tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「豊かな社会」から「快適な社会」へ

2024年04月30日 13時43分33秒 | 文化社会

このブログでは企業とは何かという問いに対して「人間が資本を使って豊かで快適な社会を作るためのシステム」というような定義をしてきています。

ここでのキーワードは「豊かで快適」という言葉です。かつては「企業とは利益を生み出すための組織」とか、「社会の富を作り出すための組織」といった言い方も一般的でしたが、今の企業は豊かさや富といった経済的な価値を作り出すだけでは駄目のようです。

K.ガルブレイスも書きましたように、豊かさ(affluence)を重視したのは人間社会が一般的に貧しかったからで、豊かになってみたら、『豊かな社会』(Affluent Society)は問題だらけという事になってしまいました。

嘗ては公害、今日では地球環境問題など、豊かにはなったかが、快適ではないという事が、環境問題から社会問題まで多くなった様です。豊かになって企業献金も膨大になれば、裏金問題も巨大になるといった不愉快な問題も生じるようです。

そんなこんなで、やっぱり豊かさという価値が、同時に社会全体に「快適」という人々が最も快く感じる価値も同時に生み出すものでなければならないという事になるのです。

快適をKAITEKIとローマ字で書いて、これを世界語にしたいという研究者もおられますし、三菱ケミカルの「キャッチフレーズ」も「KAITEKI」です。

快適という言葉は、英語ではcomfortableとかpleasantですが、これらはどうも即物的な感じが強く、快適のような精神的、人間の望む本来の正しさ、社会正義といった感覚や意識に通じるとこまで届かない様です。

ですからKAITEKIを世界語にしようといった考え方が出て来るのではないかと思いますが、それだけに「快適」という概念は今後大事にしなければならないものではないかと感じているところです。

こんな思考経路をたどってきた結果が標記の「豊かな社会」から「快適な社会」へ、になったわけですが、勿論世界の現状はまだまだ貧しさが至る所に残っています。

戦後10年「もはや戦後ではない」と貧しさ脱出を「経済白書」が宣言し、「1億総中流」という言葉が生まれた1980年代に至った日本でも、格差社会化が進めば貧しさはなくなりません。

現実は未だに「豊かで快適な社会の実現」と2つの言葉を並べなければならいのです。しかし、この2つの言葉をいつまでも並べていて良いのかというのが、豊かになりつつある今日の世界の課題であるような気もするのです。

自己中心の「豊かさ」に気を取られる人が多い事が、国民の生産した富を戦争の手段の高度化に使ったり、実際に戦争を実行し豊かさを目指すと言いながら豊かさを破壊し、貧困を助長したりしています。ビジネスでは豊かさを生まずに豊かさを偏在させるマネーゲームに狂奔する企業が増えたりといった現実も進行中なのです。

豊かさは必要条件ではあるが、それは地球人類の生活の快適さの増進のため必要なのだという意味で、豊かさは、それを「快適な社会」の実現に活用する事こそがこそが本来の目的だという意識の徹底が、「快適な社会」の実現のために、ますます必要になって来ているのではないでしょうか。


「昭和の日」に思う事

2024年04月29日 13時47分03秒 | 文化社会

調べてみたらもう4年も前の事でした。この歳になると、月日の経つのが矢鱈と早くなるようです。

ひょんなことから家内が「なんで明治天皇と昭和天皇のお二方だけ誕生日が国民の祝日になっているんですか」と言って、しばし返答に窮した私が、とっさの思い付きで、明治の時代に日本は内戦をしない国になった、昭和の時代に日本は外国とも戦争をしない国になった、これは国民にとって大変大事なことだから明治天皇と昭和天皇の誕生日は国民の祝日にして当然でしょう」と答えたとブログに書いたのが4年前の天皇誕生日なのです

当時の国民学校6年生の8月15日まで、徹底した軍国主義教育の中で育ち、はやく兵隊さんになって、戦地に行き、敵を倒し、自分も「天皇陛下万歳」と叫んで国ために命をささげることが本分と考えていた「昭和に日々」、これも昭和なのです。

「日本はもう戦争はしない、平和国家、文化国家、科学国家として新しい国造りに邁進しよう」、命を大切にし、より良い豊かな社会を作るという使命に生甲斐を感じるのが新しい生き方、というもう1つの昭和です。そして、私の今があるのです。

その両方の昭和を生きた人間として、この「2つの昭和」の生きる意味の違いを日本人の心の中に(出来れば世界人類の心の中に)確りと植えつけなければいけないと思うのが我々世代の役割だと感じるのです。

4年前のブログの最後は「このままで行くといいですね。」で終わっています。

今日振り返ってみれば、この最後に一言が、ますます強く意識されるようになってきているのではないでしょうか。

4日後には「憲法記念日」が来ます。話は今日に飛びますが、衆院補選では、国民は立憲民主党を支持したようです。

2つの昭和を生きた我々世代は、2つの昭和を截然と分けたのは平和憲法だとの認識を強く持っています。「戦争をする日本」と「戦争をしない日本」の違いを、それぞれの時代の毎日の日常生活の中で、噛みしめて暮らしてきた経験が、今も共存しているのです。

そして、2つの昭和の隔絶した相違、その人間の存在意義にとっての虚と実ほどの違いが人生のすべての判断に確りと影響していると感じているのです。

ユネスコ憲章の前文は「戦争は人間の心の中で始まるのだから・・・」という言葉で始まっています。そして歴史を見れば、その人間というのは「独裁者」だというのが経験的に共有される認識でしょう。

