1 労働生産性
労働生産性は賃金決定に関わる統計指標として最も重要なものでしょう。
理由は、労働生産性(労働者1人当たり付加価値生産額)が賃金の源泉だからです。日本経済でいえば付加価値はGDP ですから就業者1人当たりのGDPが増えれば、1人当たりの賃金は増やすことが出来ます。企業でも賃上げの最重要の基準は労働生産性でしょう。
因みに、労働生産性以上に賃金を上げると、オーバーした分は「賃金インフレ」になって、結局物価上昇で取り返されてしまいます。
2 物価上昇
物価が上昇すれば、その分賃金は目減りします。それを補填するめに賃金を引き上げるべきだという考え方はかなり一般的で、労働組合などでは賃上げ要求は「生産性向上分プラス物価上昇分プラス定期昇給分」といった要求方式はよくあります。賃上げを要求する側から見れば、その通りかもしれませんが、下の各項のような精査が必要です。
3 定期昇給分
これは企業の賃金制度で決まっている分ですから、黙っていても上がるのが当然(査定分の±はあっても)ですが、賃金体系の整備されていない会社もあるので、連合や個別組合などでは「定昇相当分」として要求のような形にするものです。
4 輸入インフレ分
原油のように、国際価格が上がってその分国内の物価も上がるといった場合のあるべき対応は、その分は、そのまま価格転嫁して国民全体が負担するのがベストです。
国際価格が上がった分だけ産油国などは得をし、消費国は損するのですから、国内で取り返す方法はありません。世界中同じように石油価格が上がります。
価格転嫁しなければ、しない会社の負担になり、今回のガソリンのように政府が補助金を出せば政府の負担(結局は国民負担)となり何の効果もありません。
その代わり輸入価格が下がった場合には、その分きちんと価格を下げましょう。
5 円安になって輸入価格が上がった分
この分は、当該国だけの問題で、対応の方法はその国の経済状態や経済政策によって変わります。
日本の場合、日銀は、円安になって多少輸入物価が上がっても、円高になるより日本経済への影響はプラス面が大きいから、その分は価格転嫁して物価上昇を認めた方がいい、というもののようです。
ただ円高になった時には日本は一生所懸命賃金を下げて国際競争力の回復をやったのですからその逆の円安の場合には、多少賃上げをして、諸外国並みに物価を上げていく方が適切ではないかという考え方もあり得ます。
為替レートは常に上下しますから、下がりっぱなしなのか、また上がるのか、見定める必要があります。
6 インフレは避けるべきか? これは結構難しい問題
日本の場合は、基本的にインフレを嫌う国なので、長期的には円高を誘発する恐れが大きいのですが、今後、日本はインフレをどう考えるかは結構難しい問題だと思います。
1~5までで述べた原則は、それを守らないで、賃上げで解決しようとすれば、必ず「労働生産性上昇以上の賃上げ」になって、賃金インフレにつながり、そのインフレをまた賃上げで取り返そうとすると、次第にインフレがひどくなって「賃上げと物価上昇のスパイラル」に巻き込まれ、為替レートの切り下げかスタグフレーションかのいずれかに追い込まれ、(1980年前後の欧米諸国、最近のトルコなど)経済不振・破綻に至る可能性に近づくことになります。
また、1~5の原則をしっかり守って、インフレを起こさず、長期に物価安定を維持する国があると、諸外国は殆どインフレなので、「貴国は物価が安すぎ、競争力が異常に強い。多くの国は困っている。通貨切り上げを認めては如何か」といった要請を受けるか、あるいは、国際投機資本がそうした意向を忖度し、マーケットが通貨高を実現してしまうといったことが起こり得るようです。
日本でいれば、これは「プラザ合意]と「リーマンショック」に当たります。
変動相場制ですから、経済政策も、賃金決定も、当然ですが「春闘」も、いろいろ難しいことになってきます。今年の春闘は実験場でしょう。
そんな中ですので、何か判断の材料にでもなればと思っています。
