tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

インフレ? デフレ? 日本の現状

2025年02月05日 17時03分34秒 | 経済

今の日本の経済状態はインフレなのかデフレなのか、どちらとお思いでしょうか。植田日銀総裁は、物価が下がってくると思っていたら、最近は反転上昇気味でインフレが心配という感じの発言です。

赤沢経済再生担当相は、足元はインフレで日銀と政府の見解に齟齬はないと言いますが、石破総理は,日本経済はデフレではないがデフレから脱却できていない、インフレと決めつけることはしないと言っています。

インフレとデフレが混在している状態としては、石油危機の後の欧米の状態、物価は上がるが、企業は利益が出ない、経済成長はしない、これは「スタグフレーション」という新しい現象だという事になりました。

今の日本はそれとも違いますね。経済成長はしないという点ではスタグフレーションと同じですが、企業利益が順調という点ではスタグフレーションとは違いいます。

ということで、「それでは何なのだ」という事になるわけです。

物事の結果には原因があるわけで、原因に遡って見て行けば因果関係が解るはずですという事で、何が原因か考えてみましょう。

<インフレ>

・輸入インフレ(海外価格上昇、円安)

・コストインフレ(賃金上昇、消費増加、利益増加)

<デフレ>

・海外より物価高(国内コスト高、円高)

・国内需要減少(賃金低迷、投資不振、貯蓄超過)

大体インフレとデフレの原因はこんな所でしょう。

2012年までは、「円高」で日本は「海外より物価高」でしたからデフレでした(日本の物価は国際水準になるまで下がる)。

2013~14年の日銀の「異次元金融緩和」で円レートは80円から120円になり、デフレの原因のうち「円高」は消えました。

これでデフレは終わると思っていましたが、5割の「円安」になっても名目賃金が年に2%前後しか上がらずに輸入インフレ圧力強まり、輸入インフレと賃金低迷がせめぎ合い、輸出産業だけ利益増加が起きました。

輸出産業の利益増加は主に海外の直接投資(工場建設など)に向かい、GDPは増えませんでした。結果は第一次所得収支の増で、これもGDPに入りません。

国内では円高が終わっても相変わらず不況で賃金が上がらないので、将来不安が募り、家計部門では消費性向が低下し、貯蓄超過、消費不振でデフレ状態が続きました。

2022年あたりから、通常の経済原則では起きるはずの円安に伴う輸入インフレ圧力が一部破裂して消費者物価の上昇が起き、輸入インフレの欧米との金利格差のが拡大で更に円安が進み、輸出部門などの利益は更に増え、経営サイドから「賃上げをすべきだ」という意見が出る程になりました。

そして2023年から春闘が注目され、24年には33年ぶりの大幅賃上げとなりました。

それで状況は幾分改善されましたが、円安の輸入インフレ圧力が、低賃金上昇と消費性向の低迷という不況期の消費行動で蓋をされている状況は大きく変わっていません。

つまり今起きている現象は、輸入インフレ要因が、国内の低賃上げ、消費不振というデフレ要因で蓋をされて、政府も、企業も、国民も八方塞がりだと困っている状態なのでしょう。

いわばスタグフレーションの反対のような性格を多分に持つ現象で、まだ名前がついていないのです。

仮に名付ければ、日本語では「賃上げ恐怖症候群」、横文字にすれば“inflagnation”でしょうか。

スタグフレーションは賃金抑制で治りました。こちらは、思い切って賃上げをしていけば治る病気のようです。


見えて来た? トランプ流ディール戦略

2025年02月04日 15時37分01秒 | 経済

昨日1000円超の下げだった日経平均が今朝は600円以上戻しています。「さて原因は」といえば、言わずと知れたトランプさんのディールという掌の中での意思決定の結果です。

メキシコ、カナダに対しての25%の関税の今月4日からの引き上げを1カ月伸ばし、交渉に入るという事になったからです。

もともと、この関税引き上げの理由としてフェンタニルという軽度の麻薬の密輸が主な要因に挙げられていたようですが、それですべての関税を25%というのはやり過ぎと思っていた人も多いようで、アメリカのマネーマーケットも、トランプ大統領がこんな株式市況の下落を喜ぶはずはないと考えていたようです。

結果は、1夜にして状況は変わり、フェンタニルの密輸は合同の捜査機関を作るという事で具体策の交渉に入り、その間1か月の先延ばしという事のようで、具体的な政策は、より現実的なものになるようです。

但し、もちろんのことですが、それが順調に進むかどうかで、関税の方も引き上げ政策が消えたわけではありません。

トランプ政権の第2幕が始まって以来、世界中の評論家が、「この4年間は何が起きるか解らない」といった言い方をしているようで、疑心暗鬼というような雰囲気がいっぱいですから、鬼面人を驚かすような発言(Ⅹでの表明)がトランプさんから出ると、世界の世論は混乱するのですが、今回は、差し当たって常識的なレベルに落ち着く可能性もありそうです。

とはいっても、それで落ち着くかというと、それも大変解りにくいようですから、やはり何事も予断は許されないという雰囲気は、いつまでも消えないのでしょう。

恐らく自分のやることは出来るだけ大げさに、断定的な形で発言して、より多くの人に強い関心を持たせるという事については天才的な着想を持っているのがトランプさんという人かもしれません。