その結果、今の世界では、一国のリーダーとして独裁者(あるいはその可能性のある人)を選ばない事が重要という認識も一般化しています。

にも拘らず、この所、独裁的なリーダーが多くの国で出現しています。そうした中で、2つの昭和というある意味では稀有な歴史を持つ日本が、如何なる使命感を持って、混乱する国際関係の中で発言し、行動するか、戦後80年「非戦」旗印の下で国を維持してきた日本が何をすべきかは大変重要なのではないでしょうか。

「人の噂も75日」と言いますが、「平和の理念も75年」などと言う諺が出来ない事を願うばかりです。


経済を失速させない政策運営が最重要の課題

2024年04月27日 16時28分15秒 | 経済

前回は、この所の日本では人口減少という長期予測を軸にして、将来を悲観的に見るのが流行るようですが、大事なことはそれを反面教師にして、嘗てのような元気な日本経済・社会を取り戻して行くことでしょうと書きました。

今回は、今がチャンスなので、3~5%ぐらいの実質経済成長を目指して、活性化の見えてきた日本企業が総力で取り組む時期に来ているという現状認識のもとに、経済の立て直しに経済政策、金融政策も含めて、民間企業労使が思い切って元気を出すような雰囲気を作りを進める必要があると指摘したいと思っています。

嘗てこのブログでは「株式投資大成功の話」という事で、戦後最大の不況と言われた昭和40年不況の時に株価暴落を何とかしようと苦し紛れに作った「共同証券」や「証券保有組合」が結果的には莫大な利益を上げた事を書きました。そしてそれは、その後の「イザナギ景気」があったからだということは明らかです。

今回のアベノミクスの不況では、世界最大級の機関投資家と言われるGPIFや更には日銀が、膨大な株やETFを買い、現状では大変な含み益を得ているでしょう。

日本は1990年代初頭のバブル崩壊の経験も持っています。崩壊の直前まで世界の金融市場を闊歩していたジャパンマネーは忽然と消えて日本は30年不況に突っ込んだのです。

今の東京市場は上場企業の時価総額で落ち目の上海市場を抜いたなどと言われています。現在の株価がバブルなのかそうでないのかには議論もあるようですが、出来れば上ったものを下げない方が、日本経済にとってもプラスでしょう。

前回も述べましたが、それを可能にするのは実体経済としての日本経済が、確り成長する事です。上述のイザナギ景気の経験とバブル崩壊の経験を持っている日本経済です。ここで如何なる経済運営をしなければならないかは自明でしょう。

しかし客観情勢は決して容易ではありません。今年度の政府経済見通しでは、実質経済成長率は昨年度より低くなっています。現状の月例経済報告も明るい物ではありません。

一方政治不信は相当な重症ですし、総理の発言もうつろに響くようで、例の「火の玉発言」も投書欄で揶揄されるような状態です。

アメリカでは国賓待遇でしたが、それがアメリカの経済政策にも反映されることはないでしょう。かつて「ロン・ヤス」と親密だった「レーガン・中曽根」関係の下で、日本は「プラザ合意」で円高を要請され、30年不況の根因を受け入れさせられています。

今、金融政策の流れとしては、アメリカは政策金利の引き下げに向かう状況にあり、日本は政策金利を引き上げる情勢にあります。今、アメリカはドル高が有利なのかもしれませんが、いずれ金利引き下げ動き、日本も引き上げの動きを見せれば、円安は一転円高に転換でしょう。円高が日本経済にいかなる影響を齎すかは誰もがよく解っているはずです。日銀は、常に慎重な動きでしょうが、対応は容易ではないでしょう。

こうした状況の下で、日本に必要なことはまず内需を活発にし、内需中心の好況、高めの経済成長率の実現でしょう、そのためには非正規雇用の大幅削減、賃金水準の国際レベルへの回復、それを支える企業レベルの生産性の向上の促進といった高度成長期と同じ経済循環を、新しい技術革新で世界をリードするような産業構造の高度化の中での再現が必要でしょう。

そしてこうした活動を現場で担うのは日本の企業、企業の労使でなければならないのです。

政府・日銀は企業がそうした活発な活動をするための環境整備に万全を期すべきでしょう。

過去の歴史から学べば、経済外交の失敗(プラザ同意など単純なアメリカ追随)、金融政策の遅れによる円高の容認、不要不急な防衛予算の拡大などには十分留意すべきでしょう。

1985年のプラザ合意以降の失敗の連続から学ぶ事はいくらでもあるはずです。


人口減少・都市消滅、長期予想を反面教師に

2024年04月26日 15時08分01秒 | 文化社会

有識者グループ「人口戦略会議」は、国立社会保障・人口問題研究所の推計をもとに2050年を過ぎると出産適齢期の女性の数が多くの都市で半減し、その結果人口が急減する可能性が高くなり、結果的に全国で消滅する都市が744に達するという推計を発表し、反響を呼んでいます。

前提は社会保障・人口問題研究所の日本の人口の将来推計で、これは都道府県別、市町村別など詳細ですから人口戦略会議はその推計を発展させ、都市の消滅というショッキングな推計にまで展開したのでしょう。

元々の人口推計は、2030年には日本の人口は1億1500万人になり、2050年には9500万人、2100年には4800万人という中位推計の数字です。

「人口推計」は比較的正確度が高いなどと言われるので、政府機関がこういう数字を出しますと、真面目な日本人はどうも将来について悲観的になるようです。

それでも「あなたの住んでいる都市はいずれなくなりますよ」などと言われば「消滅などさせない」という人の方が多いと思いますが、このところ長期不況で、元気が出ない日本人も「そこまで言われては」と少し昔の元気を取り戻せないものでしょうか。

政府は高齢化対策ばかり懸念していた時代から、アメリカに追随いて防衛力の増強に熱心になり、今度は子育てに力を入れると言い、防衛費までは何とか算段をしましたが、子育てではもう財源がありません。国民一人一人に金を出せという事になるようです。

