tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

戦争をしない方が豊かになれる

2024年08月31日 16時57分32秒 | 経済

8月には、何か戦争に関することばかり書いてきたような気がしますが、今日で8月も終わり。戦争に関わる事から、本来の経済に関わる事への転換をしたいと思います。

人類は戦争を嫌いながら戦争をしてきました。今もしています。戦争の始まった理由は多分、今より豊かな生活をしたいと望んだからでしょう。

そのためには望ましい土地を手に入れなければなりません。それが多くの戦争の始まりだったのでしょう。

長い人類の歴史の中で、そういう時代が随分長かったので、「土地が欲しい」という本能的な欲求が海馬の奥に染みついているのでしょうか、今のロシアもイスラエルも、自分の土地を広げたいということが大きな目的で戦争をしているようです。

ところが時代は変わりました。

今、世界で国民一人当たりのGDPが最も大きい国はルクセンブルグです。金額は13万ドル約1900万円、アジアで最も高い国はシンガポールで約8.5万ドル(約1200万円)(日本は約500万円)です。

ご承知のようにどちらも大変小さい国で、国土面積は、ルクセンブルグが日本の146分の1、シンガポールの国土面積は720㎢(東京都区部は628㎢))です。

今の世界では、豊かさは国の広さとは関係ないことが解ります。

日本もかつては戦争をして支配地域を広げれば豊かになれると考えて太平洋戦争をしたのでしょうが、その結果は、蓄積してきた資産は殆んど灰になり、国土面積は小さくなりました。窮乏のどん底から出発しなおして、馬鹿な戦争をしたと思いながら頑張って、世界第二の経済大国になりました。

何故それが出来たのか、そこには2つほど大きな条件がありました。一つは、その間ずっと平和であったこと、これは最も基本です。

もう1つは、広い意味での経済的な条件の変化です。2つあります。

  • 豊かさは技術革新で実現出来る時代に入ったこと、
  • 国際化、特に貿易の自由化が進んだこと、

勿論平和でないと、こういった条件も進まないわけです。今は、どんな小国でも条件さえ満たせば、いくらでも豊かな国になれることが、「既に現実になっている」という時代に入っていると言ってよいのではないでしょうか。

現生人類(ホモサピエンス)はその発生以来、生きていることの安全確保から始まって、飢えないための採集活動から農業、漁業に進歩し産業革命を経て、技術革新の時代に入って今に至っているのです。

そして第二次大戦以降は、国際的な経済活動の自由化を進め、技術革新で成果を上げれば、そこで稼ぎ出すGDPで、食料でも資源でも買える時代になったのです。

資源のある国は、高度技術を持つ国に資源を輸出することでより豊かになり、それぞれの国が、最適な方法でGDPを創出し、それを自由な市場を活用して取引し、互いに裨益するというシステムに向かって世界経済は発展してきています。

人間の知恵によって進歩してきた世界の経済システムが、人間の望む豊かで快適な社会への進歩に向かう条件の整備に成功して来たということでしょう。

この人類共通の努力を、周回遅れの知識と欲望の保有者が混乱に陥れるのが戦争です。戦争をしないことが豊かで快適な社会への王道なのです。

戦争をしないことが、平和であることが、人類社会をより豊かで快適なものにする近道だと、戦争をする人に教えてあげるのが一番大事なことのようです。


戦争で平和が実現した例があるか?

2024年08月30日 15時02分31秒 | 国際関係

「平和」は世界人類の希求するところでしょう。

それなのに世界には戦争が絶えないのです。このパラドックスの原因になっているのが「平和を実現するために戦争をする。という論理です。

私も小学校の6年生の夏までその理論を教え込まれて「東洋平和のためならば、何の命が惜しかろう」と歌って、平和のための戦争だと思っていました。

後から解ってみれば、やっていたことはアジア諸国での殺戮と破壊でした。300万人を超える日本人の犠牲もありました。

プーチンのウクライナ侵攻も。ウクライナ東部の人たちをナチスの圧政から解放し平和な日々を実現すると説明されていたようです。

ネタニヤフのハマス殲滅作戦も、危険なハマスがいなくなれば、イスラエルの平和は実現するという理論のようです。

この理論には問題が2つあるように思われます。

1つは、平和のためだと言って戦争をしている間は殺戮と破壊が続くという問題です。この間の殺戮と破壊は、将来の平和のために容認されるのかという事になりますが、それは許されることではないでしょう。

もう一つは、戦争をして勝てば、その後の平和が保証されるのかという問題です。報復という問題は考慮されていません。 

第一の問題は、人間としての正常な思考過程からすれば、理由は何であろうが殺戮と破壊は許されないという事なのではないでしょうか。

平和の実現のためには平和な手段で事を行うのでなければなりません。勿論交渉に持ち込むために戦争を仕掛けるといった行動も許されるものではないでしょう。  

これが国際的な行動の原則になれば、まず戦争はなくなるでしょう。

そして更に重要なのは、第2の問題です。

歴史を見てみれば、大国から小国まで興亡の歴史はいろいろあるでしょうが、ヨーロッパでもアジアでも、その他のいかなる地域でも、「結局、戦争はなくなりました」という歴史はないようです。

原爆という最終兵器が生れて、これで戦争はなくなるかとも思われましたが、お互いに原爆は使わないだろうという暗黙の前提を置いて、通常兵器で戦争をしようということで戦争をしているというのが現状です。

多くの場合戦争は勝てば驕り、負ければ恨みを残し、結局、報復の連鎖を生むことが歴史の示すところです。宗教や思想の違いが絡むと、この報復の連鎖はさらに深刻となる例も多く見られます。

また恨みはなくとも、戦争に勝つことで、主権が握れると考え、内戦やクーデターに走る人間を生み出します。

戦争に勝つことで平和が生まれるというのは多くの場合、戦争を正当化するための口実で、理論的にも経験的にも、ほとんど無いのではないでしょうか。

若しあるとすれば、それは日本の場合です。

日本は太平洋戦争で敗戦した結果、世界から軍国主義の権化のように見られた国から、世界に先駆けて憲法で不戦を謳う「平和国家」になりました。そして戦後79年、戦争の殺戮、破壊とは無縁の国として着実に行動してきています。

