tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

安全の大切さ:自然災害、国際関係に思う

2013年12月30日 10時53分20秒 | 国際政治
安全の大切さ
 この1年を振り返れば、 いいことも沢山ありました。4月には20円幅の円安が実現し、日本経済は正常化を取り戻し、景気回復の方向が見えてきました。富士山が世界文化遺産に登録されました。7年後の東京オリンピックも決まりました。和食が、世界の無形文化遺産になりました。真面目にやっていればいいこともあります。

 しかし日本人の安全を脅かすようなことも沢山起きてしましました。自然界で特に目立つのは、地球温暖化のせいでしょうか、気候変動が極端化し、異常気象による災害が随分多くなったような気がします。

 海外ではフィリピンの台風被害はその典型ですが、日本でも、気象庁が「今まで経験のないような」という言葉を使って説明しなければならない風水害が際立って増えたような気がします。

 伊豆大島の災害をはじめ、極端な集中豪雨や豪雪による被害が多発しました。
 今まで気象庁から「竜巻」という言葉は聞いたことがなく、竜巻はアメリカやオーストラリアなど外国の事かと思っていましたが、日本でも今年は竜巻の被害が随分ありました。

 国際関係でも何かとげとげしい状態がひどくなってきました。中国、韓国との間が険悪の度を増していますし、最近は欧米からも「日本は右傾化を始めたのではないか」との観察が出るような一部(日本人全体ではないと思います)の動きもあります。

 地球環境の変化に関わる問題は、これこそ国際協力で対応するしかないのでしょうが、その国際関係がギスギスしていたのでは地球の安全、国の安全は確保されません。
 
 日米安全保障条約にしても、「安全」という文字が入っていますが、本来は日本が軍備を持たなくてもアメリカ安全を保証して日本の軍国主義化を払拭しようとしたものだったのでしょうが、60余年を経て、集団的自衛権問題が論議になるような国際関係(日米間系)の変化が起きています。

 戦後の日本を考えてみますと、世界に先駆けて「平和憲法」を掲げ、そのもとで、世界を驚かせる発展を遂げ、アジアをはじめ途上国の発展にも種々の貢献をしてきたという実績があります。

 こうした実績の上に、かつての「日本は危険な国」という印象は次第に薄れ、日本は「安全で役に立つ国」というイメージを徐々に作り上げてきたように思います。

 自然災害の原因とみられる地球温暖化対応でも、様々な技術開発で世界に貢献する努力を重ねている日本ですが、政治的・軍事的な意味での世界の安全に対しても、ブレない視点を持ち、一貫して「日本は安全で役に立つ国」という世界からの認識を、ますます確りしたものにするような安定した行動を取ることこそが日本の目指すとべきころでしょう。

 混血が純血化し日本人の原型が形作られた縄文の昔にさかのぼれば、日本人は本来争いを好まないはずです。世界のあらゆる安全に貢献することが、日本自体の安全にも、最も役立つという認識を、改めて新たにする必要があると振り返る年の暮ではないかと思っています。


平成26年度政府経済見通しを見る

2013年12月28日 12時30分39秒 | 経済
平成26年度政府経済見通しを見る
 さる12月21日に来年度の政府経済見通しが発表になりました。まだ閣議了解の段階で、閣議決定になれば、もう少し詳しい数字が出るのですが、物価関係の数字は出されていますので、全体をざっと見てみたいと思います。

 先ず名目経済成長率は25年度の2.5パーセント(実績見込み)より高く3.3パーセント(見通し・以下同じ)になっていて、消費税増税も含めて、物価上昇も含んでいるのですから上がって当然という所でしょう。
 ということで、実質経済成長の方を見ると、こちらは来年度は1.4パーセントで、今年度の2.6パーセントよりだいぶ下がる見通しになっています。

 消費増税による実質経済の減速を読み込んでいるのでしょうが、消費増税というのは民間のお金を政府が取り上げるということですから、民間の実質消費増にブレーキがかかることは当然でしょう。
 民間消費支出は今年度の駆け込み、来年度の減速なども含め、今年度の実質2.5パーセント増から0.4パーセント増に落ちています。些か読み過ぎの感じです。

