tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

アメリカの量的緩和縮小継続の見方

2014年01月30日 14時18分39秒 | 経済
アメリカの量的緩和縮小継続の見方
 昨29日、アメリカのFOMCは差し当たっての量的緩和縮小路線(テーパリング)の継続を決めたようです。
バーナンキさんにしてみても「低金利政策+異次元の量的緩和」でアメリカ経済の危機を救ったので、あとはその副作用(住宅バブルの復活など)がひどくならないうちに異次元の量的緩和は止めて、低金利中心の幾らかでもまともな経済運営にしたいという気持ちはあるのでしょう。

 アメリカ自身の失業率も物価も「そう悪くはない」と言い張って、テーパリングをやり通すつもりのようです。
 当然、アルゼンチンやトルコの通貨下落については「われ関せず」ということで、昨日の声明では触れてもいません。

 「そう悪くない」といえるのも、本当は、バーナンキさんの政策のせいなのか、あるいはシェールガスという僥倖のせいなのか、私などは本当の所は解らないと思うのですが、それでも、世界各国にどう影響しても、アメリカの景気さえ良くなればいいみたいな政策が見直されることは長い目で見ればいいことだと思います。

 影響を受けたトルコは大幅に金利を引き上げて、リラ下落に対抗しています。ただ、「通貨下落→インフレ激化」を恐れる新興国が金利を引き上げれば、当然経済には不況効果を持ちます。
 アメリカ経済も緩和縮小で多分、余り景色は良くなくなるでしょう。テーパリングの継続は世界経済の下振れにつながる可能性を持つでしょう。

 しかし、長い目で見れば、それが世界経済の健全化に進むまともな道だと考えるべきという意見もありますし、私もそう思っています。
 これからは日本も含めて、不健全なアメリカ経済に、出来るだけ振り回されないようにするという知恵が必要になるのではないでしょうか。
 
 次のFOMCではイエレン女史が采配ということになりますが、さて、こうした世界的副作用をアメリカが如何に考え、いかなる路線を選択することになるのでしょうか。6週間後まで、また、いろいろなことがあるでしょう。

 アメリカ自身シェールガスの恩恵も利用して、多少苦労でも出来るだけ早く経済そのものを「身の丈」に戻して、健全化(万年赤字克服)を目指すべきでしょう。
 迎え酒で当面を凌ぐような従来路線(緩和政策)に戻るのか。賢明な対応を期待したいと思います。

 日本の場合は新興国と違って、アメリカの緩和縮小は円高をもたらしています。
 アメリカの政策次第で揺れ動く国際投機資本の思惑に翻弄されてきた日本ですが、日銀の為替政策も、それを適切に安定化するような機動的な方策、あるいは確固たる意思表示によって、国際投機資本の思惑を牽制し、影響を極小化するような「ウルトラC」を考えたらいかがでしょうか。

 アベノミクスも、既定路線を推し進めるだけではなく、今後のアメリカの行動次第で変化する国際的な環境変化に応じた柔軟な政策が必要とされるのでしょう。
 さて、巧くやってくれるでしょうか。


日本は何を目指していくのか(施政方針演説雑感)

2014年01月27日 12時14分32秒 | 国際政治
日本は何を目指していくのか(施政方針演説雑感)
 国会冒頭の安倍総理の施政方針演説は、なかなか立派でした。安倍総理の話し方も、自分の言葉で話しかけるといった感じがかなり出ていて、感銘を受けた方も多かったのではないでしょうか。しかし、何か不安を感じさせるものもありました。
 
 経済問題では、昨年来の20~25円幅の円安で、経済の好循環の土台が出来てきたことが、政権、そして多くの日本人の自信回復につながっていることが大きいと思います。
 ですから、すべての経済問題の基底に、再び円高には戻さないという「条件」があることをしっかりと認識しておかなければならないでしょう。

 この円安転換は、日銀の政策変更、アメリカに倣った異次元の金融緩和によるものです。しかし、基軸通貨国であるアメリカは相変わらず経常赤字を続け、海外からの借金と、超金融緩和で遣り繰りが必要な不安定経済の国です。出口戦略もなかなか巧くいきません。

 アメリカ自体が、財政・金融問題で何時行き詰まるか予断を許しません。下手な失敗をすれば、ドルの信頼が失われ、リーマンショックの時のようにガタガタと何十円かの円高になる可能性は常にあるのです。
 政府、日銀が、 能くそれを防ぐことが出来るか、この問題への言及は全くありませんが、アメリカ発の経済問題の発生の確率は、南海トラフの比ではないでしょう。