しかし、やることが、世界中の人が、出来そうもないと思い,手を拱いて思案投げ首といった問題を取り上げ、簡単に結論や可能性を明言し、それへの取り組みを具体的にやって見せるという事は、アメリカという覇権国の大統領だからこそ大見栄を切って発言し、行動できるわけで、他の国のリーダーでは手の届かない事でしょう。

そして、それを平然と発言し、トランプ劇場を作り、主役を演じることを、楽しんでいるがごとくにやって見せるという所にこそ、トランプさんの真骨頂があるのでしょう。

勿論、それが成功するかどうかは、解りません(多分本人にも)。そしてその際に活用する手段が「ディール」なのでしょう。その手段が、時に「ディール」を越えて、トランプさん自身が口では嫌っている「世界の警察」であっても「戦争」ではないという見方も多分当たっているのではないでしょうか。 

そんな気持ちで「観劇」することで、自分の気持ちを落ち着かせて、トランプさん関連のニュースを見て行こうと思っているところです。


日本的経営の理念と非正規社員問題

2025年01月31日 10時14分04秒 | 経済

今年の春闘では、賃上げの要求をする連合は勿論ですが経営サイドの代表である経団連も賃上げの必要性を強調しています。

これは大変結構なことで、思い切って少し高めの賃上げをすれば日本経済は随分良くなるとでしょう

更に結構なことは、労使が共に中小企業や非正規社員の賃金の積極体な改善を言って言う事です。 

政府は、もともと賃上げには熱心で、政府の圧力で引き上げ可能な最低賃金についてはこのところ随分無理をして上げてきています。

特に日本社会の「格差社会化」阻止のために重要な、中小企業、非正規従業員の問題ですので、改めて取り上げました。

欧米社会は元々「市民と奴隷」という形を取ってきたようですが、日本には縄文時代から奴隷制度が無かったというのが特徴のようです。恐らく身分差別のない「人間集団」というのが一般的な姿だったのでしょう。

海外から輸入文化が入って来て舶来崇拝の中で制度が作られたのでしょうが、今でも基本的に変わっていないのは「企業は人間集団」という見方です。

欧米では企業は職務の集合体で、その職務に適切な人間を採用するのですが、日本では、好ましい人間を採用して企業の中で仕事、社会性、人間性も磨かれていく、つまり企業が人を育てるのが日本的経営の基本なのです。

明治時代に会社というシステムが入って来て、会社の中では身分制度がありましたが、思い出すのは、戦後の日本経済再建の中で、当時の日経連(現経団連)会長だった桜田武が「戦後、日本企業では身分制を廃し、総て社員とした」と話したり書いたりしていることです。 

その日本の企業社会に今は「正規」と「非正規」という明確な身分がうまれ、しかも非正規の比率が4割近くに高まり、減る気配がないという状態です。

これはどう考えても「日本的経営」の基本からの逸脱ですから、その副作用が必ず出てくると考えてきました。

今それが、就職氷河期の卒業生の中の残された問題という形で、中堅社員の不足、生産性向上への障害、社会の劣化など様々な面で現れているのです。 

たしかに1995~2006年あたりでしょうか、円高不況の日本経済の中では、失業率の上昇を避けることが最優先、雇用の質までは問えない、という現実があったことは否定出来ないとは思います。

しかし、このコスト削減の手法が、為替レートの正常 化以降も続けられたことは。経営者の意識が変化(劣化)した結果ではないかと感じられます。

このブログでは、円高不況で増えた非正規社員は、円レートの正常化とともに復元(正社員化)が起きる予想していました。

残念ながらその予想は、ごく一部の企業を除いて当たりませんでした。そしてようやく今、非正規の賃金問題として気づかれてきたようです。 

しかし、日本的経営の(日本の社会的伝統・文化の)視点から言えば、単に賃上げではなく教育訓練、正規化、生産性向上の積極化です。

遅きに失した感はありますが、日本の経営者が、非正規の正規化問題を企業の社会的責任と考え、本気で取り組んでほしいと思っています。


トランプ大統領とFRB、アメリカ経済と日本

2025年01月30日 17時09分51秒 | 経済

今回のFOMCでは、パウエルさんは政策金利の引き下げはやめて、もう少し状況を静観するようです。

本来ならばFRBは政策金利を引き下げ、アメリカ経済の健全な成長路線を進める方向で考えていたのでしょうが、トランプさんの登場で、一部の国民が熱狂したり、国の政策決定が先行き不透明になったことがあるようです。

トランプさんは、メキシコとの間には物理的な壁ですが、アメリカの周りに関税という名の壁を建設し、国内では石油やガスをどんどん掘って、世界の石油価格を下げれば、アメリカの経済の活性化は可能と考えているようです。

インフレ問題にしても、アメリカの石油やガスの大量産でガソリンやその他のエネルギー価格が下がれば、物価全体が下がるという見方でしょう。

それでトランプさんは、パウエルさんに対してFRBは自分の創り出したインフレを抑えようとして、それにも失敗した、と批判しているのでしょう。

アメリカの石油やガスの埋蔵量がどのくらいかは解りませんが、アメリカが化石燃料を増産して、世界のエネルギー事情にどの程度の影響があるかも未知数ですし、気候変動を意に介せず、パリ協定を脱したアメリカへの批判も予測不可能です。

FRBは最も重要な仕事である金利政策を駆使してインフレを収め、金利を下げてアメリカの経済力を強くすることを考えっているのでしょうら、当面トランプさんの政策を見るよりしょうがないという事になります。

