tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

交錯する日米金利水準の動き:結果は?

2024年07月31日 13時45分46秒 | 経済

EUの中央銀行ECBが政策金利を0.25%引き下げました。EUの消費者物価指数の上昇率はまだ2.7%ほどでアメリカのPCE(個人消費物価指数)の2.5%より高いですが踏み切りました。

アメリカは昨日と今日FOMC(金融決定会合)ですが、パウエル議長は利下げには言及するのですが、なかなか踏み切らない状態が続いています。

日本はと言いますと、これまで政策金利という基本政策には踏み切る様子はなく国債の買い入れ額を減らし長期金利の0.1%近傍の微調整で、極めてきめの細かい政策です。

ご承知のように、EUやアメリカの金利政策はインフレ退治のために高く引き上げた金利を、いつ引き下げるかという問題であるのに対し、日本の場合はアベノミクス以来のゼロ金利をいかに引き上げるかという問題で、方向は正反対です。

EUは経済情勢に素直に金利引き下げに入っていますが、アメリカは、早い時期から下げる下げると言いながらなかなか下げません。

理由は、インフレがまだ収まらないという事ですが、それはアメリカには2%インフレ目標というのがあって、厳密に2%を切らないと下げられないという事のようです。しかし最近、金利が高すぎて、住宅投資が進まないとか、金融引き締めで一部に不況の気配が出てきて、求人が減ったり、失業率が4.1%と高止まりといったこともあって、金利を下げないことを心配する意見もあるようです。

傍目に見れば早く下げて多少物価が上がっても、景気が良い方がいいのにといった感じですが、なかなか下げません。

勘ぐれば、アメリカ政府はドルが高い方がいいと考えているのかなという事です。今、アメリカは出費が多いようです。ウクライナ援助やフィリピン援助、それに日本に巨額の防衛装備品を売るなどといった場合、金利を下げてドル安になると、アメリカにとっては都合がよくないでしょう。強いドル。高いドルが必要な時に金利を下げてドル安にするのは不都合のように思います。

所で日本の場合を考えますと、日本は円安で困っています。円安だと輸入物価が上がって消費者物価も上がり、実質賃金が下がって政府は評判が悪くなるという事もあるでしょう。

しかし、金利を上げれば円高になって、国際競争力が低くなり稼ぎ頭の輸出産業や、盛り上がっているインバウンドにマイナスのの影響が出れば、日経平均は大幅に下落するでしょうし、そうなればこの春以来の株価上昇は逆転し、NISAたiDeCoの評価は下がり、円安による好況感は消滅し、政府にとっては具合が悪いことになるでしょう。

アメリカはドル高、強いドルは維持したい、しかし、金利を下げればドル安になってしまうという問題に直面しますし、金利を下げれば、景気はよくなるかもしれませんが、またインフレが再燃し、国際競争力が落ちて、万年赤字がまた膨らむといった困った問題を抱えているようです。

日本は、政策金利の引き上げは経済正常化のために必要ですが、そうすれば物価は下がるかもしれませんが、輸出産業の利益はかなり減るでしょう、株価は円高ショックで大暴落の可能性も出てきます。インバウンドの盛況も影響を受けそうです。

本来、金利の引き上げは、景気を抑制するための政策ですから、この経済不振の中でやるべきなのかという意見もあるでしょう。

一方円高になれば、国際的な日本の地位は上がるでしょう。世界2位返り咲くかもしれません。またアメリカの防衛装備品も安く買えるかもしれません。

という事で、これから、日本とアメリカはどんな金利政策をとるのでしょうか。日本経済も、我々の生活もそれに振り回されるのでしょうか。

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PS 日銀が政策金利を0.25%程度に引き上げるというニュースが入ってきました。3時半から記者会見だそうです。楽しみです。


要注目!経済政策に統計の果たす役割

2024年07月30日 14時26分14秒 | 経済

このブログではよく統計を使います。理由は、統計を使うと、現状の把握が数字で出来ますから具体的で、解り易くなるからです。

例えば、2023年のアメリカの実質経済成長率が2.5%で、日本の2023年度は1.6%だったといえば、日本に比べてアメリカの経済成長率がどのくらい高いかという事、その違いがはっきりと理解できます。

もちろん、統計というのは、そうした明確な説得力がありますから、使い方には十分注意しなければなりません。

統計で比較するのはクロスセクション(横断比較)とタイムシリーズ(時系列)の場合が多いことはご承知の通りです。

どちらの場合でも、条件を同じにして比較しないと正確な比較はできません。日米の経済成長率の計算の仕方はSNAという国際方式で 揃っているので比較が出来るのです。 

企業で、対前期比売上と利益が何%伸びたという数字でも、計算方法が同じでないと正確な比較はできません。

余計なことを書きましたが、最近注目されているのは、日本では25か月連続で、対前年同月の実質賃金がマイナスだということで、そんなひどい経済状態を続けている政府に対しては強烈な批判があり、内閣支持率の低下の大きな要因でしょう。

実質賃金がマイナスになる計算には消費者物価指数という統計を使います。これは政府(総務省)が責任をもって、国内の消費者物価を総合してその動きを正確に数字にしているものですから、消費者はこれが上がると心配します。

一方、政府の方はこの指数が年2%ぐらい上がるのが一番良い経済状態だと考えていて、この所でもまだ2%まで下がっていないから経済政策をどう舵取りするか、値上がりしている輸入エネルギーが各家庭の台所まで響かないように石油元売り会社や電力・ガス会社に補助金を出そうとか、いろいろ政策を考えます。

金融政策を担当する日本銀行は、消費者物価指数の上昇がが基本的に2%を割り込んできたら金融政策を変更しようと考えて、日本銀行自身が調べている輸入物価や企業物価も併せて検討しながら、金融緩和修正のタイミングを計っているのです。