 政治、外交面についてですが、積極的平和主義は大変結構です。紛争や戦争は多くの死傷者、難民を生み、人命も人の心も破壊します。
 日本としては、平和憲法の精神に沿う「徹底して紛争、戦争を避ける、人の殺傷はしない」ことを至上命題にし、それに近づくあらゆる政治的、経済的可能性を未然に防止する努力こそが、本当の「積極的平和主義」でしょう。

 施政方針の中の「積極的平和主義」の意味は不明ですが、力や権謀術策で対抗したり抑え込んだりする政策は、一見、紛争抑止のように見えて、実は一触即発の紛争発生の可能性を高めるものであることは歴史の教える所でしょう。

 日米安保そのものも、最初は、「危険な国日本」に再軍備をさせないというアメリカの方針から発生したものでしょうが、いま日本は世界でも最も平和を好む国になり、アメリカの日本に対する考えは大きく変わったようです。日本のとる「積極的平和主義」の中身は何か。これは極めて大事なことです。

 他国との争いを誘発するような言動を避ける知恵を持つことは当然として、例えば、アメリカの世界経済に不安を与えるような行動(万年赤字など)に対しては、積極的に忠告し、世界各国の経済、政治の混乱を未然に防止することなどが積極的平和主義のベースの1つになるのでしょう。
 歴史上、多くの戦争は、経済問題から発生しています。経済の健全化は重要です

 戦後60年、日本は、戦争や紛争で人を殺傷しませんでした。平和憲法に則り、この実績をいつまでも積み重ねることが、「日本=真に平和を愛する国」を世界に証明する究極の方法でしょう。
 縄文の1万年をかけて創り上げた「争いを好まない本来の日本の姿」を「解り易く」世界に示す時ではないでしょうか。


来年度(平成26年度)政府経済見通し:閣議決定版

2014年01月25日 12時15分30秒 | 経済
来年度(平成26年度)政府経済見通し:閣議決定版
 昨1月24日、来年度の政府経済見通しの閣議決定版が発表されました。政府支出の内訳や分配国民所得、GDPデフレータ、予想平均為替レートなども出ているので、覗いてみたいと思います。

 もちろん例年と同じで、既に閣議了解版で発表された数字に変更はありません。分配国民所得の内訳が出たということは雇用者報酬の額が出たということなので、「賃上げ、賃上げ」と言っている政府が、どんな見通しをしているのかも解りますので、その辺りもしっかり見てみたいと思います。

 先ず、前提とする為替レートですが、年間平均で$1=¥100ということになっています(今25年度実績見込みは99.2円)。現状は104円前後で、昨日は103円台になって、日経平均は300円も下げ、105円に近づくと株価は上がるといった状況ですから、100円という見通しは、現状よりかなり円高に振れるということです。

 企業でもそうですが、安全を見込んで少し円高の見方をしておくということなのかもしれませんが、政府が本気で100円と考えているのだったら、賃上げも物価も様子が変わって来るだろうと思われますので、本音は104~105円ぐらいを考えているということにしておきましょう。

 ところで、問題の雇用者報酬ですが、名目2.0パーセント(今年度実績見込み1.1%)の伸びです。旗を振っている割にあまり伸びないとの予想です。
 一方、消費者物価は3.2パーセントの上昇ですから、実質はマイナスです。GDPデフレータはというと、1.9パーセントですから、それ以外の物価上昇要因もかなり大きいということになります。後述のようにコストプッシュは小さいのですが。輸入物価上昇がエネルギー価格を含め、かなり大きいという予想でしょうか、本当はもっと円安を見ているのかもしれません。

 GDPデフレータが1.9パーセントというのは、消費増税の転嫁状況にもよりますが、おそらく、インフレターゲット2パーセントという国際公約のようなものを意識しつつ、まだデフレが残っていると考えているのでしょうか、よくわからない数字です。
 前回(12月28日付)も指摘しましたように実質国民経済生産性上昇が1.2パーセントありますから、雇用者報酬増2.0パーセントを雇用者1人当たりにすれば、(雇用者の伸び0.5%)1.5パーセント増で、コストプッシュは0.3%と僅少なのに、消費増税は物価の動きを分かりにくくします。

