tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日本的経営の理念と非正規社員問題

2025年01月31日 10時14分04秒 | 経済

今年の春闘では、賃上げの要求をする連合は勿論ですが経営サイドの代表である経団連も賃上げの必要性を強調しています。

これは大変結構なことで、思い切って少し高めの賃上げをすれば日本経済は随分良くなるとでしょう

更に結構なことは、労使が共に中小企業や非正規社員の賃金の積極体な改善を言って言う事です。 

政府は、もともと賃上げには熱心で、政府の圧力で引き上げ可能な最低賃金についてはこのところ随分無理をして上げてきています。

特に日本社会の「格差社会化」阻止のために重要な、中小企業、非正規従業員の問題ですので、改めて取り上げました。

欧米社会は元々「市民と奴隷」という形を取ってきたようですが、日本には縄文時代から奴隷制度が無かったというのが特徴のようです。恐らく身分差別のない「人間集団」というのが一般的な姿だったのでしょう。

海外から輸入文化が入って来て舶来崇拝の中で制度が作られたのでしょうが、今でも基本的に変わっていないのは「企業は人間集団」という見方です。

欧米では企業は職務の集合体で、その職務に適切な人間を採用するのですが、日本では、好ましい人間を採用して企業の中で仕事、社会性、人間性も磨かれていく、つまり企業が人を育てるのが日本的経営の基本なのです。

明治時代に会社というシステムが入って来て、会社の中では身分制度がありましたが、思い出すのは、戦後の日本経済再建の中で、当時の日経連(現経団連)会長だった桜田武が「戦後、日本企業では身分制を廃し、総て社員とした」と話したり書いたりしていることです。 

その日本の企業社会に今は「正規」と「非正規」という明確な身分がうまれ、しかも非正規の比率が4割近くに高まり、減る気配がないという状態です。

これはどう考えても「日本的経営」の基本からの逸脱ですから、その副作用が必ず出てくると考えてきました。

今それが、就職氷河期の卒業生の中の残された問題という形で、中堅社員の不足、生産性向上への障害、社会の劣化など様々な面で現れているのです。 

たしかに1995~2006年あたりでしょうか、円高不況の日本経済の中では、失業率の上昇を避けることが最優先、雇用の質までは問えない、という現実があったことは否定出来ないとは思います。

しかし、このコスト削減の手法が、為替レートの正常 化以降も続けられたことは。経営者の意識が変化(劣化)した結果ではないかと感じられます。

このブログでは、円高不況で増えた非正規社員は、円レートの正常化とともに復元(正社員化)が起きる予想していました。

残念ながらその予想は、ごく一部の企業を除いて当たりませんでした。そしてようやく今、非正規の賃金問題として気づかれてきたようです。 

しかし、日本的経営の(日本の社会的伝統・文化の)視点から言えば、単に賃上げではなく教育訓練、正規化、生産性向上の積極化です。

遅きに失した感はありますが、日本の経営者が、非正規の正規化問題を企業の社会的責任と考え、本気で取り組んでほしいと思っています。


トランプ大統領とFRB、アメリカ経済と日本

2025年01月30日 17時09分51秒 | 経済

今回のFOMCでは、パウエルさんは政策金利の引き下げはやめて、もう少し状況を静観するようです。

本来ならばFRBは政策金利を引き下げ、アメリカ経済の健全な成長路線を進める方向で考えていたのでしょうが、トランプさんの登場で、一部の国民が熱狂したり、国の政策決定が先行き不透明になったことがあるようです。

トランプさんは、メキシコとの間には物理的な壁ですが、アメリカの周りに関税という名の壁を建設し、国内では石油やガスをどんどん掘って、世界の石油価格を下げれば、アメリカの経済の活性化は可能と考えているようです。

インフレ問題にしても、アメリカの石油やガスの大量産でガソリンやその他のエネルギー価格が下がれば、物価全体が下がるという見方でしょう。

それでトランプさんは、パウエルさんに対してFRBは自分の創り出したインフレを抑えようとして、それにも失敗した、と批判しているのでしょう。

アメリカの石油やガスの埋蔵量がどのくらいかは解りませんが、アメリカが化石燃料を増産して、世界のエネルギー事情にどの程度の影響があるかも未知数ですし、気候変動を意に介せず、パリ協定を脱したアメリカへの批判も予測不可能です。

FRBは最も重要な仕事である金利政策を駆使してインフレを収め、金利を下げてアメリカの経済力を強くすることを考えっているのでしょうら、当面トランプさんの政策を見るよりしょうがないという事になります。

トランプさんは金利には触れませんし、パウエルさんは、アメリカ経済は現状でも良好だから、更なる物価上昇でもない限り、当分の間、金利は現状で動かすべきではないと、トランプ政策を横目で静観という事なのでしょう。

何時までこうした不安定の上の安定が続くのかはわかりませんが、トランプさんは弱いドルより強いドルの方がお好みに合うのでしょう。しかし、現状でもインフレ抑制の効果はあり、FRBが金利引き下げに動ず、当分現状維持のままでもいいのではないかと急がない事を強調しているようです。

こうした状況は日本にとってはどうなのでしょうか。日銀がどう判断しているかは解りませんが、日銀は金利を上げたい方向、FRBは金利を下げたい方向という客観的な事情を考えれば、これは円高の方向を共に促進することになり、 