統計というのは、まさに、国民生活に密着したものになっていて、日本の経済政策の基礎をなしているのです。

そしてさらに大事なことは、統計数字というのは、消費者物価指数でも賃金指数でも、経済成長率でも、一目見れば、その変化がいい方に行っているのか、悪い方に行っているのか、国民の一人一人にはっきり解るという事です。

ですから、こうした統計の効用、威力を利用して、日本の経済社会が悪くなっているのか良くなっているのかを国民に解り易くすることで、政府の政策をより良いものにすることも出来るはずです。

そうした意味で大変重要な統計があります。それは「ジニ係数」という統計です

これはなにを表す統計課といいますと、所得格差が大きいか小さいかを示す統計です。残念ながら一般的ではありません(一般的にすると政府が困る?)。

トマ・ピケティが、所得格差の拡大という問題を取り上げ(『21世紀の資本論』)世界的な反響を呼びましたが、格差社会化は現代社会の大きな問題でしょう。

ならば日本は、消費者物価指数と同じように、常に政府が「ジニ係数」を発表するようにし、日本の格差社会化に常に注意して、格差社会化を防止するように考えたらいかがでしょうか。

幸い、日本には「家計調査」という優れた統計があります。これをベースにして、日本が格差社会化しているかどうかを一目で明らかにする数字が常に国民の目に触れるようにする事は可能でしょう。

多分それは、結果的に、政府の経済政策についての厳しい国民の目を育てることに役立つのではないでしょうか。


日銀の政策に大いに期待します

2024年07月29日 10時35分20秒 | 経済

前回は、冷徹な川柳子の投句を引き合いに、円安の異常な進行に抗った財務省の為替介入を覚めた目で見ている人がいますよという事を書きました。

財務省は国際投機資本のやることが良くないと言いたいのでしょうか、それに抗って、国際的に評判の悪い為替介入をやるようでは、日本政府の経済政策というのははその程度かと思われたのかもしれません。

考えてみれば、日本の一人当たり国民所得が世界のベストテンの常連から40位近くにまで落ちてしまったことへの責任感など微塵もなく、未だに裏金を確保して何とか政権を維持しようとしている自民党政権です。

その政府に何かを期待しようと考えるのは、日本の中の特定の一部の人達という事になってしまっているという現実に、やはり早めに気づかなければ、日本は救われないでしょう。

野党も、言われていますように「俺が、俺が」で、中々頼りになりそうな組織を協力して作るといった努力を好まない人たちのようで、社会には、やり場のない不満が鬱積し、何か日本人の伝統文化になじまない、自分勝手な行動が増えているように感じられます。

何かやろうにも、選挙でも、生活行動でも、どうせダメだろうという閉塞感が強い状態から早く脱出したいというのが、大多数の国民の願いではないでしょうか。

そんな中で当面、国民が望んでいるのは、経済状態がもう少し良くなれば、それなりに安心感が得られるといった経済的な改善への希望でしょう。経済的な安心感は、人のころを多少安らかに出来るものだとはよく言われます。

こうした安心感は、今の政府の補助金を出します、一時金を支給しますでは効果がないのです。一時的な安心感で満足するほど日本人は愚かではありません。必要なことは日本経済を良くすることです。

例えば物価を下げること。これは為替介入で2円ほど円高にしてもダメです。円レートを150円、140円にすることです。日銀短観では企業は140円ほどまでの覚悟はあるようです。

そしてこれが出来るのは日銀だけです。やり方は難しいでしょうが、試行錯誤で試みることが重要です。

もう一つは、積極的な賃金の引き上げをやることです。昔なら経営者に頼むことも選択肢だったでしょう。しかし、今は多くの経営者は、株主の方を向いていますから、これは連合に頼むしかないでしょう。連合に向けた草の根活動、世論喚起が必要でしょう。10%程度の賃上げなら日本経済は十分耐えられるでしょう。

賃金の価格転嫁でインフレが多少進むでしょう。しかしアメリカやヨーロッパほどのインフレにはならないでしょう。その程度なら日本の国際競争力維持は可能でしょう。インフレ対策が必要なら、それは日銀に任せればいいのです。

「漫画・日本経済回復」みたいですが、欧米も、かつての日本も、こうしたことをやって、経済を成長させてきたのです。

これで政治も良くなってくれるといいのですが、それは解りません。


変動相場制の中でより合理的な為替政策を考える

2024年07月28日 21時12分45秒 | 経済

昨日の朝日川柳に

「ふと思う 何だったのか あの介入」というのがありました。

円安が160円台まで進み、さらに進めば日本では輸入インフレが加速して消費者物価上昇の可能性が高くなるなどなど、財務省は種々懸念したのでしょう。

もともと円レートが160円などというのは実体経済とはレベルの違う水準で、国際投機資本がマネーゲーム上の思惑の結果でしょうから、財務省としては「そんな勝手は許さん」という正義感(?)もあったのかもしれません。

結果は2円ほどの円高になり、マスコミでもタイミングの良い介入で明らかに効果があったといった評価が多かったようです。

しかし、介入の効果はせいぜい2~3日で、効果は長く続かいようで、アメリカではイエレン財務長官が、為替介入は多用すべき手段ではないと発言し、日本は為替操作こくといわれることになりました。

それから何日たったでしょうか、先週あたりから急に円高傾向が明らかになり、週末は153円台です。

この円高に驚いて日経平均は暴落という事になっています。

財務省が円安阻止のために、知恵を絞り、何兆円も使い、多大のコストと労力をかけて何日間か2円ほど円高にする努力をしたすぐ後から、アメリカ経済の様子が変わってき近く金利引き下げかという見方が背景が大きいといわれます。

さらに、日本も金利の正常化(引き上げ)の方向という見方もあるわけで、少し長期に見れば、円レートを取り巻く状況は円高傾向が強まる方向への変化の時期を迎えるという認識はどちらかというと一般的です。

