tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

本格化する賃上げ論争、定昇とベアの問題

2015年01月30日 08時26分26秒 | 労働
本格化する賃上げ論争、定昇とベアの問題
 今年も春闘の季節に入りました。連合、経団連がそれぞれの主張を展開しています。経団連会館の前に労働組合の旗が立ったりして、遠い昔、日本経済が元気だったころの春闘風景を髣髴させます。

 日本経済が元気になったことは結構ですが、今年の春闘論議を聞いていると何となく、「奇妙な春闘だな」などと感じていしまします。
 というのは、労働組合側が賃上げ要求をするのは当然として、経団連も、傘下の企業に賃上げをしてくださいと要請しているのです。

 労使双方が「賃上げをしましょう」と言うのでは、春闘、「春季賃金闘争」にはならないのじゃないのかな、と中身を見ますと、連合は要求として「ベースアップ2パーセント以上」とはっきり主張し、経団連の方は「ベースアップも選択肢の一つ」などと極めてあいまいな表現にとどめ、「どれだけ支払うかは企業次第」といった言い方のようです。これでは傘下の企業でもどの程度の賃上げをするのか困るところもあるでしょう。

 もともと賃上げというのはサラリーマンにとっては「定期昇給+ベースアップ」です。このうち、定期昇給というのは、企業の賃金制度で決まっていて、定期に(通常毎年)4月に賃金制度で定められた昇給(通常、一律部分と査定部分)をする、と言うものですから、企業としてはやらなければならないはずのものです。

 これをやらないというのは、いわば約束違反です。伝統的には、不況の時は「定昇延伸」などという形で「実施を半年延ばしてくれ」などと組合の了解を取っていました。 勿論あくまでも緊急避難の措置という事でした。

 ところが「失われた20年」の長期不況の中で、緊急避難が5年も10年も続くことになってしまい「約束された定期昇給もやらない」という状態が続いてしまったのです。
 経済が正常になったら、「定期昇給は労使の約束」という本来に帰るべきでしょう。

 一方、ベアは賃金表の書き替えによる賃金上昇です。カラオケでキーを上げるように、全体が全て上がります。定額でも定率でも、賃金体系そのものが上にシフトします。
 しかし、若年層を特に引上げようとか、総合職に手厚くとか、上げ幅に変化をつける場合には、賃金体系の変更ですから賃金体系の改定交渉を含むことになります。

 こうした賃上げのルールは、かつては労使間で共通の理解があったはずですが、不況で賃上げが問題にならない期間が長すぎ、正確に伝承されなかったり、忘れ去られたりしてきているように見えます。
 春闘にも、現場力の低下の問題があると言っては言い過ぎかもしれませんが・・・。

日本の実体経済、その強さと弱さ4<全体的見地から>

2015年01月27日 09時53分46秒 | 経済
日本の実体経済、その強さと弱さ4<全体的見地から>
 労使関係のバランス「労働分配率」と官民関係のバランス「国民負担率」と実体経済の関係を見て来ました。
 まとめとして、国民経済の最も基本的はバランスである国際収支のバランス「経常収支」も加えて、総合的な関係を見ておきましょう。

 一国の経常収支は、「その国が、GDPの範囲で暮らしているか、GDP以上の暮らしをしているか」を示す数字です。
 GDP以上の生活をしていれば、国の経済は赤字となり、赤字分は、どこからか借金しなければならないことになります。

 家計(夫婦共働き)に例えてみれば、「労働分配率」は家族(夫婦と子供)の消費生活のためにどれだけ使っているかということで、余った分は将来の子供の学費、老後費用、家の建て替えなどのための貯金になります。「消費+貯蓄=収入」です。

 国民負担率は父親や母親が家庭を維持するために支出する費用で、政府、地方自治体、町会、等の税金や費用から、父親・母親が「家族のために」使わなければならない家の体面を保つための費用ということになりましょう。父親の交際費も入るかもしれません。

 将来への備えのない家計(高すぎる労働分配率)は、貯蓄過小で何かあると借金しなければなりません。借金出来なければ、家族の将来に問題が生じます。
 通常、家庭の親は自分の経費は節約して家族のためにお金を使います(小さな政府)。親が「家庭を維持するためには経費が掛かるのだ」と言って金を沢山使うと(高い国民負担率)家族は貧しくなります。