日本に勝ったアメリカは、戦争に勝って平和な国をつくった成功の実績の再現をとその後いくつかの戦争をしましたが、すべて失敗に終わったようです。

成功の原因はアメリカではなく、日本にあったと考えられます。

その当事国、日本として「戦争で平和は実現されない」と(残念ですが)明確に発言すべきではないでしょうか。


平和国家には無理があるという見方

2024年08月29日 17時02分59秒 | 政治

第二次大戦後、憲法で戦争放棄を謳い平和国家として再出発した日本ですが、その日本の中でも、自衛力まで放棄した国が存在可能かという意見はありました。

何処かの国が攻めてきても、何もしないで、その国のするに任せるなどという事で国家が成立するはずがない、という意見です。

それに対して、戦争をしない平和国家に戦争を仕掛けて来る国などないから大丈夫だという意見もありました。

そうした現実的でない議論をしていても問題は解決しません。世界中に200ほどもある国がそれぞれどんな考えを持っているかは解りませんから議論のしようがないからです。

やはり現実の問題は、現実を前提に考えなければなりません。

現在の国際法では自衛権は、現在の世界ではその必要があるという認識でしょう、認められています。これは個人でいえば、正当防衛にあたるものでしょう。

国連、国際法の立場に立てば、純粋に自衛のための戦力は保持は認められている、積極的に解釈すれば「その程度は持ってください」という所でしょうか。 

現実に現在の世界は、少しずつ、それが必要という状況を強めているようにすら思われます。

では、そうした中で、戦争をしない国である日本は、いかなる行動をとるのが最も合理的なのかという問題を、我々は考えなければなりません。

一番大事なことは、日本は、自衛隊は持っています。しかし正当防衛以外、絶対に戦争はしませんという事を世界中に徹底して説明することです。

これは徹底したものでなかればいけまえん。かつて、バングラデシュで日本のJICAの関係者7人がISに射殺されたことがありました、あの時、そのうちの一人が「俺たちは日本人だ」といったそうです。しかし相手は、「日本も有志連合だ」と言って発砲したそうです。日本政府は「有志連合というのは誤解」というかもしれません。

平和国家日本は、誤解を受ける前に、「戦争はしない国」というイメージを確りと世界中に周知しないといけないのです。   

戦争のさ中では,説明や言い訳など役に立ちません。「日本人なら撃たない」と言わせなければならないのです。「俺たちは日本人だ」と叫んだ声が空しく響きます。

その日本ですが、最近は「戦争をしない国」というイメージはどんどん薄れてきているようです。

憲法は何も変わっていないのですが、日本も戦争をする国になるのではないかというイメージが次第に強くなっているように思われます。

戦争をしない国はどこの国とも出来るだけ等距離の外交をしなければなりません。

勿論、等距離の外交と言っても、ロシアのように、勝手な理由で外国に戦争を仕掛けるような国には厳しい態度を取るべきでしょう。

しかしその厳しさも、国連機関の判断を基準に、日本自体の自主性を持ったものでなければならないでしょう。

アメリカの政府関係機関が、台湾有事の際に、日本が 戦争に参加するシミュレーションなどした場合には、釈明や削除を求めるべきでしょう。

中国との関係は最も重要でしょう。必要なのは、長期的視点を忘れぬ外交ではないでしょうかう。

今、最も問題なのはアメリカとの集団的自衛権でしょう。閣議決定であれば、見直しが必要なようです。

まずは、改めて日本は戦争をしないことを明確に世界に伝えることが重要と思うところです


「国民の生命と財産を守る」という事

2024年08月28日 13時40分24秒 | 政治

巨大な台風10号が、まともに日本列島縦断の進路を取りそうな動きで進んできています。現状935ヘクトパスカル、上陸時には925に発達する予測もあります。

未曽有の強さで,瞬間風速70メートルに達するといわれています。気象庁は国民に厳重な警戒をと呼びかけています。

ところで、政府は常に「国民の生命と財産を守るために」と言います。

今年は、元日から能登半島で、まさに「激震」が走りました。春から夏にかけて集中豪雨や強風、突風などの被害も異常に多いような気もします。

過日は南海トラフを震源とする巨大地震の注意報がありました。一週間ほどの緊張が続きました。一週間と期限が切られましたが、その後も注意は必要という事です。

政府は、国土強靭化を言いますが、地球環境の変化による自然災害の深刻化は政府の対策のより速いスピードで進んでいるようです。

自民党政府は、「裏金問題」収取もできずに、次期総裁選びに候補乱立、「国民の生命財産と自分の政治生命や裏金とどちらが大事なんだろう」と思われるほど迷走状態です。

そして「国民の生命と財産を守る」という言葉が使われる局面がもう一つあります。   

もうすでに多くの方はご存じと思いますが「先島諸島からの12万人避難計画」というのがあります。

勿論、日本には平和憲法がありますし、国民の多くは日本はもう戦争などしないと思っていますから、「国民の生命と財産を守る」という大義名分で、この計画を正面から打ち出しましたら、「何だ、政府は戦争をする気なのか」「戦争になれば国民の生命と財産は失わる」と大問題になるでしょうから、何かひっそりとやっているようです。

具体的には、台湾有事で先島諸島にミサアイルや無人機が飛んでくるようになると、民間人がいると巻き添えになって、自衛隊の活動がやりにくくなるから、民間人12万人ほどを九州に疎開させるという計画なのだそうです。

戦時中、沖縄の子供たちを本土に疎開させようとして米軍に撃沈され、多くの子供が犠牲になった対馬丸の記憶を彷彿されるような話ですが、これは集団的自衛権の範囲の問題で、アメリカの意思決定次第で、日本は協力する義務があるという事でしょう。

しかも、先島諸島限定というのは、日本政府の想定です。今の戦争は、ミサイルや無人機が中心ですから、相手の戦略・戦術次第で、いざ戦争となれば、米軍基地のある日本中が攻撃の対象になるかもしれません。     

という事で、さて、「国民の生命と財産を守る」といった場合、国民としては、政府は本気で言っているのか、国土強靭化の遅れのために失われる生命財産だけでも大変なのに、ミサイルや無人機からも守ってくれるなど期待できなことは見え見えでしょう。