トランプさんは金利には触れませんし、パウエルさんは、アメリカ経済は現状でも良好だから、更なる物価上昇でもない限り、当分の間、金利は現状で動かすべきではないと、トランプ政策を横目で静観という事なのでしょう。

何時までこうした不安定の上の安定が続くのかはわかりませんが、トランプさんは弱いドルより強いドルの方がお好みに合うのでしょう。しかし、現状でもインフレ抑制の効果はあり、FRBが金利引き下げに動ず、当分現状維持のままでもいいのではないかと急がない事を強調しているようです。

こうした状況は日本にとってはどうなのでしょうか。日銀がどう判断しているかは解りませんが、日銀は金利を上げたい方向、FRBは金利を下げたい方向という客観的な事情を考えれば、これは円高の方向を共に促進することになり、 

些か円安に依存し過ぎた日本企業にとっては、急速な円高は望ましくない面もの原所多いでしょう。

政治的にも、経済的にもかなり不安定な要素の多い日本の現状です。出来ればアメリカが当面動かないという事は日本としては政策を取り安くなるという面もあるのではないでしょうか。

日本自身の取るべき政策が、政府と日銀で一致していてくれないと困りますが、金利政策で、徐々に円を強くし、輸出産業は円高への備えを確りやり、アメリカの石油価格を下げるという政策にも便乗し、賃金の引き上げを多少大きくしても輸入物価の下げでコストが相殺されるような状況を作り出す能性も出て来るのではないでしょうか。結果は実質賃金の上昇になります

国際投機資本も動きにくい中で、日本の低賃金と低金利を引き上げるチャンスにすることも可能ではないかなどと考えるところですがどうでしょうか。


消費者物価指数、反転上昇継続

2025年01月27日 13時43分36秒 | 経済

キャベツの値段が倍以上になったとか、収穫時のキャベツ畑で、一夜にしてキャベツが全部盗まれたとか、日本でそんな事が起きるのかと情けなくなるようなニュースが入ってきます。これもキャベツの値上がりと同時に日本社会の劣化現象の結果のように感じられます。

キャベツから電線まで盗まれるような社会の劣化問題は重大事ですが、物価問題でいえば、生鮮食品の価格の変動も些かひど過ぎる気もします。現状、生鮮食品とお米の価格上昇が消費者物価指数を押し上げています。

キャベツの価格は、天候が良ければ暴落し、産地ではトラクターでひき潰す事もあるように、天候次第という面もありますから、この所政府は消費者物価指数の発表の際には「生鮮食品を除く総合」の数字を発表しています。

ところで、12月の消費者物価指数は、生鮮食品の値上がりもありますが、エネルギー価格の上昇、お米の値段の異常なほどの上昇もあり上昇基調が続いています。

   消費者物価3指標の原指数の推移(総務省)

 

上の図の原指数の動きですと昨年9月に、ようやく物価も安定してきたなと思った途端、その後は急角度の上昇です。

日銀も今回の利上げは物価が安定してきたからというより、インフレ防止という意味が強くなりそうな状態です。

トランプさんが石油の値段を下げろと言っていますから、エネルギー価格があまり上がらないかもしれませんが日本ではお米の価格が対前年比で10月は60%、11月は64%、12月は66%と上がり続けています。漸く備蓄米放出などと言い始めましたが、政府はお米の価格を下げる気はないようです。

お米の値段が上がれば、すでに、すし、おにぎり、牛丼などなど値上上がりが始まっていますが、大手の宅配弁当なども3月から値上げを考えているようです。高齢者の家計は大変です

12月の動きを前年比で見ますと下の図です。

   消費者物価3指数の対前年比(総務省、%)

 

「総合」は3.6%、「生鮮食品を除く総合」が3%、「生鮮とエネルギーを除く総合」が2.4%と最も落ち着いていますが、これからが問題でしょう。

お米の値段は、あまり下がりそうにありません。すでに9月段階で農協の、農家からの買取価格が昨年より3割上昇と決まっていて、その結果が小売価格の6割上昇という事になったようです。

主食であるお米が6割も上がって、政府やマスコミが大騒ぎしないという事は通常ならあり得ない事だと考えれば、これも政府の政策の裡なのでしょう。

春闘では、大企業の一部の6%賃上げ方針や、連合の中小企業6%賃上げ目標、単産労組の発表する賃上げ基準がベア中心になり高めになって来ています。結果にもよりますが、自家製インフレの懸念もあります。

遅きに失した感もありますが、デフレ脱出はこれで完成という事になりそうです。

デフレ脱出で政府は万歳かもしれませんが、デフレ脱出はインフレにすることではなく、実質経済の成長が目標ですから、取り違えの無いように願いたいものです。


日銀、平穏裡に政策金利を0.5%に

2025年01月25日 15時49分48秒 | 経済

昨日、日銀は政策金利を0.25%引き上げて0.5%にすることを決定しました。昨年8月の0.25%へのホンの小幅の引き上げが、国際投機資本にとってサプライズだという事で、日経平均の大幅下落、1ドル140台への円高を招いた時とは様変わりの反応の無さです。

そういう意味では、今回の利上げは、日銀としては、経験からしっかり学び、余計な混乱を避けるという意味で、様変わりの進歩でしょう。

日本経済としては、金利の正常化(適切な水準までの引き上げ)を実現して、経済活動を反映し、経済活動に影響を与え、金融政策が機能するような形になるのが目標ですからまだ先は長いようです。