 その分歳入の増えた政府が使ってくれれば、公的需要でカバーできるのですが、来年度の1.4パーセントの実質成長の内訳は、民間需要1.0(今年度1.6)、公的需要0.2(今年度1.1)、外需分0.2(今年度-0.1)、で合計1.4ですから、税金で召し上げる割に政府支出は増えないということになります。

 随分ばら撒き支出をしているように報道されていますが、支出は絞ってその分国債発行の減額に回すのでしょうか、後から補正で使うのでしょうか。政府の肚は解りませんが政府支出の実質GDPへの貢献は少なくなります。

 ずっとマイナスだった外需の寄与度が来年度はプラス転換ですが、円安の効果を見ているのでしょう。貿易収支は赤字続きですがどうなのでしょうか。
 海外進出企業の海外からの収益などを含めた経常収支は4.7兆円の黒字になっていて、今年度の4.2兆円より増えていますが、皆さまはどうご覧でしょうか。

 これはいわばGDPの使い残しですから、これを全部使えば来年度のGDPは0.9パーセントほど高くなるはずです。
 ただ最近の月々の経常収支の縮小と、此の所の国際関係の混乱を促進するような政権の行動や態度を見ますと、見通しは矢張り「見通し」かなといった感じも拭えません。
 折角持ち直した日本経済です、此の機会を「賢明に」活用したいものです。


アメリカは出口に近づいているのか

2013年12月26日 11時06分00秒 | 経済
アメリカは出口に近づいているのか
 何となく円安が進んで$1=¥104円台に来ました。アメリカが超金融緩和からの出口戦略に踏み切ったからでしょうが、過日のFOMCの決定も何か「及び腰」ですね。

 FOMCの発表では、失業率とインフレ率を特に重視していて、失業率6.5パーセント以下で雇用増が進むかどうか、インフレ率が2.0~2.5パーセントに巧く収まるかどうかといったところが「出口到達」への目標とされている様ですが、短期的、表層的な事しか考えていないように思えてなりません。

 失業率が6.5パーセント以下なら満足するというのは、日本とは違うお国柄を考えれば、それでもいいのでしょう、しかし年2パーセントのインフレが健全だということになると、世界の基軸通貨の価値が毎年2パーセント減価するのですから、10年たつと22パーセントもの減価です。他の国の通貨も年率2パーセント以上減価しないとアメリカ(基軸通貨国)の国際競争力はなくなります。それでいいのでしょうか。

 本来、アメリカにとって最も大事なことは、出口戦略を実行する中で、今回の超金融緩和の真の原因であるアメリカの双子の赤字の改善が出来るのかという問題でしょう。
 折しも、シェールガス・オイルという新資源が開発され、アメリカに毎年従来の経常赤字(GDPの2~4%)に匹敵するぐらいの価値をもたらしてくれそうです。これは関連する雇用の増加にも大きな貢献でしょうし、双子の赤字削減(解消)への強力な追い風です。

 それでは此の所のアメリカの経常赤字幅はというと、2013年の予想は対GDP比で2.7パーセントです(世界経済のネタ帳)。2002~2008年は4~5パーセントでしたから、シェールガスの好影響が出ているのかもしれません。しかし赤字は変わりません。

 今回の出口戦略の影響はどうなのでしょうか。アメリカ経済が引き締まって、経常赤字が減るのか、それとも失業減、インフレ傾向、消費増、好景気になって赤字が増えるのか。放置すれば後者の可能性が高いのではないでしょうか。

 アメリカが黒字国になってくれれば、世界経済には大きな朗報ですが、今回の出口戦略ではその関連には全く触れていません。40年以上続いたアメリカの経常赤字が解消するのは相変わらず至難のようです。

 出口戦略はごく表面的な好況の追求で、恐らくアメリカはまた赤字のファイナンスに追われることになり、その結果、一定の時間後に世界経済にまた新たな混乱をもたらし、また超金融緩和で当面を糊塗することになるのでしょうか。
 出口戦略は「本当の出口」には、とても行き着きそうないような気がするのですが。


立法で雇用は改善しない

2013年12月24日 16時08分13秒 | 労働
立法で雇用は改善しない
 かつて、(労働の)経営参加をテーマにした国際シンポジウムで、北欧のある国の代表が「結婚を立法で幸せにすることは出来ない」といったのを覚えています。
 労使関係を結婚に例え、いかに法律をいじってみても、立法措置で労使が信頼し合ったり協力したりするものではないという趣旨の発言でした。