考えてみれば、台風や地震、集中豪雨や落雷・竜巻といった自然現象は人間の力ではどうにもなりませんが、戦争は、人間がやることですから、人間の善意や知恵や努力で避けることが可能です。

日本政府は勇気をもって、戦争の阻止に全力で立ち向かい、「国民の生命と財産を守る努力は」国土強靭化など自然災害対策に集中するようにお願いしたいものです。

そういう政府でしたら、国民は総力で支えるのではないでしょうか。


現実に見る「為替介入vs.金利政策」

2024年08月27日 14時33分31秒 | 経済

今日は、日経平均は、下げて始まりましたが、午後になって少し上げているようです。

いずれにしても日経平均40000円などというのは、当面、夢になったようです。

7月10日前後には40000円を越えていました。これはバブルだ、いやまだバブルではない、といった論争もあったようです。

考えてみればあの時も、いずれ、早晩アメリカは政策金利の引き下げをするでしょうし、日本は引き上げをするでしょうという事は、みんな知っていたのでしょう。

でも、それが何時になるか解らないから,その間日本の1ドルが160円近い円安、を利用して、キャピタルゲインを稼ごうという国際投機資本が、40000円以上の日経平均を作っていたのでしょう。

実体経済を担当する企業の経営者たちは、今年度下期の円レートは141円(日銀短観)と回答(平均値)していましたから,いずれ円高になるし、輸出企業の大幅増益もなくなり、日経平均も上がり続けないだろうと見ていたでしょう。

そうした中では、余程の目利きでないと先を誤るようで、これは財務省なども同じのようです。

あの頃の財務省の心配は、このまま円安が続けば、輸入物価が上がり、安定してきた消費者物価も上がって、2%インフレ目標の達成も危ない、実質賃金低下で政府の評判も悪い、円安を止めないとまずいと判断し為替介入に踏み切ります。

タイミングの検討、アメリの理解も必要、など万般を考慮し、数兆円を使って、ドル売り、円買いの介入を成功させます。 

しかし効果は限られていて、現実の結果は数円の円安程度で、時には2~3日でまた戻ってしまうようですが、確かに、国際投機資本を驚かす効果はあるのです。

介入の効果というのは、国際投機資本が自分でもやり過ぎと思いながら相場を作っているような場合には、効果を持つでしょうが、安全なマネーゲームをしていると思っている時は大きな効果は期待できないでしょう。

ところがその直後、日銀が、短期金利の0.25%への利上げに踏み切りました。日銀総裁は、マネー市場にできるだけショックを与えないような範囲で微調整というニュアンスの発表の仕方のようでした。

しかしマネー市場の受けたショックは激甚だったようです。これはマネーゲームの枠の変更ですから、枠をはみ出した取引は成り立たなくなります。それにさらに引き上げもありそうという思惑が働き円レートは今の144円辺り、日経平均は、戻っても38000円台という状態です。

今回の経験は、為替レートを決定的に変えるのは政策金利水準の動き(具体的には日米の金利差)だという事を明示的に教えてくれました。

そして、為替レートの変化は企業収益に影響し、株価(日経平均)を動かすという関連の具体例も見せてくれました。

明らかになったことは、中央銀行の決定する政策金利は、その国の経済の安定した成長の実現のためのものですが、しかしそれは為替レートへ確実に影響するという事です。

金利政策は、為替介入より的確な、為替レート変更の手段なのです。 

ということで、残る疑問は、日本の場合、円安が行き過ぎて困ったとき、財務省は、アメリカに相談したとのことですが、日銀との相談はどうだったのでしょうか。そういうことは秘守事項で、公に出来ないのでしょうか。


<月曜随想>「ネチケット」という言葉をご記憶でしょうか

2024年08月26日 14時37分32秒 | 文化社会

「ネチケット」という言葉をご記憶でしょうか。ネット・エチケットの略ですが、国際的にも使われる「ネットを利用する際に守るべきルール(礼儀作法)」といった意味の言葉です。

使われ始めたのは1980年代後半辺りで、インターネットの利用が進んできた中でいわれ始めた言葉です。

インターネットは、これまでの実生活とは大きく違ったコミュニケーション手段で、直接知らない人に自分の姿を見せずに話す事も出来ますし、社会的拡散のスピードなどは実生活の場合とは格段に違い、一瞬で日本中、世界中に広まります。

例えば、噂話や誤情報などの場合、インターネットに乗れば、社会的に大変な問題を起こし得るという事も考慮して、何らかのルールを決めていかなければならないだろうという意味で生まれたものです。

現に、こうした心配が現実になってしまったと感じておられる方も多いかと思いますが、日本でも、いわゆる「誹謗・中傷」がネット上で頻繁に見られるようになり、現実に人間を破滅に追い込むような事態も発生しています。

実生活の世界では、日本人は親切で、思いやりがあり、社会における行動は常にルールを守り、整然としているなどと評価されることが多いのですが、、これは顔の見える社会だけのことでしょうか。

嘗てこのブログでも「ネチケット」「ネット・マナー」を取り上げたことがありますが、ネットの悪用の典型のような誹謗中傷の問題がマスコミでも取り上げられるような状態が進む中で、「ネチケット」といった言葉は逆に、あまり聞かれない古い言葉のような感じになってしまっているようです。

これはやはり大きな問題だと思い、調べてみますと警視庁でも下のような「インターネット利用の7か条」を示し、インターネットの世界でも、日本は整然とした国になりましょうと言っています。

  1. インターネット社会でも、実生活と同じルールとマナーを守る。
  2. 他人のプライバシーを尊重する。
  3. 住所・氏名などの個人情報を入力する時は、十分注意する。
  4. ID・パスワードの管理を徹底する。
  5. 他人のミスを大げさに指摘しない。
  6. メールを送る前に、内容をよく確認する。
  7. 面と向かって言えないことは書かない。

恐らく、インターネットで、ついつい他人に迷惑をかけるような事を発信してしまう人というのは、ネットの世界は、現実の世界と違って、勝手なことが出来る仮想空間のようなものだと勘違いしているのではないでしょうか。

実はそうではないのです、ネットの世界も、人の前で喋ったり、印刷物に書いたりするのと同じなのです。そしてその拡散力が桁違いに高いのです。

上の「警視庁の7か条」の第1条と第7条だけでも確り理解すれば、インターネットの世界は大幅に整然としたものになるはずです。

これを徹底するのに大きな役割を果たせるのは、学校教育、社会教育、そしてマスコミの力でしょうでしょう。そして、勿論、最終的には個人の自覚でしょう。

その徹底のために、日本社会全体が、本気で頑張る必要があるようです。


FRB金利引き下げへ、日銀は? 円レートは?