今回の引き上げは、前回より実体経済に与える影響は大きいと思われます。差し当たって影響を受けるのは住宅融資の変動金利の引き上げでしょうか。一方、預金の方は普通預金の金利も引き上げられるようです。

今までは、日本の借金王である日本政府が、殆んど金利のつかない金を国民から借りて大変な楽をし、国民は貯金をしても利息が付かないので、その分自分で利息を付けるという意味も含めて、消費を抑え、貯蓄志向というのが家計の動きでした。

まだまだ少しですが、政府が国民に利息を払う事になったのは結構なことで、多くの家計は更なる利上げを望むでしょう。 

ところで、今回の金利引き上げで、マスコミが報じている中に、ひとつ、今までの説明と全く逆の要因が挙げられています。

勿論それは日銀から説明があったからですが、それは、金融機能の正常化の方向を示すとともに、日本経済が、今までの賃金の上がらない経済から、賃金の上がる経済に変わっていく動きを示唆、予測、奨励するといった、日本経済の新傾向についての見方に関わると感じるところです。

昨年8月の政策金利引き上げについての日銀の説明は、消費者物価指数の上昇が、2%程度まで収まったので引き上げに踏切るというものでした。

元々物価が下がったら金利を引き上げる理論は、経済学にはありません。日本の場合は特別で、インフレが目標の2%まで下がったら経済が正常化したと考え金利の正常化(ゼロ金利脱出)が可能になるという特別の考え方でした。 

昨年8月の引き上げは、そうした日銀の認識の結果でしょう。ですから日銀はその後も引き上げの機会を狙っていましたが、国際情勢から国際投機資本を刺激しないよういに時期を待ちました。

トランプさん再登場、ドル高指向、NYダウ上昇という環境もあって円高も進みにくく、国内では、今春闘の経営者の賃上げ指向も強く、消費者物価再上昇で周到な対外意思表示も行われ、結果は思い通りという事でしょう。

中でも、お米を始め食料品価格の上昇で「インフレ懸念」という説明が入って来ました。インフレ進行を抑えるための賃上げというのは世界共通の認識です。物価が下がったから金利引き上げという考え方は消えて来ています。

今回の金利引き上げで注目すべきは、日銀がその本来の意識である貨幣価値の維持(インフレ防止)を指摘している事、その背後には賃金が上がり始めるのではないかという意識や、もしかしたら農協のコメ買取価格の引き上げのように、農業政策は旧態のままで価格だけ上げていくという日本の主食であるコメにつての政府の姿勢といった問題があるようにも感じられるところです。


新自由主義経済を高見の見物

2025年01月24日 14時04分35秒 | 経済

ソフトバンク・グループの孫正義さんやオープンAIのアルトマンさん達がアメリカで最大5000億ドルに上るAIインフラの整備、10万人の雇用を生み出す投資をするという事で、トランプさんが大変喜んでいるというニュースがありました。

孫さんも凄いなとびっくりしていましたら、今やトランプ大統領の側近とみられているテスラのイーロン・マスクさんが、「彼らはカネを持っていいない。孫さんの持っているのは100億ドル程度」と成功を危ぶむような発言をしたいうニュースが入ってきました。

マスコミは、さっそくこの話を取り上げ、トランプさんとマスクさんの間に意見の相違が・・、といった報道をしました。

その後の報道ではトランプさんは、(人間関係もあるだろうが)そんなことは問題ないと気に留めないという事のようです。

トランプさんにしてみれば、アメリカに金を注ぎ込んでくれて、雇用を生み出してくれるという企画は大歓迎という事のようです。

こんなニュースを聞いて、つくづく感じたのは、最近の話題の主、新自由主義経済のチャンピオンたちの金銭感覚と実体経済の金銭感覚とのズレの巨大さです。

調べてみるとイーロンマスク氏の資産は4500億ドルを超えて2位のアマゾンのベソス氏に2000億ドルの差をつけたとか言われています。

マスク氏の資産の元は電気自動車テスラでしょう。ほかにも宇宙船のスペースX や“X”さらにAIのプロジェクトも在りますが、事業そのものでそんな巨大な利益が出るような段階ではないようです。

そこでテスラの時価総額をみましたら、驚く勿れ1兆4000億ドルです。それも、トランプさんが当選して70%増えた結果だそうです。

マスクさんがテスラの株の何%を持っているのか知りませんが、トヨタの時価総額の3300億ドルに比べてその巨大さが知られます。

ついでに車の生産台数で見ますと、トヨタは世界で約1000万台、テスラは僅か181万台(2023年)という事で、この差にまた驚かされます。台数は年に3割ほど伸びているようですが、倍になっても知れています。

こうした比較から解ることは、マスクさんの資産は、テスラの生産、販売という実体経済の利益でで成り立っているのではなく、株価の値上がりで生じているものらしいという事です。

経済学的に言えば、テスラ社の将来の利益と株価の値上がりの期待が織り込まれた株価の上に載っている資産価値という事でしょうか。

嘗て、アマゾンが創業した頃、長い間配当もないのに株価が上がって不思議がられたことがありました。アマゾン発展の今その回答が出ていると言えるのか計算はしていませんが、テスラの答えはだいぶ先でしょう。

