今年も春闘の季節に入りました。連合、経団連がそれぞれの主張を展開しています。経団連会館の前に労働組合の旗が立ったりして、遠い昔、日本経済が元気だったころの春闘風景を髣髴させます。
日本経済が元気になったことは結構ですが、今年の春闘論議を聞いていると何となく、「奇妙な春闘だな」などと感じていしまします。
というのは、労働組合側が賃上げ要求をするのは当然として、経団連も、傘下の企業に賃上げをしてくださいと要請しているのです。
労使双方が「賃上げをしましょう」と言うのでは、春闘、「春季賃金闘争」にはならないのじゃないのかな、と中身を見ますと、連合は要求として「ベースアップ2パーセント以上」とはっきり主張し、経団連の方は「ベースアップも選択肢の一つ」などと極めてあいまいな表現にとどめ、「どれだけ支払うかは企業次第」といった言い方のようです。これでは傘下の企業でもどの程度の賃上げをするのか困るところもあるでしょう。
もともと賃上げというのはサラリーマンにとっては「定期昇給+ベースアップ」です。このうち、定期昇給というのは、企業の賃金制度で決まっていて、定期に(通常毎年)4月に賃金制度で定められた昇給(通常、一律部分と査定部分)をする、と言うものですから、企業としてはやらなければならないはずのものです。
これをやらないというのは、いわば約束違反です。伝統的には、不況の時は「定昇延伸」などという形で「実施を半年延ばしてくれ」などと組合の了解を取っていました。 勿論あくまでも緊急避難の措置という事でした。
ところが「失われた20年」の長期不況の中で、緊急避難が5年も10年も続くことになってしまい「約束された定期昇給もやらない」という状態が続いてしまったのです。
経済が正常になったら、「定期昇給は労使の約束」という本来に帰るべきでしょう。
一方、ベアは賃金表の書き替えによる賃金上昇です。カラオケでキーを上げるように、全体が全て上がります。定額でも定率でも、賃金体系そのものが上にシフトします。
しかし、若年層を特に引上げようとか、総合職に手厚くとか、上げ幅に変化をつける場合には、賃金体系の変更ですから賃金体系の改定交渉を含むことになります。
こうした賃上げのルールは、かつては労使間で共通の理解があったはずですが、不況で賃上げが問題にならない期間が長すぎ、正確に伝承されなかったり、忘れ去られたりしてきているように見えます。
春闘にも、現場力の低下の問題があると言っては言い過ぎかもしれませんが・・・。