 今、非正規雇用問題が深刻な中で、政府やお役人は、雇用改善のためと称して派遣法を改正することに熱心です。マスコミも、それでは経営側に有利過ぎる、もっと働く側の事を考えるべきだ、などといった調子で、その動向を一生懸命追っています。

 確かに製造業で派遣労働を認めたことが、派遣を増やしたとか、日雇い派遣が雇用を劣化させたとか、登録型は廃止せよ、とかいろいろ意見はあります。それぞれに自分の発言が社会正義に叶っていると考えているのでしょう。

 しかし現実の世界はそれほど簡単ではなく、それぞれの雇用形態にはメリットとデメリットがあるのです。製造業で派遣を認めず、偽装派遣も徹底してなくしたら、日本の自動車メーカーの中には存続できなかったところも出たでしょう。
 日雇い派遣で働く人の半分以上が、日雇い派遣は必要と答えているという調査もありました。

 雇用制度というのは実は大変難しいもので、どんな法律を作っても、必ず光と影が出るのです。これが絶対良いなどというものは無いと思った方がいいでしょう。

 それは、働く人自体の「自分はこういう働き方をしたい」という希望が極めて多様だからです。
 端的な話が、誰もが正規社員になりたいかといえばそうではないのです。非正規で自由に働きたいという人の数は社会が豊かになると共に増えています。
 兼業主婦(あまり聞きなれませんが)希望の人もいます。季節労働希望者もいます。学生の多くはパートが希望です。高齢者には、給料はともかく、週に2~3日手慣れた仕事をしたいという人も沢山います。

 法律が、「そういう働き方はできません」というのが一番困るのです。いろんな働き方が選べるのが良い立法措置という事でしょう。

 「どう決めたって、企業がそれを悪用する」という意見もありましょう。では、どうすればいいのでしょうか。
 
 失われた20年に入る前、「ジャパンアズナンバーワン」といわれた時代、自ら非正規を選んで働く人たちが労働力人口の15パーセントぐらいいました。高齢者が増えていますから、今はもう少し多く20パーセント近いかもしれません。

 現在、非正規労働者は労働力人口の35パーセントほどです。今の日本経済としての雇用能力(人件費支払能力)が不足なのです。非正規を減らそうとすれば(正規を増やせば)コスト高になって、人員整理や倒産が出る可能性が高くなります。

 日本経済自体の「雇用能力」の不足をもたらしている不況の原因はプラザ合意による円高です。日銀の政策変更で、この4月、20円ほどの円安が実現しました。これから日本経済の正常化、プラス成長が始まれば、状態は徐々に改善されるでしょう。

 大事なのは、日本経済の雇用能力(人件費支払能力)を増やして不本意に非正規で働いている15~20パーセントの人達の正規化を促進することです。
 失われた20年の後遺症で少し時間がかかるでしょう。しかし雇用健全化の王道はこれしかないのです。もともと日本企業は正規雇用が好きですから経済成長さえ始まれば、着実に正規が増えるでしょう。

 法律をいじくり回すよりも、政府は日本経済の早期活性化にエネルギーを集中的に活用することが今は最も大事です。あとは余計な世話をやかず、労使に任せればいいのです。


円安・デフレ・雇用・賃上げ・年金問題と消費動向

2013年12月22日 15時21分18秒 | 経済
円安・デフレ・雇用・賃上げ・年金問題と消費動向
 前回のような統計分析やマクロ論では実感がわかないという方もおられましょう。個別論は苦手ですし、そういうケースもあるけど、そうでないケースもあるよ・・・、と言ったことにもなるので、気の進まない面もありますが、少し書いてみましょう。

 政府は、アベノミクスで景気が回復したのに賃金が上がっていないと言います。確かに統計上はそうです。しかし消費は明らかに伸びています。賃金が上がらなくても、消費が伸びているのです。何故でしょうか?