2024年08月24日 15時17分03秒 | 経済

米カンザスシティーで恒例のジャクソンホール会議が開かれ、FRBのパウエル議長が、懸案のアメリカの政策金利引き下げにつて、いよいよ9月にはアメリカも金利の引き下げに動く意向を示したようです。

8月には日銀が、マネーマーケットが予期しなかった金利の引き上げを行い、マネーの世界は一時混乱して、一部のマスコミには日銀の責任のように言われたりしました。

ずっと以前から、日本の金利引き上げ、アメリカの金利引き下げは、金融の世界では必然のことと理解されていて、投機筋の思惑が外れただけの話ですが、金融政策担当者にはご苦労なことです。

今度のFRBのパウエル議長の発言でも、即座に円レートは144円と1円以上円高になったりしています。

マネーの世界は9月のFRBの利下げは織り込み済みということのようで、それが0.25%か0.5%かが今後の注目点という事のようです。

勿論。FRBの金利引き下げは、マネーマーケットのためにするのではなくアメリカの景気を安定した健全なものに維持するためです。

インフレ抑制のために金利を引き上げた結果、物価が下がりきらないうちに雇用不振が深刻化しそうで、金利を下げて経済活動を活発にし、雇用を増やそうという事です。

アメリカの住宅業界などは、もうだいぶ前から金利低下を織り込んで新設住宅の販売をし、この夏には新設住宅の需要が伸びて来ているとのことです。

金利政策の本来の目的は、その国の実体経済の安定した発展を目指すものですが、今日のように、経済の国際化が進み、変動相場制で、しかも、金利水準、それに影響されて動く為替レート、そしてその動きを利用してキャピタルゲインを得ようとするマネー経済が巨大な規模という時代では、物事は単純ではありません。

勿論実態経済で動くお金も、マネー経済で動くお金も同じお金ですから、それぞれの国が国民の生活を良くしようという目的でとる金融政策が、他の国の実体経済に大きな問題を生じることもありますし、マネーの動きだけで莫大な利益を上げる国際投機資本が、金融工学を駆使し、変動を大きくしてキャピタルゲイン獲得に動くこともあるのでしょう。

そしてそうしたマネーの動きが、実体経済に大きく影響するというのが今日の世界経済なのです。

具体的な問題として日米間の今後の経済関係を考えますと、アメリカは9月には政策金利を引き下げるでしょう。日本はこれからも政策金利を引き上げて、経済・金融の正常化を図らなければなりません。

出来れば急ぎたいのですが急ぐと,ドルと円の為替レートの変動、具体的には円高ドル安の動きを加速し、それが多様なマネーゲームを誘発し、実体経済済の動きを混乱、場合には破壊するような事態を生む可能性があります。

日銀も8月の金利引き上げで予期せぬほどの為替・株式市場の混乱が生じ、苦労したようです。

アメリカの場合には、より大きな影響を世界に与える可能性があるでしょうから、あくまでも慎重でしょう。

しかし、日米ともにやらなければならない事は決まっています。いかに余計な混乱を避け、実体経済の安定的な成長発展を損なわないかが大事です。

日本にとっては次第に円高が進むことになるのは必然でしょう。円安も、円高も行き過ぎては実体経済の安定はありません。特に、行き過ぎた円高は、かつての経験の通りです。

これから必要になるのは、金融政策に加えて実体経済を健全なものにする経済政策です。

経済政策は政府と労使の協力で可能になるのです。何卒、失敗しないようにお願いしたいと願う所です。


消費者物価問題はほぼ終結へ

2024年08月23日 14時45分24秒 | 経済

ずいぶん長い間、このブログでは消費者物価指数の動きを追跡してきました。

世界中、物価が上がらないなどといわれた時期がありましたが、コロナの終息とともにアメリカ、ヨーロッパが、ロシアのウクライナ侵攻問題も絡み、原油の値上がりなどが原因で、賃金インフレを起こしました。

日本でも、賃金も上がらないけれど、消費者物価も上がらないから何とかなる国などといっているうちに物価が上がり始め2022年からは、賃金が上がらないこともあって、消費者物価上昇で毎月実質賃金水準が前年割れといった状況になって、それが25か月も続きました。

欧米の賃金も物価も8~10%上昇とは上昇のレベルは違い、日本は賃金が上がらす経済実態は消費不況で、消費者物価指数上昇もせいぜい4%でしたが、日銀はインフレターゲット2%を掲げていましたから政策金利も上げられず、それが大幅円安をよび、それがまたインフレの原因になると大騒ぎになりました。

しびれを切らした日銀は、先月、国際投機資本も予期しない利上げに踏み切り、マネー市場は大混乱のようでしたが、我が国の物価問題は、ようやく終結の時期を迎えているようです。

  消費者物価主要3指数の推移(原数値)

           資料:総務省「消費者物価指数」

 

上のグラフでは、7月の消費者物価指数はまだ上昇ですが、その主因は、政府の電気・ガス料金への補助終了と生鮮食品値上がりのせいで、緑の線の日本経済自体の物価上昇傾向は、多少長かった波状一斉値上げ上げといった動きはなくなり、2%インフレ目標に沿ったものになりつつあるようです

心配された今春闘賃上げの価格転嫁促進政策の物価への影響も、消費者物価指数レベルではあまり大きくないようです。

同じ消費者物価指数の動きを、対前年上昇率で見たのが、次の図です。

   消費者物価主要3指数対前年変化率(%)