些か円安に依存し過ぎた日本企業にとっては、急速な円高は望ましくない面もの原所多いでしょう。

政治的にも、経済的にもかなり不安定な要素の多い日本の現状です。出来ればアメリカが当面動かないという事は日本としては政策を取り安くなるという面もあるのではないでしょうか。

日本自身の取るべき政策が、政府と日銀で一致していてくれないと困りますが、金利政策で、徐々に円を強くし、輸出産業は円高への備えを確りやり、アメリカの石油価格を下げるという政策にも便乗し、賃金の引き上げを多少大きくしても輸入物価の下げでコストが相殺されるような状況を作り出す能性も出て来るのではないでしょうか。結果は実質賃金の上昇になります

国際投機資本も動きにくい中で、日本の低賃金と低金利を引き上げるチャンスにすることも可能ではないかなどと考えるところですがどうでしょうか。


リュウキンカ開花、昨年より遅れる

2025年01月29日 20時53分59秒 | 環境

昨日「リュウキンカ」(立金花)の写真が撮れました。

昨年と同じ場所に3輪、一つの株に1輪ずつ花をつけました。

13日に日本水仙を撮った時は、小さな丸い蕾を1つ発見しただけでしたが、昨日は、すでに3輪咲いていました。

25日の土曜日、夕刊を取りに行った際、薄暗い中で1輪咲いたかな、明日確かめようと思っていましたが一昨日27日に見た時は、寒かったせいか、まだ緑色の残った花弁が2,3枚不揃いに出ているだけで「霜にやられたのかな残念!」などと思っていました。

ところが昨日の午後、確かめに行きましたら、3輪揃って元気に咲いているのでびっくりしてさっそく写真を撮りました。

昨日は、大寒なのに春を思わせる暖かさでしたから期待していったのですが、リュウキンカは期待に増して元気に咲いてくれていました。

後から、昨年の写真と比べてみましたら、昨年は4輪で、塀際に1輪でした。塀際の1輪を除くと、あとの3輪は昨年の同じような配置で、撮影の方向が反対という事になっていました。下は昨日の写真です。

ついでに、ブログの日付を見ましたら、昨年は1月30日で、最初の1輪は1月19日開花と書いてありました。

今年は1月13日には、まだかと小さな蕾が1つ発見出来たばかりで、27日にもまだ完全に開いていない状態でしたから、今年の開花は、昨年より数日遅かったようです。

しかし、年々のブログを見ますと、かつてはリュウキンカの開花に気付くのは2月の中旬だったという事が解ります。

矢張り温暖化は、確実に進んでいるようで、気候変動は、日本列島の桜の開花時期のように、我が家の狭い庭の片隅のリュウキンカにも同じ影響を与えて来ていることが解ります。

アメリカではトランプさんが、アメリカが石油やガスを掘りまくれば、アメリカの経済は立ち直り、世界の戦争も終わると言っていますが、片方で、アメリカ湾(メキシコ湾)のハリケーンやカリフォルニアの山火事の被害が巨大化し、アメリカ経済に甚大な被害を齎しているという現実もあります。

気候変動には解らない事もいろいろありますが、敢えて危険を冒さないのも人間の知恵ではないとも思うところです。

しかし、これから4年間、アメリカのやることは、人類社会に無理な実験を強いるようなことも多いようですので、人類は、せめてその実験がどんな結果を生むかを確り見て、将来に役立つ知識や知恵を育てる材料にしましょう。


「民主主義」に「金主主義」を入れますか?

2025年01月28日 12時10分38秒 | 政治

今、世界は民主主義と専制主義(独裁主義)の対立が.露わになっています。しかし個々の人間、その複数形あるいは集団、一般の人々を包括する「民衆」の意見を聞けば、民主主義の方が好いというようです。

誰もが独裁国だと思っているロシア、ベラルーシ、ベネズエラなどでも、リーダーは選挙で選ばれることになっていて、形は民主主義です。

では、独裁主義も民主主義の一形態かといいますと、そうではないですね。形は同じでも中身は全く違う事は誰もが知っています。

建前だけでも民主主義にしないと通用しないという事なのでしょう。

やっぱり民主主義がいいという事になるのですが、いま日本で問題になっているのは、民主主義に金主主義が入って来たという問題のようです。  

金主主義も民主主義の中の一形態と日本では理解されてきているようですが、やはり「人間はカネとは違う」という事が大事のようです。

民主主義というのは、人間の頭数がすべてのベースで、投票して多数決、過半数という「生身の人間の数」が物事を決める基本だという考え方です。

人間の社会ですから、これは基本的に合理的ですが、勿論問題もいろいろあります。

例えば、権力や詐術で投票の結果を変えてしまうといった事もやられます。こうして選ばれたリーダーは往々独裁化して、その後の選挙では人々は権力で抑え込まれて独裁性が成立します。

多くの人間に間違った考え方を持たせるという方法もあります。その場合は間違ったリーダーが生れて、人々が後から気が付いて直さなければなりません、その時は社会が混乱します。

自由経済社会の中では、人々にはカネへの関心が強まっています。カネも人間と同じくらい大切、さらには人間より金が大切という人も出てきます。

リーダーになる人もカネが大事だと思えば、人間の数と同様に、あるいはそれ以上にカネがだいじで、具体的にはカネを出してくれる人を尊重することになったりします。

人間の頭数で決める民主主義に、カネにもあたかも投票権があるような、カネの影響が大きい状態になってきます。

そして「政治にはカネがかかる」といった言葉が生まれますが、これは実は選挙の得票には金がかかる」という意味なのです。 

日本にはイーロン・マスクさんのような人はいませんから、カネを出してくれる企業、団体が頼りになり「企業・団体献金」が票を集める手段の資金源として一般の人間より重要になるのです。