 こうした活動が、父親、母親の稼ぎの中で収まっていれば、家計自体は赤字になりません。稼ぎをはみ出すと、親戚や知人、あるいは銀行、さらにサラ金から借金しなければならなくなります(国の経常収支赤字)です。

 日本の場合はどうでしょうか。親(政府)は「家庭の維持には経費がかかる」と言って金を使います。幸い子供(国民)が倹約で貯金をしていましたから「それを貸しなさい」と言って借りています(国債発行)。
 家計としては赤字になっていませんが、家の中の分配関係は改善しないといけないようです。

 今回のギリシャの場合などは、生活費が収入を上回っていたので、父親が「もっと倹約しないと我が家は潰れる」と言って、倹約を始め、やっと赤字が出なくなって「よし、これからも頑張ろう」と言っていたところ。家族が「こんな倹約生活はもう御免だ。オヤジの頭を元に戻せ」と言って選挙で野党が勝ったという図柄でしょう。

 家計そのものが赤字という場合は早く何とかしなければいけませんが、日本のように、家計は現状黒字でも「子供が黒字」「親は赤字」と言う状態では、これをあまり長く続けるわけにはいきません。

 「和を以て貴しと為す」と、日本は昔からバランスを貴ぶ国です。自然そのもの、地球も宇宙全体もそうですが、アンバランス、インバランスは長くは続きません。
 日本人は改めてバランス感覚に磨きをかける必要があるようです。「過ぎたるは及ばざるがごとし」「無理が通れば道理が引っ込む」「三方一両損」「貧しきを憂えず、等しからざるを憂う」などなど、古来、日本には、バランス感覚を原点にしたいろいろな諺もあります。

日本の実体経済、その強さと弱さ 3 <健全な発展のために>

2015年01月25日 20時55分31秒 | 経済
日本の実体経済、その強さと弱さ 3 <健全な発展のために>
 「労使」と「官民」の適切なバランスが必要と言う中で、日本の場合、労使のバランスは国際的に見ても最も健全な部類ですが、官民のバランスはあまり良いとは言えないようです。

 今回の消費増税も、政府の官民バランスを改善したという所から出たものですが、国民の方は、「増税に前に、政府自身が先ず身を切れ」と言って、国会議員の定数削減や公務員給与の減額を主張するということになります。

 それを無視して消費増税をした結果が、国民の強い反発、消費節約によるマイナス成長という結果を齎したともいえるでしょう。慌てた政府は、残りの2パーセントの増税を延ばしました。

 官民バランスの是正を国民合意の下で行おうという動きは土光臨調の時、土光さんの人柄もあり国民運動のようになり3公社民営化など大きな成果を上げましたが、「本丸に切り込む」国会議員や公務員の「身を切る改革」はいつも有耶無耶になってきています。

 加えて、増税で増えた政府の収入が、公約の通り、社会保障財源として「このように生かされた」という説明が不十分で、国民は負担と給付の関係を理解できていません。国民は将来不安を払拭できず、生活防衛に傾くようです。

 官民バランスの問題、議員定数削減問題、給与・年金の官民格差問題、天下り問題など、既に30年以上にわたって言われながら、そのコアの部分については、未だに手が触れられていないというのが実態ではないでしょうか。

 漸く日本経済が正常な成長軌道に乗ろうとしています。まさに天の時でしょう。この際改めて国民の総意を戴し、抜本的な官民バランスの改革を行うことが出来れば、日本経済は何処から見ても健全なものになるでしょう。
国家100年の計の上でも、基本的に重要な問題点の解決になるのではないでしょうか。

日本の実体経済、その強さと弱さ 2 <2つのバランスとは>

2015年01月22日 09時05分02秒 | 経済

日本の実体経済、その強さと弱さ 2 

 前回、経済活動の中で最も重要な2つのバランスとして、労使関係のバランスと官民関係のバランスを 挙げさせて頂きました。
 この2つのバランスを現実の社会・経済の中に当て嵌めてみましょう。