                資料:上に同じ

これで特徴的なのはやはり緑の線の動きで、物価上昇が問題になった時期、大きく上に膨らんでいることが解ります。

長い目で見ますと、これはコロナ時代に消費不振で値下げさえもあった日常生活関連商品群がワンサイクル遅れて、値上げに動いた結果とみられるところです。

これが終わったところで、今後の日本の消費者物価指数は国内要因による上昇は賃金上昇の影響が中心となるでしょうから、多分沈静化でしょう。

緑の線が大きく下がって2%を切ってきたことが、国内インフレの終息を示唆するものとみていいのではないでしょうか。

今後を予想すれば、余程の大幅賃上げでもない限り、国内インフレは起きないでしょうし、外部からの上昇要因は、原油、LNG、輸入穀物などの上昇基調の可能性はありますが、海外物価上昇は世界共通ですから日本だけが困るわけではありません。

さらに、円レートは、これからはどちらかと言えば、円高基調という事でしょうから海外物価の影響はその分相殺されるでしょう。

ということで、2年余にわたって政府、日銀、国民を悩ませた消費者物価の上昇という問題は何とか終わりを告げたように感じるところです。

このブログでは、実質賃金がプラス化するかという問題もあり、もう少し消費者物価指数の動きを追うつもりですが、物価問題は、一応終結としておきたいと思います。


米個人金融所得年率540兆円増加

2024年08月22日 17時20分13秒 | 経済

アメリカでは個人の金融所得は商務省が調査しているようですが、日経新聞によりますと、今年の4-6月期の伸びを年率換算すると3.7兆ドル、日本円にして540兆円($1=146円)になったという事です。

円安だからとはいえ、540兆円というのは日本のGDPに匹敵する金額です。日本人が汗水たらして、地道に働いて、稼ぎ出す「国内総生産」を、株や投信、銀行預金だけで、それも個人所得だけで稼いでいるというのですからびっくりです。

人口は3倍近いし、GDPは約7倍とはいえ、個人の金融所得だけで日本のGDP に近いような数字というのは・・・、という感じです。

日経新聞が540兆円という数字を取り上げたのは、特にこの4-6月の個人金融所得が大きかったという事もあるでしょう。

とはいえ、これを日本に比べれば約40倍という事で、個人金融資産の総額はアメリかは130兆ドルにも達しているようですが日本の場合は2000兆円を越えましたが14兆ドル程度でしょう。

こう比べてみるとこれまた驚くべき数字の差ですが、アメリカの個人金融資産は、日本の10倍弱で、日本の40倍の収益を得ているという事です。

残念ながら、日本の家計は、一生懸命貯蓄するのですが、その割にリターンは極めて少ないという事です。

確かにそうでしょう、大体日本はゼロ金利ですから、貯金をしても利息などほとんどつかないのです。100万円貯金をしたから、いくらか利息も付くだろうと銀行に行って記帳したら、銀行へ行くバス代にもならなかった、などというのは、だいぶ前からの笑い話です。

勿論ゼロ金利というのは原因に遡れば経済成長がないからで、ゼロ成長経済では理論的には金利はゼロという事になります。

今後は、日銀が政策金利を引き上げましたから、いくらか金利も付くでしょうと喜んでいたら、株が暴落して、やっぱり銀行預金で損がなくてよかった、などというのが日本です。

日本は個人貯蓄の半分強が預金(含現金)で株や投資信託はせいぜい2割程度です

ところが、アメリカは半分強が株式や投資信託で、預金は15%に満たないようです。

あとは日米ともに保険や年金(25%前後)ですが、預金と株式・投資信託のシェアの逆転は、まさに日本とアメリカで対照的です。

そしてこの違いが、個人金融所得の差を生み出しているのが一般的な解説です。この解説は確かにその通りでしょう。

さらに、日本人は預金重視、アメリカ人は投資(株式・投信)重視というのは、国民性や考え方の違いによるというのが大方の解説です。

政府もその考え方を取り、日本人はもっと資産運用に積極的でえなければならないということで「貯蓄から投資へ」という標語を作りNISAやiDeCoといった投資を免税という有利な条件で推奨しています。

ただ、問題はあります。

1つは、 日本経済が成長していないという点です。もう一つは、日本の投資市場、投資機関が、アメリカのような収益を挙げられるかという点です。

アメリカはマネー資本主義の本拠です。マネーの流れを作る立場です。この辺りを掘り下げないと、本当の結論は出ないように思われます。


自民、立民の代表選挙:本当の問題は?

2024年08月21日 13時14分51秒 | 政治

自由民主党の総裁選、立憲民主党の代表選挙が相次いで行われます。これからも、当分、マスコミは、この問題でにぎやかな状態が続くでしょう。 

日本の政党の中での、第一党と第二党のリーダーを選ぶのですからいずれにしても国民の関心は高まらざるを得ないでしょうし、その後には、恐らく総選挙が控えているという事ですから、確かに国民にとっての大問題です。

更にその背後には大きな問題があります。戦後日本の政治で殆んど主導権を握ってきた自民党が、長期の政権のゆえに驕りが過ぎたのでしょうか、カネに関わる問題や選挙組織の問題で根腐れを起こしていたことが明らかになったのです。

野党は群小といわれ、政権奪取には程遠いと多くの国民は見ていましたが、いわゆる政治資金の裏金問題、選挙に絡む旧統一教会問題で、自民長期政権の実態が明らかになってみますと、国民の意識にも変化が起きてきています。

折しも、日本経済は不振を極め、一人当たりGDPが嘗ての世界ベストテン常連から34位(2023年IMF統計)に落ち:実質賃金の対前年低下が連続25か月に及び、実質経済成長は年1%が「目標」といった惨状から、如何にして抜け出すかという日本の再生を実現しなければならない時期に来ているのです。

昨年から今年にかけて、真面目に働いている国民の多くは、こんなはずではないという気になりつつあるのでしょう。政権支持率が20%そこそこにまで低下するという異常事態となり、根腐れした自民党政権への批判が、日本の再生をだれに託すべきかという問題意識に発展しつつあるという変化が見られます。

はっきり言ってしまえば、これまでの自民党政権の政治は、外交においても、経済政策においても失敗の連続で、今の経済的没落はその端的な結果というのが客観的な見方でしょう。

