中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の構想が大きな話題です。
アジアだけでなくヨーロッパ諸国、ロシアも参加の意思を表明したようです。主要国で様子見なのは、アメリカと日本ということになっています。
常識的に考えれば、アジアのインフラの整備のためにみんなで出資して銀行を創ろうというのですから、大変結構なことです。アジア開発銀行はありますが、二行になれば、切磋琢磨も行われ、資金供給も活動の多様性も増しより便利になる可能性も大です。
アメリカはブレトンウッヅ協定からの世銀(本部はワシントン)のリーダー、日本はアジア開銀のリーダーで、共に歴代総裁を出しているということで、新たな銀行は屋上屋ということでしょうか、まだ参加を迷っているようです。
AIIBは、中国が最大の出資者になり、本部は北京に置いて総裁は中国から出すということのようですから当然中国がリーダーになるという組織になるのでしょう。
恐らく、中国にしてみれば、IMF・世銀というアメリカ主導の世界金融体制に対抗して、中国主導の金融システムを作りたいという願望があるのでしょう。
大きな問題は2つあるように思います。1つは、贈収賄などの汚職が後を絶たない、また知的所有権などの国際合意が容易に無視される中国主導で、金融のような最も組織のガバナンスが必要とされる仕事が可能なのか、という問題、もう1つは、中国の世界政策をカネの面から裏打ちする組織になるのではないか、という問題でしょう。
すでに日本の政府筋からは、「透明性が確保されうるか」という意見が聞かれ、アメリカからは「中国が拒否権を持つべきではない」といった意見が出ているようです。
問題はいろいろあるように思います。しかし、既にアジア、ヨーロッパの主要国を含め40か国を超える国々が参加を表明していることを考えれば、多くの国の協力で、この組織を立派なものに育て上げることが、中国を一皮むけたものにする可能性もないわけではありません。
現実に、アメリカ主導の世界金融体制が、ブレトンウッヅ体制から大きく変質し、リーマンショックに象徴されるような世界経済への激震を齎しているという現実もあります。
一貫して実体経済の発展に軸足を置く日本が、世界経済の安定した発展のため積極的に発言し貢献する立場からいかなる選択をするか、政府の決断を見守りたいと思います。