こうして総選挙ではカネで票田を耕し、無関心層は棄権してくれることが最も望ましいという(投票率50%)政権が安定政権だったようです。

譬えて言えば、カネに間接的な選挙権を認めるような事は「民主主義」の中に「金主主義」を取り入れ、民主主義の本質を変質させることなのでしょう。


消費者物価指数、反転上昇継続

2025年01月27日 13時43分36秒 | 経済

キャベツの値段が倍以上になったとか、収穫時のキャベツ畑で、一夜にしてキャベツが全部盗まれたとか、日本でそんな事が起きるのかと情けなくなるようなニュースが入ってきます。これもキャベツの値上がりと同時に日本社会の劣化現象の結果のように感じられます。

キャベツから電線まで盗まれるような社会の劣化問題は重大事ですが、物価問題でいえば、生鮮食品の価格の変動も些かひど過ぎる気もします。現状、生鮮食品とお米の価格上昇が消費者物価指数を押し上げています。

キャベツの価格は、天候が良ければ暴落し、産地ではトラクターでひき潰す事もあるように、天候次第という面もありますから、この所政府は消費者物価指数の発表の際には「生鮮食品を除く総合」の数字を発表しています。

ところで、12月の消費者物価指数は、生鮮食品の値上がりもありますが、エネルギー価格の上昇、お米の値段の異常なほどの上昇もあり上昇基調が続いています。

   消費者物価3指標の原指数の推移(総務省)

 

上の図の原指数の動きですと昨年9月に、ようやく物価も安定してきたなと思った途端、その後は急角度の上昇です。

日銀も今回の利上げは物価が安定してきたからというより、インフレ防止という意味が強くなりそうな状態です。

トランプさんが石油の値段を下げろと言っていますから、エネルギー価格があまり上がらないかもしれませんが日本ではお米の価格が対前年比で10月は60%、11月は64%、12月は66%と上がり続けています。漸く備蓄米放出などと言い始めましたが、政府はお米の価格を下げる気はないようです。

お米の値段が上がれば、すでに、すし、おにぎり、牛丼などなど値上上がりが始まっていますが、大手の宅配弁当なども3月から値上げを考えているようです。高齢者の家計は大変です

12月の動きを前年比で見ますと下の図です。

   消費者物価3指数の対前年比(総務省、%)

 

「総合」は3.6%、「生鮮食品を除く総合」が3%、「生鮮とエネルギーを除く総合」が2.4%と最も落ち着いていますが、これからが問題でしょう。

お米の値段は、あまり下がりそうにありません。すでに9月段階で農協の、農家からの買取価格が昨年より3割上昇と決まっていて、その結果が小売価格の6割上昇という事になったようです。

主食であるお米が6割も上がって、政府やマスコミが大騒ぎしないという事は通常ならあり得ない事だと考えれば、これも政府の政策の裡なのでしょう。

春闘では、大企業の一部の6%賃上げ方針や、連合の中小企業6%賃上げ目標、単産労組の発表する賃上げ基準がベア中心になり高めになって来ています。結果にもよりますが、自家製インフレの懸念もあります。

遅きに失した感もありますが、デフレ脱出はこれで完成という事になりそうです。

デフレ脱出で政府は万歳かもしれませんが、デフレ脱出はインフレにすることではなく、実質経済の成長が目標ですから、取り違えの無いように願いたいものです。


日銀、平穏裡に政策金利を0.5%に

2025年01月25日 15時49分48秒 | 経済

昨日、日銀は政策金利を0.25%引き上げて0.5%にすることを決定しました。昨年8月の0.25%へのホンの小幅の引き上げが、国際投機資本にとってサプライズだという事で、日経平均の大幅下落、1ドル140台への円高を招いた時とは様変わりの反応の無さです。

そういう意味では、今回の利上げは、日銀としては、経験からしっかり学び、余計な混乱を避けるという意味で、様変わりの進歩でしょう。

日本経済としては、金利の正常化(適切な水準までの引き上げ)を実現して、経済活動を反映し、経済活動に影響を与え、金融政策が機能するような形になるのが目標ですからまだ先は長いようです。

今回の引き上げは、前回より実体経済に与える影響は大きいと思われます。差し当たって影響を受けるのは住宅融資の変動金利の引き上げでしょうか。一方、預金の方は普通預金の金利も引き上げられるようです。

今までは、日本の借金王である日本政府が、殆んど金利のつかない金を国民から借りて大変な楽をし、国民は貯金をしても利息が付かないので、その分自分で利息を付けるという意味も含めて、消費を抑え、貯蓄志向というのが家計の動きでした。

まだまだ少しですが、政府が国民に利息を払う事になったのは結構なことで、多くの家計は更なる利上げを望むでしょう。 

ところで、今回の金利引き上げで、マスコミが報じている中に、ひとつ、今までの説明と全く逆の要因が挙げられています。

勿論それは日銀から説明があったからですが、それは、金融機能の正常化の方向を示すとともに、日本経済が、今までの賃金の上がらない経済から、賃金の上がる経済に変わっていく動きを示唆、予測、奨励するといった、日本経済の新傾向についての見方に関わると感じるところです。