 テレビの報道番組では「株が上がった」「ボーナスが増えた」などいろいろな要因が消費を押し上げていることが解ります。消費を増やすのは消費者の気持のようです。
 たとえ賃金が上がっても、雇用不安が強まればそれは貯金に回ります。

 別の報道番組では、派遣労働で食いつないできたが、とうとう職も住居(企業の寮)も失った人が、NPOの支援で給料は安いが安定した職に就き、自力で部屋も借りて、徐々に家財道具も買い、生活に望みを持ち、結婚も考えるようになったといったものもありました。消費を安定的に増やすのは、雇用の安定、生活の安定感があってこそです。

 振り込め詐欺の報道でいつも不思議に思うのは何百万、何千万といった現金を持っている人が多いことです。
 多くの高齢者は、巨大な貯蓄を持ちながら使っていないようです。何故でしょうか。多分将来(老後)不安からでしょう。老後のためには3千万円必要などという評論家もいます。
 かつて、金さん・銀さんが放送会社から出演料を貰って「何に使いますか」と聞かれ『老後のために貯金します』と答えていたという笑い話のような実話がありました。

 消費税増税は将来不安をもたらします。しかしもともとは、消費増税を財源にして、年金財政を安定させ、国民の老後不安をなくするというのが趣旨だったはずです。
 消費税は直接税と違って、安定財源ですし、国民にとっても解り易い税金です。消費税の使途が適切なら国民の将来不安は薄れ、それこそが消費増につながります。

 企業に賃上げさせれば消費が増えるというのは、雇用不安や将来不安がないという前提での話でしょう。しかし無理な賃上げは、企業の収益減、インフレ(あるいはスタグフレーション)そして雇用不安につながるのが多くの国の現実の経験です。
 長期の円高デフレの中で、国民は労働組合も含め、本能的にそれを知っています。

 今政府の政策に必要なことは、「もう円高不況にはしない」と国民に約束し、デフレ不況脱却を国民が実感できるようにし、さらに内外政策での国民の政策不信、生活の将来不安を極小にしていくことです。すべては国民の安心感から始まります。


企業物価、消費者物価の動きの示唆するもの

2013年12月19日 20時47分54秒 | 経済
企業物価、消費者物価の動きの示唆するもの
 未だあちこちに不安も残す景気回復ですが、前回までのシリーズで見て来ましたように、あとは生真面目に努力を続けることで日本経済の復活は必ずや実現できると考えています。
 
 この辺りを、最近の物価の動きから読み取ってみたいと思っているのが今回の基本テーマです。
 統計データで見れば、企業物価指数は最近時点、本年11月の速報で前年同月比でプラス2.7パーセントの上昇です。昨年度末までの前年比マイナスから明らかにプラスに転じています。 
 理由は中身を見れば明らかで、輸入物価の値上がりによるものです。4月の約20円の円安が大きく効いています。

 消費者物価の方は最近時点の10月で前年同月比0.1パーセントの上昇で、昨年度までのゼロ乃至マイナスから今年度に入ってゼロ乃至0.1~0.3パーセントのプラスといったところです。

 統計は現実を素直に表すもので、ここから読み取れるのは、円安による輸入物価の上昇は企業物価に反映しますが、消費者物価の場合は事情が多少複雑で、これら2つの物価統計の動きに差がでることが解ります。

 輸入原材料が加工されて消費者の手に届くまでには時間がかかるということもあるでしょうが、10月になってもほとんど影響が大きくならないというのはもう一つ構造的な原因があるからです。

 というのは、日本のGDPに対する輸入品の割合は10~15パーセントで、消費者物価を構成するコストの大部分(7割程度)は加工、流通、サービスといった段階の人件費です。従って、消費者物価の段階では円安の影響は、次第に薄められていくことになるのです。

 日本経済にはまだ「国際的に見て国内物価が高い」というデフレ要因が残っており、ホームメイドインフレは困難という状態で、賃金も上がっていないことから、消費者物価は殆ど上げられないし、上がらないという状況が続いていることが読み取れます。

 政府、日銀は2パーセントのインフレターゲットを標榜していて、賃上げで消費を増やし景気回復といっていますが、実はこれは見当違いの考え方だと私は思っています。
 円安で物価が上がった、利益も増えた、と言って賃上げすれば、結果はホームメイドインフレで、デフレ要因(日本の物価高)は直らないのです。
 未だに国際的に物価が高い日本は「もう少し(あと3~5円ぐらい?)円安にする」か「もう少しコストを下げる」かしないと、完全なデフレ脱却には行き着きません。