労働生産性は賃金決定に関わる統計指標として最も重要なものでしょう。
理由は、労働生産性(労働者1人当たり付加価値生産額)が賃金の源泉だからです。日本経済でいえば付加価値はGDP ですから就業者1人当たりのGDPが増えれば、1人当たりの賃金は増やすことが出来ます。企業でも賃上げの最重要の基準は労働生産性でしょう。
因みに、労働生産性以上に賃金を上げると、オーバーした分は「賃金インフレ」になって、結局物価上昇で取り返されてしまいます。
2 物価上昇
物価が上昇すれば、その分賃金は目減りします。それを補填するめに賃金を引き上げるべきだという考え方はかなり一般的で、労働組合などでは賃上げ要求は「生産性向上分プラス物価上昇分プラス定期昇給分」といった要求方式はよくあります。賃上げを要求する側から見れば、その通りかもしれませんが、下の各項のような精査が必要です。
3 定期昇給分
これは企業の賃金制度で決まっている分ですから、黙っていても上がるのが当然(査定分の±はあっても)ですが、賃金体系の整備されていない会社もあるので、連合や個別組合などでは「定昇相当分」として要求のような形にするものです。
4 輸入インフレ分
原油のように、国際価格が上がってその分国内の物価も上がるといった場合のあるべき対応は、その分は、そのまま価格転嫁して国民全体が負担するのがベストです。
国際価格が上がった分だけ産油国などは得をし、消費国は損するのですから、国内で取り返す方法はありません。世界中同じように石油価格が上がります。
価格転嫁しなければ、しない会社の負担になり、今回のガソリンのように政府が補助金を出せば政府の負担(結局は国民負担)となり何の効果もありません。
その代わり輸入価格が下がった場合には、その分きちんと価格を下げましょう。
5 円安になって輸入価格が上がった分
この分は、当該国だけの問題で、対応の方法はその国の経済状態や経済政策によって変わります。
日本の場合、日銀は、円安になって多少輸入物価が上がっても、円高になるより日本経済への影響はプラス面が大きいから、その分は価格転嫁して物価上昇を認めた方がいい、というもののようです。
ただ円高になった時には日本は一生所懸命賃金を下げて国際競争力の回復をやったのですからその逆の円安の場合には、多少賃上げをして、諸外国並みに物価を上げていく方が適切ではないかという考え方もあり得ます。
為替レートは常に上下しますから、下がりっぱなしなのか、また上がるのか、見定める必要があります。
6 インフレは避けるべきか? これは結構難しい問題
日本の場合は、基本的にインフレを嫌う国なので、長期的には円高を誘発する恐れが大きいのですが、今後、日本はインフレをどう考えるかは結構難しい問題だと思います。
1~5までで述べた原則は、それを守らないで、賃上げで解決しようとすれば、必ず「労働生産性上昇以上の賃上げ」になって、賃金インフレにつながり、そのインフレをまた賃上げで取り返そうとすると、次第にインフレがひどくなって「賃上げと物価上昇のスパイラル」に巻き込まれ、為替レートの切り下げかスタグフレーションかのいずれかに追い込まれ、(1980年前後の欧米諸国、最近のトルコなど)経済不振・破綻に至る可能性に近づくことになります。
また、1~5の原則をしっかり守って、インフレを起こさず、長期に物価安定を維持する国があると、諸外国は殆どインフレなので、「貴国は物価が安すぎ、競争力が異常に強い。多くの国は困っている。通貨切り上げを認めては如何か」といった要請を受けるか、あるいは、国際投機資本がそうした意向を忖度し、マーケットが通貨高を実現してしまうといったことが起こり得るようです。
日本でいれば、これは「プラザ合意]と「リーマンショック」に当たります。
変動相場制ですから、経済政策も、賃金決定も、当然ですが「春闘」も、いろいろ難しいことになってきます。今年の春闘は実験場でしょう。
そんな中ですので、何か判断の材料にでもなればと思っています。