冒頭の川柳を投稿された川柳子は、財務省の先見能力に疑義を呈したという事なのでしょう。

言われてみれば確かにその通りですが、それほど国際投機資本によるマネーゲームは予測が難しい世界だという事でもありましょう。

第二次大戦後、絶対的な経済力を持つアメリカは固定相場制を良しとしブレトンウッズ体制を作りましたが、1970年代に至り、国際収支赤字国に転落、窮余の策として変動相場制導入になったことはご承知の通りですが、その後為替の変動が、世界経済の不安定と、マネー資本主義の盛行を生んだことは明らかでしょう。

その中で特に日本は、変動相場制に対する対応に失敗することが多く、経済運営の失敗につながることが多いようです。

ならば、対応の下手な日本はどうしたらいいのかという事になるのです。

という事で考えてみますと、こんな事ではないでしょうか。

基本は、マネーゲームは短期視点、実態経済活動は中・長期視点だという事です。そして、為替レートは中・長期的には実体経済の状態に引き寄せられるのです。

マネーゲームで相場を作るような力はとても持てない日本ですから、出来れば少し長い目で物事を見て、あまり短期の損得や相場の行き過ぎた変動など気にしない事にするのがいいのではないでしょうか。

長期的視点をしっかり持って、確りした経済政策をとっていれば、一見稚拙のように見えて、それが最も賢いことなのではないでしょうか。


アメリカ4~6月GDPは実質2.8%(年率)の上昇に

2024年07月26日 17時25分38秒 | 経済

あまり大きな記事にはなっていませんが、アメリカの4-6月の実質GDP成長率は、2.0%という予想を上回り2.8%になったということです。

日本では今年度の政府経済見通しの実質GDP成長率は1.3となっていますが、そこまでは無理という状況になりそうで、今年度は0.4%、来年度は1.2%(日経新聞社)などと予想されています。

岸田さんの今後6年間の方針は1%以上という事で、アメリカの成長率にはとても及びません。

アメリカの4-6月(年率換算成長率)が高くなった要因は、GDPの7割を占める個人消費が2.3%増えたことが大きく効いているという事で、消費需要に牽引された高成長というのが明らかなようです。

アメリカはインフレが収まらない中で経済活動は活発で、設備投資も実質5.2%の伸びで前四半期の4.4を上回っているようです。

住宅投資は高金利でこのところ不振のようですが、民間消費と設備投資によって牽引されるというのは、いつの場合でも経済成長の促進に必須な条件です。

アメリカ経済は国際収支は万年赤字で財政と双子の赤字と言われ、決して経済全体としては健全ではないのですが、力強く成長する元気があるという事は、経済不振の日本から見れば、羨ましいことです。

日本は万年黒字の国で、借金より貯金が多いという経済全体といては誠に健全な国ですが、そのおカネを積極的に活用し、経済成長を実現するように使っていないのです。

主な使い道は、借金国アメリカの国債を世界で一番沢山持っていたり、国内の経済活動より海外の経済活動に使ったりですから結果は現状のようになっているのです。

何が違うのか、高い成長率を上げているアメリカと比較してみますと最も違うのは日本の消費需要の弱さです。

ではその原因は何かといいますと、これは単純で、賃金の上昇率が物価の上昇率より低いという事にあるようです。

このブログの「実質賃金の上昇に必要な条件は?」でグラフを出していますが、皆様疾うにご承知のように2022年の4月以来、今年5月まで25か月、賃金の上昇は物価の上昇を「下回って」います。実質賃金はっずっと前年より少なくないのです。

これでは実質消費支出を増やせとっても、家計は「無理です」と言うでしょう。そして、これを何か月、何年続けても消費支出が実質GDPを押し上げたり、言葉を換えれば、経済成長の牽引役になったりすることは不可能でしょう。

回答はただ一つ「もう少し賃金を上げたらいかがですか」という事になるのです。日本の企業は結構収益を上げ、自己資本比率も依然に比べればずいぶん高くなり、経営基盤も安定してきました。この春から夏にかけてはそれを評価されて、日経平均は大幅に上がりました。  

にもかかわらず、日本の労働組合は「もっと大幅な賃金の上昇が必要」という賃上げ要求をしません。「日本経済最大の不思議」はこれでしょう。

労働組合のナショナルセンターの連合は「今春闘の賃上げは5%を超え、33年ぶりの高水準と言いますが、毎月勤労統計では賃金水準の上昇は2%弱ほどで、消費者物価の上昇率は下がってきましたが、2%を超えています。6月の統計でも多分同様な状況でしょう。

先日最低賃金の事も取り上げました。中小企業では賃上げは無理という言葉が聞かれます。何故でしょう。価格を上げればいいのです。政府のそれを奨励しています。日本物価は訪日客が驚くほど安いのです。円安のせいだけではありません、賃金上昇率が低く日銀の目標の賃金インフレ2%にも届かないからです。

賃金も物価も上げましょう。国内要因だけならば、賃金上昇より物価上昇の方が高くなることはありまあせん。

賃金水準が今より高くなっても、日本経済が国際競争力を喪失し、経常収支赤字国に転落することは先ずないでしょう。

未だ賃上げの余裕は十分あります。その余裕をしっかり計測し、その余裕を賃金水準の上昇につぎ込むこと政労使が検討すべき経済政策でしょう。

それが出来れば、日本は消費不況から脱出し、消費が経済成長の主役になり、久方ぶりの成長経済に転換していくことになると思うところです。

思い切ってやってみませんか。


驚愕の変化と活力、アメリカの民主主義

2024年07月25日 16時24分40秒 | 文化社会

トランプさんが演説のステージで軽くステップを踏めば、共和党支持者は赤い野球帽を振り上げて熱狂するのです。

これが政治活動で、民主主義の原点で、アメリカという世界の覇権国、代表的民主主義国の選挙活動の1シーンで、タレントのフェスティバルではありませんと言えば「アメリカの大統領選挙って人気投票みたいだ」などといわれそうなTVの番組をずいぶん見てきました。狙撃をかすり傷で免れたトランプさんが耳から血を流しながら拳を振り上げ健在をアピールし、聴衆が熱狂するシーンも見ました。