 さらに付け加えれば、今は、「賃上げより非正規中心に雇用の改善」に原資を使う要があると思います。
 もう1つ付け加えれば、わが国では名目賃金の上昇より、雇用の安定の方が消費拡大との相関が強いことは過去の統計を検証すれば明らかです。

 「賃上げ→消費」といった固定観念、思考停止に縛られず、現実経済の分析に基づいた「本当の日本経済の健全化」を学者も政治家も真剣に考えるべきでしょう。


これから伸びる日本経済:6、労使の信頼関係

2013年12月16日 11時20分44秒 | 経済
これから伸びる日本経済:6、労使の信頼関係
 中国は何年か前、最低賃金の大幅引き上げをやりました。インドネシアも今年は止めたようですが、30パーセントもの最低賃金の引き上げをやりました。
 最低賃金を引き上げれば一般の賃金も当然影響を受けて上がります。しかしそういった国の生産性が1年に何十パーセントも上がることはありません。結果はコスト高です。
 
 もともとが低賃金だからいいのではないかという意見もありましょう。格差解消のために必要という意見もあります。
 然し、新興国の生産性はそんなに高くありません。低賃金という武器で国際競争力を支えていくのです。
 ですから結果は、国際企業中心に工場は新たな低賃金を求めて、バングラデシュ、ミャンマーといった国々に移転していきます。

 こうした基本構造は先進国でも同じことです。アメリカが国際収支の万年赤字国である理由は、アメリカの多くの工業製品(典型的には自動車)が米国内で作っても品質や付加価値生産性の割にコストが高すぎペイしない(外国では売れない)といった事情によるものでしょう。
 アメリカはそれを何とか回避しようとプラザ合意で日本に円切り上げを求め、切り上げてコスト高・物価高になった日本は20年苦労しました。
 中国は人民元切り上げ要求には応じず、国内の賃金引き上げを選びました。

 いずれにしても、その国の、生産性(国民経済生産性)水準と賃金水準のバランスが、基本的にその国の経済の在り方を決めることになります。経済はグローバルな競争時代に入っているのです。ユーロ問題も、その基本はかつて指摘した通りです。

 そして日本の場合、日本の労使は、そのこと(生産性と賃金の関係)を確りと理解しています。これこそが日本の最大の強みです。
 
 プラザ合意やリーマンショックのような形で、日本のコストを「日本の労使交渉でなく」為替レートの変更・円高という形で外国に(国際投機資本に)決められる様な事さえしなければ、日本経済、日本人・日本の労使は、自分の手で国際競争力を落とし、失い、経済成長の形を保てなくなるような失敗はおそらくしないでしょう。

 日本人の、真摯に考え、真面目に行動するという特性と戦後の労使関係の中でも特筆すべき、二度にわたるオイルショックの経験からの学習が、労使の信頼関係の大切さの認識とそれに支えられた労使の合理的な行動を支えているのです。
 来春闘でも日本の労使は、多分大きな失敗はしないでしょう。これが日本経済がこれから伸びると確信する最大の要因です。


これから伸びる日本経済:5、技術開発→経済成長のプロセス

2013年12月13日 14時40分23秒 | 経済
これから伸びる日本経済:5、技術開発→経済成長のプロセス
 このシリーズの1で、「揃い始めた条件」と書きましたが、その第一は、円レートの適正化です。今後取り上げたいと思いますが、企業物価上昇、消費者物価横這いか低下という現状は、未だ円高の状況ということを示していますが、早晩それも解消されるでしょう。基本条件は整いつつあります。

 この基盤整備を受けて、技術開発を経済成長につなげるプロセスが徐々に動きだすだろうと思えるのです。そのプロセスとはこんな物だと思っています。

 日本の技術開発は多く企業の中で行われます。企業はそれを何とか社会に役立つものにしよう、そうすれば、それは、売り上げ、収益(正確に言えば付加価値増)つながると考えます。

