出の伸びはマイナス2.5%と減ってしまっているというのが実態です。

その中身を見ますと、食料への支出は物価上昇に追いつかないものの、やむを得ず5.9%伸ばしましたが、食料品の値上がりは大きく実質値はマイナス2.5%、こうした負担が影響して主要10費目中5費目で前年比の名目支出がマイナスになるという状態です。

10月からはまた数千品目の値上げが報道されていますし、ガソリンや電力・ガスといったエネルギー関連の政府の補助金がいつまで続くか解りません。こうした物価上昇の大きな原因である異常な円安の進行はアメリカの金融政策次第です。残念ながら政府・日銀は無策のようです

状況はアベノミクス初期に酷似して来ました。円安で企業の利益は増えます。政府は賃上げを奨励しますが、賃金上昇は僅少で、家計は実質賃金の低下、将来・老後不安から貯蓄に励み、消費需要は伸びず、消費不振でゼロ成長、政府は何とか経済成長をという事で補助金連発、原資はすべて赤字国債、財政赤字で困った政府は消費増税に走る、一層の消費不振、といった記憶に鮮明な悪循環です。

既に岸田さんは、連合の定期大会に、2007年の福田康夫総理以来16年ぶりの出席で、ご挨拶ですが、賃上げのためか、選挙のためか、本音のところは良く解らないという事のようです。

折しも。円安が長くなりそうだとの観測が言われていますが、政府の日銀も「注視」するだけというのも、これまでの政府・日銀と同じです。

統計は正直で、日本経済、物価の動向、国民の家計の実情、などなどをきちんと教えてくれます。
それなのに、政府の政策は、いつも賃上げ減税や補助金で、総て後追い、問題の核心には政府の手は届いていません。

政府が統計をきちんと正確に理解し、有効に使わないので、統計を作る事務担当の役所も、ついつい杜撰になるという見方もあるようです。

統計は情報の宝庫です。政府には、折角の統計を確りと使いこなすようにぜひお願いしたいと思っています。

貯蓄から投資と言いますが

2023年10月05日 15時19分38秒 | 経済
岸田さんは貯蓄から投資に国民の資産を振り替えたいようです。
コツコツとモノづくりで資産を築いていくより、カネを動かして、カネを稼ぐ方が、国民が早く豊かになれると思っているようです。

この所、株が上がっていましたが、日経平均は昨日までの3日で、2000円も下がりました。今日は上がっていますが、明日からも上がるのかそれとも下がるのか誰にも解りません。

政府が経済運営に失敗すれば、また、アメリカの経済が具合悪くなれば、輪をかけたトバッチリを受けるのは日本です。
岸田政権は失敗しないのでしょうか。今も2年続きの実質賃金マイナスで失敗の最中ですが「株式なら大丈夫です」というのでしょうか。

先日もニュースで岸田さんが「日本国民は2100兆円も資産を持っている。その半分は銀行預金ですから、それを株式投資に持っていけば国民の資産はずっと増える」というような趣旨の事を言っていました。

銀行預金と言っていますが、国民は銀行に預けたつもりでも、銀行はそれで国債を買って、その半分は日銀が持っているのです。

結局、合計すれば、2100兆円の半分はすでに政府が国債発行で国民から借りて使ってしまっているのです。残りの内、400兆円はすでに証券投資で、あとの500兆円は生命保険や年金型の投資です。

国民がこぞって「国債を売って」(預金を下ろして)それで株を買ったら政府はどうするのでしょうか。

NISAの拡充で税金を免除すると言いますが、それで歳入不足の分はまた国債発行でしょうか。赤字国際は無尽蔵の財源だと思っているでしょうか。

投資というのは必ずリスクを伴っているのです。そのリスクはいろいろありますが、国民の財産形成のような長い目で見たリスクというのは国の経済政策です。

例えば、「プラザ合意(G5)」の時に、日本は無条件で円高を容認したようですが、中国は後年、アメリカの人民元切り上げ要求を拒否しています。

日本も、例えば、プラザ合意当時の240円の円レートを200円までぐらいなら認めるが、それより円高にならないようにG5が努力義務を負うとかいう条件を付けていれば、円高不況にはならなかったでしょう。