電気自動車が大事のマスク氏が、ガソリン車重視のトランプ大統領にすり寄ったのも何かあると勘繰る人もいるようです。

という事で、最近の新自由主義の経済は、実体経済と次第に縁遠くなって、付加価値を作るよりも、思惑や期待感、人気と射幸心が入り混じった巨大なマネーの世界が、政治にまで影響力を持つ巨大な人工マネー空間として広がるという姿になっているようです。

ラストベルトを復活させるといトランプさんの実体経済のレベルでの公約が、新自由主義経済を使って成功するのか、地べたからですが、「高みの見物」と洒落込んでみるのもいいかなという所でしょうか。


開けてびっくり「トランプ関税」

2025年01月22日 17時29分43秒 | 経済

トランプさんの大統領の就任演説の全文が出ていたので、さらっと目を通しました。

なんとまあ独りよがりで、いい事ばかり並べて、出来るか出来ないかは別、勿論他国の都合などは無視です。トランプファンが喜びそうな言葉を並べて、その都度拍手と歓声が上がり、トランプさんの満足そうな顔が目に浮かびます。

ところが。関税のところに来て「ええ、これ何、こんな事「あり」ですか」とびっくりしました。さっそく原文にも当たってみましたが、まさに驚くべき発想、恐るべき発言です。日本語にすれば以下の通りです

「私は直ちにアメリカの貿易システムのオーバーホールに取り掛かる。アメリカの労働者と家族を守るためである。アメリカ国民に課税して外国を豊かにする代わりに、外国に課税してアメリカ国民を豊かにする。その目的のために対外歳入庁をつくる。そこですべての関税、税金、その他の収入を集める。おそらく膨大な額の金が海外から財務省に流れ込むことになろう。」(訳tnlabo)

この意味するところでは、関税を払うのはアメリカの消費者ではなく輸出国という事になります。

日本政府は輸入の穀物や肉類に関税をかけています。我々の買うアメリカ産の穀物や肉類は関税の分だけ高くなっていて、関税分は日本国民が負担しているのです。

これが関税の常識で、輸出国の方が関税を払うというのは通常あり得ないのです。大抵の解説は関税は輸入サイドが払うものと書いてあります。

しかし輸出関税というのもないわけではありません。ただ目的が全然違います。自国の貴重な天然資源などを安く輸出して、国に損害を与えないように、輸出業者に関税を払わせるというのが輸出関税です。

上のトランプさんの言う関税は、例えば、日本がアメリカに200ドルの車を売ろうとしたら、これに10%の関税をかけます。10%=20ドルの関税は、アメリカの消費者がその車を220ドルで買うのではなく、日本国か日本の輸出企業がアメリカ政府に「関税」という形で20ドルを納めなければならないという事になります。

トランプさんに言わせれば、アメリか市場に入らせて頂いてありがとうございますというお礼か、アメリカ市場に乱入してきた罰金という事なのでしょう。

冒頭に「なんとまあ独りよがり」と書きましたが、これは全くの自己都合で、国際ルールでは認められるものではないでしょう。

日本がアメリカからの輸入品にこれをやったらアメリカは何と言うでしょうか。

以上、この点についてのマスコミなどの指摘が見られないので、皆様のご意見をお伺いしたくて書いた次第です。


「原資料」と「確認」とを心掛けましょう

2025年01月21日 14時06分55秒 | 経済

このブログでは数字をよく使うようにしています。

数字を使っての説明は、比較的に説得力が強いからです。しかも、なるべくグラフ化して使います。視覚に訴えることは印象を強くします。見て頂く方に、出来るだけ正確な情報を確実に伝えたいと考えるからです。

使用する数字を選ぶ時も、グラフ化するときも、見る方が出来るだけ客観的に受け取れる様にする事も心がけます。

こんなことを書きましたのも、若いころ、当時の文部省の統計数理研究所に、仕事が終わってから通い、そこで最も基礎的なことを教わったからです。

講師からは「検算しない数字は数字ではない」から始まって、「数字は必ず原典に当たり、出所は明確に」とか「グラフにするときは、出来るだけ一部分でなく全体が解る形にせよ」などなど、「そんな面倒な」と言ってはいけないという趣旨の発言が聞かれました。

若い時確り言われたことは覚えているもので、ブログを書く時に役立っています。

このブログが言われた通り出来ているか自信はありませんが、物価や賃金、雇用、消費支出関係やGDPなど発表されるたびに原資料に当たり、そこから数字を引き、グラフは出来れば長い期間のものを作るように努めます。    

時に、統計資料が不正確なこともあります。毎月勤労統計の集計に誤りがあったり、建設受注統計に杜撰な集計があったりしますと、批判の口調も厳しくなります。

安倍さんや、菅さんの様な総理大臣が伝聞らしい根拠のない数字を言われた時は、日本の行方を惑わせると直言しなければなりません。

ところで、こういう数字についての作法は、数字を使う人が長い経験の中で積上げて来た知恵なのでしょう。

話は変わりますが、今を盛りのSNSでは、確認していない情報を平気で公にするような人が結構いるようです。一部分だけ取り上げて、とんだ誤解の発生につながることも多々あるようです。

特に視覚に訴える動画が大きな影響力を持つようですが、かつて人々が統計数字を使い始めた時も、数字を使う際のルールが固まるまでには、多分それなりの分別と時間が必要だったのでしょう。

