tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

ギリシャの悲劇

2015年06月30日 12時07分23秒 | 政治
ギリシャの悲劇
 「ギリシャ悲劇」は人口に膾炙していますが「ギリシャの悲劇」はどうでしょか。近頃問題の「総理大臣談話」と「総理大臣の談話」も「の」があるかないかで大部違うようですが、「の」の字もご活躍のご様子、ご苦労様です。

 一国の政治・経済というのは、リーダーの思考や行動次第で、とんでもないことになりかねないという実例はたくさんありますが、今回のギリシャ問題もその一つでしょう。

 ギリシャはEU加盟(1991年)、ユーロ導入(2001年)でユーロ経済に一員としてやって来ていましたが、歴史的にはヨーロッパ文明の源流(ヘレニズムとヘブライズム)の一方の雄であり、ヘレニズムの原点の国ですから。アクロポリスなど歴史・文化遺産はきわめて豊富で、観光立国としてやってきたようです。

 しかしよく言われますように、享楽的、楽天的な国民性の故か生産的な活動の弱さと贅沢な生活で、国としてはいつも赤字(経常収支)で、自国通貨ドラクマの時代は、通貨価値の下落が贅沢を制限しましたが、ユーロ導入により、通貨価値は下落しなくなり、実力以上の生活を謳歌したようです。

 その結果、国の赤字(経常赤字)は急増、当時 このブログでも取り上げていますが、結局、IMFやヨーロッパ中央銀行(ECB)が緊縮生活による経済立て直しを要求、それに応えて一昨年あたりから漸く赤字国を脱していきました。

 ところが緊縮をやらなくてもやっていけると主張するチプラス政権が誕生、そこからギクシャクが始まりました。「経済にタダの昼飯はない」というのは常識ですが、はっきり言えば、チプラス政権は「ただの昼飯を食わせろ」と主張、昼飯のメインの提供者であるドイツが反発、結局経済原則に則るべしとIMFもECBも厳しい態度で臨むことになりました。

 チプラス氏はこれに反発、国民投票で賛否を問うということになったわけですが、マスコミ報道ではチプラス氏は負けそうです。国民の方が真面目なようです。
 
 国際投機資本は、これをネタに儲けようとマネーマーケットの乱高下を仕掛け、昨日は世界中で株価が暴落しました。
 
 物事の本質を読めないリーダーが間違って登場してしまいますと、その国に無用な混乱を起こします。国際投機資本はそれを増幅します。
 国民にとっても、世界にとっても、誤ったリーダー選択をしないということは誠に重要なことのようです。

マネー資本主義と消費不振、労働経済(実体経済)の視点から

2015年06月28日 20時55分49秒 | 経済
マネー資本主義と消費不振、労働経済(実体経済)の視点から
 前二回、此の所の物価超安定の原因について見て来ました。大きく2つに分ければ、貨幣供給をいくら増やしても物価が上がらない。賃金コストプッシュが起きないから物価が上がらないといった状況が見えています。
 
 これは別の視点ですが、マネー資本主義が繁栄する中で、格差社会化が急速に進んでいるという指摘があります。
 ピケティの言うように、格差社会かは、第二次大戦後の一時期を除いて、常に進行するものだといった運命論では身も蓋もありませんが、大事なのは、第二次大戦後の経済の成長期の分析ではないでしょうか。

 この時期の特徴は、多くの国々が、他国や植民地を収奪しなくても、真面目に働けば豊かな国になりうるという経済成長の本質を発見したことです。
 富の移転(収奪)で豊かになるのではなく、生産性を上げることで実体経済が成長拡大し、豊かで快適な社会をつくることが出来ることに気づき、実践した時期です。

 資源の無い日本が勤勉な労働で世界第二の経済大国になったことは、その典型ということが出来ましょう。今、アジアの国々では、この考え方が一般的です。

 この経済成長の概念の中心は「労働生産性」で、これは労働経済のメインテーマの一つです。そして生産性向上の成果をいかに(資本と労働に)分配するかという「労働分配率」が二つ目です。

 こうした人間の努力が生産性向上、豊かで快適な社会の実現に貢献するという概念が、折角形成されてきたところに、その成果をマネーゲームで自分の所に移転させようという「マネー資本主義」が生まれてきたのです。

 マネー資本主義は富を創りません。移転させるだけです。そして積みあがった富は、賃金などに分配されることはなく、より大きなマネーの獲得のために使われます。
 そこには労働分配率の概念はありません。マネーは巨額に積み上がるだけで、均霑しません。実体経済活動、労働経済の分野での活動では「トリクルダウン」が生じますが、マネー経済学では「富(マネー)」の蓄積の格差が発生するだけです。