 分配国民所得の中の企業所得は1.9パーセント増で、分配は、僅少ですが雇用者に有利です。
 その他、公共投資(公的資本形成)の調達価格が民間の設備投資に比べて異常に高いなどよくわからない点もありますが、実際の日本経済のパーフォーマンスは国民の努力でこれより良くなることを信じたいと思います。

 最後に、矢張り経常黒字4.7兆円は、最近の状況(赤字)を勘案し、セロぐらいにすれば、国際投機資本が「いよいよ日本も双子の赤字か」と円を買わなくなって、「円安誘導になるのに」などと余計なことを考えました。


中国の経済発展:1つの見方

2014年01月22日 14時33分13秒 | 国際経済
中国の経済発展:1つの見方
 中国の貿易依存度につては、これまでも2度ほど書いてきました。私はかつて下村治博士が指摘していた「貿易依存度はその国の人口の規模に関係がある」という考え方に基本的に賛成で、そんな目で各国の貿易依存度を見て来ました。 そうした目で見ると中国の貿易依存の大きさが大変気なっていました。

 貿易依存度は、「(輸出額+輸入額)/名目GDP」という形で計算されます。日本の場合は大体20~30パーセントですし、アメリカは20パーセント前後です。
 もちろん、貿易依存度に影響するのは人口規模だけではありません。新興国の場合は一般的に貿易依存度は高いですし、また、貿易自由化の程度によっても当然影響を受けます。
 グローバル化の進展は当然貿易依存度を高めますから、アメリカの貿易依存度も長期的には高くなってきています。

 御存じのように、香港やシンガポールの貿易依存度は100パーセントを越えてますが、これは人口が少ないからで、日本やアメリカはどんなに自由化してもそうはなりません。

 EUでもベネルックス3国のような小さな国は貿易依存度が高いですが、EUを1つの国と見れば、殆どが域内の輸出入になって、貿易依存度は小さくなります。もし世界中が1つの国になれば、貿易依存度はゼロです。

 こうした前提を置けば、人口13億人を有する中国の貿易依存度が50パーセント前後で、自由化が進んでいて人口が3億程度のアメリカやEUよりも大幅に高いのは何故だろうかということになります。

 これは恐らく中国経済には国際貿易などに関わりない在来部門が未だ大きく残っており、その部分の人口を差し引いて考えないと先進国との比較は適切でない(これは新興国にはある程度共通の現象で、中国の場合著しい?)ということではないでしょうか。

 今回発表の中国の経済成長率7.7パーセントが「内需拡大中心の経済に移行」の成果という解説がありましたが、もしそうならば、中国国内の均質化が次第に進み、国内生産・国内消費が進んで、貿易依存度は徐々に下がってくると考えられます。

 JETRO発表の中国の輸出入とGDPの統計から貿易依存度を計算しますと、2006年の65.2%がピークで、2012年には47.0%まで下がってきています。
 中国内部の経済的均質化が進み、在来部門の近代部門への脱皮、国内の格差是正が進捗すれば、これは中国の政治・経済の安定化にもつながり、同時に、異常に高い貿易依存度の低下傾向を生むことが考えられます。

 中国の安定発展は、日本、アジアにとっては勿論、世界にとって大変望ましい事であることを思えば、今後、継続して順調に中国の貿易依存度が低下していくことを願いつつ、その動向を見守るというのも、中国観察の1つの見方ではないでしょうか。


安全の重要性、「安全はペイする」を越えて

2014年01月19日 11時43分25秒 | 労働
安全の重要性、「安全はペイする」を越えて
 昨年末、国として考えなければならない自然災害と安全の問題、国際関係と安全の問題について書かせて頂きました。
 地球環境問題への対応の遅れが自然災害を大きくしているのではないかといった問題、国際関係の在り方においていかに紛争に近づかないような冷静な行動を取るか、は極めて重要と考えるからです。

 ひとたび災害や紛争が起これば、それによる損傷は計り知れません。かつて「安全第一」とか「安全はペイする」という標語がありましたが、「あらゆる場面で」安全の大切さは、いくら強調しても強調し過ぎることはないでしょう。
 
 そこではあえて触れませんでしたが、今回の原発問題にしても、これは、自然災害と人間の対応における失敗の複合体ということが出来るでしょう。
 これはかつて、3つの神話の中の原子力安全神話で触れさせていただきました。

 ここでまた、改めて安全問題を取り上げたのは、最近、産業やインフラ関連でも安全に対する心構えが些か緩んいるのではないかと思われるような事故が多発しているからです。
 以前なら考えられないような、大企業、公企業などでも何か、事故が多いような気がします。