 先ず、労使関係のバランスというのは、社会学的には、労使が敵対関係か信頼関係かといった労使の在り方の問題です。経済・経営指標で言えば、「労働分配率」に現れます。

 企業レベルでは労使が協力して創出した付加価値を労使の間でいかに分配するかが春闘問題です。労使関係が信頼関係にあれば、分配の交渉は合理的なものになり、結果は企業の成長発展にとっても合理的なものになるでしょう。
 労使関係が敵対的であれば、分配は力づくになり。往々企業経営に問題を生じます。

 企業レベルの労働分配率の総和が、日本経済レベルの労働分配率になります。経験的には労働分配率が高すぎれば利益が減り不況になって、経済成長は止まります。
 労働分配率が低すぎれば、格差社会化、生活不安、消費不振で成長が止まります。
 どの程度の労働分配率が適切かは、その国や企業の経済発展段階や、経済状況、さらには「経済計画」、企業では「経営計画」の中で判断されるべき問題です。

 では、官民バランスとは何でしょうか。これは社会学的(政治学的)には、政府と国民の間の信頼関係です。経済指標では「国民負担率」に現れます。国民所得のうち、何パーセントを税、社会保険料などで政府に納めているかです。昔は5公5民などと言われました。
 国民負担率は、北欧諸国は最も高く、ヨーロッパ大陸諸国も高く、50~70パーセント、アメリカは30パーセント台、日本は約40パーセントです。

 国民負担率が高いと社会主義的、低い方が自由主義的ということになりますが、これは、お国柄、国民文化、 政府への信頼度などによるようです。

 日本ではこのほかに、政府が税金で取るのではなく、国民から借金(国債発行)して使っている分が約10パーセントあります。国民は、政府にいろいろやってほしいが、無駄遣いする政府に税金を納めるのは嫌だ、カネが無ければ、貸してやる、後からきちんと返せ、ということで国債発行残高が膨らんでいるのでしょう。

 日本のこの状態というのは、官と民の信頼関係は確りせず、官への不信感も強く、その結果官民バランスは不適正で、国債発行で辻褄を合わせているということになるようです。
 その結果いろいろ不具合が起きているわけで、その辺を次回見て見ましょう。


日本の実体経済、その強さと弱さ 1

2015年01月20日 10時24分13秒 | 経済
日本の実体経済、その強さと弱さ 1
 前回、最近の株式市場の乱高下は、日本の実体経済にはほとんど関係ない動きなので、そんなことに一喜一憂せず、実体経済の健全な発展に力を注ぎましょうという趣旨の事を書かせて頂きました。

 アメリカ発のマネー経済の流行で、経済の勉強には株式市場の見学が良いなどといった困った風潮もあります。
 本当の経済活動というのは、モノづくりの現場やコンビニの流通・販売システムなどで、誰もが毎日接触しているところです。

  マネー、金融、証券市場というのは、本来、そうした実体経済活動をスムーズにするための潤滑油として生まれたものです。今それが巨大投機資本という形で独り歩きし、本体である実体経済を振り回しています。困ったことです。

 その中でも日本は $1=¥80が$1=¥120になって、日本の実体経済はやっと順調に回転するようになって来ました。円高という桎梏から解放されたからです。

 勿論、経済のグローバル化で、海外諸国の経済状態に影響されますが、世界3位の規模を持つ日本経済です、アメリカやヨーロッパがガタガタしても自立した成長路線を確保することは決して不可能ではありません。

 現に1980年代の前半までは、アメリカやヨーロッパ主要国が軒並み先進国病(中身は スタグフレーション)で苦しむ中で、日本は「 ジャパンアズナンバーワン」と言われる経済を実現していました。

 この実績の背景は何だったのでしょうか。すでにご承知の方も多いと思いますが、労働コストの安定です。スタグフレーションの前段は「 賃金コストプッシュインフレ」です。コスト高で競争力が落ちると、売上減、生産減、利益減で物価上昇と不況の併存、つまりスタグフレーションになります。

 政府は景気を回復させようとケインズ政策を取りますが、グローバル化の中で競争力のない経済を財政出動で浮揚させることは不可能です。結局は財政赤字、そして増税となります。
 日本でも、プラザ合意による円高、競争力喪失、財政出動、財政赤字、消費増税ということになりました。