昨年8月の政策金利引き上げについての日銀の説明は、消費者物価指数の上昇が、2%程度まで収まったので引き上げに踏切るというものでした。

元々物価が下がったら金利を引き上げる理論は、経済学にはありません。日本の場合は特別で、インフレが目標の2%まで下がったら経済が正常化したと考え金利の正常化(ゼロ金利脱出)が可能になるという特別の考え方でした。 

昨年8月の引き上げは、そうした日銀の認識の結果でしょう。ですから日銀はその後も引き上げの機会を狙っていましたが、国際情勢から国際投機資本を刺激しないよういに時期を待ちました。

トランプさん再登場、ドル高指向、NYダウ上昇という環境もあって円高も進みにくく、国内では、今春闘の経営者の賃上げ指向も強く、消費者物価再上昇で周到な対外意思表示も行われ、結果は思い通りという事でしょう。

中でも、お米を始め食料品価格の上昇で「インフレ懸念」という説明が入って来ました。インフレ進行を抑えるための賃上げというのは世界共通の認識です。物価が下がったから金利引き上げという考え方は消えて来ています。

今回の金利引き上げで注目すべきは、日銀がその本来の意識である貨幣価値の維持(インフレ防止)を指摘している事、その背後には賃金が上がり始めるのではないかという意識や、もしかしたら農協のコメ買取価格の引き上げのように、農業政策は旧態のままで価格だけ上げていくという日本の主食であるコメにつての政府の姿勢といった問題があるようにも感じられるところです。


新自由主義経済を高見の見物

2025年01月24日 14時04分35秒 | 経済

ソフトバンク・グループの孫正義さんやオープンAIのアルトマンさん達がアメリカで最大5000億ドルに上るAIインフラの整備、10万人の雇用を生み出す投資をするという事で、トランプさんが大変喜んでいるというニュースがありました。

孫さんも凄いなとびっくりしていましたら、今やトランプ大統領の側近とみられているテスラのイーロン・マスクさんが、「彼らはカネを持っていいない。孫さんの持っているのは100億ドル程度」と成功を危ぶむような発言をしたいうニュースが入ってきました。

マスコミは、さっそくこの話を取り上げ、トランプさんとマスクさんの間に意見の相違が・・、といった報道をしました。

その後の報道ではトランプさんは、(人間関係もあるだろうが)そんなことは問題ないと気に留めないという事のようです。

トランプさんにしてみれば、アメリカに金を注ぎ込んでくれて、雇用を生み出してくれるという企画は大歓迎という事のようです。

こんなニュースを聞いて、つくづく感じたのは、最近の話題の主、新自由主義経済のチャンピオンたちの金銭感覚と実体経済の金銭感覚とのズレの巨大さです。

調べてみるとイーロンマスク氏の資産は4500億ドルを超えて2位のアマゾンのベソス氏に2000億ドルの差をつけたとか言われています。

マスク氏の資産の元は電気自動車テスラでしょう。ほかにも宇宙船のスペースX や“X”さらにAIのプロジェクトも在りますが、事業そのものでそんな巨大な利益が出るような段階ではないようです。

そこでテスラの時価総額をみましたら、驚く勿れ1兆4000億ドルです。それも、トランプさんが当選して70%増えた結果だそうです。

マスクさんがテスラの株の何%を持っているのか知りませんが、トヨタの時価総額の3300億ドルに比べてその巨大さが知られます。

ついでに車の生産台数で見ますと、トヨタは世界で約1000万台、テスラは僅か181万台(2023年)という事で、この差にまた驚かされます。台数は年に3割ほど伸びているようですが、倍になっても知れています。

こうした比較から解ることは、マスクさんの資産は、テスラの生産、販売という実体経済の利益でで成り立っているのではなく、株価の値上がりで生じているものらしいという事です。

経済学的に言えば、テスラ社の将来の利益と株価の値上がりの期待が織り込まれた株価の上に載っている資産価値という事でしょうか。

嘗て、アマゾンが創業した頃、長い間配当もないのに株価が上がって不思議がられたことがありました。アマゾン発展の今その回答が出ていると言えるのか計算はしていませんが、テスラの答えはだいぶ先でしょう。

電気自動車が大事のマスク氏が、ガソリン車重視のトランプ大統領にすり寄ったのも何かあると勘繰る人もいるようです。

という事で、最近の新自由主義の経済は、実体経済と次第に縁遠くなって、付加価値を作るよりも、思惑や期待感、人気と射幸心が入り混じった巨大なマネーの世界が、政治にまで影響力を持つ巨大な人工マネー空間として広がるという姿になっているようです。

ラストベルトを復活させるといトランプさんの実体経済のレベルでの公約が、新自由主義経済を使って成功するのか、地べたからですが、「高みの見物」と洒落込んでみるのもいいかなという所でしょうか。


2025春闘:賃上げ「も」重要ですが

2025年01月23日 14時27分17秒 | 労働問題

一昨日、連合、経団連の会長が会談し、2025春闘のキックオフとなりました。今年はどんな展開になるのでしょう。

時代の流れとしては23年春闘から、経団連サイドに、不況脱出には賃上げも必要なのではという「経済と賃金の関係」への気づきが生れ、昨春闘でそれが一気に加速し、今春闘では、労使ともに、それが良かったようで、継続しようという雰囲気でしょうか。

日本の労使関係らしいところは、そうして雰囲気の中でも連合は背伸びをせず、要求基準は、基本は昨春闘と同じで、中小企業だけ+1%の6%とし、経団連の方も賃上げの「モメンタム」を重視し、中小企業の賃上げにも気を使うという相互理解の面が見えることです。