 因みに、厚労省の労働災害統計による死傷者数でみても平成21年までは減少傾向にあったものが、22年から24年にかけては、3年連続の増加傾向になっています。
 労働災害は景気と関係があり、好況の時は増加する傾向がありますが、日本経済が不況に沈んだ一昨年までの統計で増加というのには、問題を感じていしまします。

 日本企業は作業現場だけでなく、私のような事務職に至るまで、5SやTQMの考え方を学び、「ヒヤリハット体験」「検算しない計算は計算ではない」「校正(後生)恐るべし」など安全や不注意についての仕事に応じたノーハウを教わった経験があります。
 「ヒヤリハット」などは、退職後の生活の中での車の運転においても、大いに役立っています。

 これも因みにですが、企業の教育訓練費の動向を見てみました。かつての労働費用調査、今の「就労条件総合調査」で、これは3年に1度程度しか調査項目に入れていませんが、(最近時点では2006年と2011年)従業員1人当たりで、2011年は2006年の約3分の2に減っています。
 更に、安全関係のトレーナーが、「最近は効率重視で、安全関係は出番が少ない」と嘆いているのを聞いたこともあります。

 日本企業は、強いられた不況の中で、本当にまじめに頑張って来ましたし、安全のレベルは総じて高いと思っていますが、長期不況のせいで、已むに已まれず安全教育のコストを削減しているとしたら矢張り問題です。
 「安全はペイする」という視点からも大きな損失ですし、さらに安全そのものを何よりも大事にする気持が大事です。教育予算がなければ、ベテランがOJTで、正規、非正規を問わず指導を徹底するといった一層の真剣さが必要とつい考えてしまった次第です。


NISA 雑感

2014年01月15日 13時01分39秒 | 経済
NISA 雑感
 政府が鳴り物入りで宣伝し、証券会社や銀行が「どうぞわが社で」とDMを送ってくるNISA、年明けから申し込み受付というので、遅まきながら私も、某銀行に「お宅でやりますから」と電話しました。
 担当者がすぐ来てくれて、大変丁寧に手続きをしてくれ、手続き完了まで2か月ほどですという事でした。

 NISAのキャッチフレーズとして「貯蓄から投資へ」というのが多いようですが、これはかつての、「銀行よさようなら、証券よ今日は」と似ているなと思っていましたが、政府広報でも、「株式や投資信託の配当や譲渡益が非課税」になると書いてあります。

 もちろん投資対象には銀行預金も入っているのですが、限度100万円ですから、利息年0.02パーセントの利息が無税になっても40円助かるだけですから、殆ど意味はないわけで、書いても意味がないことが解っているので書いてないのでしょう。

 私自身、投資対象として何を選ぼうかと考えると、結構難しい問題で、まだ全く決めていません。
 株式や投信というと、日本人の多くは、今までの経験から「ほとんど損ばかりで、余程巧くやらないと儲からない」と思っているようです。

 私自身、現役の時に勤め先の財形貯蓄で、迷わず金銭信託を選びましたが、投信を選んだ上司が、「積み立てても、積み立ててもどんどん減っていくんだよ」と嘆いていたのを覚えています。
 今の日本経済を考えてみても、現に昨日、アメリカの雇用問題でダウが下落、同時に円高に振れて日経平均も500円も下げる(今日は半値戻しになっていますが)様な状態で、日本人がいくら真面目に頑張っても他国の都合でいつどうなるかわからないというのが実情です。

 私のサラリーマンとしての経験で言えば、そんなことに一喜一憂して、仕事の合間に株式市況を見ていたのでは、仕事に身が入らない。仕事に打ち込むつもりなら、確定利付きが一番良い、という気持ちでした。

 問題は、銀行預金にまともな利息が付かないという日本経済の方にあるわけで、これは円高を強いられたことによるデフレの結果です。これからも円高に振れるたびに株価は下がり、ゼロ金利は続き、銀行を利用するのは預金より「貸金庫」などという変な時代が続くのでしょうか。

 いま、NISAを設定して、5年後、本当に免税のメリットが出るでしょうか。これは一種のギャンブルです。
 無貯蓄世帯が増えているから、イギリスの真似をして、政府が鳴り物入りでNISAを宣伝する。何か「本当に政府がやることは別にある」と感じるのは私だけでしょうか。