また、黒田バズーカを、アメリカのゼロ金利政策に続いて取っていたら、75円~80円という円高対応の苦労はなかったでしょう。
さらに、アベノミクスで、非正規労働者の正規化を円安とともに進めていたら、2%インフレ目標は公約通り2年程度で達成、日本経済は健全な成長路線に早期復帰していたでしょう。

こうした政策の失敗が(その度に株価暴落、長期低迷)重なっている事が、国民は利息が付かなくてもリスクのない銀行預金指向(ときにはタンス預金指向)になる最大の要因でしょう。
日本では日本なりの経験から、国民は資産の選択を賢明にしていると考えた方が多分正解で、そうした国としての政策の失敗の反省なしに「貯蓄から投資へ」と言っても国民は納得しないでしょう。

株式評論家は「株は上がる」と言い、政治家は「日本経済は良くなる」と言いますが、国民は現実の経験に基づいて判断し行動しているのでしょう。

例えば、「これからの日本経済は成長路線を取り戻して・・・」と政治家が言っても、NISAなら長期的には間違いない・・・」と政府が言っても、国民は不安感と不信感のないまぜではないでしょうか。

そんな見通しが言えるのだったら、先ず、貯金をしたらまともな利息を付けるぐらいは簡単でしょうから「何でいつまでもセロ金利なのですか」、先ず、そこから始めてくださいというのがより多くの国民の偽らざる気持ちなのではないでしょうか。

それが出来るようになって初めて、それ以上のリターンもあるが、多少のリスクもありますよと言う証券・株式投資の勧誘でないと、何か胡散臭いと私も思っています。

迷惑な円安騒動:国民に説明しない政府・日銀

2023年10月04日 12時15分43秒 | 政治
迷惑な円安騒動:国民に説明しない政府・日銀
円レートが1ドル150円に乗るという所で大騒ぎになっていますが、149円が、151円になっても、もちろん大きな変化ではありません。

何で大騒ぎをするかと言えば、多分、何処かで線引きをしないと、とめどない円安になるのではないかという疑心暗鬼のせいでしょう。

150円になるかならないかでやっと財務大臣が出て来て「政府としては、引き続き高い緊張感をもって万全の対応をとっていく」などと言っていますが、「万全」という言葉の意味が解っているのでしょうか。

「万全」でなくても「十全」でもいいですから、1ドルが110円だったものが、あれあれと言っているうちに149円まで行って、既に日本の物価は上がり、実質賃金は1年以上もほとんどマイナスが続いている状況に拍車がかかっている現実に「対応を取っている」のでしょうか。

今回は為替介入をしなかったのに、マネー投機筋の混乱で一時円安に振れたのかどうか本当の事は解りませんが、また150円の攻防が来たとき国民の生活安定のために何をするのか、何が出来るのか、何もしないのか国民には何も解りません。

「為替は安定しているのが良い」と日銀も政府も言いますが、「注視」したり「万全」と言ったりすれば、それで為替が安定したり国民が安心したりすると思っているのでしょうか。

もともと、今回の円安は、アメリカの労使が、自国の万年赤字体質も考えずに賃上げ走り、賃金インフレを起こし、困ったFRBが自国の都合で金利を引き上げたことが原因です。

嘗ては、サブプライムローンの証券化に発したリーマンショックをゼロ金利政策で救い、それで日本は大幅円高になり日本経済は瀕死になりましたが、いずれもアメリカの企業や労使の外国への悪影響などは気にしない(覇権国・基軸通貨国の責任などは気にしない)行動の結果なのです。

アメリカからの防衛装備品の買い付けにしても、円安分だけ高くなりますから。例の42兆円も3~4割高くなるのではないでしょうか。

何にしても、政府・日銀の言うとおり為替レートは安定が望ましいので、口舌ではなく「実行」で「実効」を上げる事が、国民のために現実に必要なのです。

アメリカに気兼ねして出来ないのではないかという意見も聞きます。日銀は政府の圧力で、国債を購入して長期金利が上がらないようにすることに専念しなければならないという解説も聞きます。