 こうした各国の経験から見えて来るものは何でしょうか。経済活動の中で最も重要な2つのバランスが見えて来るのではないでしょうか。
 それが「労使関係のバランス」と「官民関係のバランス」です。
 この辺りから、今後の日本経済の将来も見えて来るようです。(以下次回)

株式市場の乱高下と実体経済

2015年01月18日 09時59分31秒 | 経済
株式市場の乱高下と実体経済
 アメリカの異次元金融緩和の後始末も次第に終盤に入り、金利の引き上げを視野に入れた仕上げの段階に入るということでしょうか。
 
 経済評論家もマスコミも、アメリカ経済は力強い動きをしているといった言い方をしていますが、アメリカ経済が活発に動けば動くほど、経常赤字が増加するという背後にある事情に触れる解説はあまり聞きません。

 赤字は外国からファイナンスするしかありません。しかしリーマンショック以来、アメリカの証券は信用力を失墜しています。金融工学も馬脚をあらわしてしまいました。
 アキレス腱を庇いつつ、これからアメリカはどうするのでしょうか。

 翻って日本はどうかと言えば、アメリカに倣った異次元金融緩和を未だ続けています。日本経済が成長軌道に乗れば、矢張り金融の正常化を進めなければなりません。
 日本の場合、政府は借金まみれですが、国としては黒字国です。国民の合意さえ得られれば、国内で解決出来ます。国内政治の問題です。

 われわれ国民にとって、もちろんこれは大問題ですが、経済に元気が出れば、政府も国民も本気で考え、取り組みの具体策に真剣になっていくでしょう。日本人の真面目さと思慮深さがそうさせると思います。

 われわれは結局のところ、われわれの生産するGDPの範囲で暮らしていくことしかできないのです。GDPという付加価値を、企業の労使が、また、政府と民間が、どう分け合うか、最適な分配を模索することが、単純に言えば、経済政策のすべてでしょう。

 この経済政策の原点をしっかり理解していないと、GDP以上の生活が出来ると錯覚して赤字国に転落します。ギリシャ、ポルトガル、スペイン、イタリアなど、EUを揺るがした問題の原因もそれですし、今日の世界経済不安定の大きな原因も、アメリカが万年赤字国だということです。

 実体経済の赤字をファイナンスするためには資本収支で埋めるしかありません。マネーマーケット盛況はその結果でしょう。マネーゲームには相場の変動が必要です。当然株式市況も乱高下しなければなりません。

 実体経済とほとんど無関係なマネーマーケットの変動に一喜一憂することなく、実体経済の健全な活性化に注力することが、皮肉にも、最終的にはマネーマーケットで勝利することにもなるというのが、歴史の経験のようです。

国連の役割に期待したい

2015年01月15日 21時28分24秒 | 国際政治
国連の役割に期待したい
 このところ、我々の考えも及ばないようなことが起こります。一片の風刺画のせいで、十数人の人間が死ぬといったことがあっていいものでしょうか。
 しかもそうした動きが、相争う当事者の間で、エスカレートするのではないと恐れるような状況も予測されたりしています。

 日本人には、こうした問題の理解は大変難しいように思われます。日本人は昔から「喧嘩両成敗」とか「負けるが勝ち」などという諺を聞きながら育ってきました。
 縄文の昔から、日本人は、争い事はあまり好きでなく、また不得手でもあったのではないでしょうか。

 そんな目で見ると、勿論、表現の自由も重要で、名誉を重んじることも大事ですが、そのために大勢の人が死ぬといったことは何とか避けたいと、そちらの方に思考の重点が行ってしまうように思います。

 こうした問題には、常に仲裁者が必要でしょう。国と国との争いの仲裁者として、第3国が役割を果たすこともありましょう。しかし本来そういう機能を持つシステムとして人間の知恵が作らせたのが国連ではないでしょうか。

 国連の機関であるユネスコの「憲章」の前文には「戦争は人の心の中で起こるものであるから、平和の砦は人の心の中に築かなければならない」という趣旨のことが書いてあります。これは戦争でもテロでも基本的には同じでしょう。