対する民主党のバイデンさんは、高齢と名前のいい間違いなどで冴えず、党内部からも懸念する声が出て、結局、大統領選出馬を断念しました。

後任には副大統領のカマラ・ハリスさんをという意向は示されましたらが、直ちには決まりませんでした。反対論もあったようです。 

しかし結果はハリスさんに決まり、一旦決まると、民主党の動きは徹底したものでした。

ハリスさんは新しい風、当選すれば、アメリカ初めての女性大統領、白人系ではなくガラスの天井を破る存在といった評価もあり、その活発でリベラルな思想・行動を評価し、ベストの民主党大統領候補という徹底したキャンペーンが始まっています。

既にトランプさんと互角という世論調査、一部のにはハリスさんリードという結果もあるようです。

大統領選挙まであと100日、時間がないという事もあるかもしれませんが、その素早さと活力は驚くべきものです。

同時に、候補が決まれば、それには民主党支持者が熱狂するという大衆のエネルギーが、アメリカの民主主義を支えているという事なのでしょう。

こうした様子を見ていますと、同じ民主主義とっても、アメリカと日本では、民主主義の在り方がずいぶんと違うようだという感じを強くします。 

アメリカの民主主義は二大政党という形で発展してきています。最近分断が心配されたりしていますが、アメリカ国民という誇りは強く、基本的には一体感を持っているのでしょう。

リベラルな思想、民主主義の尊重、先進的な思考など、共和党、民主党とその支持政党は違っても、多数決は尊重するという割り切り、選挙で敗れれば潔く負けを認める、(選挙結果を認めなかったのはトランプさんぐらいですか?)、そして次期政権を目指す。

アメリカの大統領選挙は民主党・共和党がより多くの国民の支持を求める「祭り」なのでしょう。

これで戦後80年近く覇権国の地位を保ってきたベースには、世界の優れた人材を集めることが可能な国という伝統があるからではないかと思われます。

そうした高度は知識層が、かわるがわる時の政権を支え、アメリカ自体の活力と先進性を確保しつつアメリカという国を支えて来ているのだと感じるところです。

アメリカと日本の民主主義の形の違い、国民の意識の違いを考えながら、民主主義を支えるために基本的に必要なものとは何かをもう少し考えてみたいと思うところです。


最低賃金、今年も5%の引き上げに

2024年07月24日 13時59分34秒 | 労働問題

最低賃金に引き上げは毎年、7月の暑い時期に中央最低賃金審議会で引き上げの「目安」を決め、それを参考にして、各県の最低賃金審議会が県別の最低賃金をきめ、10月から実施という事になっています。

現在審議中の上記の「目安」は、現状の全国平均1004円を1054円に50円引き上げるという形で進められているようです。

中央、地方の最低賃金審議会ともメンバーは公労使の三者構成ですが、大体は事務局の厚労省(政府)の意向で決まるようです。

アベノミクス以来政府は最低賃金の大幅な引き上げにご執心で、このところは毎年5%を目標にしていて、2030年代半ばには時給1500円が目標と言っています。

日本の最低賃金は国際的に見ても大変低いといわれますが、かつてはアメリカよりも、かなり高い時期もありました。

なんでそんなことになるのかと言いますと円レートのせいで、アメリカの連邦最低賃金は現在7.25ドルですから、円レートが110円なら798円で日本の方が高いのです。アメリカで一番高いカリフォルニアやニューヨークは16ドルですから現状の154円を掛ければ2464円です。これは高いですね

円安だからと最低賃金を上げて、円高になったら下げるというわけにはいかないので、日本は日本経済の実力なりの最低賃金を決めるしかないわけです。

その意味で厚労省は10年後1500円という目標を置いているのでしょうが、毎年5%上げると10年後には1600円を越えます。それを1500円としても、政府の今後6年間実質成長率1%以上という経済成長目標では大分コスト高になるわけです。

政府はどう算段するのか解りませんが、国民所得が1%ほどしか増えないのに最低賃金を毎年5%も上げるという事は、そのために所得の高い部門から最低賃金に関わる部門に原資(富)を移転させなければならないのです。

今、政府はそれを賃金コストの価格転嫁で実現しようとしているのですが、今春闘の中の議論でも知られますように、なかなかうまくいきません。日銀「短観」で見ても大企業の大幅増益と、中小企業の収益改善の遅々という姿は歴然です。最低賃金は法律で強制されますが、価格転嫁は任意・交渉が現実です。

もともと最低賃金法というのは賃金格差の拡大を防ぐために生まれたものですから、その背後には格差拡大は社会正義に反するという倫理観がなければ成立しません。

戦後の日本企業では、収益や付加価値の増加は労使あるいは顧客も入れた三者で均等分配しようといった真面目な考えもありましたが、今、配当の高率化、高所得の経営者が急増する中で、倫理観を前提にした政策の枠組みは機能しません。

今の政権党である自民党にこんなことを言っても、政治家自身が、自分のところに税金かからない金を持ってくることに専念するばかりですから詮方ないといいうのが国民の気持ちでしょう。

ならば労使に、現実に社会経済活動を担当する当事者として、社会正義の意識、経済社会における倫理観を求めたいと思うのですが、残念ながら今の日本では難しいようです。

今はただ「神(紙)頼み」で、わたくしのお財布には、未だお見えになっていない「論語と算盤」の渋沢栄一先輩にお願いしようと思っていますが、どうでしょうか。


ハチの巣を処理しました(ご報告)