政府は「出せ」と言えば済むのかもしれませんが、国民にすれば、稼がなければ出せません。そして結局は経済成長が無ければ駄目だという事になるのです。

考えてみればこれは当たり前のことで、政府はおカネの印刷は出来ても、経済成長は民間にしかできない仕事です。つまりは、民間、具体的には企業の労使が頑張って経済成長を実現するしかないのです。

いくら政府が補助金や給付金を出しても、経済は成長しないのです。補助金や給付金は、国民の「やる気」を「カネを出した分だけ」失わせているのです。

今年の春闘はその辺に企業労使が気付いて、やっぱり労使が協力して頑張らなければ駄目だと思い直し、「まずは給料を上げよう、カネは大分溜っているから」という雰囲気が出てきたところでしょう。

この企業労使の「気付き」は極めて大事です。1980年代まで、日本の労使はアメリカ・ヨーロッパ何するものぞ、という気概で、世界一の経済成長を成し遂げて来ました。

私自身、駆け出しのころ国際的な会合で、日本の高度成長の説明に苦労しましたが、次第に日本の発言が一目置かれるようになり、非常にやり易くなったのを実感しています。

あの頃の日本人がやって来た事が今の日本人に出来ない事はないでしょう。政府に頼るのをやめて、民間企業(労使)が「我々が主役」の意識で本気になれば、それは容易に可能になるでしょう。井深大、本田宗一郎、松下幸之助の時代の続編です。

そしてその結果が出れば、気が付いたら合計特殊出生率も上がっていたり、厚生労働省は人口推計をやり直したり、都市が消える話などは忘れられるのではないでしょうか。

その頃の年寄は「あれは反面教師だったのだよ」と言うかもしれません。


アケボノツツジほぼ満開に

2024年04月25日 13時33分35秒 | 環境

ゴールデンウィークが近づいてきました。もう随分長く年金生活をしているはずですが、やっぱりゴールデンウィークが近づくと何と無くソワソワするような気分になります。

永年のサラリーマン生活の感覚が条件反射になって染みついているのかと思ったりしましたが、良く考えてみると、どうもそうではなくて、子供たちが孫やひ孫を連れてやってくるはずだという事がソワソワの原因だという事が解りました。

高齢者の楽しみはそんなところが一番なのだ、世界中多事多端で日本だって大変なのだと考えても、有難いことに、自分の身の回りは、お陰様で平穏無事、いつぞやは「世の中は 食うてばばして 寝て起きて 子が親になる 子が親になる」と書きましたが、出来る事なら、そんな平穏が世界に広まって欲しいと思うばかりです。

ゴールデンウィークの前後の時期は、我が家の狭い庭が最も華やかになるときです。先ず先陣を切ったチューリップは4月上旬から中庭の真ん中の花壇で開花、未だに妍を競っていますが流石に盛りは過ぎました。

バトンタッチを受けたのは、西側の塀際に咲くアケボノツツジです。先週はまだ蕾でしたが、一昨日から開花、昨日の雨に打たれましたが、今日は久しぶりの青空のもとほぼ満開になり、残った雨の雫を振り払って「今日は綺麗でしょう」と言っている感じです。

年々枝が良く伸びるので隣家にお邪魔しないように毎年剪定するのですが、それでも毎年大きくなります。一昨日は大きな枝を2本切って玄関先の壺に挿し、通りの賑わいにしたところです。

蕾の時も写真も撮ってありましたので、蕾の時と満開の時の写真を並べてみました。

              


経済政策にジニ係数の活用を!

2024年04月24日 20時02分57秒 | 経済

何処の国でも、国民は、基本的にその国の「GDP」(国内総生産)で暮らしています。ですから、国民にとって最も関心のある経済指標はGDPでそれが年々何%増えるかという「経済成長率」は最大の関心事といってもいいでしょう。

高度成長期は良かった。それに引き換えこの30年は殆ど経済成長が無く、「一人あたりGDP」はかつての常時世界のベスト10入りから、今や世界30位以下に転落しているというのは、日本人が身に沁みて感じているところでしょう。

勿論GDPの配分としてのサラリーマンの給料にしてもGDPと同様増えない時代が続き、「賃金統計」でそのあたりも歴然です。

賃金統計と言えば、関連するのは「消費者物価統計」です。賃金の上昇率より物価の上昇率が大きければ「実質賃金」はマイナスで、生活のレベルは下がるという事はわかっていますし、そういう状態が23か月も続いているといことはマスコミでも報道します。

こうして経済関係の統計は国民にいろいろなことを教えてくれます。国民は政府がきちんと経済政策をやってくれているのかどうか、選挙演説とは別に、客観的なデータとして、正確に判断する資料を持つことが出来ます。

国民と政府の経済的な関係では「国民負担率」という数字が発表だれています。これは、国民の働きが生み出した国民全体の所得である「国民所得」(≒GDPから「減価償却費」を差し引いたもの)に占める「税金+社会保険料」の割合で、国民は(企業も含め)自分たちの稼ぎの何%を政府に納めているかを示します。

「国民負担率」が高い国(訪欧諸国など)では政府のサービスは手厚く、アメリカの様にあまり政府に頼るなという国の「国民負担率」は低く、日本はその中間です。

ところで、いま日本で問題になっているのは「格差社会化」のようです。非正規従業員が増えた事が原因と言われたり、高額所得者が増えたからなどとも言われます。

格差社会化が進んでいるかどうかについても統計があります。それは「ジニ係数」という指標です。「ジニ係数」0~1の数字で格差が大きくなると数字が増えます。

所得の分配が完全に平等なら「ジニ計数」はゼロです。1人の人に所得が集中していればほぼ1でゼロに近いほど格差の少ない社会です。

ところで日本での「ジニ計数」はどうなっているのかですが、厚生労働省が総務省の「家計調査」をベースにした「所得再分配調査報告書」というのを2年おきに出していて、そのなかで当初所得の「ジニ係数」と税・社会保険料で所得再分配を行われた後の「ジニ計数」を計算しています。