そういう意味では、野党にとって、早晩行われるであろう総選挙は、従来にない重たい意味を持つものでしょう。

そして、今回の自民党と立憲民主党の総裁、代表選びは、ここまで落ちた日本の国際的な地位を、何としてでもかつての「ジャパンアズナンバーワン」とまでに世界から注目を集めた日本に戻す第一歩を踏み出すための、新しい日本のリーダーを選ぶことに繋がっていると考えなければならないはずです。

カネの泥にまみれた自民党では、その泥だらけの姿で「私もやりたい」という人が大勢いるようです。国民はどう見ているのでしょうか。

立憲民主党では、かつて、短期に政権を取った時の経験者を含め、若手は経験より若さでという人もいますが、いずれ立憲民主党だけではなく、野党を糾合できる人材が必要になるのでしょう。

マスコミはまだ、人気本位の報道の範囲を出ず、新しいリーダーに何ができるか、誰なら何を託せるかといった所にはほとんど踏み込んでいません。

しかし、可能性としては、次の政権を担い、この日本を何とかするべき人が選ばれるという事の前哨戦ということに直接つながるのでしょう。

これからの時期、国民としては、日本再生のためにどこまで役に立つ人材かという鑑識眼をもって、当面する党首選びの段階から確り見極めておく必要があるように思われるところです。


バングラデシュの早期安定を願う

2024年08月20日 16時27分13秒 | 国際関係

バングラデシュの国旗は日の丸です。ただ日本の日の丸と違うのは白地に赤い太陽ではなく緑の地に赤い太陽です。この国旗の制定については、建国の父ラーマン氏が、日本の日の丸も参考にしたという話もあります。洪水の多いバングラデシュです。緑の大地に真っ赤な太陽というのも理解できます。

そのバングラデシュで、延べ20年、今回も、この8月5日まで15年にわたり首相の座にあった建国の父ラーマン氏の次女でもあるハシナ首相が国外逃亡し混乱状態に陥っているというニュースには驚きました。

バングラデシュには、2010年に行ったきりですが、その時の印象は、まだまだいろいろ苦労はあるだろうが、この国は順調い成長しているのではないかというものでした

ダッカの町は人でいっぱい、車でいっぱい。どこへ行っても人混みと、車の渋滞でしたが、人は自然に人をよけ、車は少しでも間隙が出来れば先に突っ込んだ方が勝ちというルールのようでしたが、トラブルはあまり見かけませんでした。

日本に来た外国人が、渋谷のスクランブル交差点を見て、日本人はよくぶつからないとビックリしたなどという話がありますが、バングラデシュでも、人々は、狭い道でも自然と譲り合っているような感じを受けました。

そんな印象を持った国で、デモが起き、軍の出動で数百人の死傷者も出るような状況にまで発展したというのです。しかも直接の原因は,独立戦争の功労者の子弟を公務員に優先的に採用する制度の復活という、かつては国民の理解もあったであろう問題がきっかけというのです。

首をかしげるようことに感じられましたが、ピンと来たのは再任以来15年の長期政権になっていたという事でした。

少しニュースを拾ってみて、やはりと思ったのは、最近は経済情勢もあり、若者の就職環境が良くないなくなっているという実体があり、政権幹部その周辺の人々が就職も有利で、所得格差の拡大もあり、雇用、就業、所得格差等の不満が若者の間に鬱積してきていたと思われる社会情勢があるらしいのです。

このブログでは、長期政権は往々にして独裁化すると書いてきています。バングラデシュでも、最近は政治手法に強権的なことが増えてきていたなどとの解説記事もありますが、恐らく政治の硬直化による社会の硬直化、格差化に対する若者の反発が原点でしょう。

反発の対象はハシナ首相に向けられますが、ハシナ首相が独裁者であったのか、ハシナ首相を取り巻く利益集団がその利権の維持をはかって硬直化したのか、首相逃亡が示唆するのは何だろうかと考えてしまいました。

バングラデシュは「グラミン銀行」で有名です、発展途上国で農村の振興などのために如何にして生業を営む人たちの自主的な資本蓄積を可能にするかという文字通り「マイクロ・ファイナンス」事業を成功させ、世界で活用されるベースになったシステムです。

2010年に偶々現場を見る機会があり、「現場に見るグラミン銀行」を書きましたが、こうした活動を実践できる真面目さ勤勉さをバングラデシュの人々は持っているのです。

「グラミン銀行」というシステムを開発、普及し、ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏が、今回、バングラデシュ暫定政権の最高顧問に就任しました。

ユヌス氏はまず、「治安の安定化が最優先」と言われているとのことです。    

バングラデシュの早期の安定・回復を願うところです。 


<月曜随想>経済思想と実体経済の関係は大切

2024年08月19日 15時32分35秒 | 経済

経済思想というのは。もともと人間がより豊かな生活をしたいと考えることで生まれてきたものでしょう。

農業や漁業中心の時代は、お日様と水が豊かさの源でしたから、そういう土地を持つことが経済思想だったのでしょう。そういう土地を探して移住したり、戦争して手に入れたりという事が経済思想だったのでしょう。商業資本の時代には、地域的な価格差を発見して交易をすることが豊かさを生む手段になりました。大航海時代は東洋と西洋の価格差を利益の元にしたのでしょうし、日本でも紀伊国屋文左衛門のミカン船の伝説があります。

産業革命が起きてからは、技術革新が利益を生むことが解りましたので、産業資本の蓄積が豊かさ源泉となり、資本主義が一般的になりました。

こうした見方だけですと、資本家。企業家はいても、経済の中で生活する一般の人々は出てきません。これでは社会全体の豊かさには繋がらないようです。

元々、資本主義、企業の会計基準というのは利益を算出するために出来上がっているもので、「売上-経費=利益」と「利益」が解ればいいという形です。

経済活動をやるのは、昔は個人、今は企業という事になっていますから、経済思想も、利益が中心という事だったのでしょう。

大航海時代に船を東洋へ出すのは冒険(アドベンチャー)です。成功すれば巨大な利益で、目的は利益です。産業資本になっても、そして今日でも「起業」はベンチャーです。目的は利益です。