 これでは、いくら金融を緩和しても、格差の拡大が起こるだけで、一般国民の所得は伸びず、消費も伸びず、実体経済の成長には繋がりません。実体経済・国民生活の向上の遅れ、格差拡大の背後にはマネー資本主義があり、これも物価の上がらない原因でしょう。

物価超安定の時代: デフレ傾向をもたらすもの

2015年06月28日 10時06分09秒 | 経済
物価超安定の時代: デフレ傾向をもたらすもの
 今、日本は低インフレです。安倍政権も日本銀行も、2パーセントインフレという目標を掲げていますが、今年の4月からは消費税増税の影響が消えて、3月までの2パーセント台から0.5パーセント近辺に下がりました。

 私は個人的にはベストの状態と思っていますが、理由は、放っておいても今後消費者物価はじりじり上がるでしょうから、あんまり急いで高くして、あとから引き締めなどといったギクシャクしたことにならないようにする方がいいと思っているからです。

 日本の物価は国際的にも高いものではなく、品質とのバランスで言えば割安でしょう。だから海外から観光客が沢山来てお土産も買って帰るのです。

 国際比較で物価が安ければそれ以下には下がりにくいものです。あとは安定か上がるしかありません。安倍さんは賃金コストプッシュイ・ンフレがいいと考え、賃上げを奨励します。日銀は、通貨供給を増やして物価を上げようとしています。

 今両方とも機能していません。金融緩和で上がるのは株ばかり。バブルで懲りて地価もあまり上がりません。労働組合は、経済がよく解っていますからインフレになる様な賃上げをしません。折しも原油・資源安、物価安定、経済安定、生活も安定です。

 こうした状態は、世界にも当てはまります。かつて生産性を越える賃上げでインフレやスタグフレーションに苦しんだ主要国では、その経験に懲りて、労働組合も大幅賃上げなどの要求をしません。
 しかも、組織化されない非正規労働(賃金水準は低い)が増えて、平均賃金は上がりませんから、賃金コストプッシュになりません。これは日本だけではないようです。

 つまりインフレの最大要因である生産性を越えた賃金上昇があまり見られなくなっているのです。

 加えて為替要因もあるようです。EUの場合はギリシャ問題はありますが、域内の赤字国の努力の結果、EUとしては大幅経常黒字となり、ユーロ高です。これはデフレ要因です。
 中国の人民元は過小評価といわれていますが、内実はかなりのインフレで、国際競争力は落ちて来ているようです。これらはすべて、反インフレ・デフレ要因です。
 アメリカもテーパリングでドル高になり、結果は同様です。

 今日のマネー経済の世界では、経済のパフォーマンスが良ければ通貨高になり、経済がデフレ基調になるという点も、物価の超安定に貢献しているということのようです。

 2パーセント・インフレターゲットというのは、かなり無理なようです。インフレでなければ頑張れない(追い風記録公認方式=インフレ活用方式)ではなく、デフレさえなければ正常な経済状態と考え、デフレを避ける方法(マネーゲームに翻弄される為替レートの弊害)の検討に注力する方がいいのではないでしょうか。

 物価というものの基本的な性格を、経済活動が順調に行われるという視点から考えてみれば、①プラスである事、つまりデフレではないこと、②上げ幅がなるべく小さいこと、の2つではないでしょうか。

 デフレが経済活動にいかにマイナスの影響を与えるかは、このブログの「 デフレ3悪」を見れば納得して頂けるのではないかと思います。
 こうした視点からインフレ目標を再検討する必要もあるのではないでしょうか。

物価超安定の時代: 物価上昇の原因は?

2015年06月26日 13時58分38秒 | 経済
物価超安定の時代: 物価上昇の原因は?
 なぜ物価が上がらないかを考えるために、まず、物価がなぜ上がるのかを考えてみましょう。色々な物価上昇の原因を並べて、そうした原因が無ければ、物価上昇が起こらないということになるでしょう。

 さらに物価が下がる原因を考えてみて、その原因があるかどうかを見ることで、多分そこにもヒントもあるでしょう。

 先ず物価上昇の原因を、従来の経験から列挙してみましょう。
① 物の供給より貨幣(おカネ)の供給が多ければインフレになる。つまり伝統的な貨幣数量説です。今、世界中でお金がジャブジャブです。しかし物価が上がりません。
② 資源などの輸入価格が上がるから物価が上がる。これはいわゆる「輸入インフレ」です。典型的には原油相場でしょう。これは確かに物価上昇の原因でした。そして今は下がって安定のようですから、今は低インフレの原因の1つになり得ます。
③ 自国の通貨価値が下がる。日本でいえば円安。今、インドネシアやブラジルで起きています。原油価格の上昇などは世界共通ですが、これはその国だけの問題です。
④ 賃金が経済成長率(正確には生産性)より早く上がる。賃金コストプッシュインフレ(ホームメイドインフレ)。かつて多くの先進国が悩み、今、急成長する途上国に多く見られます。