その最新資料(令和3年)によりますと

という事になっています。

この間、所得格差は増えたが、税・社会保険料で再分配した結果、格差社会化は進んでいないという結果です。

この報告書はOECDに報告するために作られている資料のようですが、OECDでは世界各国の所得の「ジニ計数」を発表しています。

それによりますと日本のジニ係数は主要国の中では低い方ではありませんし長期的に見れば高まっているようです。

格差問題がいろいろな場で議論されている今日の日本です。「ジニ係数」を積極的に活用してより豊かで快適な日本経済実現に役立てたら良いのではないかと考えるところです。


消費者物価2024年3月微妙な動きに

2024年04月23日 13時20分07秒 | 経済

先週金曜日4月19日に、総務省統計局から3月の消費者物価が発表になりました。少し遅くなりましたが、例月通りご報告をしたいと思います。

先ず下のグラフの様に、原指数の動きとしては、先月までほとんど横這いになって来たかと思われた赤、青、緑の線が、3月ははっきりと上がっていることが解ります。

     消費者物価原指数主要3指標の動き

 

グラフに数字が入らなくて申し訳ありませんが、前2月に比べて総合の赤が0.3ポイント、生鮮食品を除く青も0.3ポイント、生鮮とエネルギーを除く緑が0.2ポイントの上昇です。

3月から4月にかけて、エネルギー関連や生鮮食品、一部の加工食品などの値上がりが見られていますが、毎月0.3ポイント上がれば1年では3.6%の上昇になりますから2%のインフレ目標にはとても届きません。

生鮮とエネルギーを除く総合が0.2%の上昇にとどまっていてくれることが、消費者物価の基幹部分のいわゆるコアコアは何とか落ち着いて来ている事を示していると見れば、物価は沈静基調という事になるのですが、些か心配です。

消費者物価の動きを対前年同月で見ますと下の図です。

 

エネルギー関係の補助金の影響を受ける赤と青の線も下げていますし、コアコアを示す緑の線も順調に下げてきているので、大変結構に見えますが、これも昨年3月の上昇が急激だったことを受けているという面がありますので、昨年の上昇基調に較べれば沈静という面もあり判断は微妙です。

何とか沈静基調を保ってほしいと思う消費者物価ですが、インバウンドの盛況という事で下がらない、典型的には宿泊料のようなものもありますし、これから、春闘の結果の賃上げの価格転嫁もあるでしょう。理論的にはそんなに大きなものとはならないとも考えられますが、そう簡単ではないようです。

端的に言って、23カ月連続の実質賃金の対前年マイナスといった現象が何処で止まるかといったことで、「これで経済も生活も気分が変わる」といった状態になって欲しいというのがみんなの願いでしょう。

そうなることを願いつつ、もう少し観察を続けて行こうと思っています。


「マイナカードは何のため」を明確に

2024年04月22日 15時19分32秒 | 政治

マイナカードと健康保険証の問題で迷走している政府、デジタル庁がトラブルメーカー の元締めでで多くの国民が迷惑したのがこの間の事ですが、そのまともな決着も未だ付いていないように感じています。

それに加えて今度は、国民の取引する金融機関をマイナカードに紐つけするという事になったようです。

既に公金受取口座の紐つけが行われ、これもあちこちでトラブルが発生していますが、本人から「回答がなければ同意」とされます。

ところで、今度は新規に銀行で口座開設の際に紐つけするかを決める(任意)事になったのだそうですが、国民はいずれ銀行口座は全て紐つけになる第一歩と感じるのでしょうか、預金口座すべてが政府に監視されるといったデマ情報(現状では)が拡散したりしています。

こんな事が起きるのも、政府の説明が何か奥歯に物が挟まったようなものが多く、国民の間に、疑心暗鬼を生じるという政府の国民に対する情報伝達の不備(お役所的な態度)によるものでしょう。

こうしたトラブル多発の根底の原因を考えてみますと、政府の不十分な情報や杜撰な行政の取扱いによる「政府不信」があるように思います。

勿論単に不十分な情報発信や行政の不確かな取扱いだけではなく、今回の裏金問題でも明確な、深刻な政府不信があるのでしょう。

マイナカード問題自体としても、そもそも「マイナカードは何のため」がはっきりしていない事があるように思われます。

政府やデジタル庁は、何かというと「国民生活が便利になるように」といった言い方をするのですが、現にやっている事は国民にいろいろな負担や不便、手間をかけることがいっぱいです。

大体カードを作ること自体に手間がかかり高齢者には大変です。だからでしょうか、マイナカードは強制ではないのです。

なのに、カードを作ったり、健康保険証の機能を持たせるための手続きをすると、政府はポイントという飴玉をくれるのです。出来れば国民みんなに持ってほしいという意向は見え見えです。

そこまでやるのであれば、政府ははっきりと本音を言うべきです。「これは行政を合理化するために必要です。国民としての義務と考えて頂きたい。」と言ってもらえばスッキリします。

そして「それは政府のためだけではないのです。それによって行政は効率化され、公務員の数も削減でき、減税にもつながります。国民の皆様にも便利です。」というべきでしょう。

