tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

アメリカ経済の過ち

2008年03月30日 21時57分59秒 | 経済
アメリカ経済の過ち
 アメリカ経済の問題は当分続きそうです。
 昨年からこのブログで、実体経済の潤滑油であるべきマネーの世界が実体経済にマイナスの影響を与えることがないようにと書いてきましたが、それは叶わぬことでした。
 アメリカに暮らしていない私などが、文献でアメリカを知るのには限度があります。経済や経営のシステムでも、関連する法制度でも、アメリカを見習ってやっている日本です。まさかアメリカが日本のバブルのようなことをやっているとは思わず、サブプライム問題も、どこまで大きいのか実感がありませんでした。

 しかし最近の報道では、事態は異常に悪く、金融機関等の損失の合計が現状で2千数百億ドル、その半分は海外にばら撒かれていて、さらには今後1兆ドル近くまで拡大する可能性無しとしないなどと聞かされ、アメリカ経済の回復は容易でないなどといわれますと、実体経済への影響はかなり大きくなりそうです。

 折角アジア経済が成長をはじめ、EU統合の効果も出て、ヨーロッパ経済も堅調、日本も、プラザ合意の円高とバブル崩壊の苦難を克服して、まともな経済状態に近づいたというのに、基軸通貨国のアメリカがこんなことをしてくれたのでは・・・、と情けなくなります。

 後講釈を聞けば、やっぱり万年赤字国のアメリカが、世界の金を呼び込んで、繁栄を続けることに無理があった事が解りますが、後の祭りでした。住宅の値上がりを担保にして金を借りて消費を増やすことが健全な経済発展だとFRBも思っていたのでしょうか。

 今、バーナンキさんは、モラルハザードを承知で、金利を下げ、資金を供給して金融システムを保たせる努力をしているようです。火事の火を消すことに似ています。しかし火を消すのも容易ではないようです。さらに、たとえ火は消えてもても、後始末をして新しい家を建てないと生活出来ません。万年赤字のアメリカは、またそれを借金でやるのでしょうか。誰が金を貸すのでしょうか。自分で稼いで建てるためには、アメリカが競争力を回復して黒字国にならなければならないでしょう。そのためには、どこまでのドル安が必要なのでしょうか。

 政治、軍事、経済、金融の超大国、アメリカの混乱と再生は、世界に、そして日本に、どのような影響を与えるのでしょう。

付加価値の正確な理解を

2008年03月26日 11時05分15秒 | 経営
付加価値の正確な理解を
 一昨年2月、このブログを始めたきっかけは、 金融資本主義が蔓延し、まじめに付加価値を作ることを軽視するような風潮が、日本の経済・経営にも見られるような状況が大変気になったことでした。

 付加価値というのは、一国経済でいえば、GDP(国内総生産で、これが増えることが経済成長 )です。GDPは日本国内の企業などが1年間に生産した付加価値(正確には減価償却も入った粗付加価値)の総額です。GDPから減価償却を差し引いたものが純付加価値で、いわゆる国民所得です。われわれは国民所得の一部を分配してもらって、それで毎日の生活をしているわけです。

 われわれの生活を豊かにすること、つまり経済が成長するということは、国内の企業が、年々どれだけ多くの付加価値を生産するかにかかっているわけですから、企業レベルで、付加価値を計算し、それを従業員1人当たりにした付加価値生産性やその動向の分析をすることは大変重要です。

 ところが、最近、ネット上の解説などを見ますと、付加価値についての誤解が往々見られたり、セミナーでも同様な質問があったりするので、以下の様なことを書いてみました。

 誤解の中の典型的なものは、「付加価値=粗利益」とか「付加価値=限界利益」といったものです。

 何が誤解かといいますと、付加価値というのは、「人間が資本を使って経済活動をし、新たに生み出した価値」 ですから、付加価値は人間(労働)と資本に分配されることになります。それ以外のコストは、すべて外部から購入した財・サービスの代金ですから、購入先企業の付加価値になるものです。

 粗利益は売り上げから直接原価(製造原価)を差し引いたもの、限界利益は売り上げから変動費を差し引いたものですから、定義が全く違います。粗利益の中には工場の人件費が入っていませんし、逆に販売費などの外部購入コストが入っています。限界利益は、人件費を固定費と見るか(日本)変動費と見るか(アメリカ)で全く違います。ここで誤ると、労働分配率の正確な計算も不可能です。

 付加価値は「人件費+資本費」で、=「人件費+課税前利益(*)+金融費用+賃借料+租税公課」 です。これに減価償却費を加えれば粗付加価値になります。  (*)利用目的によって経常利益でも可