企業経営の実態の方は、すでに、賃上げ6%を発表する企業もあり、特に大企業の収益状況は日本経済の混乱にも関わらず好調を保つ所も多いようです。

経団連も、種々やりにくい面もあるのでしょうが、経営者は本来、従業員の生活をより良くすることも使命と考えるのも日本的な伝統です。

日本中の企業の代表としては、連合と共に中小企業の賃金の向上にも努力するのならば、従業員を育てて生産性を上げ、良い品やサービスをより安価で提供するという企業の社会的責任を果たす意味も大きいでしょう。

そう考えれば、親企業はサプライチェーンをなす下請け企業を育てるという責任があるのでしょう。中小企業の6%要求は高過ぎる発言をする前に中小の生産性向上に大企業が協力し努力する姿勢の徹底も重要と思われます。

連合は、定昇程度という円高不況期を脱してから、定昇+2%(実質経済成長率)という要求方式で、少し経営サイドにとって甘すぎたようですから、それに政府・日銀が掲げる物価上昇2%をプラスするとか、円安になったら、円安で日本のコストが下がった分を勘案するとかという、労働サイドとして合理的な範囲の目一杯の要求基準を決めてもよかったのではないかと思います。

経営者の中にも、かつてはラッカ-プランのように、経営の成果(付加価値)は労使が等分する(労働分配率一定)という考え方もありましたが、近年は先行き不安だから、内部留保を厚くし、BPRが1倍割れで安心したい気もありますから、もう少し頑張って要求してみてもいいかなという気がします。

ただ、これまでの労使の話し合いの中で、一番気になるのは非正規労働者が40%いるという問題です。経団連も連合も非正規の賃上げと言いますが、本当に重要なのは、「正規の正規化」です。

労働力の4割が非正規という労働力構成では嘗ての15%程度だった時代に比べて日本産業の生産性が上がらないのは当然です。

必要なことは、非正規を出来るだけ「正規化する」ことでしょう。正規化とは、正規の教育訓練をして、生産性を上げ、正規の賃金を払うことです。

就職氷河期、非正規でキャリアを始めた世代は、50歳になっても、非正規を転々として80:50問題を作り出しています。

このブログではアベノミクスの初期から非正規の正規化を指摘してきましたが、大企業でさえ、コストの低い非正規を多用する癖が治りません。

今は就職氷河期ではありません、可能な限り正規採用し、教育訓練をしましょう。非正規社員は教育訓練をしつつ正規に格上げしましょう。

非正規社員の比率が下がれば、当然、平均賃金は上がりますが、同時に従業員の平均能力も上がり、生産性も上がるのです。これが本来の人材活用です。

それが出来て日本の雇用構造は本来のあるべき姿に戻るのです。これは日本の労使に残された宿題です。忘れられては困るのです。


開けてびっくり「トランプ関税」

2025年01月22日 17時29分43秒 | 経済

トランプさんの大統領の就任演説の全文が出ていたので、さらっと目を通しました。

なんとまあ独りよがりで、いい事ばかり並べて、出来るか出来ないかは別、勿論他国の都合などは無視です。トランプファンが喜びそうな言葉を並べて、その都度拍手と歓声が上がり、トランプさんの満足そうな顔が目に浮かびます。

ところが。関税のところに来て「ええ、これ何、こんな事「あり」ですか」とびっくりしました。さっそく原文にも当たってみましたが、まさに驚くべき発想、恐るべき発言です。日本語にすれば以下の通りです

「私は直ちにアメリカの貿易システムのオーバーホールに取り掛かる。アメリカの労働者と家族を守るためである。アメリカ国民に課税して外国を豊かにする代わりに、外国に課税してアメリカ国民を豊かにする。その目的のために対外歳入庁をつくる。そこですべての関税、税金、その他の収入を集める。おそらく膨大な額の金が海外から財務省に流れ込むことになろう。」(訳tnlabo)

この意味するところでは、関税を払うのはアメリカの消費者ではなく輸出国という事になります。

日本政府は輸入の穀物や肉類に関税をかけています。我々の買うアメリカ産の穀物や肉類は関税の分だけ高くなっていて、関税分は日本国民が負担しているのです。

これが関税の常識で、輸出国の方が関税を払うというのは通常あり得ないのです。大抵の解説は関税は輸入サイドが払うものと書いてあります。

しかし輸出関税というのもないわけではありません。ただ目的が全然違います。自国の貴重な天然資源などを安く輸出して、国に損害を与えないように、輸出業者に関税を払わせるというのが輸出関税です。

上のトランプさんの言う関税は、例えば、日本がアメリカに200ドルの車を売ろうとしたら、これに10%の関税をかけます。10%=20ドルの関税は、アメリカの消費者がその車を220ドルで買うのではなく、日本国か日本の輸出企業がアメリカ政府に「関税」という形で20ドルを納めなければならないという事になります。

トランプさんに言わせれば、アメリか市場に入らせて頂いてありがとうございますというお礼か、アメリカ市場に乱入してきた罰金という事なのでしょう。

冒頭に「なんとまあ独りよがり」と書きましたが、これは全くの自己都合で、国際ルールでは認められるものではないでしょう。

日本がアメリカからの輸入品にこれをやったらアメリカは何と言うでしょうか。

以上、この点についてのマスコミなどの指摘が見られないので、皆様のご意見をお伺いしたくて書いた次第です。


「原資料」と「確認」とを心掛けましょう

2025年01月21日 14時06分55秒 | 経済

このブログでは数字をよく使うようにしています。

数字を使っての説明は、比較的に説得力が強いからです。しかも、なるべくグラフ化して使います。視覚に訴えることは印象を強くします。見て頂く方に、出来るだけ正確な情報を確実に伝えたいと考えるからです。