一般の人々(労働者)の生活を豊かにする人件費は、原材料費などと一緒で、直接原価の一部です。

こうした経済思想ですと、労働者を搾取の対象、社会は不平等という意識から社会主義や共産主義という社会思想が生まれます。そして、で経済思想と社会思想は一体化され共産主義国(労働者独裁)や福祉国家など労働者重視の思想が生まれます。

こうして経済思想の中で、生産活動の2大要素は「資本と労働」の認識が生まれ、このブログでは産業活動は「人間が資本を使って行う」としています。

第二次大戦関連で、国の経済力を測る方法論として「国民所得の計算」が開発され次第に進化し、「国民経済計算システム」が一般化しました 。

このシステムでは国全体の生産力:GDPを測るのですが、その要素は「人件費と利益」で両者の合計が「付加価値」と名付けられて、これが「国力」だという事になりました。(国民が付加価値を生産し、分配し、消費する「3面等価」)。

経済は人件費と利益でできている。その両方がうまく合成されて、それが国力を担っている。そして、その在り方いかんで、年々生産する付加価値(GDP)は増加する、つまり経済は成長するという事になるのです。

つまり労働と資本、」その組み合わせ、活用の仕方によって、経済は成長する、その国に住む人間はより豊かにになるのです。

この国民経済計算システムが経済思想の骨格となって、今の経済思想は一応の完成を見たのでしょう。

ところがそこにまた新しい経済思想が出てきました。それは「マネー資本主義」です。金融工学というシステムを開発して、マネーを移動させる、つまりマネーの操作によって、購買力を移動させるという活動です。

これは本来豊かさの創造には関係のない机上の活動(ゲーム)ですが、マネーの移動は購買力の移動ですから、机上の活動の結果で、実体経済の購買力が移動することになります。

これは将来的にも経済思想とはならないと思いますが、購買力の移動は富の移動ですから、実体経済の成果を歪めます。

つまり、豊かさの再配分の役割を持ちます。豊かさの再配分は、政府の、税・社会保障制度によるのが近代国家の原則ですが、金融工学による豊かさの再配分を、マネー資本主義と名付けて経済思想の中に不用意に組み込まないようにした方がいいように思っています。


日本には政治家を育てる必要が

2024年08月17日 14時13分58秒 | 政治

岸田さんが総裁選不出馬を表明して、マスコミによれば、ずいぶん多数の人が動き始めているようです。

自民党は、皆さんご承知のてえたらくですから、だれが出ても、混迷の日本を救ってくれそうもなさそうだな、などと感じてしまいます。

野党の方も、いずれ早晩総選挙と読んで、動き始めていますが、いずれにしても小党分立ですから、この党に託せばいいというわけには行かないようです。

せめて「小異を捨てて大同に」という考え方の党首が何人かいて、「おれが、おれが」ではなく、「国民や、世界のために」と考える人がいるかと期待するのですが、そんな気配はありません。

昔はそんな政治家がいました。例えば、石橋湛山のように、大正時代に「小日本論」を唱え、戦後、本当にそうなって、日本は大発展したような人、先見の明、洞察力の優れた人もいました。 

しかし、今の政治家は、二世、三世政治家に代表されるように、政治家の秘書などから始まって、政治家という限られた専門分野しか知らない人が多いようです。

そして「選挙資金」のこを「政治資金」というように、「政治」とは「選挙に勝つ事」で、それが政治家の専門分野」ということになっているようです。

自民党の場合は特にこれがひどいようですが、これでは、国民のためとか世界のためといった政治になると、アメリカ従属ばかりで、自主性などどうにもならないのは当然です。

日本では、以前は「官僚が確りしているから日本は大丈夫」などといわれたものです。そして官僚もその気で頑張っていたようです。

ところが安倍政治になって、「決める政治」で官僚の人事権を政治が握るようになって、官僚は安倍さんの方ばかり見て仕事をするようになり、「官僚が確り・・」という事もなくなって、日本は迷走状態になってしまったようです。

安倍さんや岸田さんは沢山のスローガンを掲げました。挙げればきりがないですが、自分で思いついたのか、人から聞いたのか解りませんが、結構なことが多かったように思います。

しかし、意味が解って言っているのではありませんから「○○国民会議」などを作りますが、モノになったスローガンはありません。

アメリカの場合などはバイデンさんからハリスさんに代われば民主党支持者な熱狂してハリスさんを支持します。

アメリカでは、政権が変われば主要官僚4000人程は総入れ替えになります。学者や実業家も含め、アメリカには在野の国際的にも有名な人材が山ほどいるのでしょう。

そしてアメリカのリーダーは、アンドリュー・カーネギーのように、「自分より優れた人材を、自分の周りに集め得た人」ということになるのでしょう。

勿論、アメリカのやることが常に正しいわけではありません。日本を再び戦争をする国にしようとしたりします。しかしアメリカなりの民主主義の原理とシステムを守っているように思われます。

日本のように政治家がごく狭い政治家の家族や政治家の世界の中で育つような社会で、優秀な人材を集めたはずの官僚組織の能力発揮を、人事権を使って潰してしまうような政治家の行動はまさに政治家の自殺行為でしょう。

日本でもかつては実業家が、優れた政治家を育てようと「松下政経塾」を作ったこともありました。財界代表だった桜田武が「こんな政治家しか育てられなかったことを恥じる」と発言したこともありました。

財界が政治家を育てるのが良いという事ではありませんが、そうした関心を日本国民全体が持たなければ、日本は本当の民主主義国にはなれないでしょう。

そして、民主主義の本義から言えば、それは「選挙」を通じて国民が政治家を育てる意識を持たなければならないのでなないでしょうか。

まずは、盆暮れの付け届けが来るからとか、冠婚葬祭に、いつもご丁寧だからなどと考えていては、日本の政治はよくならないし、日本も救われない、という所から始めるのでしょうか。


2024年4-6月期は:年率3.1%の経済成長率だそうですが

2024年08月16日 16時04分09秒 | 経済

昨日内閣府から2024年4~6月期のGDP統計の第一次速報が発表になりました。

報道では昨日紹介され、対前期比0.8%の増加で、年率にすれば3.1%の経済成長率になるという趣旨のものが多かったようです。

これは大変結構なことで、退陣を決めた岸田総理は、今後6年間の経済成長率が、年率1%を超えることを目指すという大変つつましい方針でしたから、それに比べれば大幅に高い数字です。