 経済でも経営でも最も大切な付加価値であるだけに、付加価値の理解には正確を期したいものです。

円高か、ドル安か

2008年03月19日 10時32分14秒 | 経済
円高か、ドル安か
 アメリカ経済は大変不安定なものになってきました。もともと大変な資源国で、そうした利点をベースに経済を組み立てて入ればよかったのでしょうが、安易に金を得ようと金融立国を指向し、世界の金を集めて所得以上の生活を謳歌していたところにサブプライム問題でした。

 このブログで1月に「アメリカ経済への致命傷か」と書きましたが、不良債権を優良証券に仕立てて世界にばら撒いた結果、アメリカの証券の信用は失墜し、誰もがアメリカの証券を買うのに二の足を踏むようになったのではないでしょうか。その結果はアメリカにスムーズに金が流れない状態でしょう。ドルは値下がり傾向です。

 FRBのバーナンキさんは、大恐慌の研究家で、あの時早期に金利を下げていれば、大恐慌は防げたというご意見の持ち主と聞いたことがありますが、今回も確かに利下げには積極的です。利下げはドル安につながるでしょうし、さらに今回の問題はもっと構造的なものに思えてなりません。

 アメリカ証券の信用失墜、金利の大幅低下でドル安傾向は不可避ではないでしょうか。ということは日本からいえば円高です。しかし今回の円高は、プラザ合意の時のように円の独歩高ではなく、「ドルの独歩安」の気配の強いものです。ユーロは結構強いですし、カナダドル、オーストラリアドルのような資源国の通貨は高くなっています。問題の中国の人民元も、インフレにもかかわらず高めです。

 優れた製品技術で世界に貢献する日本は、どうしても輸出依存になります。証券市場は「円高で大変」と騒ぎ立てます。こんなときは、単に「ドル対円」ではなく、貿易額でウェイトをかけた国際取引の実効レートの動向も、「見える化」ということで広く国民に解りやすく示したらどうでしょうか。基軸通貨の座からずり落ちかけているドルにばかり気をとられるようではいけないと思うのですが。

バランスシート(貸借対照表)の原理

2008年03月16日 11時48分28秒 | 経営
バランスシート(貸借対照表)の原理
 バランスシートを見ると、左側に「借方」(資産の部)というのがあって、右側に「貸方」(負債および資本の部)があります。
何故こういうように分かれているのか、資産と資本はどう違うのか、何故借方と貸方は同額なのか、いろいろ疑問が湧きます。

 実はこれらはすべて約束事で、原理はきわめて単純です。現実に目に見えるものが資産で、その裏打ちをしているお金が資本(自己資本+他人資本)です。資産は目に見えますが、資本は目に見えません。

 企業はお金を使って(運用して)仕事をしています。そのお金をどんな形にして使っているかが「資産の部」(借方)に示されています。現金や預金で持っていたり、売掛金になっていたり、材料や仕掛品や製品在庫になっていたり、工場や機械になっていたり、関係会社の株だったりします。

 ではそのお金をどこから調達してきたのか。それを示すのが「負債および資本の部」(貸方)です。自前で出している金が「資本の部」(自己資本=資本金+これまで蓄積してきた積立金)で、買掛金や銀行からの借金、社債などの外から調達した分が他人の金、つまり「負債」(他人資本)です。自己資本と他人資本を合わせて総資本(あるいは単に資本)という場合もあります。
 
 運用しているお金は、どこからか調達してきているわけですから、借方と貸方は必ず同額になります。

 バランスシートを発明したのは、イタリアの学者・修道僧で、レオナルド・ダ・ヴィンチとも親交があったといわれる、ルカ・パチョリという人で、この貸借のバランスは神の摂理と考え、スンマ(算術・幾何・比及び比例全書)という大著(1494年)を書き上げています。

 東洋では陰陽のバランスといった考え方がありますが、こうした バランスの感覚で物事を見るという考え方は、いろいろな面でわれわれに多くの示唆を与えてくれるようです。


「労資」関係の復活?