マイナカードは国民のすべてをカバーしなければ本来の行政効率化の効果は発揮できません。

統計調査でも国勢調査のような旧指定統計は国民には回答義務があり、罰則もあるのです。

省名に『デジタル』などとカタカナがあるのですから、将来のデジタル立国を目指し、中途半端でない目標を国民に示すべきでしょう。

同時に日本は民主国家ですから、プライバシー無視のマイナカードの恣意的な利用や専制や独裁的なものを徹底して排除する事を先ず冒頭に掲げるべきでしょう。

政府が本当に必要としている情報は、現状でも政府がみんな持っているはずです。政府トータルのデジタル化を進めれば、デジタル庁は、全国民のマイナカードを作り、政府が本当に必要な事、国民生活を便利にする事をそれに盛り込むことが出来るはずです(残るのは顔写真とパスワードだけ)それを国民に配布で、総ては済むのではないでしょうか。

1億2000万の国民に、PCやスマホを操作したり、役所に行ってそれをやれと言っても国民も窓口も大変です。

しかも任意から始めて全体カバーまで持っていく過程で掛る時間と経費は膨大でしょう。

コスパの悪さは国民負担の増大です。政府も自分で出来ることは自分でやりましょう。


狭い庭も花盛りの時期に

2024年04月20日 13時46分35秒 | 環境

リュウキンカが咲き、チューリップが咲いて、狭い庭の隅では貝母、白雪ゲシ、ハナニラがそれぞれに存在を誇示していました。

世界は騒然、奇襲、報復といきり立つ国やグループ、そうした情勢の深刻化の心配から、昨日は日経平均が1000円以上も暴落といった解説、しかしアメリカの株は上がっているのは何故だろう、解らないからマネーには手を出さない。(実を申せば金がないから)

やっぱりこんな好天の春の日には、マネーの観察より、咲き誇る花々の姿を見て、やっぱり自然は素晴らしいと時間を忘れる時を過ごす(表現矛盾でしょうか)方が本来の人間らしいという気がします。

今、素晴らしいのはアケボノの脇のブロック塀の際に、毎年元気に咲いてくれる久留米ツツジです。

これからアケボノ、オオムラサキと我が家の春の主役のツツジが順番に咲き誇ってくれるのですが、先陣を切るのはこの久留米ツツジです。

ご覧の様に1本の木ですが、白、ピンク、赤の3色が枝々に分かれて咲き、その間に、それぞれお色の筋を自在に織り込んだツートーンの花が多様な賑わいを添えるのです。

来週には満開のアケボノの写真が撮れそうです。

チューリップの花壇では、早咲きは既に花弁を散らし、遅咲きの白の八重が元気ですが、「え、これもチューリップ」というようなチューリップです。こんなのが5本ほどあって、これが、各種取り混ぜの面白さです。

花壇の縁に宿根で自生するツリガネスイセンは、今年は些か元気がありませんが濃紺の花の色はいつも通りで、来年は元気に咲いてくれるでしょう。

玄関わきで、毎年通りに少しはみ出して咲くモッコウバラも撮ってみました。通る人の邪魔にならない様に、始終伸びる芽を切っていますが、春先に出た短い新芽の先に花が咲くのでこの時期は通る人の気持ちを少し和らげてくれるのではないかと思っています。


変動相場制の問題点、円安にどう対応する

2024年04月19日 14時14分54秒 | 経済

日本では円安がまだ進むのではないかという心配があるようです。円高も困りますが、円安も心配というのが米・日・韓の財務相会談で日、韓の意見のようです。

アメリカにしてみれば、ドル高で円安、ウォン安を狙っているわけはなく、アメリカ自身のインフレを抑えるために政策金利を引き上げているだけだというでしょう。

つまりは円安やウォン安は日本や韓国でそれぞれに対応するよりないという事になるのではないでしょうか。

円安の問題点は、いろいろな形でこのブログでは取り上げて来ていますが、ご質問もあり、ここで纏めて整理しておきたいと思っています。

円安は基本的には日本経済にとってはプラスの方が多いでしょう。これは日本のような加工貿易立国の国では円安になると国際競争力を持つ産業分野が増加して国として国際競争力が強くなるからです。かつては「為替ダンピング」という戦略もありました。

では今の時代、何が問題かと言いますと、輸入品の値段が上がりますから、輸入原材料価格の上昇で、コスト高・収益低下になる部門と、円安差益で利益が増える輸出部門の明暗が生じ、国内での付加価値(GDP)の分配、つまり所得の分配に歪みが生じることが問題なのです。そこで問題はその歪みをいかにして是正するかという議論に発展します。

この問題は世界的に見ても、上手く行かない事が多いようです。例えば、トルコやアルゼンチンを見ますと、輸入物価が上がり国内物価が上がりますと賃上げ要求が激しくなり、物価・賃金のインフレスパイラルの激化で経済が混乱しています。

輸入物価が上がって国内インフレになるのは最近のアメリカ、ヨーロッパにも見られるところです。(米・欧ともに困って政策金利引上げでインフレ抑制に走り、そのとばっちりが日本の円安です。)

日本の場合は例外的で、輸入物価が上がっても国内物価をなかなか上げませんし、賃上げ要求の激化もありません。

その結果は、輸出部門は高収益を満喫、輸入部門は政府が補助金を出して救済、赤字財政の深刻化です。

その中で所得の増えない家計部門は貧困化し、消費不振で経済成長はストップ、増加するのは、国債発行残高と、海外投資収益(第一次所得収支)輸出企業収益という事でした。

今年になって初めて連合も政府も経団連も、何とかしなければと考え、日銀も危機的状況と感じて、分配の無かった家計部門に「賃上げで分配を確保」しようと考え始めました。

今春闘で注目すべきは政府機関の「公正取引委員会」が「仕入れ価格」の上昇と「賃金」の上昇については「販売価格に転嫁を認める」という方針を明確にしたことです。

理論的に言えば、輸入原材料価格の値上がりと、合理的な賃金上昇のコストの価格転嫁が行われれば、円安による国内の付加価値配分の歪みはほとんど解決されるという事になるのです。

ここで2つほど問題が残ります。1つは、年に一回の賃上げで、円レートの変動と賃上げ幅を上手く合わせられるかです。これは連合と経団連の仕事ですが、日本の労使関係では出来るかもしれない(賃金インフレも消費不足も起こさない範囲の賃金決定)と考えます。

もう1つは、為替レートの動きを合理的なものにできるかという問題です。今度の円安も、アメリカの労使が起こしたインフレを、FRBが抑えようとして政策金利を引き上げたためです。

基軸通貨国が自国の都合で行う政策が日本の円安を引き起こし、そうしたチャンスを利用してキャピタルゲインを得ようとする国際投機筋の思惑で揺れ動くのが為替レートです。日本にはどうすることも出来ません。

勿論日本だけではなく、変動相場制であれば避けられない事です。答えはFRBかIMFに出してもらいましょう。


日経平均の下落は何処で止まる(こんな見方も?)