ちょっと余計なことを付け加えますと、前期比0.8%が年率3.1%になるという計算は、四半期の対前期実績が1年間(4四半期)続いた場合という計算で、1.008の4乗です。答えは3.24で、3.1になるのは1.0077ですから、0.77%を四捨五入して0.8%%ということでしょう。

ところで4-6月がプラスの0.8で年率3.1(以下数字はすべて実質値)というのは、まさに急速な経済回復といった感じです。その前の3四半期は、マイナスか、プラスでもわずか0.1%です。

政府もこれまでもそんな急速な経済回復が起きているとは言っていませんでしたが、何故そんな急速な経済回復が起きたのでしょうか。

ということで0.8%の成長を支えた要因を見て見ますと、その主役は家計の消費支出だという事が解ります。

 四半期GDP主要項目の対前期増加率(実質%)

上の表を見ますと、家計最終消費が1.0%の増加です。家計消費支出はGDPの半分以上を占めていますからこれが主役ということは明らかです。

GDPを構成する主要なものは個人消費、企業の設備投資、政府支出、純輸出といったところですが、企業の設備投資は増減はあっても基本的に堅調、公的需要赤字財政でのバラマキやアメリカから防衛装備品を買っても今の計算方式ではGDPの増加になるというインチキ臭いこともあるので、要注意です。純輸出は(解り易いように)増加率でなくGDP成長率への寄与率になっています。

つまりは、これまでマイナスだった家計最終消費が前期比1%増になったことがプラス成長の主因です。

これは当然春闘の賃上げ、加えて6月のボーナスが増えたことによる家計の支出増が消費を押し上げたということですが、このブログで見ている家計調査では、収入の増えた割には消費は増えていないという実体もあります。このブログでは7月には実質賃金は実質マイナスに転じる可能性を心配しています。

3.1%の増加はいいのですが、最後に、いつも見てきていますように「対前年同期比」の表を載せておきます。

 四半期GDPの対ぜ年同期増加率(実質%)

1年前に比べての増加、実質成長は、2023年の各期はプラスでしたが、残念ながら、24年に入って2四半期マイナスです。

上の表の4-6月期の対前期0.8%プラㇲは、直前の1-3月期が異常に落ち込んだことの回復だったようにも見えます。

家計調査の検討の際も指摘しましたが、消費不況からの脱出のためには、もう少し高い賃上げと、家計の消費性向の上昇が必要のようです。

そしてそのためには国民の政府に対する信頼感、日本経済社会の安定を多くの家計が感じられるような環境が必要のようです。


8月15日、日本が戦争をやめた記念日です

2024年08月15日 14時38分09秒 | 国際関係

毎年8月15日は新聞でもテレビでも戦争の悲惨さを広く知ってもらいたいと願い、それで、より多くの人に、もう戦争は決してすべきでないという気持ちを強く持って欲しいと願って特集を組みます。

戦争の現実を、深く知れば知るほど、だれもが、戦争はすべきでないと考えるはずだからです。

しかし、地球上では今も戦争が続いています。今日のマスコミの特集が指摘する戦争の悲惨さ、忌まわしさが、その今日も、現実に存在しているのです。

そして、戦争をしている国の国民にしても、多くの人は、戦争などないほうがいいと考えているのです。

おそらく、現に戦場で、戦争の真只中にいる人達の心の中でさえ、何処かに「こんな事はしたくない」という気持ちがあるのではないでしょうか。

それでも現に、戦争は現時点でも進行中なのです。

より多くの国民が戦争など無い方がいいと考えている国や組織が、戦争に走るのは、その国や組織のリーダーの心の中に、「戦争に訴えてでも、自分の思いを実現したい」という願望が起きるからでしょう。そして勝てば英雄という名誉欲が働くのでしょう。 

然し、民主主義社会では、リーダーがそう思っても、大多数の人々が戦争などすべきでないと考えていれば、通常は戦争にはならないはずです。

リーダーが戦争をしようと考えれば戦争ができる国というのは,はっきり言ってしまえば独裁国です。

つまり、戦争を起こすのは、今日の国際関係の中では、独裁国か独裁組織に限られるという事になるのではないでしょうか。

ならば、地球市民は、どこの国でも組織でも、独裁者を作らないようにすることが戦争をなくする道ということになります。

そのためには、国民への民主主義教育の徹底しかないようです。国連が独裁者の出現を防止するような仕組みを持てればいいのでしょうが、その可能性は小さいでしょう。

戦争は殺戮と破壊を正当化するものです。独裁者が戦争を仕掛ける時、仕掛けられた国は、殺戮と破壊の防止のため、否応なしに応戦という事態に巻き込まれます。これは最大の悲劇です。

国際法は、自衛権は認めるといいます。しかし、独裁者が戦争を仕掛ける可能性を放置し、自衛権を認めることでは、戦争の防止は不可能です。

平和憲法を掲げる日本でも、自衛のための戦力を持つべきという意見を排除することはできません。

こうして、見てきますと、戦争をなくする道は、容易でないことは明らかです。しかし、国際社会として、それを放置しておくわけにはいかないでしょう。

平和憲法を掲げる日本は、国連や世界の国々とともに、出来れば先頭に立って、戦争をなくする方法を真剣に考え続けなければなりません。

そう考えた時、考えうる方法は、国レベルの問題と国際レベルの問題と大きく2つあるように思います。

1つは、世界の国や組織がそれぞれに、如何にして独裁者を出さないようにするかという問題です。

もう1つは、国際関係の在り方を、排除の理論をやめて、包括の理論に進めることでしょう。

この問題は世界の問題としてと同時に、平和憲法を掲げる日本としては、喫緊の課題として、政府、国民が共に考え、共に取り組まなければならない問題でしょう。

日本が戦争をやめた日に、戦争をなくす方法を考えてみました。

戦争をやめた日本が、また戦争をする体制に入っていまます。の問題は、さらに論じていきたいと思っています。