しかし、それらは総て「誰かさんのご都合」の話で、日本国民のためになるようなものではないのです。

日本政府は、日本国民のために存在するはずですから、「日常の国民生活が安定して向上することが」政府の第一の関心事のはずです。
何処か肝心のところで思考回路が歪んでしまっているのであれば、国民はそれを正さなければならないと考えることが国民の義務かも知れません。

日本国民は、アメリカの国民にょりずっと真面目だと思っています。ただ、残念ながら、政策当局が、正確な情報を十分に国民に与えない所から、賢明な判断にたどり着けない所があって、その辺のモヤモヤが、政府支持率の低下という形で、不健全な反感のような形で表れているのではないでしょうか。

日本国民は、世界中での一般国民の現実の行動も含めて、世界から信用されうるだけの資質、判断力、そしてそれを実行する能も持っていると考えています。
国民に、可能な限り正確な状況を含む「情報」を周知することで、日本の経済・社会は、相互の信頼感をベースに、もっともっと良くなるのではないかと思っています。

2023年9月度「日銀短観」上昇から安定へ

2023年10月03日 13時25分16秒 | 経営
2023年9月度「日銀短観」上昇から安定へ
昨日、日本銀行から9月度の「全国企業短期経済観測調査」、通称「短観」(年4回、3月、6月、9月、12月調査)が発表になりました。

すでにマスコミも報じていて、日本経済の状況を示す代表的な「製造業大企業」が前回に続き今回の調査でも好調を維持しているという点が強調されています。

このブログでは前回の調査で、一足先に回復した非製造業をに続いて、製造業も業況回復で、製造業、非製造業の揃い踏みになって来た事を報告いましたが、今回もそのペースは変わらずです。

これは日経平均が高値を維持している事からも感じられるところですが、今回の調査では、大企業の業況回復に続いて、中堅企業、中小企業にも次第に均霑して来たようです。

DI(良い企業の%から悪い企業の%を引いた数字)の数値を見ますと、前6月、今9月、来12月の3期のDIは大企業が5-9-10と改善、中堅企業が0-0-2と水面浮上、中小企業が▲5-▲5-▲2と水面浮上直前という所です。

円安で、原材料価格が上がっているのを自社製品に価格転嫁することは従来大変難しかったようですが、政府の政策、それに世論の後押しもあり製品価格に多少は上乗せしやすくなったこともあるのでしょうか。

国際商品の値上がり、円安による日本だけの輸入価格値上がりで、いわゆる中小下請けのコスト上昇は大変でしょうが、これは皆で分担負担するしかないのでしょう。

短観の回答企業が前提にしている円レートは130円台ですが、今は150円近いといった問題も、政府・日銀は放置ですが、その分は円高になった時、取り返せるのでしょうか。

余計なことを書きましたが、短観では「売上高経常利益率(%)」も調査していて、調査は、上期、下期の「計画値」ですが、今年度の上期、下期の製造業企業の数字は次のようです。
大企業 上期11.22%、下期8.46%
中堅企業 上期5.23%、下期5.26%
中小企業 上期3.88%、下期4.20%
大企業は、上昇期から安定期に、中堅企業は、もう少し改善期待、中小企業は、もうひと頑張りといった感じでしょうか。

設備投資につて、特にソフトウェア投資について見ますと、これは2022年度と2023年度の実績・計画値の対前年度比ですが、次のようです。
製造業大企業 16.8%、18.5%
   中堅企業19.8%、30.0%
   中小企業 4.8%、30.9%
中小企業の意欲が特に目立ちます。

非製造業は、高原状態を続けるのではないかと思われる状態ですが、消費者物価の上昇が異常なまでにエスカレートしているといった意見もあり、一部にこのままでは、再び買い控えから消費不振が経済成長を阻害するのではなどとも言われます。