 どうでしょうか、主なインフレの原因はこんな所ではないでしょうか。
① 異次元金融緩和でも物価は上がらず、上がるのは株などの投機商品、日本のバブルの時もそうでした。貨幣数量説は今の先進国には当てはまらないようです。
② 原油(資源)価格の高騰・下落は確かに各国の物価に影響します。しかし高騰もあれば下落もあるので、中長期に均せばどうでしょう。長期的な物価の安定(低インフレ)の原因とは言いにくいようです。
③ 日本でも円安で一部の物価が上がっています。しかし、円安がいつまでも続くわけではありません。また、通貨が下落する国があれば、必ず相対的に上昇する国もあるわけです。世界中物価が同じように低迷するわけではありません。
④ かつて世界中で見られた「賃金・物価のスパイラル」です。今、日本も含めて、世界中で(特に先進国では)、かつてのように賃上げ要求は強くありません。労働組合活動は低迷期でしょうか。これは持続的な低インフレの原因になり得ます。

 さてここまで見て来ましたが、中・長期の低インフレにマッチするのは ④ くらいです。ではなぜ労働組合は大幅賃上げを要求しないのでしょうか。そして。これだけで今の低インフレを説明できるのでしょうか。次回もう少し考えてみましょう。

物価安定の時代: 何がそうさせるのか?

2015年06月24日 12時32分53秒 | 経済
物価安定の時代: 何がそうさせるのか?
 アメリカでも日本でも、中央銀行が年率2パーセント程度のインフレ(消費者物価の上昇)がいいということで、いわゆるインフレターゲットが言われます。
 かつてはインフレターゲットといえば、高騰する物価を抑えようと所得政策などの中で低いターゲットを決めたのですが、今や、上がらない物価を何とかしてそこまで上げようという目標になっているようです。世の中、逆転です。

 そこでまず、一番身近で解り易い日本の場合を考えてみましょう。日本でなぜインフレが起こり、さらに物価が上がらないデフレになったかが解れば、世界的低インフレ傾向理解の一助になるはずです。

 終戦直後の絶対的な物資不足の時代は別として、高成長時代から第1次オイルショック後迄の高インフレは基本的には賃金インフレ、「賃金上昇、賃金コストアップ(購買力もアップ)、物価上昇(インフレ)、物価上昇を理由に更なる賃上げ、インフレ昂進」という、いわゆる賃金・物価のスパイラル(ホーム・メイド・インフレ)でした。

 第一次オイルショックで日本の労使はこうしたインフレのメカニズムに気付き、第二次オイルショックの時は、賃上げを抑えてインフレを招かず、結果「ジャパンアズナンバーワン」といわれた良好な経済状態を実現しました。

 その頃、アメリカやヨーロッパの主要国は、原油値上がりによる物価上昇を賃上げでカバーしようとし、軒並みスタグフレーション(当時先進国病といわれた)に陥って苦しんでいました。

 主要国は(生産性向上を越える)賃金の上げ過ぎはインフレ・スタグフレーションを招き、経済不振の原因と見極め、労働組織への対策を含め、賃上げ抑制・インフレ退治に奔走しました。

 一歩先を進んで経済の安定と繁栄を実現していた日本に対しては、賃上げと同じ効果のある「円高」を要請、日本は要請に答えた結果、円は二倍に切り上がり、日本は賃金も物価もドル建てで2倍になって、世界で一番賃金も物価も高い国になりました。

 世界で一番賃金も物価も高い国で何が起きるかというと、国際競争力回復のために。賃金と物価を下げることです。こうして日本経済はデフレになり、「失われた20年」を経験することになりました。
 
 日本の場合、デフレの原因は明らかで、それは「円高」です。
 黒田日銀の2度にわたる金融の異次元緩和で、円は$1=¥120に戻り、デフレは解消し、日本経済は安定成長路線に戻りました。

 常に真面目に実体経済の運営をしている日本では、インフレの原因も、デフレの原因も、比較的簡単に特定し、理解することが可能です。
 では、今の世界的な低インフレの原因は何なのでしょうか。次回考えてみましょう。

前向きの経営、後ろ向きの経営

2015年06月22日 21時35分02秒 | 経営
前向きの経営、後ろ向きの経営
 ニュースで安倍総理が「経済成長なくして財政再建なし」と言っているのを見ました。
 2020年までのプライマリーバランスを達成する、そのために経済成長戦略を実行するということのようです。

 言ってみれば当たり前のことですが、これが本当に出来れば、大変結構なことです。
 折しも日本経済は安定成長路線に入りつつあり、やりようによっては成功の「可能性」はあると思います。

 政府が経済政策について中・長期の計画を立て、財界を巻き込んでそれを実行しようというのですから。経済界、個々の企業も、それを活用して、前向きのビジョンを打ち出す時期ではないでしょうか。