国内生産比率引き上げに動く企業

2014年01月08日 22時19分22秒 | 経済
国内生産比率引き上げに動く企業
 今日は朝から我々を心強くするようなニュース流れてきました。
 キヤノンが海外展開しているデジタルカメラの高級品などの生産を大分工場に引き揚げて来ることなどで、国内生産比率42パーセントを50パーセントに持って行くという方針を打ち出したというのが1つです。

 もう1つはダイキンで、中国企業に委託していたエアコンの生産の一部を同社主力工場の滋賀製作所に切り替えるというニュースです。

 $1=¥105といった新しい状況が見通せるようになって、愈々こうしたトップ企業での生産の海外移転促進という方向からの転換が見えてきたようで、これは日本経済、日本人全体にとって、大変な朗報と大いに評価すべきでしょう。

 かつて、トヨタの国内生産300万台死守をこのブログでも高く評価すべきと取り上げましたが、国内生産回帰の動きの拡大が広がることになれば、日本経済の雰囲気も大いに変わるでしょう。

 株式市況の歓迎の様子で、今日は久しく動きの少なかったキヤノンの株価も急上昇、ダイキンも大きく値上がりしたようです。

 確かに25円幅の円安は、日本の製造業にとって国際的には大変なコストダウン効果です。勿論、プラザ合意以降の強いられた異常な円高の修正でしかないのですが、繰り返し述べますように、それこそが、現在の日本経済回復の原動力だということは明らかです。

 考えてみれば、アメリカの政策変更で、元々基盤の脆弱な新興国の経済は動揺が予測され、生産拠点の海外移転に不測な問題が生じることは予想されてこなかったわけではありません。しかし打ち続く円高進行で、日本企業にとってはやむに已まれぬ行動だったという事でしょう。

 昨年来、日本の政府・日銀が行き過ぎた円高の弊害を理解し、円高是正に乗り出したことに対して、企業が本来の対応策を取り始めたことをともに喜びたいと思います。
 円高是正でコストの下がる日本、労使関係の安定で自家製のコストアップは防除可能な日本です。

 それに対して新興国の場合は通貨がドルリンクであったり、不安定な労使関係からコストアップの可能性が大きかったり安定経営を脅かす要素は少なくありません。
 圧倒的な低賃金で競争力を維持しているというのが一般的パターンですが、それが揺らいでいるのです。

 円高さえ是正されれば、日本の経済社会の安定性が改めて見直されるのは必然の傾向という事でしょう。
 もちろん生産拠点の海外移転から国内回帰へといった問題は、簡単なことではありません。しかし日本企業の国内経済社会の安定感への信頼はますます強まり、特に高度化した生産部門の国内回帰は確実な流れになるのではないでしょうか。

 そしてそれは、付加価値の生産と分配の国内への回帰、通常の言葉で言えば、雇用の安定と賃金の上昇に貢献し、それはさらに国内の経済社会の安定、産業基盤の安定と強化を促進するといった好循環を生むことになるでしょう。

 政府は円レートの安定化を約束し、企業は持ち前の先見性と洞察力を発揮して、国内回帰を進め、日本経済社会の早期の回復、正常化、安定化を積極的に進めてほしいものです。


デフレほぼ脱出、日本人のエネルギー発揮を

2014年01月07日 12時45分35秒 | 経済
デフレほぼ脱出、日本人のエネルギー発揮を
 安倍総理が新年の挨拶で、今年こそはデフレ脱却をと言っていました。その為に何をするのかははっきりしませんでしたが、積極財政、賃金の引き上げなどを言っていますからそうした経済政策によってデフレ脱却をとお考えなのでしょう。

 客観的に見れば、日本経済はすでにデフレを抜けかけていると思います。それはデフレになった原因を理解していればはっきりすることです。毎度繰り返しになりますが、日本がデフレになったのは、日本の経済政策のせいではありません。
 原因は単純で、円高(プラザ合意、リーマンショックなど)によって、円建てのものはすべて円の切り上げ分だけ国際的に見て値段が高くなったからです。

 具体的に言えば、テレビならサムスンやLGと競争し、自動車ならVWやアウディ、BMWと競争していたのですが、円高になった分だけドル建の値段が上がり、日本製品は競争力を失ったわけです。国際競争の中で日本製品は値下げを強いられます。デフレです。

 一生懸命コスト削減の努力をし、競争力回復を図ってきました。ところが昨年から日銀の政策変更で、$1=¥80から$1=¥100円になり、さらにここにきて105円になってきました。25円幅の円安です。この円安で日本製品は急速に競争力を取り戻します。