2024年07月23日 14時08分59秒 | 経済

7月9日にハチの巣のことを書きました

我が家によく巣を作る蜂は、あしながばちの仲間かと思いますが、小さなおとなしい蜂で、あまり危険を感じたことはありません。

しかし、夏休みに我が家に遊びに来る子供たちの家族、まだ小さい孫やひ孫たちが、ミニ菜園のミニトマトなどを採りたいといって、知らずにハチの巣に近づいて、もし刺されたりすると大変だから、早いうちに撤去した方がいいのではないですかと家内は言います。

「蜂はこちらが攻撃しないと襲ってこないよ」と言っても、「でも新聞などで、遠足の児童がスズメバチに刺されたなんて話もありますよ」などと言います。

「スズメバチに刺されたらそれは大変でしょう、ショック死もあるようだから。でもうちの蜂は小さい蜂で、もし刺されえてもそんなに痛くないよ」と言っても「相手は子供ですよ、あそこは怖いといって遊びに来なくなりますよ。」と駄目押しです。

やっぱり、何とかしなければならないかなと思うのですが、折角一生懸命蜂が巣を作って、卵を産み付け、蜂の子を育てようとしているのに、殺虫剤をシュッとひと吹きではそれこそ蜂が可哀そう・・・、と思っていろいろ考えました。 

という事で、まずミニトマトの収穫をしながら様子を見ました。なるべき刺激しないように巣の正面の辺りの真っ赤な実も、静かに朝夕、食べる分の収穫を繰り返しました。

蜂からは何の反応もありません。小さな蜂は、巣の材料を集めるのかトマトの葉の間を飛んでいます。

これなら孫やひ孫が来ても大丈夫かな、などと思っていましたが、4~5日すると蜂がいなくなったようです。後ろの巣を見ると巣作りをしていた蜂もいません。

本当の理由は蜂に聞かなければ解りませんが、経験から言うと、人間があまり頻繁に来るので、危険と判断して巣作りをやめたという可能性が強いように思われます。

しかし、人が来なくなれば、また巣作りに帰ってくることも考えられますので、やっぱり巣は除去しておいた方がいいかと思い、散水ホースの水を細くして、上からかけてみました。

もし蜂がいれば、「台風でも雨のかからないところに作ったつもりなのに。なんで?」と言うかもしれないなどと思いましたが、蜂はいませんでした。

巣は水に濡れて簡単に下に落ちました。隙間に手を入れて拾い、以前見つけたもう少し大きな巣と並べて、ガラスの割れたフレームの中に並べて「展示?」してあります。


<月曜随想>政治におけるSDGsの思想

2024年07月22日 15時39分45秒 | 政治

今朝のニュースで、アメリカでは、バイデン大統領が、大統領候補指名の大会を前にして、これまでの大統領選出馬の意思を翻して、カマラ・ハリス副大統領に感謝を表明し、再選を目指すことをやめると宣言しました。

見方はいろいろあるのでしょうが、バイデンさんが、自分の意思で次期大統領選出馬を目指していたのか、それとも、自分の年齢、健康などを念頭に、適切な人がいれば譲ってもいいと思いながら、対トランプの選挙戦という事ですから、民主党政権の継続のために、やはり自分が出なければならないと考えていたのか、その辺はいくらニュースを深読みしてもわかりません。

おそらくその両方の考え方を内心では意識しながら、民主党政権の継続を願うベストの選択をしなければと考えていたのではないかなどと推測(忖度)しながら見ていた人もおられるでしょう。

選挙戦が本格化してくる中で、何となく考えていたのは、企業経営でも政治でも基本は同じかなという事でした。

人間には加齢という問題がつきものですし、加齢以外にもいろいろなことが起きる可能性があります。組織の目指すところを進めていくという事の「持続可能性」(SDGSの基本概念)を考えれば、後継者の育成という問題はリーダーが最も重視しなければならないことのはずです。

政治や政党の場合には、リーダー個人の後継者育成の意識も重要ですが、政党自体の活動としてバイデンさんの次のリーダーを育てるという意識があったのか、些か疑問でした。

副大統領制というのが、制度的にそれを担保するシステムかとも思いましたが、これは今後明らかになって来る所でしょう。

逆に、トランプさんの共和党を見ますと、トランプさんも若くはありませんが、やはり、後継者育成などという雰囲気は感じられません。

アメリカという国は人材豊富だから、後継者は何時でも、彗星のごとく出てくるという意識なのでしょうか。今後の大統領選が見ものという事にもなりそうです。 

ところで、後継者育成が最も熱心に行われるのは世襲制組織の場合のようです。世襲でない独裁者の場合は後継者の育成にはあまり熱心でないので、その代で終わることが多いようです。

ところで、日本の自民党の場合には、かつては寡頭政治の様に複数の リーダー候補をそだて(三角大福など)、その中から順次リーダーを出していくような時代は、持続性がありましたが、独裁的なリーダーが出て、あとは数を揃えればという事になってから、上手くいかなくなったようです。

それでは野党の場合はどうかと言いますと、育成の意識は余りないようで、自分で育って自分がリーダーになるという方式のようで、結果は小党分立です。

日本では、政権党は独裁的になって衰亡ですが、群小野党にも、持続的発展のために組織をまとめ、その中でリーダー候補を育成するといった日本の政治・経済のSDGsを目指すといった思考方法はいずれも欠落しているようです。

やっぱり、どんな組織でも、(地球人類にも)、SDGsの概念は重要なようです。


アメリカの現状を憂う

2024年07月20日 14時41分13秒 | 国際関係

「もしトラ」という言葉がいたる所に見られるようになりました。しかもその「もし」が、次第にその確率を上げてきているような状況ではないでしょうか。

一方では、民主党支持者の中にもバイデンさんは高齢で、体力的にも記憶力でも問題がありそう、という意見が強くなっているようで、今回のアメリか大統領選挙はこれからどう展開するのか、世界中が心配しているのではないでしょうか。

もともと、バイデンさんであれば、今後のアメリかの行動についての予測もある程度可能という見方が多く、トランプさんになると予想外のことが起きそうで心配というのが「もしトラ」の意味だったのでしょう。ところが、この時期になってバイデン下ろしが動けば予想のつかない要素がさらに増えることになります。