2008年03月12日 11時00分07秒 | 労働
「労資」関係の復活?
 今日、3月12日は2008年労使交渉における大手の集中回答日です。結果は後ほどお明らかになるでしょうが、利益は伸びていても、賃上げは昨年とあまり変わらないものというのがマスコミなどの報道から感じられる所です

 労使関係というのは、どちらかというと新しい言葉で、昔は「労資」関係でした。総労働対総資本などといわれ、労働者と資本家の対立関係がもともとの「労資」関係だったわけです。しかしいわゆる「 経営者革命」ということになり、資本家(株主)は背後に後退して、経営者(使用者)が労働組合の交渉相手となる様になって、「労資」関係は、「労使」関係になってもう長い期間がたちました。

 日本の場合には特にそうですが、経営者というのは、どちらかというと、資本家の代弁者というより、「労働と資本の間の調整者」というような立場で、労働側にも十分の理解をもちながら、労働と資本の間の付加価値配分(労使交渉)にあたってきたように思われます。

 「労資」交渉が「労使」交渉になったことで、むき出しの利害対立が多かった交渉のあり方が、より理性的、合理的、論理的なものになってきたことは否めない事実と思います。

 しかし、最近再び状況が変わってきました。M&Aが盛んになり、投資ファンドの活動が活発になってきたことです。物言う株主が増えてきたのです。資本主義ですから資本の動きが活発になるのは当然かもしれませんが、駄洒落を言えば、以前はIRといえば(industrial relations=労使関係)だったのが、最近ではIRは(investors relations =株主関係)だとみんな思っています。

 そのせいで、財務省の「法人企業統計」などで見ても、利益処分の中で株主配当は急増しています。以前は安定配当などといっていましたが、企業防衛の立場からも配当率を上げざるを得なくなったのでしょう。配当は法人税を払った後の純利益から払うものですから、企業にとっては金利は安いが、配当コストは高いということになり、その分内部留保が大きく圧迫されています。内部留保はコスト・フリーのお金で、企業発展の原動力ですから、経営学上は問題です。

 しかも、増配要求の強いいわゆる「投資ファンド」は安定株主ではありません。さらに、この内部留保への圧迫は、利益計上の前の付加価値分配、つまり賃金への分配にも当然影響を与えます。今までは、安定配当の下で、経営計画でも、「内部留保と人件費のバランス」を中心に考えればよかったのですが、そこに法人税付きの配当への分配が入ってくるわけです。

 資本が投資ファンドという形をとって、あらためて企業の経営成果(付加価値)に対してより大きな配分を要求してきたという意味で、経営者に委任していた労使関係を、再び「労資」関係にしようとしているといった風にも見えてくる最近の状況です。

政府の賃上げ要請

2008年03月08日 21時21分55秒 | 労働
政府の賃上げ要請
 3月12日の集中回答日を前にして、マスコミ上では賃上げ論議が盛んになって来ています。そうした中で、今年は珍しく、政府も賃上げしてほしいと発言をしているようです。
 
 選挙を控えて、景気の悪化を何とかしたいという気持ちの表れかもしれませんが、政府が独り言のように、「企業の収益の改善を国民にも還元してほしい」といったところで、産業・企業の労使関係にはそれぞれの事情がありますし、賃上げしても景気は良くならないという意見も強いですし、政府がどこまで本気かも解らない中では、多分影響はほとんどないでしょう。確かに日本経団連も、収益の上がっている企業は、従業員に還元するという趣旨の発言もしているようですが、それは企業それぞれの事情によるべきだと補足していて、議論はかみ合ってはいないようです。

 政府が賃金について意見を述べることは、日本はもとより、海外主要国でも通常はほとんどありません。最低賃金のように法的拘束力を持つものでさえ、本来は、労使と公益の三者に任せているのが制度の仕組みです。かつてケネディー大統領が、アメリカの鉄鋼の賃金交渉に「アメリカ鉄鋼業の国際競争力を失わせるような無理な賃上げ要求は止めなさい」と介入したことがありましたが、そのときには、アメリカでは法的に使用者団体が作れないから、経営者に代わって政府が介入するしかない、と解説されていました。

 ヨーロッパでも、一時、「所得政策」といって、政府が賃金や物価の決定に介入したことがありましたが、ほとんど失敗でした。ですから今では「所得政策」という言葉は使われなくなってしまって、同じことを金融政策でやろうとして、「インフレ・ターゲット」などという言葉が使われています。

 政府が(政府も)行動を取って成功した、数少ない成功例を挙げますと、歴史的にも名高いドイツの経済の安定成長のための「協調行動」、オランダのワークシェアリングのための「ワッセナー合意」などで、これは政府が介入したというよりも、政・労・使の三者が、社会・経済・労使関係の安定化、健全化を願って、十分に話し合って、納得した上で実行されたものです。

 日本には、連合も、日本経団連もあります。政労使が協力して、オイルショックを乗り切ってきた経験もあります。政府が勝手に、最低賃金を大幅に引き上げるべきだとか、賃上げをすべきだとかいうのではなく、コンセンサス社会といわれる日本の特色を生かすような、日本らしい納得のいく政労使三者の合意による政策がほしいなと思います。