 多くの企業は円安実現で資金的な余裕は大きくなり投資には積極的です。しかし、企業は人間が資本を使ってやるものですから、問題は主人公の人間の方についての政策です。
 政府の成長戦略は「人材開発」を含むようですが、仕事をするのは機械ではなくて人間です。大体機械やシステムそのものが人間が開発しなければできません。

 その人間の育成が、今の日本企業は、どうも「後ろ向き」になっているようです。典型的なのが、これだけ景気が改善しても、非正規雇用の割合が増えていることです。
 非正規雇用依存というのは、その人の持っている能力をフルに使おうと言うだけで、時間とカネをかけてその人の能力を高めようという「従業員育成」思想がすっぽり抜け落ちている考え方です。

 長かった不況の中で、コストカットばかり考えていた癖が治らないのでしょうか。仕事は人間がするのですから、従業員を企業の責任で、手間暇かけて育成してはじめて、従業員のやる気と能力の向上、企業の成長が実現するということを忘れては日本の先行きが危ぶまれますす。

 かつて日本企業は、従業員の身分差をなくし、全員「社員」にして、ブルーカラーもホワイトカラーも差別せず、グレーカラーやゼブラカラーなどといわれながら世界が驚く成長を成し遂げました。

 派遣法や労働時間制度の変更がコストカットに役立つかどうかなどという見方ではなく、従業員への投資が一番効率的な投資なのだという視点で、先輩経営者の思想・哲学もう一度直視し、企業としてどうあるべきかを主体的に考える、日本らしい「前向き」の人材への投資の視点の重視に立ち帰るのは如何でしょうか。

ゴルディロックスとアメリカ経済

2015年06月20日 09時28分00秒 | 経済
ゴルディロックスとアメリカ経済
 アメリカの経済、特に最近の雇用問題を中心として、ブルームバーグ・ビジネスが「ゴルディロックス経済論」を持ち出しています。
 キャリア開発の分野では「セレンディップ」などという言葉も流行りましたが、世界の童話がこうした専門分野でテクニカル・タ-ムとして使われのは何か微笑ましいものを感じさせます。

 ゴルディロックスというのはイギリスの童話に出て来る女の子の名前だそうで、その子が森の中の熊の一家の小屋に入って、色々な暖かさのスープや、色々な座り心地の椅子、色々な寝心地のベッドを発見、一番自分に合った暖かさのスープを飲み、座り心地のいい椅子に座り、寝心地のいいベッドで寝ていたら、家の主人の熊の家族が帰って来て、慌てて逃げ出すのだそうです。

 ところで、マスコミや経済評論家の多くはFOMCの声明を手掛かりに年内の利上げの可能性を言い、2回の利上げの可能性もという意見もあるようです。
 アメリカの経済成長率が今年は2~2.5パーセント程度が見込まれ、物価上昇率は目標の2パーセントを1パーセントほど下回っていますが、失業率も5パーセント強まで下がり、世界でもアメリカ経済は元気といわれ、次第に「経済の居心地良い状態」に近づいているということなのでしょうか。

 この居心地の良い経済状態「ゴルディロックス経済状態」が利上げの条件ということになるのでしょう。
 一方、大変慎重なイエレン議長の発言から感じられるのは、利上げのためには、雇用情勢のもう一息の改善が必要で、利上げまでには未だ時間がかかるでしょうし、また利上げといっても極めて緩やかなものになるといった慎重な見通しです。

 やはり、労働経済畑出身のイエレン議長にしてみれば、華やかな金融市場の認識とは異なり、「ゴルディロックス雇用水準」は、失業率4パーセント台という感じなのでしょうか。
 何か、アメリカ経済は立ち直った、ドルは高くなるべきだと言いたい人たちもいるのでしょうか、利上げを催促するような論調が見られなくもないような状況の中で、イエレン議長の慎重な発言が目立つように感じもしてきます。

 いつも指摘しますように、アメリカ経済が立ち直ったと言っても、経常赤字が解消していくわけではありません。国内需要が回復すれば、赤字幅は増大するでしょう。
 経済成長率、インフレ率、失業率がゴルディロックス状態だと言っていたら、外から熊の親子が帰ってきて(経常赤字の増大)、慌てて逃げ出さなければならなくなる事のないような、舵取りが、本当は必要なようです。

トヨタの新型株式と集団的自衛権論議

2015年06月18日 09時53分07秒 | 経営
トヨタの新型株式と集団的自衛権論議
 トヨタの新型株式と最近の憲法論議(集団的自衛権)と並べてみても、中身も広がりも全く異なるものです。
 しかし、今の与野党の論戦を見ていますと、何か、トヨタの新型株式発行についての2つにわれた投資家の態度とよく似ているなと考えてしまいます。