2024年04月18日 15時19分32秒 | 経済

この所の日経平均の下落続きにはびっくりしている人も多いのではないでしょうか。

3月下旬は40000円を維持して、これからどこまで行くかと楽しみにしていた人も多かったようです。

それが4月に入って、何だか様子がおかしくなって、朝は高いのにだらだら下がって見たり、朝は安かったけれど引けまでにかなり挽回したりといった様子になりました。

何か、誰かが上げようとしても、上げさせまいとして売る人がいたり、下げたい人が仕掛けても午後からそうはさせないと買いを入れて終値で挽回とか、そんな争いを誰かがやっているのではないかというストーリーでもできそうな動きが続きました。

そして先週半ばぐらいで上げたい方は頑張ってもダメかと観念したのでしょうか、売り方の勝利で、37000円台まで日経平均は下がってしまいました。

株価の動きを現実の実体経済の動きで説明しようとしても、長期の動きであれば出来そうだという見方もありますが、短期では、特別の事でもない限り説明は難しいようです。

この所の日経平均の下落についても、株価関係のコメントは毎日いろいろ出ていますが、「ああ、そういう事ですか」と納得できるような解説は見られないような気がします。

現状でいえば日米の株価の動きに大きな影響を与えるのはFRBの金利政策でしょう。今年の初め辺りは、FRBは今年中にはインフレは終息と見て、今年は0.25%の政策金利の引き下げを3回やる方向という意見だったようです。

それが次第に変わり、どうもインフレ基調が収まらないという事で、金利の引き下げは先延ばし、当分利下げはしないという雰囲気になって来たようです。

利下げを期待していたアメリカ経済は拍子抜けで、金利は高いままならば、もう少し我慢という事になり、NYダウも上がらないという事になったようです。

日本の方は、アメリカが金利を下げたら、日米金利差は縮小し円高になると考えていた所、金利が下がらないのならば、未だ円安が続くという見通しに変わり、その通り円安はじりじり進み、154円台まで進み、鈴木財務大臣は、円安が心配になって、これ以上の円安には万全の対策を検討するなどとか言っています。

しかし輸出関連企業の差益やインバウンド増加の様子から見れば、円安は日本企業にも日本経済にも好影響が大いいわけで、これならもう少し日経平均も上があると思った人も多かったでしょう。

しかし4月に入って、の日経平均の動きはご承知の通りです。最初はNYが下げれば東京も下げるといった解説もありましたが、それではあまり納得性がないので、最近は「なぜ日経平均が下がっているのか」という解説を探しても見つかりません。

という事で、こんな「ジョーク」の解説を考えてみました。

NYダウも日経平均も「40000」という数字を目指して上げてきました。ところがNYより先に東京が40000を達成し、更に、その先を狙おうという勢いになりました。一方、NYは「39807」まで行き、もう一息で「40000」ですが届きません。

同じ「40000」と言っても、「NY」と「東京」の原単位には150倍以上の差があるのですが、$と¥の差はあっても「40000」という数字に先に円が達していたのではカッコ悪いと思う国際投機資本筋(?)が、NYが40000に行くまで東京には少し待ってもらおうと考えた結果が現状になったという事です。

以上が「ジョーク」の解説ですが、これで行きますと、今日あたりでNYと東京は並ぶようですから、この辺が当面の日経平均の底という事になるはずです。

(こんなジョークに、最後までお付き合い頂いて有難うございました)


報復と寛容、争いと競い、多様性の尊重

2024年04月17日 16時52分34秒 | 文化社会

ロシアのウクライナ侵攻で世界中が心を痛めているのに加えて、パレスチナとイスラエルの問題が起き、それがさらに飛び火してイランとイスラエルの対立を誘引する様相で、地球人類社会の平安を願う多くの人々の心配は拡大しています。

ロシアの場合は中世の領土拡張の欲望の延長でしょう。イスラエルの場合は報復の応酬で、ガザのパレスチナ人を殲滅などという言い方も聞かれ、何処まで何が目的かを考えるのも恐ろしい限りです。

ダマスカスのイランの大使館爆撃から起きたイランとイスラエルの問題ではパレスチナ問題と同じように、「報復」という言葉がもっぱら使われます。

この「報復」という言葉は日本ではあまり良い語感を持っていません。理由は多分「報復」が正しいとなれば、報復の連鎖で、争いは永遠に続くという事が日本人の感覚の中では一般的だからではないでしょうか。

「報復」の連鎖を止めるためには、相手を殲滅しなければなりません。相手を根絶やしにすれば「報復」はなくなるのでしょうが、歴史上でもそれは不可能です。

出来ない事をできると思って、人間が人間を殺す事を正当化するというのは、人類にとって、余りに不幸な事と日本人には感じられるのでしょう。菊池寛の「恩讐の彼方に」は報復を超越したあるべき人間本来の心を描いて、広く人びとの共感を得た作品でしょう。

 