使用する数字を選ぶ時も、グラフ化するときも、見る方が出来るだけ客観的に受け取れる様にする事も心がけます。

こんなことを書きましたのも、若いころ、当時の文部省の統計数理研究所に、仕事が終わってから通い、そこで最も基礎的なことを教わったからです。

講師からは「検算しない数字は数字ではない」から始まって、「数字は必ず原典に当たり、出所は明確に」とか「グラフにするときは、出来るだけ一部分でなく全体が解る形にせよ」などなど、「そんな面倒な」と言ってはいけないという趣旨の発言が聞かれました。

若い時確り言われたことは覚えているもので、ブログを書く時に役立っています。

このブログが言われた通り出来ているか自信はありませんが、物価や賃金、雇用、消費支出関係やGDPなど発表されるたびに原資料に当たり、そこから数字を引き、グラフは出来れば長い期間のものを作るように努めます。    

時に、統計資料が不正確なこともあります。毎月勤労統計の集計に誤りがあったり、建設受注統計に杜撰な集計があったりしますと、批判の口調も厳しくなります。

安倍さんや、菅さんの様な総理大臣が伝聞らしい根拠のない数字を言われた時は、日本の行方を惑わせると直言しなければなりません。

ところで、こういう数字についての作法は、数字を使う人が長い経験の中で積上げて来た知恵なのでしょう。

話は変わりますが、今を盛りのSNSでは、確認していない情報を平気で公にするような人が結構いるようです。一部分だけ取り上げて、とんだ誤解の発生につながることも多々あるようです。

特に視覚に訴える動画が大きな影響力を持つようですが、かつて人々が統計数字を使い始めた時も、数字を使う際のルールが固まるまでには、多分それなりの分別と時間が必要だったのでしょう。

ネット上で情報を伝えるという分野は、今はカオスの中で、一部にルール作りが模索中という状態なのようです。

人間の知恵も進歩していますから、ネットを使う際のルールも 、世界共通の問題として、進歩した知恵で早くまとめ上げてほしいと思うところです。


関税で赤字経済は救えるか:実験開始

2025年01月20日 14時35分15秒 | 経済

アメリかでは1月20日、日本時間では今夜、トランプ大統領の第二幕、トランプⅡが始まります。

不法移民対策が当面する最初の課題でどこまでやるかが焦点のようですが、経済問題としては、関税の引き上げが当面するトランプⅡの主要課題という所でしょうか。

ご承知のように、アメリカは1970年代以来一貫して経常収支の赤字国です。この問題に関しては、トランプさんは、世界の多くの国がアメリカにものを売って儲けている。しかしそうした国々は、自国の利益ばかり考えて、アメリカを利用するばかり。一方アメリカは市場として利用されるばかりで、結局損ばかりしている。

この状況を正すためには、アメリカとして、安価で入って来る輸入品に関税をかけて、アメリカを市場として利用するばかりの国々に対抗しなければならないと言うのです。

 という訳で日本を含めアメリカに輸出をする国に対して1律10-20%、中国には60%の関税をかけるというのが大統領選挙戦の時からの公約です。

アメリカは元々自由貿易の推進を主導した国で、関税引き下げに世界中を巻き込んで、それが世界経済の発展につながると主唱してきた国です。

もともと戦後はアメリカの経済力が強く、穀物から家電製品、自動車、航空機まで、みな競争力がありましたから、日本など他の国はアメリカから輸入していれば国内の生産力がつかないので、輸入品に関税をかけて国内産業を育成したのです。お米はその代表ですし、今でも小麦や大豆、トウモロコシ、牛肉などは、アメリカには敵いません。 

しかし、電化製品や自動車などは日本や中国などの製品の方が安くなり、アメリカは中国や日本の製品を輸入し、貿易は赤字に転落です。

経済の原則は、消費者は割安(良くて安い)のものを買うという事です。トランプさんは、政界中がアメリカに輸出して儲けていると言いますが、アメリカの消費者は、良いものが安く買えて喜んでいるのです。

かつてアメリカが主導した自由貿易で、日本や中国が力をつけて来たのですから、今度はアメリカが力をつける番なのでしょう。トランプさんはそのために関税を引き上げてラストベルト地帯の復活を目指しているのでしょう。

関税は、輸入品に負けているアメリカの産業が復活するための防波堤のようなもので、関税をかけている間に、アメリカが産業の競争力をつける努力をしなければならないという事でしょう。

本当に大事なのは、競争力回復の努力なのですが、その辺りのトランプさんの意識が解りません。

トランプさんがイーロン・マスク氏を重用しているようですが、マスク氏の様な起業家が、沢山生れて来れば成功の可能性は大きくなるでしょう。

トランプさんの実験が成功するか、日本も「注視」しましょう。成功しても、失敗しても,学ぶことはいろいろあると思います。


人工知能と人間の知恵

2025年01月18日 22時23分35秒 | 文化社会

この所のAIの進歩は、ますますそのスピードを上げてきているように思われます。

人間がやるよりAIに任せた方がずっと要領よく仕事をこなしてくれるという

分野がどんどん増えてきているようです。

AIの方が、人間より優れている点は基本的に2つあるように思われます。一つは、人間は忘れるが、AIは一度覚えたことは決して忘れないという点でしょう。もう一つは考える速度、典型的には計算する速度が圧倒的に早いという点です。