 先日の株主総会で発行が決まったトヨタの新型株式については、「マネー資本主義に一石、トヨタの新型株式」で書かせて頂きましたが、反対が25パーセントもあったそうで、殆どは投機型のアメリカの投資業界からでしょう。
 アメリカ流投機型の株主の主張点は、「物言わない」株主が増え、経営に緊張感がなくなり、企業のためにならない、というもののようです。

 実はこういう主張をするベースには、企業は株価の動向を見ながら常に緊張して経営をすべきという論理があります。現実のそうした投資家の手法を見れば、安定株主を少なくし、投機的行動を中心に、株価の変動を増幅し、キャピタルゲインの極大化を狙うというもので、そうした株主の態度がこそが企業経営に緊張感を持たせるというものです。

 一方トヨタの新型株式は、企業を応援してその安定した発展を期待して株を持つという、企業を信頼する考え方に立つものでしょう。企業の絶えざる努力への信頼感と応援です
 両者の間には、企業経営と出資についての基本哲学の相違があります。そして、企業に本当に役立つのはどちらかという点で、それぞれの哲学を主張し合うわけです。

 集団的自衛権が憲法に違反するかという問題も似ています。表面上は憲法解釈の問題ですが、その背後には、(個別自衛権は当然の問題とした上で)、今日の国際情勢では、日本が軍事攻撃を受ける可能性が高いから、集団的自衛権でそれに備えるべきという意見と、日本は平和主義の国だから、あらゆる努力で軍事衝突にならないようすべきで、今の世界ではそれは可能であるという、大きく2つの、時局観、歴史観があるようです。

 そこには基本的な世界観の相違があります。どちらが正しいかという答えは現状では誰にも解らないことなのではないでしょうか。

 経済も政治も、模範解答の無い問題に、より正しいだろうと国民が判断する答えを出していくしかないのです。違った考えを理屈付けし、いくら張り合っても正しい答に行きつくか保証はありません。

 答えは歴史が出すでしょう。そして、その時代の日本人が平成27年の結論をどう評価するでしょう・・・?
 トヨタの株主は結論を出しました。集団的自衛権はこれからです。平成27年に生きる日本人の「知恵」が、今、問われているのでしょう。

付加価値の分配で社会の様相と将来が決まる

2015年06月16日 10時27分27秒 | 経済
付加価値の分配で社会の様相と将来が決まる
 前回、付加価値は人間生活のベースで、付加価値を増やすことが経済成長、まずその実現が大事、そして、その分配の在り方が大変重要で、今そこに問題があるという趣旨のことを書きました。

 付加価値の分配には2つの側面があると思います。
① 労使の分配の側面、付加価値を「利益と賃金」にどう分けるかです。よく使われる指標は「労働分配率」(人件費/付加価値)です。
② 政府と民間の分配の側面、付加価値の内どのぐらいを政府(中央・地方)が「税金・社会保険料などで徴収し、政策的に使うかで、「国民負担率」(税・社会保険料/国民所得)がその指標です。

 まず労使の分配の問題を考えてみましょう。利益への配分が少な過ぎると企業は発展できません。その結果、経済成長も止まります。不況で雇用も賃金も低迷です。
 逆に賃金への配分が少ないと、消費が低迷して不況になり、企業も困ります。
 どちらが多すぎても、少なすぎても、経済はうまくいきません。上手な分け方が出来るかどうかは、労使の交渉によって決まります。労使が賢明でなくてはなりません。

 更に、賃金の個人配分という問題があります。個人配分の格差が大きいと、格差社会(最近の非正規雇用の増加の結果のように)になって、社会が不安定になります。これには、雇用制度や賃金制度が関わります。ですから労働法制や賃金制度の問題も大事です。

 次に、政府と民間の配分の問題を考えてみましょう。国民負担率は北欧諸国では高く、欧州主要国がそれに次ぎ、アメリカは低く、日本はその中間にあります。
 しかし日本では、政府は不況対策に金を使い、高齢化の負担に呻吟し、長年の財政赤字で国民からの借金(国債発行)を積み上げて大きな問題になっています。

 消費税増税で借金を減らそうとしますが、なかなか巧くいきません。政府と国民の真剣な対話が必要(かつての土光臨調のような)ですが、理性的、論理的な対話はなかなかできないのが現状です。このままでは国の先行きが危ぶまれます。

 企業でも、国でも、毎年、付加価値を創り、それを労使間、従業員間、そして、国民と政府の間で分配しているわけですが、その分配が「巧くいっているかどうか」が、その国や企業の将来に大きな影響を持っているのです。

 「今日の付加価値の分配の在り方が、国や企業の明日に大きく影響する」のです。国民経済、企業経営の健全な発展のためには、付加価値の分配が極めて重要な問題であることに十分注目していかなければ、付加価値問題の真の理解には至らないようです。