 つまり、日本のデフレはほとんどが円レートの変動のせいなのです。105円になれば、ほぼデフレ脱却でしょうというのはそういう理由です。
 あと必要なことは、再び円高に戻さないこと、誤ってコスト高にして、今度は自分の失敗で競争力を失わないことの2つでしょう。
 安倍さんは「今年こそデフレ脱却を」という代わりに「もう円高に戻すようなことはしません」というべきだったのです。
 
 政府経済見通しによる来年度の消費者物価上昇率は3.2パーセントです。そのうち2パーセント弱が消費税導入による上昇でしょう。残る1.5パーセント弱が輸入インフレ(輸入原材料価格等の上昇)分と国内コスト(大部分は賃金コスト)上昇が実質経済成長率を上回る分によると見ているのでしょう。

 こうした物価上昇分を、消費購買力の増加で日本経済の成長を引っ張るという立場から賃上げに織り込むべきだという意見が労組や学者・評論家の一部にあるようです。

 消費増税で景気が腰折れになることを懸念すればこうした意見も説得力があるように感じられます。しかし、こうしたムード的強気論成立つとすれば、それは、日本経済がデフレを脱却したという条件、雇用環境が改善し、消費性向にプラスの影響が明らかといった条件、さらには、その賃金上昇をカバーする経済成長が可能になる、といった条件があっての話です。

 本気でそれを目指すなら、それは意欲的で国民に明るい希望を与えるものでしょう。しかし来年度の政府経済見通しでは実質経済成長は1.4パーセントとなっています。
 就業者数増加0.2パーセント、雇用者数増加0.5パーセントで、一人当りの国民経済生産性上昇は漸く1.2パーセントです。政府は掛け声と違って、あまり元気のない日本経済を描いているようです。
 日本の企業労使、日本人全体のエネルギーが、政府見通しを超えた元気な日本経済を実現することを望むや切です。


2014年、新しい時代の始まる年に

2014年01月01日 13時35分37秒 | 社会
新しい時代の始まる年に
 2014年、平成26年、明けましておめでとうございます。
 年の始めは矢張り良いものです。切れ目のない時の流れに区切りをつけ、気持ちを新しくして生きようとするのはまさに人間の知恵でしょう。 

 例年より早く配達されてきた年賀状を見ていると、目立つのは停滞・衰退を続けてきた日本経済社会が、昨年を境に 新しい時代を迎えるという明るい感覚を感じながらも、何かそれに同居する不安感をぬぐえないといったどこかちぐはぐな感じを抱いている人が多いという様子でした。

 この感覚は何処から来るのでしょうか。
 ひとつには、不況の中で努力を重ね、何とかいわゆる「失われた20年」から抜け出せるかと思ったら、思わぬ外国の失態のトバッチリで、また深刻な不況に逆戻りといった過去の経験の再来を危惧する感覚のようです。
 そして、もう一つは、経済についてはそれなりに先が見えるようになったが、政治や国際関係の面で、何か危険なものを日本が含み始めたのではないかという違和感のようなもののようです。

 特に戦前からの経験を持つ高齢者の中に、当時の記憶を彷彿させるといった見方があるように思いました。
 ユネスコ憲章の前文にある「戦争は人の心の中で始まるものであるから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない」というかつての英国首相アトリーの言葉を引用したものもありました。

 経済の先行きについては、私自身は、私自身なりに、$1=¥80といったようなことが起きなければ、日本国内の各経済主体は誤りなく安定成長維持の道を辿る選択が出来るという確信に近いものを持っていますが、国際関係、国際政治の面では、平和憲法を掲げる日本がわざわざ1段下のレベルに下りて、国際紛争に「周囲と同じレベルで」首を突っ込もうとしているとしか考えられないような、おかしな状態になりつつあるように感じています。
 問題はそういう態度を取る人たちが、「その方がカッコいい」と勘違いをしているように思われてなりません。

 しかし最後には、より多くの日本人が、如何なる考えを持ち、いかなる行動を取るかによって決まるのでしょう。
 此の所、世界から驚嘆され尊敬されるような素晴らしい行動を巧まずして取り、世界に感銘を与えてきたのが、日本人大衆の姿です。
 政権党も含め、日本全体が、そうした賢い選択をし、世界から安心と尊敬の眼差しで見られるようになることを願いながら、新しい日本の発展と成長の時代の開幕を信じて、今年1年、市井の片隅で私なりに努力してい行きたいと思っています。