ネット上で情報を伝えるという分野は、今はカオスの中で、一部にルール作りが模索中という状態なのようです。

人間の知恵も進歩していますから、ネットを使う際のルールも 、世界共通の問題として、進歩した知恵で早くまとめ上げてほしいと思うところです。


関税で赤字経済は救えるか:実験開始

2025年01月20日 14時35分15秒 | 経済

アメリかでは1月20日、日本時間では今夜、トランプ大統領の第二幕、トランプⅡが始まります。

不法移民対策が当面する最初の課題でどこまでやるかが焦点のようですが、経済問題としては、関税の引き上げが当面するトランプⅡの主要課題という所でしょうか。

ご承知のように、アメリカは1970年代以来一貫して経常収支の赤字国です。この問題に関しては、トランプさんは、世界の多くの国がアメリカにものを売って儲けている。しかしそうした国々は、自国の利益ばかり考えて、アメリカを利用するばかり。一方アメリカは市場として利用されるばかりで、結局損ばかりしている。

この状況を正すためには、アメリカとして、安価で入って来る輸入品に関税をかけて、アメリカを市場として利用するばかりの国々に対抗しなければならないと言うのです。

 という訳で日本を含めアメリカに輸出をする国に対して1律10-20%、中国には60%の関税をかけるというのが大統領選挙戦の時からの公約です。

アメリカは元々自由貿易の推進を主導した国で、関税引き下げに世界中を巻き込んで、それが世界経済の発展につながると主唱してきた国です。

もともと戦後はアメリカの経済力が強く、穀物から家電製品、自動車、航空機まで、みな競争力がありましたから、日本など他の国はアメリカから輸入していれば国内の生産力がつかないので、輸入品に関税をかけて国内産業を育成したのです。お米はその代表ですし、今でも小麦や大豆、トウモロコシ、牛肉などは、アメリカには敵いません。 

しかし、電化製品や自動車などは日本や中国などの製品の方が安くなり、アメリカは中国や日本の製品を輸入し、貿易は赤字に転落です。

経済の原則は、消費者は割安(良くて安い)のものを買うという事です。トランプさんは、政界中がアメリカに輸出して儲けていると言いますが、アメリカの消費者は、良いものが安く買えて喜んでいるのです。

かつてアメリカが主導した自由貿易で、日本や中国が力をつけて来たのですから、今度はアメリカが力をつける番なのでしょう。トランプさんはそのために関税を引き上げてラストベルト地帯の復活を目指しているのでしょう。

関税は、輸入品に負けているアメリカの産業が復活するための防波堤のようなもので、関税をかけている間に、アメリカが産業の競争力をつける努力をしなければならないという事でしょう。

本当に大事なのは、競争力回復の努力なのですが、その辺りのトランプさんの意識が解りません。

トランプさんがイーロン・マスク氏を重用しているようですが、マスク氏の様な起業家が、沢山生れて来れば成功の可能性は大きくなるでしょう。

トランプさんの実験が成功するか、日本も「注視」しましょう。成功しても、失敗しても,学ぶことはいろいろあると思います。


アメリカは国全体マネーゲームに生きる国

2025年01月16日 13時51分12秒 | 経済

前回は、日本では政府が「貯蓄から投資へ」と課税免除までして株式や投資信託への乗り換えを奨励しているのですが、家計の動きははかばかしくないという状況を見てきました。

政府がいつも引き合いに出すのは「アメリカでは家計貯蓄の半分以上が株式や投信といった投資で、日本の場合は20%程でしかない」という比較です。

そして、もっと積極的に投資での運用を増やせば、家計の所得は増えて、生活は楽になるし、消費も増えて経済成長に役立つから、NISAという制度まで作って、免税までしてあげているのです、という事のようです。それでも日本の家計が政府の方針に乗るのには時間がかかりそうです。

日本の家計が貯蓄優先の理由は多分2つでしょう、1つは、日本には「あぶく銭」(投機などで労せずに儲けた金)をさげすむ文化があったこと(もう過去形ですね)、もう1つは「相場に手を出したら身の破滅」という失敗の経験が多いことです。

森永卓郎さんではありませんが「投資と言っても基本は投機、つまりはギャンブルなのですよ」と損失を身につまされている人が結構多いようです。

株などで儲ける人は大金持ちで眼の利く人、素人が宣伝に乗って手を出せば結局は元も子もなしで終わるという経験が多い現実のようです。

ではなぜアメリでは家計の金融資産の半分以上が株式や投資信託で運用されているのでしょうか。

アメリカでは、多くの人や家計が、株式投資や投資信託で貯蓄を運用し成功している人が多いからでしょう。

というのは、1970年代以降のアメリカというのは、マネーゲームに生きる国になってきているからでしょう。アメリカは経常収支では万年赤字の国です、収入より支出が多い国なのです。赤字部分は資金運用で埋めなければならないのです。アメリカには「あぶく銭」という概念はないようで、何で儲けてもカネはカネで違いはないようです。

所謂金融工学の発展で見るように、アメリカはカネでカネを 稼ぐマネーゲームでは圧倒的に優れた国です。しかも巨大な金融資産を持っていますから、ゲームをすれば殆んど勝つでしょう。

このブログでも「国際投機資本はストーリーテラー」などと書いたことがありますが、彼らが相場のストーリーを作れば、世界の投機資本が提灯をつけるのです。

W.バフェット氏が「これからは日本株」と言って本当に日本株が大幅に上がったのはついこの間の話です。

やっぱりアメリカの家計は、アメリカでは株や投資信託で運用した方が銀行預金より圧倒的有利という経験を持っているのでしょう。

 