○「 労働分配率論議」、「政府の信用」をご参照ください。

付加価値の理解促進のために

2015年06月14日 10時23分30秒 | 経済
付加価値の理解促進のために
 Tnlabo’s blog は標記もしておりますように、人間生活のベースは付加価値と考えていますので、付加価値についての理解を出来るだけ多くの方にして頂きたいとの思いで書いています。

 これはブログを始めた頃「 付加価値の正確な理解を」を書いた頃から全く変わっていません。
 そんなことで、時に応じて、付加価値について取り上げたいと思っています。今回もその一環です。

 表題にも「付加価値をどう創り、どう使うか」と書いてありますが、付加価値は人間が創り、人間が使うものです。さらに言えば、「人間が使うために、人間が創る」のです。
 付加価値は大部分企業で創られます。そして多くの付加価値を創られれば、より豊かで、快適な生活が出来ます。

 日本国内で創られる付加価値の総額はGDPです。GDPが増加(経済成長)するほど、我々は豊かで快適な生活が出来ることは、経済成長が「企業の利益」と雇用を生み、雇用によって「賃金」が生まれることからも明らかです。

 「企業の利益」は企業成長の原動力で、これは明日のより大きなGDPの源泉です。雇用の増加は雇用者の増加、「賃金の上昇」を齎し、家計を潤します。
 政府は、そうした企業や家計の収入から税金を取って、国の財政を賄います。

 「失われた20年」の間、日本はGDPが増えず、企業は減益、雇用は縮小、賃金は低下でした。しかし、円高が終わり為替レートが正常化した途端に、日本経済は成長体質を取り戻しました。

 まだ、歪みの残っている部分もありますが、これは、政府、労使、国民が協力して、格差の少ない国にすることでまた「一億総中流」の時代を目指すべきでしょう。特に政府の舵取りは重要です。

 国民所得統計をみて下さい。GDPから減価償却を差し引いた「国民所得」は「雇用者報酬(賃金)」と「営業余剰(利益)」と多少の「財産所得(地代・家賃・金利・配当)」の3つから成っています。

 金額の少ない財産所得は別として、主要部分は「賃金」と「利益」です。経済運営で一番大事なことは、先ずGDPを増やすこと、そしてそれを「雇用・賃金と利益」にどんな割合で分けるかです。経済成長がプラスになった今日、この分け方が改めて問題になっているようです。

絶妙な黒田総裁発言

2015年06月11日 10時37分51秒 | 政治
絶妙な黒田総裁発言
 6月10日、黒田日銀総裁は衆議院の金融財政委員会で「これ以上の円安はありそうにない」と民主党前原誠司氏の質問に答えています。

 さすが日銀総裁の発言です。
 発言の形は、「ありそうにない」という市場尊重の言い回しで、その論拠に実質実効為替リートの動きなどを示し、政策意図などは微塵も見せていませんが、その発言がいかなる効果をもたらすかは、誰が見てもはっきりしていうでしょう。

 円レートは2円ほど円高に振れ、午前中100円以上の上昇を示していた日経平均は、午後急落、終値で40円ほどのマイナスになりました。
 一夜明けて、今朝の円レートは123円近辺にまで戻し、日経平均は200円幅の上昇を示しています。
 やはり日本経済の基本的な強さは、金融市場も認識しているということでしょう。

 過日 「要注意? ドル高・円安」を書かせて頂きましたが、さすが黒田日銀、為替レートの動きには、常に厳しい目を光らせているようです。
 投機筋はそれぞれの思惑で為替レートを乱高下させ、キャピタルゲイン極大化のチャンスを求めるのでしょうが、実体経済を担う産業・企業にしてみれば、為替レートは、適切な水準で、なるべく安定していてほしいというのが本来の願いでしょう。

 黒田総裁も「実質実効為替レート」の動きを引用して説明していますように、現実の日本の物価の国際的に見た水準は、「失われた20年」を齎した異常な円高の是正を完了し、正常な日本経済の活動に、ほぼ適合した水準とほんどの企業が考えているのではないでしょうか。

 具体的に言えば、$1=¥120がらみの水準で、日本経済は、国際経済の中で十分に前進していける状態にあるということです。
 さらに円安になれば、日本経済はもっと楽ができるかもしれません。しかし安すぎる為替レートには、いつか必ず「市場の仕返し」があるはずです。
 為替の乱高下は実体経済には結局は有害です。

 折角健全な成長の環境基盤が整ってきた日本経済に、投機筋の思惑で、不要な為替の乱高下の増幅を許し、折角の環境基盤を壊さないようにしたいものです。

マネー資本主義に一石、トヨタの新型株式

2015年06月10日 14時47分44秒 | 経営
マネー資本主義に一石、トヨタの新型株式
 車作りでもハイブリッド車、燃料電池車など優れた技術革新を形にしていくトヨタ自動車ですが、今度は、マネー資本主義全盛の資本市場に新型株式で一石を投じることになったようで、興味津々、これからを見守りたいと思います。