庭に来る小鳥たち

2008年03月07日 14時37分37秒 | 環境
庭に来る小鳥たち
 東京都国分寺の我が家の小さな庭にも、この時期、いろいろな小鳥が来ます。環境が良くなったのか、人が小鳥を脅かさなくなったのか、何となくここ数年小鳥の来訪が増えているような気がします。
 
 特に暖かくなると北に帰ってしまう渡り鳥が毎年訪れてくれるのは楽しいものです。
1、2月の寒い日に「じょうびたき」が来ます。背中の2つの白い紋を見せ、尾羽を上下に振りながら落ち葉の下の虫を探しているようです。昔、田舎で母親が「ほらほら、紋付鳥が来てるよ」などといっていたのを思い出します。
 必ず1羽で来ます。バードウォッチングの専門家に聞いたら、「毎年同じ個体が来ている可能性がありますね」といわれて、「やあ、今年もよろしく」と話しかけますが、警戒心が強くなかなか写真が取れません。

 「つぐみ」は昨日姿を見せました。少し大型で、目にも止まらぬ早業で、嘴で落ち葉を飛ばし、下にいる虫を狙っているようです。あのすばやさでは、虫も逃げる暇はなさそうです。しばらくすると、満腹したのか。少し高いところにとまって、周りを見ながらしばし休息、やおら飛び立って行きました。

 「めじろ」や「しじゅうから」は、数羽の群れで来ます。「むくどり」や「ひよどり」も複数で来ます。ひよどりはたいてい2羽で、先日来、赤く実ったそよごの実が食べごろになったのでしょうか、何百個もありそうな実を2.3日で食べてしまい、今は干しているみかんの皮を狙っています。

 時に「うぐいす」が来ます。今の時期は「藪うぐいす」で「チッ」とかいっていますが、毎年、もうすこし暖かくなると、このあたりをホーホケキョといって鳴きまわるあのうぐいすだと思っています。

 このあたりは、高齢者ばかりの街になってしまいました。こうして小鳥の来訪に気が付くのも、家にいることが多くなったせいでしょうか。
     「年寄りには、小鳥が良く似合う・・・・・。」

  写真は左から めじろ つぐみ ひよどり うぐいす。(ニコンCoolpix P5100 窓ガラス越しに撮って、パソコンで伸ばしたもの)


自己資本比率を見よう

2008年03月06日 13時59分47秒 | 経営
自己資本比率の重要性
 自己資本比率とは、ご存知のように 自己資本/総資本×100 です。ところで、あなたの企業の自己資本比率が何パーセントかご存知でしょうか。

 自己資本は、 貸借対照表の資本の部の合計で、分母の総資本(=総資産)はその企業がどれだけの資本を調達し、それを運用しているかの総額です。
したがって自己資本比率は、その企業が経営のために使っているトータルのカネのうち、自前の資本が何パーセントかということです。自己資本以外は他人資本で、これは「負債」として計上されています。

 会計学者は昔から、「自己資本比率は50パーセント以上が望ましい」というようですが、これは使っているカネの半分以上は自前のカネであるべきだという考え方によるものです。日本の上場企業の中で自己資本比率が最も高いといわれるのはファナックで90パーセントに達しています。トヨタとかホンダ、キャノンなどは60~70パーセント、大企業の平均は50パーセント弱、中小企業の平均が35パーセント程度です。

 自己資本は企業の財務面の健全性、安定性を示すわけですが、その理由は、金融がタイトになって、金利が上がり、金が借りにくくなったり、貸し剥がしが行われたりするようなときでも、自前のカネで経営をしていば心配はないということです。ですから、数年前までの失われた10年といわれる長期不況の中で、日本の企業は、できるだけ借金を返し、自己資本比率を高めてきました。今日、日本企業の収益が回復してきた理由のひとつには、借金返済に努力し、しかも現状の金利が超低金利であることがあげられると思います。

 今後金利が上がってきたとき、自己資本比率の高い企業と低い企業との収益力の差が明らかになることが考えられます。
こうしたこともあって、自己資本比率の高い企業の株価は、だいたいいつも高いというのが一般的です。

 企業は年々成長し、売上高も運用する総資本も増えます。したがって、自己資本比率を高めるには、利益の中から年々内部留保を積み上げるか、あるいは増資をして資本市場から資本を調達するかで、企業の成長以上の早さで自己資本を増やすことが必要です。しかし、内部留保のためにはそれなりの利益が必要ですし、増資をするには企業が儲かっていることを株主に示さなければなりません。結局は企業の収益力が原点で、それをベースに、内部留保や増資で安定した自己資本を蓄積し、収益性と安定性が好循環するような企業体質を作ることが大切になるようです。