こうした事になるのも、民主党が、あるいはバイデンさん自身が後継者を育てて来なかったことの結果でしょう。

こんなことで「もしトラ」の可能性がさらに大きくなれば、世界も国連も今後の地球社会の予測困難による不安定化に悩まされる事になりそうです。

かつてのトランプさんの時代を思い出してみても、あの北朝鮮の金正恩さんとの世界のテレビ画面を巻き込んだショーはいったい何だったのか、イランの核問題から「一抜けた」行動の結果は何だったのか、アメリカ自身が言い出したTPPからこれも「一抜けた」でよかったのか、ユネスコなど国連機関からの脱退は何をもたらしたか、中国との関税戦争は何か解決したのか、国会議事堂占拠をまたやるのか、などなど、世界のトラブルや混乱の種がまた増えるのではという危惧が先に立つようになりそうです。

口では国際社会の安定・発展を言いながら、トラブルメーカーになる国や人はいつの時代にもいるものです。日本もかつては、アジアの平和と発展を謳いながら、アジアや世界に多大な迷惑や苦難もたらした過去を持っています。

だからこそ、戦後の日本は、平和憲法を掲げ、世界の中でトラブルメーカーには絶対ならず、常にトラブルシューターであることを心掛けて来たのではないでしょうか。このブログでも、日本は徹底して常にトラブルシューターであるべきと言ってきているつもりです。

ところで、アメリカは日本と同盟関係にある国です。そのアメリカが「もしトラ」でトラブルメーカーになるのではと心配されそうな様子です。

「もしトラ」の「トランプ」が現実になって、その「トラ」が「トラブル」の「トラ」になるなどという事のないのを願うところですが、もちろん、トランプさんも、今言われている「石油をガンガン掘ってガソリンの値段を下げ、中国のEVは買わない」と言い続けるかわかりませんが、米中問題は経済だけでは収まらない可能性もなしとしません。

首脳の外遊が多い割に、外交政策については極めて下手の日本のようですが、世界のトラブルシューターとして、日米関係を含め、日本に、これから何が要請され、日本として何が出来るのか、追随から自主へ、日本も本格的に変わって行かなければならないのではないでしょうか。


消費者物価、国内物価はほぼ安定へ

2024年07月19日 14時24分24秒 | 経済

今日総務省統計局から2024年6月分の消費者物価指数が発表になりました。

今、消費者物価指数は2つの意味で大変重要です。1つは日銀が金融政策の変更、現状のゼロ金利政策を変更して日本経済を金利が機能する正常な状態に戻す政策に踏み切るための条件として2%インフレ目標を重視しているという点、もう1つは、毎月勤労統計の賃金指数の上昇が、物価の上昇を上回ることが消費不振によるゼロ・低成長経済脱出の必須条件となっているという点からです。

まず前者の点から見ますと、日銀のインフレ目標2%というのは「賃金上昇を伴う消費者物価指数の上昇と言っているところから、日本の国内経済が生み出す消費者物価指数の上昇が2%というのが基本的視点だろうと思われます。

これは消費者物価指数でいえば、「生鮮食品とエネルギーを除く総合」に近い概念だと思われますので、下に掲げるグラフでいえば、緑の線に当たります。

消費者物価主要3指数の推移(総務省「消費者物価指数」)

消費者物価主要3指数の対前年上昇率(%、出所:同上)

図で見ますと、緑の線は、上のグラフ、指数自体では5月、6月は106.6で横ばい、対前年上昇率は下のグラフで見ますと5月2.1%。6月2.2%でほぼ2%になってきています。青の線はエネルギー関係の上昇を反映、赤の線は天候不順による生鮮食品の価格上昇をを反映して多少の上昇基調です。

日銀が、国内経済の基本的な動きを重視しているとすれば、政策金利の正常化(引き上げ)はそろそろ視野に入るということでしょう。

一方、後者の毎月報道されている実質賃金低下傾向につきましては、2022年4月から、この5月まで25か月連続で対前年実質賃金低下という長期にわたる異常事態で、6月の数字が発表される来月上旬が待たれますが、感じでは少し難しいかなです。ボーナスが入る現金給与総額では、ボーナスが良かったようですから可能かもしれませんが。   

ところで、もともと金融政策で賃金を上げることは、日本では難しいのです。黒田前日銀総裁は、アジア開銀におられ、為替が安くなったり輸入インインフレとなれば、たちまち賃上げ圧力が強まり国内インフレに転嫁されるという世界の常識の中で、大幅円安となれば2%インフレは容易に可能、後のインフレ抑制が大事とお考えだったのでしょう。

所が、日本はそうでないのです。日本は、「賃金は経済成長率にリンクすべし」という稀有な認識を労働組合、企業の従業員が持っている国なのです。

この読み違いが今に至っているのですが、連合が本気になって、物価上昇を大幅に上回る賃金獲得に動かなければ実質賃金はなかなか上がらないでしょう。

この辺りを日銀も、企業労使も、もちろん政府も、理解しないと、実質賃金上昇ははかばかしくなく、そのせいで、金融正常化(金利引き上げ)もやりにくいという困った状況が続くのではないかと心配しています。


円レート・金利と実体経済、何が重要か?