 こうした人類のより良い将来のための取り組みを担うのは、人類全体を「カバーしうる」唯一の組織「国連」を措いて他にはありません。

 今の国連については諸々の批判もあります。しかし人類が過去の紛争に懲りて、知恵を絞り、せっかく作りあげた国連です。世界人類のより良き将来のために、世界の国が改めて知恵を絞り、その本来の役割を果すようにしてほしいと思うや切です。

前回の「付加価値率を見よう」の追補

2015年01月12日 10時15分13秒 | 経営
前回の「付加価値率を見よう」の追補
 付加価値率を見て頂くうえで、ご留意頂きたい点を挙げておきます。

① 付加価値の内容は、統計資料によってかなり違います。同業平均などと比較する場合は必ずその統計資料の「付加価値の定義(内容)」を確認して比較して下さい。

② 付加価値率は産業別、業種別、企業別など業態、仕事の態様によって大きく違います。従って、「法人企業統計」や「中小企業の経営指標」などの数字と自社の数字を比較する場合は業種、業態、(付加価値の定義はもちろん)を出来るだけ合わせてご検討ください。

③ 現実には企業の態様は千差万別ですから、同業(同規模)他社との比較には限界があります。あくまでも参考資料です。但し「なぜ違うか」の分析は役に立つでしょう。

④ 大事なのは、自社の数字の時系列分析です。この5年間にどう変化したか、何が原因で上がり、何が原因で下がったのか、この分析が将来目標の設定に有効です。

⑤ 今後の目標設定に当たっては、過去の実績を踏まえて、日本経済の現状を勘案、意欲的に設定する時期ではないでしょうか。。

⑥ 為替レート、取引条件(仕入販売の価格変化)、製品(商品)構成は付加価値率に直接影響します。もちろん本命は、技術革新、魅力的な新製品(サービス)の開発です。

 日本経済再活性化の中で、是非一層の高付加価値化(付加価値率の向上)を進めて頂きたいと思っています。

わが社の付加価値率を見よう

2015年01月10日 23時19分51秒 | 経営
わが社の付加価値率を見よう
 ご自分の会社の付加価値率、それが此の所上向きか下向きかご存知でしょうか。

 以前「自己資本比率を見よう」と書きました。今回は「付加価値率を見よう」です。
 「自己資本比率を見よう」と書いたのは2008年、デフレ不況の最中で、アメリカのサブプライムローンが問題になり世界中の金融機関が怪しくなる時期でした。翌年にはリーマンショックで、 金融機関のバランスシートが毀損し、貸し渋りや貸し剥がしが起きるという事態になりました。そうなると負債の多い企業は大変です。自己資本比率の高低が企業の死命を制しかねません。

 ところで今日はどうでしょうか。かつて低かった日本企業の自己資本比率も随分改善されました。そして金融は未曽有の緩和で、金利は異常に低いままです。企業はあまり金融機関から金を借りません。自己資本が厚くなっているからです。

 そんな今、サラリーマンの皆さんに注目して頂きたいのは「付加価値率」です。
 「売上」や「利益」は誰もがご存知ですが、「付加価値」と言うと、曖昧な理解が多いようです。ネットで付加価値の説明を見ても、結構誤った説明があります。

 「付加価値の正確な理解を」はtnlaboのブログの中でも最もアクセス数の多いものですが、企業の財務諸表の中には出て来ないので、馴染みが薄いのでしょう。
 一方国民経済では、売り上げや利益ではなくてGDPが一番よく使われます。そして、GDPは付加価値そのものです。

 日本人は日本のGDPを使って生きているのです。同じように企業でも、設備投資から賃金の支払いまで、つまり企業のすべての活動から経営者・従業員の生活まで、これらはすべてその企業の生み出した付加価値によって支えられているのです。

 要するに、付加価値は売上高から外部購入費用をすべて差し引いた残り、つまり純粋にその企業が創りだした経済的な価値の事です。逆算すれば、企業が払っている人件費と企業の生み出した利益+資本費の合計です。

 企業を構成するのは人間と資本ですから、作られた付加価値が人間と資本に分配されるのは当然ですが、ここで大事なのが、「売り上げの中で何パーセントが(人間と資本に分配される)付加価値か」という数字です。