 今までも転換社債はありましたが、今回のトヨタの新型株式は「議決権付き社債」の風味を持っているようです。

 勿論れっきとした株式で、売出し価格は現状の株価の2割増し程度、上場はせず、配当は1.5パーセント(5年平均、初年度0.5パーセントから毎年0.5パーセント上昇、5年目には2.5パーセント)で現状、国債より大分有利、5年たったら普通株に転換も可、希望すれば発行価格でトヨタ自動車が買い戻してくれる。
 発行株式の5パーセントくらい迄のボリュームを考えているとのことです。

 今月16日の株主総会で賛成が得られれば、それから発行ということになるわけですが、その際同額程度の自己株取得を考えると、マーケットへの配慮にも怠りないようです。

 発行の目的は、何と言っても、今後のトヨタの技術革新と発展を支える安定株主の獲得でしょう。

 ところで、これに対して、アメリカの投機資本筋は「もの言わぬ株主を増やす政策」だとあからさまに批判的なようです。
 確かにマネー資本主義を信奉する人たちは「投資家の思惑通り」にならないとご機嫌が悪いのでしょう。出来るだけマーケットの乱高下を大きくし、それを利用してキャピタルゲインを稼ぐことが目的ですから、「会社の成長と共に」などという考え方(安定成長志向)は大嫌いでしょう。

 日本では、個人株主でも企業株主でも、その企業がより発展することを願い、応援者として株主になるという優れた文化があります。
 そうした株主にとっては、トヨタの新型株式は、まさに日本の資本市場の文化、メンタリティーに合致した優れた資本市場の新機軸といて受け入れられるでしょう。

 この株式は「AA型株式」と名付けられ、トヨタの最初の量産車「AA型」にちなんだ名前ということですが、アメリカの格付け機関が大好きな「AAA(トリプルA)」にしなかったことも、日本企業の奥ゆかしさとtnlabo’s blogは理解しています。

本年1~3月GDP第二次速報

2015年06月08日 18時07分08秒 | 経済
本年1~3月GDP第二次速報
 先月20日に、標記の第1次速報について「日本経済の成長、安定したプラスに」というタイトルで書かせて頂きましたが、今日、その第2次速報が発表されました。

 結果は第1次速報の段階より良くなっていて、第1次速報で前期比0.6パーセントだった実質経済成長が、今回は1パーセントになって、年率に換算すれば3.9パーセントの成長率という発表です。

 四半期で1パーセントなら年率に換算すれば4パーセントを越えるはずですが、3.9パーセントになっているのは、もうご理解の方も多いと思いますが、こんな事情です。

 1パーセント伸びたというのは実は四捨五入の結果で、原資料から計算すると0.9676パーセント伸びたということでした。
 したがって、1.009676(原数値の割り算の結果)の4乗を求めると、1.03935となり、3.9パーセントの伸びということになるわけです。

 それはともかく、実質成長率が大きく変わったのは民間企業の設備投資が大きく増えていたことが分かったからです。第一次速報の時も、「設備投資はもっと伸びていくでしょう」と書きましたが、今回は法人企業統計季報が出て、企業の設備投資の実態がより正確に把握できたのでしょう。

 一時、マスコミなどが、企業は国内に投資せず、工場建設は海外ばかりなどと書いていましたが、日本企業は矢張り国内生産を重視している様子が見えてきたようです。

 基礎データが固まるに従って、実体が見えてきます。年率換算4パーセント近い実質成長率というのは、世銀やOECD、国内の調査機関の見通しを大幅に上回るもので、偶々のタイミングでという面があるでしょう。

 しかし、これまでの泥沼の経済時代からの慣性の法則で、日本経済の実力を過小評価するのも良くないと思います。
 今日本経済は、真面目に頑張ればそれだけ伸びる環境条件の中にあるように思います。

国際司法裁判所がありますが・・・

2015年06月07日 19時58分20秒 | 国際政治
国際司法裁判所がありますが・・・
 国連の機関として、国際司法裁判所があります。最近、国際紛争が多発していますが、折角国際司法裁判所があるのですから、そこで解決するのが一番いいのではないか、というのが、本来なら、まともな考え方ではないでしょうか。

 地球上の人間は、ほとんどが法治国家に住んでいて、法治国家の合理性、居心地の良さなどを日頃から理解しているのですから、それは当然でしょう。紛争があればあるほど、紛争の合理的な解決は重要になるからです。

 まともな国の中では法律がきちんと機能していて、理非曲直は最終的には裁判所で結論が出るのですが、国連には国際司法裁判所がありながら、世界という場で見ますと紛争を国際司法裁判所で解決するということは至難の業のようです。