やはり、日本の家計が気軽に投資に手を出すのには、成功体験の積み上げが必要なようですが、現状を見ても、成功体験は、なかなか積み上がらないようです。


笛吹けど! 貯蓄が投資に向かわない

2025年01月15日 19時30分13秒 | 経済

日本経済が高度成長からバブルのころにかけても、「貯蓄から投資へ」とか「銀行よ、さようなら、証券よ、こんにちは」などと言われたことが度々ありました。大体は,経済成長が順調で、株式市場が好調な時だったと思います。

日本の家計は真面目で、いつも将来の生活のことを考え、蟻とキリギリスの譬えでいえば蟻型で、頑張って貯蓄をしてきました。

ご存じのように、その貯蓄が積み上がり、今では2200兆円程になっています。日本のGDPが600兆円ですから、年間所得の3倍以上の貯蓄です。

この貯蓄を、出来ればもっと増やしたいと思うのは人情ですから、そこを狙って、銀行と証券会社は競争します。

銀行の売りは「元本は確実に保証します。それに利息が付きます」で、証券は「証券に預ければ多分銀行より増えます。時に減り危険もありますが・・」です。安全優先か、利得優先かの競い合いです。

ところがこの所は銀行預金に金利がつかなくなって、メリットは元本保障だけの様相です。そんな状況の中で政府は、何故か「貯蓄から投資へ」というキャッチフレーズでNISAを代表に、庶民の家計でも可能な少額の証券投資について、配当も値上がり益も課税免除という特典を付けて推奨を始めたのです。

確かにその効果はあって多少の貯蓄はNISAに動いたようです(家計の証券投資が23→24年で4%ほどシェアが増えたようです。

岸田前総理は、アメリカで日本の家計貯蓄のうち証券投資は2割でしかないといと演説したそうで、アメリカの投資銀行やファンドが日本でマーケティングをやったのでしょうか。   

所で、日米の家計貯蓄の構成を比べてみますと下の表です。

 

   家計貯蓄構成に日米比較 (資料:日本銀行・単位%)

日本の証券投資は、政府の旗振りで前年の17%から3~4%ほど増えてはいますが、アメリカにはとても及びません。(ヨーロッパは日米の中間ですが証券投資が30%を越えています。)

ここで疑問になるのは、政府が笛を吹いても何故日本の状況はあまり変わらないのか(逆になぜアメリカは証券投資が多いのか)。何故、証券投資が良くて、預金や貯蓄では駄目なのか、日本で貯蓄が投資に向かうには何が必要かといった事でしょう。

既にお解りかもしれません、が次回はその点を考えてみましょう。

 


雇用のミスマッチについて:考察1

2025年01月14日 13時41分49秒 | 経済

職安の業務統計の有効求人倍率はこのところ1.2倍台で極めて安定しているように見受けられます。

しかしその一方で、大手の電機、自動車、化学などの企業で、国際的な人員削減、そのうちのある程度は国内での削減といったニュースが入ってきます。

最近は、技術革新が急テンポで、特にAIの活用が所謂事務職の大幅な削減につながるのではないかといった意見も多く聞かれますが、その現実化は、今後次第に見えて来るのではないでしょうか。

その一方では、エッセンシャルワーカーなどを中心に、極端な人手不足が起きているようで、特に訪問介護などは、人手不足による事業所閉鎖が相次ぐといった話も聞かれます。

バスの運転手が不足して路線バスの運行を間引きする、不採算路線を廃止するので高齢者にとっては不便になる場合が多いといった地域のニュースも良く聞かれます。

産業構造が、多様な技術革新によって急速に変化し、一方では、高齢化問題なども含めて社会の在り方が変わっていくという時代が、今まさに進展しているのでしょう。

技術革新が、生産現場などの省力化を進め、雇用が縮小し、失業時代が来るというかつての懸念は、技術革新が新しい産業を生むという実体経験によってどちらかというとあまり心配されなくなったのは大変良かったと思うところです。

しかし、これからの問題は、今後一層進歩するであろう産業社会の技術進歩の雇用に与える影響がプラスかマイナスかという問題も含めて、技術進歩の影響(恩恵)を受けにくいエッセンシャルワーカーといった雇用の分野との間で、雇用のミスマッチが、ますます深刻になるのではないかという問題です。

現状で、深刻な問題は、エッセンシャルワーカーの仕事は,人間が人間の世話をするという面が大きいので、人間でなければ出来ない事がほとんどでしょう。産業社会での高度設備を使えば人間が不要になるという「省力化」が働かない分野なのです。

例えば身体介護といった仕事の場合には、相手は人間ですから、そこには人間関係が必然的に発生します。そして人間関係という分野は、ホモサピエンスが発生して30万年の間、基本的に進歩の無い、言い換えれば生産性の上がらない分野なのです。

これを雇用・賃金の単純理論から言えば「同じことをやっていたのでは賃金は同じ」という事になるのです。そして、結果的にそれは、「訪問介護サービスの賃金は上がらない」という現実、そして人手不足につながるのでしょう。

勿論、雇用のミスマッチは、賃金制度・賃金水準だけで解決する問題ではありません。しかしこの問題の解決のための、多分最大の「必要条件」の1つでしょう。

今回は、雇用のミスマッチ問題の最も基本的な「必要条件」の1つについての問題提起をしてみました。


2024年11月平均消費性向下げ止まる !?