 計算式で言えば、「付加価値/売上高×100=付加価値率(%)」ということで、売上高の中で「どれだけその企業が生み出した価値か」です。
 同じ材料から作っても、より優れた魅力的な製品であれば、高く売れ、付加価値部分が大きくなるわけです。いわゆる高付加価値経営です。

 ですから付加価値率というのは、その企業の総合力の高さを示すとも言えますし、付加価値率が高まっているということは、その企業が「進歩・進化」している証拠です。
 今や日本経済は新しい発展段階です。これからは 付加価値率向上が勝負です。

日本経済、今年は成長路線へ

2015年01月08日 10時46分19秒 | 経済
日本経済、今年は成長路線へ
 政府が2015年度の経済成長率を実質1.5パーセント、物価上昇を含む名目で2.7パーセントに決める方針という報道がありました。
 アベノミクスを喧伝する割には低目だなといった感じでしょうか。GDPでフレーターも1.2パーセントと低く、2パーセントのインフレターゲットには届きませんが、昨年のように、1.9パーセントなどと鉛筆を舐めるより良心的です。

 ところで民間企業で、実際にお仕事をしておられる皆さん、現場の実感をお持ちのエコノミストの方々、この1.5パーセント成長予測にどんな感覚をお持ちでしょうか。tnlaboは正直言って、日本経済にはもう少し元気も実力もあるのではないかと感じます。

 世界情勢は不安定です。原油価格が乱高下し、EU、ロシアの経済不振が言われ、そのたびに、マネーマーケットは乱高下します。多様な国際紛争もあります。アメリカの出口戦略には今後もいろいろあるでしょう。

 しかし、日本経済、それを支える日本企業の活動状況、雇用、賃金問題、労使の対応などを冷静に見て行くと、いよいよ日本の実力が生きてくる環境になりつつあるような気がします。

 最も基本にあるのは円レートでしょう。もっと円安(円暴落)になるとか、したいとかの意見もあるようですが、繰り返し述べますように、もう日本は物価の安い国です。これ以上の円安は必要ありません。他方、今回も「有事の円」を感じさせる日本の国債への需要もありましたが、円高に大きく振れるようなことは当面なさそうです。

 $1=¥120辺りで、一方アジアの低賃金諸国の賃金上昇、インフレ率は加速しています。いよいよ、多くの日本企業が、国内回帰を考え始めています。日本品の質がいいのは、日本人よりも、外国人の方がよく知っているようです。日本の国産品のプレステージは高まるでしょう。

 日本食、和紙、さらにはジャパニーズクール、カワイイといった日本の生活用品、生活文化そのものが世界の人気になっています。
 このところ、大企業製造業の国内回帰の報道も多いですが、地方の伝統企業やベンチャー企業の世界のマーケットへの進出も急です。

 原油価格の低落は、何時まで続くか不明ですが、これに狼狽するのはマネーマーケットの話で、実体経済としては、これは産油国から石油消費国への富の移転です。99パーセント輸入原油に依存する日本経済には99パーセントプラスです。

 人手不足の中で、新卒採用は増え、正規雇用化も進むでしょう(進めてほしいと思います)。賃金も上昇するでしょう。しかし、大きなコストプッシュになるような春闘結果にはならないでしょう。
 日本経済は、安定した成長路線に進む可能性が高まっています。

 もともと日本的経営は常に「実体経済」にその基礎を置いた、足の地についた経営の在り方が基本です。いよいよ日本経済の出番ではないでしょうか。

家計貯蓄率赤字化と日本人の行動予測

2015年01月06日 23時03分02秒 | 経済
家計貯蓄率赤字化と日本人の行動予測
 前回、2013年度の家計貯蓄率赤字化の基本的原因は高齢化の進行、典型的に言えば、平均消費性向135%(「家計調査報告」2013年)の高齢無職所帯の増加にあることを見て来ました。
 将来が心配という意見も多い中で、tnlaboは楽観的と書きましたが。その辺りをもう少し見て行きたいと思います。