この2点は、現状でも人間はAIに全く敵いません。人間は、沢山知識を吸収しても適度に忘れて、本人が重要なものを中心に記憶しながら、重要でないものは整理するようです。しかし時には重要なものも忘れたり、忘れたものが重要になったりします。

例えば、2の10乗根は≒1.072と覚えていても、計算できる人はほとんどいないでしょう。計算方法を覚えていても、大変な時間がかかりそうです。しかし何千円かの関数電卓が1秒もかからず計算してくれます。

でも、それで人間が困ったという事はありません。人間はそれを使って仕事を早くやって助かっているのです。

同じようなことは人間の「体力」については産業革命のころから起きています。蒸気機関は人間より桁違いの力があります。それ以前、人間は自分より力のある「馬」を使っていました。蒸気機関は馬より力があるので馬何匹分の力という意味のHP、馬力を単位にして、馬は競馬と乗馬クラブでしか使わなくなりました。

それからガソリンエンジンが出来、電気モーターが出来て、自動車、飛行機、新幹線、人間の力ではとても出来ない事が出来るようになりした。人間は、力仕事は機械に任せ、自分の力はスポーツを楽しむのに使っています。

勿論、馬が要らなくなったように、人間がいらなくなるという心配もありました。しかし結果は、新しい仕事が沢山出来て、却って人手不足です。

体力が機会に負けても、人間はそれを使って、とてつもない発展をしてきたのです。

体力の次は頭脳です。これはホモ・サピエンスが格段に優れていて、地球の支配者になっています。その頭脳に機械が挑戦を始めたのです。まず計算機からコンピュータに発展してきました。

人間は、「体力」の時と同じように、それを使って自分の頭脳だけでは出来ない計算から多様な文化活動まで頭脳的な活動の領域も、どんどん広げて来ています。

ゲーム、アニメといった分野は日本の得意技になっています。俳句や短歌も作りますし,囲碁も将棋もやります。小説を書いたり、絵も描けます。ただし、上手か下手かは人間が決めるのです。

仕事の分野では、速記録や講演内容の要旨、討論や交渉の記録も人間より早く出来ます。当然事務方の人間は大幅に減るでしょう。しかし結果の適否を判断するは人間で、AIは部下の役割です。

ところで、AIという機械は何処まで進歩するのでしょうか。それは人間が決めることなのです。自分(自分たち)の役に立たない機械は、人間は作らないだろうと思うからです。

お蔭さまで、人間は楽しむ分野が大きく増えて、(戦争などしなければ)もっともっと、いろいろなことに楽しめるようになると思います。


ガザの停戦合意、一層の進展を望む

2025年01月17日 13時52分30秒 | 国際関係

1月15日、ハマスとイスラエルがガザでの停戦に合意したというニュースが入ってきました。

何か世界中がホッとした感じを受けましたが、その後の進展は容易でないようです。イスラエル軍のガザ地区への攻撃は、その後も続いているようですし、イスラエル政府の正式承認の手続きも、必ずしも順調ではないようです。

停戦の合意のニュースは、ガザは勿論、イスラエルの人々も歓迎と報じられていますが、為政者の、特にイスラエル側の為政者は、必ずしも心から歓迎という様子ではないような感じも受けます。

停戦の合意の中身は、1月19日から6週間、42日。その間に人質の解放を進め、停戦から16日の間に、その後についての合意を得るというという事になっているようですが、まだ予断をうるさない情勢のようです。

しかし、ガザの停戦は世界の世論の望むところですし、バイデン大統領の努力、カタールの仲介の進展と、トランプ次期大統領の、1月20日の就任までに解決するという発言など多様な動きの中で進んでいるということで、特に、イスラエルのネタニヤフ首相の支援者と言われるトランプさんの影響は大きいようです。

世界中のほとんどの人々が心を痛めているガザとウクライナという地球上の2個所の戦闘状態について。トランプさんは早期に止めさせるという自信を口にしていますが、トランプ流の解決方法でも、人間同士の破壊や殺戮が解決するのであれば、それは大きな前進という事も言えるでしょう。

今回のガザの停戦も、トランプさんは自らの手柄と自賛しているようですが、この動きが暫定的な停戦から本格的な戦争の終結に繋がれば世界にとって最も望ましい事でしょう。

しかし、そこまでの到達は、現実には至難の業のように思われます。もともとネタニヤフ首相は、ハマスの殲滅を望んでいるように見受けられます。おそらくパレスチナの地は、旧約聖書によれば、ユダヤ人に与えられた約束の地だという事で、それが本来の姿だという事でしょうから、そういう人間が一国のリーダーになっているという問題は、今日の民主主義の原則に従えば、イスラエルの人たちが、そういう人を選ぶのか、それとも人類社会の平穏な所謂多様性の共存を認める人を選ぶのかによって決まる問題なのでしょう。

イスラエルの人たちがネタニヤフ氏をリーダーとして選び、トランプさんが、イスラエルを支援するアメリカのリーダーとして、ネタニヤフ大統領を強力に支援するという関係ならば、この問題の本質的な解決はかなり困難なのではないでしょうか。

ハマスにしてみれば、これ以上の破壊とパレスチナの人命の損傷は避けたいという意味で停戦に合意したとしても、人質の変換が終了した後に何が待っているかという巨大な危惧の払拭は、恐らく不可能でしょう。