2024年07月17日 16時38分23秒 | 経済

円レートが160円と158円の間で揺れ動いているようです。

マスコミは、政府が円高防止のために何兆円かの介入に踏み切ったらしいといった見方を書いています。介入のタイミングが上手いので2円も円高に動いたといった専門的な分析などもあります。

それと同時に、こうした介入による円安は一時的なもので、長続きするものではない、といった評論もあり、事実2~3日するとまた円高に戻ったりしています。

一方ではアメリカの景気が転機に入ったのではないかという意見が多くなり、消費の伸び悩みを指摘する声があります。テレビでは、アメリカの店頭で、買い物客が、物価がずいぶん高くなったので買い控えですと言っているところが映ったりしています。

アメリカが不況になればFRBは政策金利の引き下げに踏み切るだろうという事で、9月の引き下げを予測して円高ドル安という見方も増えています。

日本も物価上昇が2%に近づいたので、本格的な金利引き上げに動くのではないかという観測もあります。

実体経済とそれに即した金利政策から見れば,黙っていても円高になってくるという認識が一般的です。日銀短観によれば、今年度後半の円レートは141円というのが企業の平均的な予測のようですが、こうした実体経済面の認識と、何兆円使って一時的だが2円ほど円高にしたなどという為替介入のニュースがだれにどれほど重要なのかなどとついつい考えてしまいます。

確かに為替介入などのニュースの際に登場する専門家は証券・金融関係のチーフアナリストとかストラテジストといった方々で、マネー取引の分野の方々です。マネー取引は現金や現物を動かすわけではありませんから、実体経済の取引とは比較にならない巨額なカネ(信用)を瞬時に動かし値動きによるキャピタルゲインを中心に考えるのでしょう。

こうした動きは、当面の実体経済の動きを前提に予想されるカネの動きを予測し、短期的な投機心理を読みながら、それに伴うマネーの動きに由来する派生現象(デリバティブズ)を捉えてカネ(信用)そのものを売買するのでしょう。

信用経済(マネー経済)と実体経済では実体経済が、現実の人々の生活に関わる本来の経済で、マネー経済は実体経済がスムーズに動くように潤滑油としての役割といった関係にあるはずだったのです。

然し最近は、金融、証券、為替といったマネー経済の部分が、独自の発展を遂げ、実体経済と異なる基準で活動したり、実体経済をトラブルに巻き込むような存在になったりすることが多くなっています。

リーマンショックの際、その点が大いに反省され、実体経済こそが、人類社会の本来の経済という論調が見られましたが、このところまた、マネー経済の活動の活発化に拍車がかかってきているように感じられます。

マネー経済は基本的に付加価値を生まず、ともに配分の移転が主要な目的になるように設計されてきています。

今の日本経済を考えて見えれば、金利の正常化(引き上げ)が必須であり、併せてアメリカの金利引き下げの可能性が高くなっています。産業界は当面20円ほどの円高を想定しているのです。

アメリカは基軸通貨国ですが、多分に自国中心の政策をとるでしょう。日本は自らの、ここまで落ちた実体経済の状況を十分に弁え、政府、日銀は、産業労使が早期に健全な安定成長経済に戻すために役立つ金利水準、為替水準を、実体経済ベースで策定し、小手先の為替介入などに惑わされない実体経済中心の政策路線を進んでほしいと思っています。


メモリー、記憶装置、人類の進歩を支える日本へ

2024年07月16日 13時44分43秒 | 科学技術

人間の脳は、自分が経験し、見聞きしたことを時系列に整理して記憶することが出来るようになっているという事です。多分、これこそが人間を他の動物と違うところでしょう

多くのことを経験し、知識を吸収し、それを確り覚えていれば、いろいろな面で便利です。ですから人間はできるだけ多くの知識をため込もうとするようです。

「友を選ばば、書を読みて」ですから本は大事でした。蔵書の多い人は尊敬されました。

現役のころ資料室の担当をしたことがあります。高度成長の時代です。先輩に「必要な本は必ず買っておくように」と言われました。一番困ったのは、資料室のスペースに限りがある事でした。「蔵書は無限に増える。資料は化け物だ」と思いました。

今人類もそんな経験をしているのではないでしょうか。

コンピュータが生まれ、紙に書いたり印刷したりの時代より、知識の量は急速に増え、それを活用するための検索も極めて簡単にできるようになりました。

そして人工知能,生成AIが生まれました。

人間の脳は、記憶の必要なものと、不要なものは適当に判断しますが、AIは教えたことは皆覚えています。そしていつでも検索出来ないといけないのです。

そんなに覚えきれないよ、という事は許されないのです。必要になるのは大容量のメモリー、記憶装置です。状況は昔の「資料室」と同じで、知識は「化け物」で無限に増えるのです。

ということで、これからあらゆる面でAIが活用されるようになると、あらゆるところで膨大なメモリーの蓄積が必要になるわけで、メモリー蓄積のための「省スペース」と「省電力」が大きな課題になってきているのです。

メモリーは、古くは磁気テープから、フロッピーディスク、SSDと進歩してきましたが、最近また磁気テープが脚光を浴びることになっているようです。

特筆すべきは、時期テープの場合、今後の技術進歩によっては、省エネ性能では、SSDの何十分の1から何百分の1になるといわれている点です。

ここまで書いてきたのも、これから記憶装置として磁気テープが省スペース、省エネでますます重要になるのではないかという見方があるという事と、もう一つは、磁気テープという事になりますと、日本には富士フイルムとソニーという大変な会社があるという事を多くの人に知ってほしいと思ったからです。(先刻ご承知の皆様には失礼)

磁気メモリーの性能の向上は、磁気粒子を小さくすること,テープ、フイルムを薄くすることのようですが、こうした材料技術は日本の得意技でもあります。「磁気」記憶装置の省エネ性能や、耐久性については、その本来の性質からの有利性があるようです。

人類の知識技術の進歩はこれからも知識をいかに集積できるか、そしてそれを便利に使いこなせるかに大きく依存するでしょう。

その最も基本的な分野で日本が実力を発揮することが出来れば、近頃落ち目の日本ですが、「流石は日本」と言える分野が拡大する牽引力になっていくのではないでしょうか。

この分野での日本の技術力に期待するところです。


<月曜随想>アメリかについていくのですか?