政府は従来と同じ赤字国債で補助金バラマキの補正予算を検討中のようですが、矢張り弥縫策でない、本格的な経済政策で、活発な企業の状態が続くような日本経済の再建策を期待したいところです。

「持続的賃上げ」への具体的プロセス:試論 <来春闘は10%賃上げを>

2023年10月02日 12時38分14秒 | 経済
岸田総理は「持続的賃上げ」実現を、10月20日開会で調整している臨時国会で本格的に議論したいようです。
ご本人は、安倍さんもやった賃上げした企業に減税という手法を使いたいようですが、これは相変わらずのバラマキで、上手くはいかないでしょう。

賃上げした企業の減税というのは、賃上げの原資を政府が財政赤字で補填するという事です。賃上げできない企業には補填がない、賃上げが高ければ補填も大きい、という事は、企業間格差の拡大を政府が奨励するという事です。

大体こうした難しい問題は、人間の限られた頭で考えるのではなく、経済の基本原則であるプライス・メカニズム(価格機構の機能)を十分に働かせることを基本にして、政策はそれが上手く働かない所や、行き過ぎるところがあれば公正取引の立場から是正するというのが賢い方法です。

そんな立場から考えていきますと、早急に一度大幅賃上げをやって、ある程度のインフレ経済を作り出し、今、値上げのしにくい所でも、マーケットが受け入れれば値上げが出来る雰囲気を作り、価格機構が働きやすくすることが必要でしょう。

そのためには、10%程度の賃上げを労働組合サイドから強力に推進する要求が必要でしょう。

これはこのブログでも取り上げましたドイツのルフトハンザやアメリカのUAWのケースに代表されるような形です。
欧米では物価が上がれば賃上げは当たり前のことですから、自然とそういう形になってしまうのが一般的で、時に行き過ぎて、中央銀行の出番になったりしているのです。

日本の場合は、連合も傘下の単産も、そうしたアプローチには不慣れになってしまいましたから、それでは全労連にリーダーシップをというわけにもいかないでしょうし、一番頭の痛いとこすろです。

通常ゼロ成長で、10%の賃上げをしたら、国際競争力が失われ、大変だという事になるのですが、日本の場合は、今の行き過ぎた円安が多少戻っても、その点の問題は十分克服可能と思われます。

中小企業などから、そんな賃上げをしたら企業がもたない、という意見が出るかも知れません。それに対しては、賃金コストが上がった分は値上げでカバーがOKであることを周知する必要があります。そのあとは「価格機構」にお任せです。

恐らく物価上昇は10%行かないでしょう。実質賃金はプラスになるのではないでしょうか。
そして再来年からは状況を勘案しながら、5%賃上げ程度の安定経済を目指し、「2%インフレターゲット」が生きてくるような経済状態に軟着陸というシナリオになるのです。

この10%(あるいは15%)という、一時的な賃上げは、日本経済を『ニューディール』にするという意味合いのものです。
ゼロサムの中ではニューディールは困難です。一時的にインフレで余裕を作るのです。

今の岸田政権では、こんな政策は多分無理でしょう。賃上げ奨励といっていますから、やれれば結構ですが、補助金政策とは全く異質の政策ですから多分無理でしょう。

出来るとすれば、連合と協力して野党が一致して、来春闘の大幅賃上げ路線を強力に推進、「日本経済のニューディール」、「日本経済社会の長年の停滞を払拭する完全リフォーム」路線を、この際、一気にやり切るつもりになることが必要なようです。
「出でよ新時代のリーダー!!」です。

政治的な面から見れば、日本が改めて成長する経済社会を取り戻すための「政権交代の絶好のチャンス」なのではないでしょうか。

野党が結集して、ちまちました論争より、30年以上も不振な日本経済・社会の「抜本的な世直し」に本気になれば、自民・公明もぬるま湯から飛び出すでしょう。
政治、経済共に健全な日本の再構築のために、斬新、さらに革新的な発想が必要です。

(以上で「持続的賃上げ」のシリーズは一応終了です、有難うございました)