トランプさんが、いかなる判断で停戦の成功を自賛しているのかは解りませんが、トランプさん、ネタニヤフ首相、ハマスの人々の間に、「みんな同じ人間なのだ」というような意識が生まれる可能性はないのでしょうか。


アメリカは国全体マネーゲームに生きる国

2025年01月16日 13時51分12秒 | 経済

前回は、日本では政府が「貯蓄から投資へ」と課税免除までして株式や投資信託への乗り換えを奨励しているのですが、家計の動きははかばかしくないという状況を見てきました。

政府がいつも引き合いに出すのは「アメリカでは家計貯蓄の半分以上が株式や投信といった投資で、日本の場合は20%程でしかない」という比較です。

そして、もっと積極的に投資での運用を増やせば、家計の所得は増えて、生活は楽になるし、消費も増えて経済成長に役立つから、NISAという制度まで作って、免税までしてあげているのです、という事のようです。それでも日本の家計が政府の方針に乗るのには時間がかかりそうです。

日本の家計が貯蓄優先の理由は多分2つでしょう、1つは、日本には「あぶく銭」(投機などで労せずに儲けた金)をさげすむ文化があったこと(もう過去形ですね)、もう1つは「相場に手を出したら身の破滅」という失敗の経験が多いことです。

森永卓郎さんではありませんが「投資と言っても基本は投機、つまりはギャンブルなのですよ」と損失を身につまされている人が結構多いようです。

株などで儲ける人は大金持ちで眼の利く人、素人が宣伝に乗って手を出せば結局は元も子もなしで終わるという経験が多い現実のようです。

ではなぜアメリでは家計の金融資産の半分以上が株式や投資信託で運用されているのでしょうか。

アメリカでは、多くの人や家計が、株式投資や投資信託で貯蓄を運用し成功している人が多いからでしょう。

というのは、1970年代以降のアメリカというのは、マネーゲームに生きる国になってきているからでしょう。アメリカは経常収支では万年赤字の国です、収入より支出が多い国なのです。赤字部分は資金運用で埋めなければならないのです。アメリカには「あぶく銭」という概念はないようで、何で儲けてもカネはカネで違いはないようです。

所謂金融工学の発展で見るように、アメリカはカネでカネを 稼ぐマネーゲームでは圧倒的に優れた国です。しかも巨大な金融資産を持っていますから、ゲームをすれば殆んど勝つでしょう。

このブログでも「国際投機資本はストーリーテラー」などと書いたことがありますが、彼らが相場のストーリーを作れば、世界の投機資本が提灯をつけるのです。

W.バフェット氏が「これからは日本株」と言って本当に日本株が大幅に上がったのはついこの間の話です。

やっぱりアメリカの家計は、アメリカでは株や投資信託で運用した方が銀行預金より圧倒的有利という経験を持っているのでしょう。

 

やはり、日本の家計が気軽に投資に手を出すのには、成功体験の積み上げが必要なようですが、現状を見ても、成功体験は、なかなか積み上がらないようです。


笛吹けど! 貯蓄が投資に向かわない

2025年01月15日 19時30分13秒 | 経済

日本経済が高度成長からバブルのころにかけても、「貯蓄から投資へ」とか「銀行よ、さようなら、証券よ、こんにちは」などと言われたことが度々ありました。大体は,経済成長が順調で、株式市場が好調な時だったと思います。

日本の家計は真面目で、いつも将来の生活のことを考え、蟻とキリギリスの譬えでいえば蟻型で、頑張って貯蓄をしてきました。

ご存じのように、その貯蓄が積み上がり、今では2200兆円程になっています。日本のGDPが600兆円ですから、年間所得の3倍以上の貯蓄です。

この貯蓄を、出来ればもっと増やしたいと思うのは人情ですから、そこを狙って、銀行と証券会社は競争します。

銀行の売りは「元本は確実に保証します。それに利息が付きます」で、証券は「証券に預ければ多分銀行より増えます。時に減り危険もありますが・・」です。安全優先か、利得優先かの競い合いです。

ところがこの所は銀行預金に金利がつかなくなって、メリットは元本保障だけの様相です。そんな状況の中で政府は、何故か「貯蓄から投資へ」というキャッチフレーズでNISAを代表に、庶民の家計でも可能な少額の証券投資について、配当も値上がり益も課税免除という特典を付けて推奨を始めたのです。

確かにその効果はあって多少の貯蓄はNISAに動いたようです(家計の証券投資が23→24年で4%ほどシェアが増えたようです。

岸田前総理は、アメリカで日本の家計貯蓄のうち証券投資は2割でしかないといと演説したそうで、アメリカの投資銀行やファンドが日本でマーケティングをやったのでしょうか。   

所で、日米の家計貯蓄の構成を比べてみますと下の表です。

 

   家計貯蓄構成に日米比較 (資料:日本銀行・単位%)

日本の証券投資は、政府の旗振りで前年の17%から3~4%ほど増えてはいますが、アメリカにはとても及びません。(ヨーロッパは日米の中間ですが証券投資が30%を越えています。)

ここで疑問になるのは、政府が笛を吹いても何故日本の状況はあまり変わらないのか(逆になぜアメリカは証券投資が多いのか)。何故、証券投資が良くて、預金や貯蓄では駄目なのか、日本で貯蓄が投資に向かうには何が必要かといった事でしょう。

既にお解りかもしれません、が次回はその点を考えてみましょう。