 そのためには何が必要でしょうか。
 まず最初に必要なのは技術開発のための資本投下です。これが出来て初めて技術開発が生まれます。次はそれを何らかの形で、社会に役立つものに仕立て上げる広い意味の「商品化」です。これにはテスト、プロトタイプの生産、そして商品化までの生産設備投資、専門人材の多様な知恵が必要です。つまり資本投下と人件費が必要なのです。
 加えて大事なのが、従業員の教育訓練、必要に応じての適材のリクルーティングといった人的資源の育成・確保です。

 為替レートが適正水準に近づいたことによって、こうした資本費、人件費の調達が可能になったのです。もちろん、人件費の安い海外でといった場合もありますが、出来れば国内で出来ることが革新的な製品・商品開発の場合特に大事です。例えば、トヨタは、国内生産300万台死守を掲げています。その理由はご理解いただけると思います。

 そして、こうした商品化が出来た場合、それを永続的に日本経済、日本のGDPの伸びに繋げるプロセス(国内でコスト上昇は起こさないという条件)も日本では整っていると考えるところです。
 つまり、技術革新→経済成長のプロセスでは、そのための資本費と人件費の適切な投入が出来るだけの収益力が企業に無ければ駄目ですし、その人件費の中では、とくに必要なのは人材の育成、確保のコストで、これは会計処理では人件費ですが、実は(人間に対する)「投資」なのです。

 投資ですから、回収が必要で(設備投資なら減価償却)それは人材のりテンションですから、辞めない人材、日本の慣行で言えば正社員ということになるでしょう。

 こうした多くの条件が、ようやく揃って来つつあると言えるのではないでしょうか。


これから伸びる日本経済:4、今後が楽しみな日本の技術開発

2013年12月11日 13時27分21秒 | 経済
これから伸びる日本経済:4、今後が楽しみな日本の技術開発
 経済が伸びる原動力というのは、最も基本的には、シュンペータではありませんが、イノベーション(新機軸)、技術革新です。
 歴史的に見れば、今でも馬力(horse power)という単位があるように、動力が馬や牛の時代から、蒸気機関になり、更にガソリンエンジンや電気モーターになり、その上にIT技術が生まれ、世の中はとんでもない高度化を果たしたわけです。

 日本経済・社会が更なる高度化をしていくとすれば、その根っこは技術開発でしょう。そして技術開発は理学や工学だけでなく、宅配便やコンビニなどの社会システムの分野でもどんどん行われています。

 ということで、日本の技術開発力はどうでしょうか。確かに昔は日本は「もの真似」で独創性はない、などといわれました。発展当初は先進国がそういわれるのは当然でしょう、また日本のマスコミなどの自虐性が、それを言いふらすこともありました。
 
 しかし今はもう違います。戦後カメラやオートバイが改良や高性能化という技術革新で世界を制覇し、自動車ではそういかないと言われたのも昔の話、走行性能だけではなく、省エネ、クリーンエンジン、ハイブリッドエンジンの開発、燃料電池車競争では世界のトップに立っています。

 こうしたことが何故に日本において可能になったのでしょうか。
 色々な見方はありましょう。しかし、その最も基本的なベースは日本人の真面目さゆえではないでしょうか。「アリ型」と「キリキリス型」については以前にも書かせて頂きましたが、自分できちんと始末をつけようという粘り強い日本人の特性が、科学技術の面でも社会システムの面でも生きているように思います。
 これは先の震災後の日本人の整然とした行動様式にも共通のものでしょう。

 今、世界中の最大の問題は、化石燃料からの脱却、原子力利用の後の始末のつけ方といった問題ではないでしょうか。前者では日本は省エネという分野で世界をリードしていますが、後者ではまだまだです。しかし結局は衆知を集めること(チーム・グループワーク)真面目な継続的努力が新機軸を生むと期待しています。

 日本という風土が、自然から学び、みんなで真面目に働けば結果は出るものだという経験の積み重ねを日本人に教えた縄文時代1万年、そしてその後の新しいものは海外から来るが、それを日本の文化によって消化したところに成功があることに気付いてきた経験が海馬の奥に蓄積され、日本人を支えているように思うのですが、如何でしょうか。


これから伸びる日本経済:3、高齢化・人口減少と経済成長

2013年12月06日 15時18分36秒 | 経済
これから伸びる日本経済:3、高齢化・人口減少と経済成長
 ジャパンシンドロームという言葉があります。最近はあまり使われなくなって結構なことだと思いますが、日本は今後人口減少と高齢化で衰退の一歩を辿るといった意味で使われているようです。