 「世界」ということになると、そこでは「法治」という概念が必ずしも機能しないのです。 その結果過去には2度にわたり世界大戦が起こり、人類は悲惨な経験をしました。その経験から、世界を法治国家のように合理的な仕組みのものにしようという希望を持って生まれたのが「国際連合」つまり国連です。国際司法裁判所はその司法機関です。

 国連憲章の前文には、そうした人類社会の合理的システムの構築に向けての意識が明確に謳われています。しかし、既に戦後70年という長い時間がたちましたが、人類社会がそちらに向かう気配はあまり感じられません。

 何故でしょうか。解り易く言えば、力のある国の多くは、自分たちが国連という組織の下に入る事を望まないからのようです。
 国連では、大国も小国も平等に扱われることになっています。法の下の平等という考え方に立つのでしょう。大きい国は、時に、これを嫌うようです。

 国際司法裁判所を例にとってみましょう。法治国家では、原告に訴えられた相手は被告人として法廷に出て行かなければなりません(行かなければ原告勝訴)。しかし国際司法裁判所の場合は、訴えられてもそれを認めないことが可能です。
 訴えられても無視したい国は、その規定の条項を受諾しなければいいのです。
 因みに、常任理帰国で受諾していない国は、アメリカ、フランス、ロシア、中国です。

 日本はもともと国連中心主義ですから受諾を宣言していますが、国連を主導した連合国(第二次大戦の戦勝国)の中心である常任理事国の中で宣言しているのはイギリスだけです。
 国際紛争多発の中で、国連中心主義の日本は、いかなる主張・行動をすべきでしょうか。これこそ本当の積極的平和主義の一番の基本問題でしょう。

正規・非正規の雇用・賃金構造

2015年06月05日 12時24分25秒 | 労働
正規・非正規の雇用・賃金構造
 日本の格差社会化が統計数字上も現実になり、その要因としての非正規労働の問題が広く認識され、改正派遣法が国会でもめ、日本社会にとって望ましいのはどのような雇用構造なのかが改めて模索されています。

 戦後、日本の経営者は、法律や制度の規定を越えて、日本社会に馴染むような雇用の在り方を模索し、社会の安定のためにそれを実践してきたのではないでしょうか。そして今、日本の経営者は何を考えているのでしょうか。

 毎月勤労統計と、労働力調査から、此の所の、正規労働者、非正規労働者の雇用、賃金構造を瞥見しますと、こんなことになっているようです。

 統計が違えば調査のベースも違い、言葉の定義も違います。しかし「大数の法則」に従えば(最近ならビッグデータ)基本的な流れは掴めるでしょう。

 労働力調査から近年の労働力の中の正規、非正規の動きを見ますと役員を除く雇用者の中で、非正規従業員の割合は2010年からの年々の動きで、34.3%、35.1%、35.2%、36.6%、37.4%(2014年)となっていて、円安効果で景気が回復し始めた2013年から増加のペースが速くなっています。

 これは言われていますように、景気回復による採用増が非正規中心だったためで、2013、2014年は正規従業員数は減っています。
 景気回復の永続性が信用できなかった企業としては、当面非正規を増やして対応したということかもしれません。今後この動きが逆転すると予想したいところです。

 一方、正規と非正規の賃金水準の違いは、毎月勤労統計でみることが出来ます。最近時点、この4月度の調査結果を見ますと、一般労働者平均給与総額349,440円に対し、パートタイム労働者の現金給与総額は98,333円で28.1%です。ちなみに、2010年4月のこの数字は、345,131円と94,956円で、27.5%、僅かな格差縮小です。

 勿論詳しく見れば、労働力調査の非正規従業員と毎月勤労統計のパートタイム従業員の範囲は違います。労働時間も違うでしょう。比較は正確とは言えませんが、この辺りが統計の限界です。

 重要なのは何時も触れますように、この非正規、パートタイマーの中には、家計補助の立場の人と、世帯主の立場の人がいるという現実です。
 格差問題は家計単位のものですから、主要な問題は世帯主で非正規の雇用者ということになります。この問題は、派遣法をどう改正しても、同一労働・同一賃金を叫んでも解決されません。

 解決の方向が見出せるとすれば、現実の雇用の場で、如何なる雇用政策、採用政策が行われるか、つまりは経営者の考え方と行動如何ということではないでしょうか。
 いつも書いておりますが、企業経営の本当の目的は利益追求ではありません。社会の役に立つことです。

 戦後の経営者は立派だったが、最近の経営者は・・・・、などといわれないように、日本経済の正常化の中で、マネー資本主義に引きずられず、日本の経営者本来の高邁な経営理念に立ち帰って、より良い日本社会の明日のために企業活動を展開して頂きたいと思っています。