 もちろん楽観的と言っても成り行きに任せればいいというわけではなく、日本人の努力が問題を解決するだろうという意味です。

 第1は、赤字化という状況が、雇用者報酬の長期停滞の最後の画面で起きているという点です。
 国民所得統計で雇用者報酬の推移を見ますと、1997年度は279兆円でした。それが、2005年度には27兆円減って252兆円に、その後いざなぎ越えで2007年度256兆円と4兆円増えましたが、リーマンショックで、2009年度には243兆円に13兆円減少、2013年度でも248兆円と5兆円の増加にすぎません。

 現実に日本経済自体が縮小し、家計の収入が減っていく中では、いかに貯蓄率を維持しても貯蓄は増えようがありません。高齢化の影響だけが出てきます。
 しかし、円高がぶり返さない限り、これから日本経済は成長経済になるでしょう。状況は変わるはずです。

 既に求人は大幅増、今後は安定雇用も増え、高齢者雇用も増加するでしょう。こうした変化は働く世代の所得である雇用者報酬を増やし、貯蓄の絶対額を増やすでしょう。高齢者の就業も容易になり、高齢無職世帯の増加にもブレーキになるでしょう。 
 これを計量的に推計することは容易ではありませんが、その結果は「アリ型」の日本人の消費・貯蓄行動に任せて見て行きたいと思います。

 第2は、これから格差社会の改善が進む(進めなければならない)と考えるからです。格差社会になれば超金持ちが巨大な貯蓄をするから貯蓄が増えるというのはどうやら誤りでしょう。日本人のような生活意識の中では、特に「中間層の厚み」が家計貯蓄率を決めるというのが実態でしょう。
 幸いなことに、与党も野党も「中間層の拡大」とか「分厚い中間層」とか言っています。現在は非正規雇用の活用に傾いている企業も、次第に従業員の能力開発を重視し、安定した長期雇用を志向することになるでしょう。

 時間が必要でしょうが、金利の正常化も今後視野に入ってくるでしょう。日本の経済社会が次第に正常化を辿る中で、 問題がどのように展開され、どのように政策がとられ、どのような結果が出るか注視していきたいと思います。

2013年度、家計貯蓄率マイナスに

2015年01月05日 10時38分18秒 | 経済
2013年度、家計貯蓄率マイナスに
 前回も触れたところですが、民間黒字大国の日本で、いよいよ家計貯蓄率がマイナスということなので、その辺りを少し調べてみました。

 家計貯蓄率のマイナス化については、インタネットで検索して頂けば、既に多くの論文があり、2010年代にはマイナスになるといった予測もなされています。共通の指摘は高齢化で貯蓄を食い潰しながら生活をする人が増えるという点です。

 海外の論客などが、「いよいよ日本も貯蓄が出来ない時代に入って、ギリシャのようになる事が懸念される」などと言うのを見ると、「もう少し日本人を理解してから物を言ったら」なんて言いたくなったりします。

 確かに、家計調査でみても、平均消費性向(+平均貯蓄性向(黒字率)=100%)は2013年で74.9%(黒字率は25.1%)で微かな上昇トレンドといったところですが、これは勤労者世帯(2人以上所帯)平均で、その中でも60才以上世帯では95%近くです。
 更に今後増えるであろう高齢無職世帯(まさに我が家のような)の平均消費性向は135パーセントに近いというのが実態(2013年度家計調査報告)です。

 100パーセントを超える分は、貯蓄の食い潰しか借金(リバース・モーゲージ?)ということになりますが、国民所得統計の家計貯蓄率には「年金積立金の純支払い」も入っていて、これも掛金収入よりも、年金支払額の方が大きいので、貯蓄の減少になります。
 政府はGPIFの株投資で儲けようとしているようですが、危ないものです。

 Tnlaboでは、「日本人はアリ型で、キリギリス型ではない」と言ってきていますが、人口構造の影響は深刻です。
 せめてこれを梃子にして、政府に「今までのように国民の貯蓄を当てにして安易な国債発行は出来ませんよ」と財政再建を迫るには、大変好都合ということぐらいがメリットでしょうか。

 ところで、2013年度に家計貯蓄率がマイナスになったという状態は、高齢化という不可避的な問題に加え、「消費増税に駆け込み需要」といった説明がされています。しかしこれはその後の買い控えと相殺されるでしょう。