 もともと、かつて「日出る国日本」と書いた英エコノミスト誌が、日本よ元気を出せと応援するつもりで書いたものを、往々自虐的な日本のマスコミや学者が、悲観論を強調するために利用したようなところがありました。

 これは、以前このブログでも取り上げましたが、数字を明確に検証すれば、余り大げさに取り上げる必要のないことだという結論になるように思います。現に$1=¥100水準になってからは、話題に上ることも少なくなっています。

 以前も数字は出していますが、最も悲観的な合計特殊出生率の低位推計の数字でも、
2010年~2060年の50年推計:
 人口総数 1億2805万人 → 7997万人 37.55%減 年率 0.937%減
 生産年齢人口 8174万人 → 3971万人 51.42%減 年率 1.433%減
ということになっています。

 これもかつて取り上げましたが、合計特殊出生率は、低位推計より回復 してきています。また生産年齢人口というのは15歳以上64歳未満ですが、今日の高齢者は70歳に延ばしてもらっても結構だと思っているのではないでしょうか。

 そうした現況を考慮すれば、人口にしても、生産年齢人口にしても、年率の減少率はおそらく1パーセントを切るものになるでしょう。

 此の所の実質経済成長がマイナスという日本経済のみじめな状況を齎した「行き過ぎた円高」さえ解消されれば、日本経済はこの程度の人口減でも十分に2パーセント以上の成長は可能でしょうし、現に日本経済はその方向に動いています。人口減少の論議などはここでは全く無視です。

 失業率は低下傾向、有効求人倍率は上昇、企業の新卒求人は次第に活発化、連合は賃上げ要求を復活させ日本経済に春闘が帰ってくる、といった状態を考えれば、あらゆる状況証拠から見て、日本経済の正常な成長路線への復帰は明らかでしょう。

 そうした状況の中で、出生率が低位推計の水準に留まっていると考ええる方が些か無理ということになるのではないでしょうか。

 人口動態は、国民の将来に対する期待の反映でもあります。少なくとも、今後も高齢化・人口減少は必至だから、日本の先行きは暗いなどと運命論的な非建設的な意見を言うよりは、「これからの日本は、日本人の考え方・行動次第でいくらでも良くなる。みんなで頑張りましょう。」という識者の論調こそが大事なのではないでしょうか。
 私は、日本人の心の中で、進むべき方向は既に決まっているように感じています。


これから伸びる日本経済:2、国土強靭化など

2013年12月05日 10時32分58秒 | 経済
これから伸びる日本経済:2、国土強靭化など
 もう日本では内需はそうは伸びないよ、という意見は結構あります。本当にそうでしょうか。
 経済というものは、どうもそうではないようです。フロンティアは、人間生活の高度化という質の世界にあるようです。そうでなければ、現に日本が戦後、限られた国土の中で、世界随一の経済成長をしたことの説明はつきません。
 我々の生活を、より豊かで、より快適なものにすることを考えれば、経済成長の可能性は無限です。

 そして、多分それは世界の共通の目的になるでしょう。省資源、省エネ、環境浄化、快適な国土建設、海外が日本を見習い、日本の技術を活用するようになれば、日本の平和と安全、経済の基盤は確実になるでしょう。 

 おりしも、昨夜、国土強靭化法が成立、政府は国土強靭化政策大綱の案を纏めたようです。丁度1年前の笹子トンネル事故の教訓もそうですが、安全は世界共通の目標です。

 日本には「転ばぬ先の杖」という諺があります。「安全第一」は最も重要な作業現場の標語です。英語でも Safety pays と言いますが、経済計算をしても、「安全はペイする」のです。事故が起こってからのコストは常に膨大です。

 メンテナンスのコストは、一見無駄のように見えますが、その必要性を洞察する事こそ人間の知恵でしょう。
 戦後建設してきた高速道路を含む交通インフラ、典型的な例として首都高の劣化・改修問題が指摘されていますが、全国各地でトンネル、橋梁等の多くの所で老朽化が問題になっています。