2024年07月15日 15時01分46秒 | 国際関係

アメリカでまた大変な事件が起きました。トランプさんが演説中に狙撃されたというのです。狙撃した人物は即座に射殺されたということです。

日本だって安倍さんが銃撃されて死亡しているではないですか、日本のずいぶん野蛮な国ではないですか、という人もいます。

言われてみれば確かにその通りで、世界でも民主主義の先進国を自任する国でこうした恐ろしいことが起きるのです。

ただ、違うところもあります。安倍さんの場合は、政治問題というより、私怨による犯行ということのようです。

アメリカの場合は多分政治問題に関わる事なのでしょう。しかし犯人が射殺されているのでその辺は解りません。

警察の対応も日米では違うようで、日本では逮捕して犯行の理由を突き止めようとしますが、アメリカでは、射殺することが多いようです。

世界を驚かすようなことが起きたので、つい書いてしまいましたが、本題は日米関係のことです。

日本経済がおかしくなったきっかけは「プラザ合意」(1985年)で日本が円高になってからと、このブログでは書いていますが、宮沢喜一さんが「回顧録」を出されたとき、一番よくわかっているのは宮沢さんだろうと思い、早速「回顧録」の「プラザ合意」で円高が進んだ時期の頁を開いて見ました。

しかし、書いてあったのは「あの時は毎日のように大幅に円高が進んで大変困りました」といったことだけだったので、「え!それだけ」と落胆したのを覚えています。

昨日の朝日新聞に、「宮沢喜一・日録(戦後政治の軌跡)」でちょうど「プラザ合意」の所になっていたので読んでみました。

記事の冒頭に「竹下さん、あなた、自分が何をやってきたか解っているのですか」という宮沢さんの言葉がありました。プラザ合意から帰国早々の竹下登蔵相を、居並ぶ政府与党要人の前で面罵したのだそうです。

回顧録では「困りました」だけでさらっと書かれた言葉の背後に、あの時起きていたことが「日録メモ」にはつぶさに書いてあったようです。

大蔵省出身で当時経済・財政には最も通暁している人として知られ、自民党総務会長だった宮沢さんは、円高の恐ろしさを十分に先見していたのでしょう。

それからのアメリかのベーカー財務長官との交渉の過程も「日録メモ」には詳しく書いてあったようです。

「プラザ合意」の翌年の7月には、中曽根内閣の蔵相に就任、その翌年には竹下内閣の副総理兼蔵相として、日本に円高を強いたアメリカのベーカー財務長官との共同声明で円高阻止を狙う努力を続けたようです。

一時は話に乗る気配もあったベーカー財務長官も、もともとアメリカの対日貿易赤字削減の奥の手の円高要請ですから言を左右にしたようで、宮沢さんの職をかけるという意気込みも結果的には成功しなかったようです。

結局、プラザ合意後1年ほどはアメリカの貿易赤字は減少しましたが、赤字体質是正は役に立っていないのが現実です。一方日本はその後30年も円高に苦しんでいます。

もともとアメリカ経済そのものが生産より消費が多い体質ですから、それが治らない限り黒字国にはなりません。

日本に対して円高政策を取り、その後中国にも人民元切り上げを要請しましたが、習近平さんに断られ、今度は関税の引き上げで、習近平さんとトランプさんの泥仕合になりましたが、アメリカは中国に工場を作り、中国はアメリカに製品を輸出するという関係が出来ていますから、ともに返り血を浴びるような結果で、お互いに巧くいかないのは当然です。

アメリかも自己主張の強い良い国ですし、中国もその点では負けていませお互いに損をしながら意地を張り続けているようです。

この辺りは、アメリカが民主党であろうと共和党であろうとあまり変わりはないようです。

日本は現状アメリカについていこうというのが自民党政権の態度ですが、それで日本にとっていいことはあまり無いようです。

日本はもっと自分について確り考え、にほん自身の存在意義を明確にして、米中両国に、喧嘩するより仲良くした方がお互いに上手くいきますよと説得する役割を果たした方が余程世界のためになりそうな気がします。

そんな難しい事が出来るのは、世界広しと言えども日本ぐらいではないでしょうか。


ミニトマトが最盛期に入ったようです

2024年07月13日 14時19分05秒 | 環境

ゴールデンウィーク明けの5月6日、我が家のチューリップ用ミニ花壇はミニ菜園に変身しました。これはこのブログでご紹介した通りです。

それから2か月余りたち、ミニ菜園はキュウリから始まって、ナス、ミニトマトと今年は順調に新鮮な果実を提供してくれています。

これまでなかなか上手くできなかったミニトマトが、今年は2本仕立てにしたところ、順調に支柱に添って伸び、小さな黄色の花が咲き、小さな青い実の房が成長してきて、先週あたりからぽつぽつと赤くなる実が出始めました。

我が家では、トマトとキノコ(マイタケ、ブナシメジ)それに納豆は常食で、家内の生協への毎週配達の注文で、有難いことに1年中確保できています。

トマトはリコピンを多量に含んでいて、リコピンは抗酸化作用をはじめ、高血圧、癌、心臓疾患、老化防止、日焼け、美肌など何にでも効くそうで(キノコも同じようですが)これが一年中あるというのは農業の技術進歩のおかげだと思っています。

そうしたトマトですが、出来れば夏の間は何とか自家製で補給しようと毎年育てます。我が家で取れる時期はスーパーでも一番値段の安い時期ですが、経済効果よりも、朝どれ野菜はやはり格別です。

家内も先々週あたりから、もうトマトは自家製でと、注文を早めにやめて、少し早過ぎたかなと言っているうちに急速に赤い実が増え始めました。

ハチの巣に気を付けながらですが、まず、赤い実の集中しているところの写真を撮ってみました。

さてそれに続いて、蜂を刺激しないように静かに静かに気を付けて収穫した結果はこんな真っ赤なミニトマトの山になりました。

これから次々に赤い実が増えそうです。食べきれなくなったらどうしようかなどと余計なことを考えながら、当面の収穫に満足しているところです。