 こうしてみると、家計貯蓄赤字化は基本的に高齢化社会の帰結で、今後も不可避的に続く可能性が大です。現にそうした論調もあり、前述の海外からのコメントもその視点です。
 では真面目な日本人にしてもこの傾向は避けられないのでしょうか。
どちらかと言うと楽観主義のtnlaboは、別の可能性を考えています。(以下次回)

本年の日本経済、楽観しつつ、締めるところはきちんと

2015年01月02日 11時36分38秒 | 経済
本年の日本経済、楽観しつつ、締めるところはきちんと
 Tnlaboでは、今年は、日本経済も健全な成長に向けての動きが徐々に見えてくる年ではないかと思っています。
 例年なら、年末に出される政府の「来年度経済見通し」も今年は政府自己都合の年末選挙のお蔭で、まだ出ていないので、政府がどんな来年度経済を構想しているかわかりませんが、さしあたって日本経済は余り心配することはなさそうです。

 昨年は消費税増税3パーセントで経済失速、慌てて次の2パーセントは先延ばしなど迷走する経済政策でしたが、人気取り専一の安倍政権がバタバタしてもそれに関係なく日本経済は着実に再生路線を進むでしょう。

 いわゆる第3の矢も、増税先延ばしで窮屈な財政のせいでしょうか、ばらまき中心から、国民性活の安定向上を側面から援助するといった(エコポイント、グリーン減税・補助金など)「頭を使った経済政策」も取り入れて来ています。却ってよかったようです。 

 とはいえ、注意すべき点もあります。先ず円レートを現状程度で安定させることが大事でしょう。2パーセントのインフレターゲットや、投機筋の思惑に乗って更なる円安などということになると、海外からの円安批判、反動による円の乱高下といった実体経済にマイナスの事態が懸念されます。

 今の日本は世界でも物価の安い国になってきています。さらにアジア諸国でも賃金コストは急速に上がりつつあります。円レートの安定が見通せれば、製造業の国内回帰も次第に現実になるでしょう。すでに企業の意識も変化してきているようです。

 今年企業に求められるのは、企業の力で社会の安定に貢献できる最も大事なこと「安定雇用の拡大」(非正規社員の正規化を中心に)でしょう。
 安定雇用中心になれば、企業は長期見通しを確り立てた経営をせざるを得なくなります。それこそが経済社会の健全化、安定化のベース、日本的経営本来の在り方です。

 もう一つ注目すべきは、家計貯蓄率の低下・マイナス化です。高齢化社会は、当然、貯蓄食い潰し社会になります。今後賃金上昇率も次第に改善するでしょうが、貯蓄は急には増えません。高齢化による貯蓄食い潰しの影響に注目が必要です。

 加えて、企業が、今まで様子見で保有していた余裕資金を新しい経済の段階に向けて投資に向かわせることになる可能性も高く、家計、企業ともに貯蓄率が下がる可能性が出て来るでしょう。これは日本経済の活性化にはプラスですが、国の財政は大変です。
 政府はもともと大赤字です。民間貯蓄が、国債購入という形でその赤字を補てんしていたのですから、民間貯蓄の減少は深刻な問題になりかねません。

 政府は何処までそうした先行きを見ているのでしょうか。先ず隗より始めよと言われる国会・公務員の徹底したスリム化とコスト削減、消費増税の検討、さらには、格差拡大に貢献した所得税のフラット化の見直し、等など、いよいよ本気で、財政再建への努力が要請されることになりそうです。

 今年も皆様とともに、日本経済をしっかりと見守っていきたいと思っています。

新年明けましてお芽出とうございます。今年は良い年に

2015年01月01日 00時33分53秒 | 経済
新年明けましてお芽出とうございます。今年は良い年に

 先ずはお元気で新しい年をお迎えのこととお喜び申し上げます。

 昨年来の政府の迷走はありましたが、今年の日本経済は、着実に健全な再活性化の道を進むのではないかと予想しております。その根拠は、毎度申し上げておりますように、日本国民の真面目さ、黙々と「不言実行」といった形で、やるべきことをきちんとやっていくという性格にあると思っています。

 今年も日本経済の活性化のプロセスを皆様と共に追っていきたいと思います。
 本年もよろしくお願い申し上げます。  (Tnlabo)