このブログでは人類社会には「争いの文化」もあるが「競いの文化」もあり、例えて言えばこれは「戦争」と「オリンピック」で、相手を征服するのではなく、共存して競い合う事が人類社会に平和と発展を齎す源という理解をしています。

「報復」を否定し「寛容」を求めると言ってもそれは容易ではありません。人間がその大脳の発達を人類社会の安定と発展のために使おうと本気で考えるとき、「争い」や「報復」も文化は否定され、「競い」が人間の持つべき文化という「共存」と「寛容」の世界が実現されるのでしょう。

そして、それと同時に人間の気付くべき人間本来の意識があります。これは意識というよりも、本能に近いのかもしれませんが「多様性への憧憬」や思考のレベルでいえば「多様性の尊重」でしょう。

人類は多分時間についての特異な認識を持つ生物として、過去、現在、未来を統一的に理解できる「万物の霊長」としての意識を強く持っています。

この自己認識は「人間さえ良ければ」、「特定の人間集団さえ良ければ」といった利己的、自己中心的な認識に繋がったようです。

しかし同時に、人間は本来、自分以外の者、異種のものにも関心や興味を持っているのです。動物園、植物園、水族館を作り、異文化への関心、異国情緒への憧憬等々の感覚を持ち、今やそれが、生物多様性の尊重、異文化との交流が人類社会の発展のために必要という「多様性の尊重」の合理性の認識に到達しているのです。

国連はこうした人類の文化の進歩を、ユネスコなどの活動を中心に、世界に広め、争いの文化の否定、多様性の共存の尊重が人類社会の発展を促進するという思想、哲学を世界が共有するという事で、国際紛争をその根から断つことを目指す時期が来ているのではないでしょうか。

こうした活動については、日本と日本人は、世界の平和と発展のために役立の多くの知恵を持って多大な貢献が可能のような気がしています。


米国経済と米巨大企業の盛衰

2024年04月15日 20時33分15秒 | 経済

日本製鉄がUSスチールを買収するという、昔なら驚天動地の現実が進行しているというのが、このところ日米で共に問題になっています。

ご承知のように、USスチールは アメリカでは石油王ロックフェラーと並ぶ鉄鋼王アンドリュー・カーネギーがつくって、嘗ては世界最大の鉄鋼会社で、カーネギーホールとともにで世界にその名を知られているところです。

企業の吸収や合併は私企業同士の契約で行われるものですから、USスチールと日本製鉄が合意すればそれで進むというのが法律的な決まりなのでしょうが、現実社会はそうはいきません。

アメリカが第二次大戦後世界の覇権を握り、基軸通貨国としての地位を確立、今日に至るまでその地位を維持している背景には、USスチールをはじめとしたアメリカの大企業の発展によりアメリカ経済を強大にしたからと言えるでしょう。

ところが、今、アメリカの産業経済発展のシンボルでもあったUSスチールが、経済不振に悩む日本の日本製鉄に買収されるという事になっているのです。アメリカ人の中に「許せない」といった感覚があっても当然かもしれません。

という事で、この問題は、国民感情という問題に発展し、ひいてはアメリカの労働運動、更には今回の大統領選挙にまで影響しかねない状況に発展しているようです。

このブログでは今までもコダックと富士フイルムの経営比較GMやGEの蹉跌とアメリカ経済などアメリカの超大企業の盛衰を取り上げてきました。今回はUSスチールの日本製鉄による買収云うという事態の発生です。

というのもUSスチールには昔日の面影はなく、アメリカ経済を支えた嘗ての力も失われると状態になりつつあるからという事でしょう。

世界のトップ企業だったUSスチールの粗鋼生産量は、今や1449万トン、日本製鉄は4437万トン、トップは日本が指導した中国の宝山、いまは宝武鉄鋼集団で1億3264万トンです。日本製鉄は4位、USスチールは27位(世界鉄鋼協会)とのことのようです。

量的の問題は、それぞれの国の事情があるとして(中国の巨大さ)、企業としての体質を最も良く表すと考えられる自己資本比率を古い資料からも拾ってみますと下のようです。

<自己資本比率>  1962年   2023年

USスチール     66.9%    54.5%  

日本製鉄      33.5%        43.7% 

 資料:1962年通産省「世界の企業の経営分析」、2023年「各企業B/S」

国際的に見れば、力を失うUSスチール、何とか踏ん張る日本製鉄、アジア系の鉄鋼企業に挟まれるような立場の両社は技術力が生きる道でしょう。

頼るのは技術力のシナジー効果ではないでしょうか。その点で気になるのは、USスチールの労働組合が反対している事です。

日本的経営から言えば、企業活動は、経営者と従業員で成り立っているのですから、従業員は経営者と同じように現状を理解なければならないのです。

その点の努力、従業員が将来に期待を持てる事、そうした条件を日本製鉄側は、本気で大切にしているのでしょうか。

株主総会で賛成を得る時には、労働組合も、同様に賛成の意思表示をするような共に働く人間を大事にする日本企業の「心」を示してほしかったと思うところです。

それが、最終的な成功を支えるのではないでしょうか。


座標軸・原点・度量衡の意義

2024年04月13日 18時12分54秒 | 文化社会

スマホには「位置情報」という機能があって、そのスマホを持って歩いていればどこに行っても「今自分が何処にいるか」解るようになっています。

自分が何処にいるか知られたくないのであれば「位置情報」の機能を切っておけばいいという事の様です。位置情報を切っているという事になりますと何か「胡散臭い」という事になるのではないでしょうか。

動物にも位置情報が本能によってビルトインされているようで、自分の巣は何処かとか、ハクチョウやツルは毎年同じところに来るとか、鮭は自分の生まれた川に帰って来るとかいった行動をします。