 もちろん事故が起きてからの復旧・復興でもGDP は増えますが、それは、事故を予防するための強化・改修工事とは全く異なるものです。
 これは従来の官庁の単式簿記では解らなくても、民間と同じ複式簿記を導入すれば、バランスシート上で違いは明らかです。
 今、問題にされている、国土強靭化の大事なところはまさにそこです。「転ばぬ先の杖」の考え方が国土強靭化には必要でしょう。此処から発生する国内需要は膨大です。

 他方で、赤字の続く貿易収支をしり目に、経常収支の方は黒字幅を拡大する様相と報道ささています。いつも指摘していますように経常収支の黒字とは「日本国民が汗水たらして働いて創出したGDPを使い残すこと」で、このカネは通常海外に貸し出されることになります。そしてそれは、往々にして、円高誘発の原因にもなります。

 GDPは出来るだけ使い残さず、使い切ってこその内需拡大です。
 従来の発想で行けば、建設国債を発行して公共事業で国土強靭化を図るということになるのでしょう。建設国債でも発行は問題だというのであれば、民間の参加のための方途を講じ、民間の参加意欲を掻き立て、民間の活力を生かしたインフラ投資への道を開くことを多角的に検討すべきではないでしょうか。日本人の知恵が期待されます。


これから伸びる日本経済:1、揃い始めた条件

2013年12月03日 15時39分05秒 | 経済
これから伸びる日本経済:1、揃い始めた条件
 長すぎた日本経済の不振の時代がいよいよ終わりの時期を迎えるのでしょうか、そのための条件が次第に整ってきたように感じられます。

 過去を振り返れば、2002年がそんな感じに近い年だったのかと思います。2002年は「いざなぎ越え」といわれた微弱な景気回復の始点になった年です。

 それまでの日本経済は、プラザ合意による円の2倍の切り上げで、世界一の物価高と、その世界価格への鞘寄せのプロセスであるデフレ、それに強いられるコストの削減に呻吟し、典型的に言えば、企業は減収・減益から減収・増益に切り替えるような血の出るコストカットに耐えて、日本の物価水準を世界水準に近付けるプロセスでした。

 その2年前、2000年にそのチャンスをつかみかけた日本経済は折悪しくアジア金融危機に直面して2年間低迷、あらためて2002年、経済を前向きの活動に転換しようと動き始めたというのが、日本の主要企業の行動から見てとれるところです。

 その後6年間、サブプライム・リーマンショックまでの期間、まだデフレからの完全脱却には至りませんでしたが、物価が下がる中でも日本経済は前向きに動き出し、当時の政府やマスコミに言わせれば、「史上最長の景気上昇」とか何とか言われる時期でした。

 この時期、まさにギリギリのところで日本経済は経済成長の出来る形 を取り戻したわけで、私はこれが続けば、日本経済は次第に本来の姿を取り戻すと考えていました。
 この動きの前提は$1=¥120という為替レートでした。日本経済はハンディ12で何とかコンペで仲間に対抗できる状態なってきたのです。

 その日本経済に再び壊滅的打撃を与えたのがリーマンショックによる$1=¥90という円切り上げでした。さらにEU問題で$1=¥80、それを割り込みそうな状況でした。
 ハンディ12でやっとです。シングルの9や8では戦えません。再びブービーかブービーメーカーに堕ちた日本経済でした。

 これを救ったのが今春の20円の円安 、$1=¥100の実現です。このところの日本経済の動きをもっとも単純に言えば、このようになるのでしょう。いろいろな有識者が指摘する他の諸原因はこれに比べれば小さなものです。

 「もう円レートは$1=¥100を割り込まない」という条件が成立すれば、これで日本経済は立ち直りのきっかけを掴んだのです。
 高齢化、財政赤字、消費税、自然災害・・・・、いろいろな問題はあるでしょう。しかし為替レートの変更で、突如として日本の物価とコストが同時に何割も高くなるようなことがない限り、こうした問題には、日本経済、日本の経済主体、日本人は十分対抗できる能力を持っていると思います。

 すでに日本の企業は、成長する形を作りつつあります。それはその動きの総合計である日本経済についても同じです。
 あとは日本人の知恵と努力と頑張りで、十分乗り切れるでしょう。これが、今後の日本経済について私が楽観的になれる理由です。皆さんはいかがでしょうか。