2025年01月10日 22時20分17秒 | 経済

今日、総務省統計局から11月の家計調査の家計収支編が発表になりました。

このところ、消費者物価指数は反転上昇の気配で、家計は消費を手控えているという報道が多いので、毎月追いかけている二人以上勤労者世帯の平均消費性向も相変わらず下がっているのではないかと予測して、パソコン上のページをめくっていきましたら、案に相違して11月の平均消費性向は上昇でした。上昇と言っても昨年の11月が74.7%で、今年の11月が74.9%ですから僅か0.2ポイントの上昇です。 

この3年間の動きのグラフを下に掲げますが、ご覧いただきますように今年の5月からずっと前年の数字を下回っていて消費が伸びる気配はありません。

5月からは春闘の結果、賃金上昇になっているはずで、特に6月7月はボーナスがの伸びが大きく実質賃金がプラス転換したにもかかわらず、勤労者世帯の消費は実額で見ても、それを反映するような上昇は見られず、結果的に平均消費性向は前年同月に比べ、かなりの下落となっています。

政府は賃金が上がれば消費が増えて、経済成長率が高まると理解していたようですが、家計の方は、やっぱり将来のことを考えて、一時的に収入が増えたと言っても浮かれて使うべきではないと考えているのでしょう。

それが11月になって消費性向が上がったのです。

年末商戦には未だ1か月ありますが、少し消費意欲が出てきたのかなとも考えましたが、どうもこれは違ったようです。

確かに勤労者世帯の可処分取得は配偶者の収入が増えている事もあって11月には前年同月比4.6%の増加になっています。

一方、消費支出は4.9%の伸びですから、平均消費性向は上がったのですが、支出の内訳の数字が出ている「二人以上世帯の消費支出」を見ますと、目につくのは、(最近エンゲル係数も上がっているようですが)消費支出の3分の1を占める食料の支出が、いい月には、対前年同月比で、名目4.2%、実質 -0.6%という事になっています。

恐らく、11月の状況では、昨年より60%以上も値上がりしたお米の値段を中心に食料費に予想外の支出が必要になったお蔭で平均消費性向が上がったという要因が大きいのではないかという推論結果になった次第です。

やっぱり家計は、未だ消費意欲が出る段階には至っていないのかと考えるのも情けないですが、考えてみれば、毎年それなりの賃上げがあるという日本経済にならないと、家計は将来の心配ばかりで、安定して消費を増やす気にはならないようです。

そういう事であれば、先ずは、これから始まる2025年の春闘に期待することになるのでしょうか。

 


実質賃金、再び4か月連続マイナス(?)

2025年01月09日 15時31分57秒 | 経済

今日、毎月勤労統計の2024年11月が発表になりました。

この所注目を集めているのは実質賃金(指数)の動向で、すでに発表されている11月の反転上昇の消費者物価指数の統計と合わせて、賃金と物価の上昇率の比較から実質賃金の動きが発表されるからです。

実質賃金の動きは2022年の4月から2024年の5月まで25か月にわたって連続して前年水準を下回ったという長期低迷の実態を示しました。昨年の6月に至ってボーナスが良かったことでこの連続記録はストップしましたが、ボーナス月が過ぎた8月から11月まで再び連続のマイナスとマスコミは書いています。

このブログでも、実質賃金の動向は追ってきていますが、昨年の春闘が多少高めだったこともあって、実質賃金はプラスかマイナスかは、統計の見方によるという状態になっています。

昨年1月からの実質賃金指数を毎月勤労統計の実質賃金指数で見ますと下の図です。

 

               資料:厚労省「毎月勤労統計」

5月まではマイナスで、6月は1.1%、7月は0.3%で一応プラスです。しかし8月からは小幅ですが、残念ながらマイナス転落です。ただ春闘前の1~3月から見ればマイナス幅は小さくなっていることは明らかで、昨春闘の賃上げが33年ぶりの大幅賃上げと言われ、この程度の効果はあったという事でしょう。

もともと実質賃金は、長い目で見れば実質経済成長率程度は上がって行ってもいいのですが、実質経済成長率が僅か0.4%という所ですから、やっぱりこの程度という事でしょうか。

ただこのブログでは、いつも触れていますが毎月勤労統計の実質賃金を計算する際の消費者物価指数は、理論的に正しいとされる「持ち家の家賃を除く総合」(家計調査でも同じ)で、これが毎月発表される消費者物価指数「持ち家の帰属家賃を含む」消費者物価指数に比べると上り幅が大きいのです。

持ち家の人は家賃を払っていませんから、持ち家の家賃相当額は、市場の家賃の動きを参考にして決めているとの事ですが、この11月も、通常の消費者物価指数の「総合」は2.9%、「帰属家賃を除く」は3.4%の上昇となっています。

賃金指数の方は「現金給与総額」で3.0%の上昇ですから通常の消費者物価指数を採れば0.1%のプラスです。10月は「除く」が2.6%、「通常」が2..3%の上昇ですから実質賃金のマイナス幅は0.1%と縮小します。

日本は持ち家が大部分で、持ち家の帰属家賃のウェイトは大きいので家賃水準の推計如何が大きな影響を持つようです。

考えてみればこんな1%にも足りない所でプラス・マイナスを論じるよりも、早く2~3%の経済成長を実現して、実質賃金が毎年2%ぐらいは上がって当たり前という日本経済にすることを確り考えた方がいいようです。