人間にはそんな機能はないので、地図や磁石やスマホが必要になるのでしょう。

中学生の時だったかと思いますが、先生が黒板に白墨で小さな点を書きこの点が何処にあるか説明するにはどうするかと言いました。

訳が分からないでいると先生はその点の近くにタテ・ヨコに十文字の長い線を引いて、「この横の線はX軸、縦の線はY軸、この2本の線の交点を原点という。さきほど書いた点はX軸の原点から右に30㎝の真上、Y軸の原点から上に20センチの右真横、だから「原点の右30㎝その真上20㎝と位置を説明できると言いました。

そりゃあそうだ、だけど、先生は勝手に線を引っ張ってその交点(原点)から何㎝といっているので、何でそれでいいのかな、などと漠然と考えていました。

後からだんだん解ってきたのは、先生の言ったのは「方法論」で現実の世界では原点や軸の位置をみんなに共通なものとして決めて使っているのだという事でした。

今は地球上では経度と緯度が正確に決まっていて、世界中の位置情報は共通です。位置情報だけではありません、時間の原点は西暦紀元で共有になり、暦も閏秒が問題になるほど正確に共通になり、距離はメートル原器があり、重さや温度もグラムや℃で、原単位が違う場合は換算式が決まっていて、世界中共通理解が可能です。

中学生の時に先生が引いたX軸とY軸、その交点が原点でそこから何㎝という度量衡の原単位が世界中共通になって、大変便利になりました。

ところで、こうした物理学的な原点や原単位の共通化を経済の面でも利用できないかという事が当然考えられるでしょう。経済の度量衡、つまり経済価値を測る単位は今はドルという事になっています。各国通貨との換算式も固定的に決まっていれば大変便利です。

それを目指したのが戦後のアメリカが主導した「ブレトンウッズ体制」です。価値単位の原点であるドルの価値は1トロイオンスの金(きん)が35ドルと決め、日本円は1ドル=360円といった換算式(円レート)を決めたいわゆる「金為替本位の固定相場制度」でした。

これは1960年代まで続き、この間世界経済は順調な発展を遂げて来ていました。しかし1971年のニクソンショックでこの体制は崩壊、ドルの価値は原点の金と切り離され、結局今日の変動相場制になっています。

変動相場制では、基軸通貨ドルの価値は金という原点が無く浮動しますから、度量衡の換算式は常に変動し、1メートルのメートル原器が80cmになったり120cmになったりするようなもので、経営も経済も不安定になってしまうようです。

これをどうするかという知恵は、現状では無いので混乱が続いています。


円安進行、アメリカはインフレ基調、日本の対策は?

2024年04月12日 14時24分29秒 | 経済

円安が進行しています。鈴木財務大臣は「あらゆる手段で為替の安定を」と言っていますが、マスコミはこの種の発言もあまり効果がないなどと言っているようです。

元々の原因はアメリカの景気が結構強く、雇用も増加し、賃金も上昇、インフレ再燃の危惧もあるような状態で、FRBも予定通りの利下げが考えられないようだという事でしょう。これでは当面日米金利差縮小は無いと国際投機資本は読むことになります。

円安は当面の日本経済にとっては輸出企業の収益やインバウンドの増加など、色々な面で好都合で、沈滞している日本経済の活性化に役立ってくれるという効果もあるわけです。

アメリカ経済がFRBの目的にそってインフレ率が2%水準に低下し、政策金利が順次引き下げられ、そのたびに円高が進むという状況が順調に進捗する方が、本音を言えば、日本経済には恐ろしいという事ではないでしょうか。

日銀短観には、調査対象企業の今期、来期(先行き1年)の円レートの予測の平均が載っていますが、最近の短観では今年度の上期・下期は共に141円台という見通しでじり高という事になっています。

今の日本企業の高収益の原因として150円前後の円レートはかなり大きな寄与をしているはずですし(今日の新聞にも「ファーストリテイリング(ユニクロ)最高益」とか、人流回復でコンビニが好調といった記事が見られます)、バブルではないかなどと言われる株価にも大きく寄与していると思われます。

3円ほどの円安でインフレ傾向を心配するという事も大事ではありますが、企業が軒並み10円ほどの円高を予想している事が現実になった時の日本経済の受ける負のインパクトを本気で心配しなければならないという事の方が、考えてみればもっと大事ではないかという気もします。

アメリカの雇用、賃金物価の状況を見ますと、雇用の1か月間の増加ペースが昨年3月14万6千人で、今年の3月は30万3千人ペースになっているようで、賃金は、この3月が前年比4.2%の伸び、消費者物価は3月で前年比3.5%、エネルギー関連は下がり気味ですが、「食料とエネルギーを除く総合」、いわゆるコアコアは3.8%の上昇という形で賃金インフレの気配です。

もともとアメリカはインフレ体質の国ですから2%インフレ目標というのはかなり無理といった感じですが、3%台のインフレで経済が元気というのは、ある意味では羨ましいという事ででもありましょう。

基本的に、日本経済は、アメリカの動きに大きく影響されざるを得ないようで、プラザ合意やリーマンショックで円高、今回はアメリカのインフレ退治のための金利引上げで円安といった事になってしまうのです。

そうした経験の中で見れば、今の円安は過去の円高に較べれば、逆に日本にとっては、経済活性化のチャンスと言えるような状態ではないでしょうか。

3円の円安を心配するよりも、この避けられない状態をチャンスと捉え、円安を適切に活用し、早期に日本経済の体質強化にいかし、世界の中で、ここまで堕ちた日本経済の本格的な再生に、役立つような上手な政策を確り考えていく事が大事なのではないかといった感じもします。

財務省や日銀が、どんな秘策を編み出してくれるかと期待したいところですが、これからどんな政策が出て来るのでしょうか。国民みんなで注視しましょう。