tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

消費不振は続く気配?

2017年05月31日 12時27分26秒 | 経済
消費不振は続く気配?
 日本経済の最大の弱点は消費不振という事はほぼ一致した意見でしょう。
 昨日は有効求人倍率が史上最高に達したといった報道もあり、これだけ人手不足であれば、通常の社会状況なら、賃金も上がり、消費も増えて、物価も上がり、政府や日銀が望んでいるようなインフレ含みの経済状態になっていくのが自然の成り行きのように思われますが、どうもそうならないようです。

 経済成長のもう一本の柱である企業の生産活動の方は、企業体質の改善、多様な技術開発の進展、それらに支えられた新たなマーケットのフロンティアの広がりの可能性などが言われ、企業の投資活動、生産活動の活発化の様相が見られています。

 経済は、生産と消費がバランスよく拡大して、均衡成長になるのですが、日本の場合はこのところずっと、生産や投資の面は何とか堅調な動きを取り戻しつつあるようですが、個人消費、家計の消費支出がなかなか増えず、その差が経常黒字つまり生産・投資活動の成果の使い残しになって、経済成長の足を引っ張るという構図が続いています。

 今年に入って、こうした構造状態を反映する消費性向や消費者物価の動きに、何か少し変化が見られ、消費の活発化が順調な経済成長につながるかといった動きも見えたように思いましたが、最近の統計を見ますと、どうもそれは糠喜びだったようです。

 下は、この2年間の勤労者所帯の平均消費性向(総務省家計調査)を見たものですが、今年に入っての上昇傾向が4月にはまた下落に転じてしまいました。



 消費者物価指数にしても、全体は上がり基調ですが、お天気や海外事情で動く部分を除いた、「生鮮食品とエネルギーを除く総合」では、1、2月上昇がみられましたが、3月はマイナス、4月はゼロで、物価上昇傾向も消えたようです。

 消費の動向は、国民の感じる将来不安に左右されると見られていますが、現政権の政策では、国民の将来不安は相変わらず続くという事でしょうか。

 統計数字は正直ですので、こうした数字を見て来ますと、現状のような政策を続ける限りでは、日本経済の回復にはまだ時間がかかりそうな気がします。
 真面目に頑張る日本人が、先行きの不安に支配されるような状況から、気持ちを切り替え前向きになれるような政策の必要が痛感されるところです。

結束に問題残したG7サミット

2017年05月30日 13時22分23秒 | 国際関係
結束に問題残したG7サミット
 イタリアの風光明媚なシチリア島のタオルミーナで行われたG7サミットが終わり、コミュニケも発表されましたが、今回のサミットは、7か国の結束においても、メルケル氏ではありませんが、何か後味のすっきりしないものだったように思われ、残念です。

 トランプさんをはじめ、新人の多いサミットだったという事もあるのかもしれませんが、それよりも、基本的には自由世界のリーダー国の意思統一もなかなか難しくなり、結果的に結束力が弱まりかねない状況すら見えて来ます。

 背景には、これまで一貫してリーダーシップを発揮してきたアメリカが、トランプさんの登場により、「アメリカ・ファースト」に変わったこと、またイギリスが、EUを脱退したこともあるのでしょうか。 結束と分裂を比べれば、結束が望ましいのは明らかです。
 
 大切なのは7人の首脳の知恵でしょう。さきの財務省・中央銀行総裁のG7では、従来の常套句だった「あらゆる種類の保護主義と闘う」といった文言抜け落ちていましたが、今回は「あらゆる種類の」は抜けましたが、「保護主義と闘う」という文言は入っています。
 
 トランプさんにしても、アメリカの都合の悪いところは保護主義をとるが、アメリカが強い所では、相手国の保護主義とは闘うわけですから。「あらゆる種類の」が取れれば、それで納得できるという事でしょうか。

 何れにしても、こうした国際会議は、出来るだけ前向きの意見集約、出来る限りの妥協と協調を目指し、地球市民社会の分裂を克服し、協調と結束に近づくように努力することがその本来の役割でしょう。

 現に、そうした動きを否定し、徹底した独善的行動をとる国や組織もあるのです。良識ある地球市民社会の代表は、そうした動きを克服すためにも、出来うる限りの努力で、意見の一致を見出すべきでしょう。
 今後の国際関係今後のサミットへ向けて結束への復元・前進を期待します。

 ついでに一寸余計な事を書きますが、安倍首相がタオルミーナで国連のグテレス事務総長と話し合いをし、その結果についての報告が、国連のプレスレリースと違う(慰安婦問題と共謀罪についてのグテレス氏の発言で)という問題の報道がありました。

 安倍首相の英語理解力か、通訳の問題か、グテレス氏の言い回しか、本当の事は解りませんが、こうしたトラブルも、協調的な関係にヒビが入る原因にもなります。
 ここでも、これまで繰り返している総理の「言葉の重さ」への認識が問われているような気がして残念です。

欧米流人事賃金制度導入の歴史と「働き方改革」

2017年05月27日 11時40分34秒 | 労働
欧米流人事賃金制度導入の歴史と「働き方改革」
 働き方改革の2本柱は労働時間短縮と同一労働・同一賃金ということですが、同一労働・同一賃金に関係する賃金制度・体系についての日本の経験を振り返ってみましょう。

 この問題は、日本的な正社員制度の中の賃金と、欧米流の雇用制度の中の賃金制度の相克として論じられ、現実に導入されたりしてきた歴史を持っています。

 結論から先に言ってしまいますと、日本の中にも欧米流の人事賃金制度で運用されている部分がかなり広く存在します。それは「非正規従業員」の世界です。
 非正規従業員にも、パート・アルバイトから、契約社員、派遣社員、嘱託、顧問などいろいろありますが、こうした人たちの賃金は、全く欧米と同じで、基本はマーケットの相場です。評価制度もあって、いわゆる Job&performance の原則で決まります。

 つまり、非正規従業員の賃金は、もともと同一労働・同一賃金の原則で出来上がっていて、欧米と同じなのです。
 ですから、欧米流の同一労働・同一賃金を貫徹させるためには、従業員をずべて非正規従業員にすれば、即座に完成です。

 今の日本流の正社員制度の中で同一労働・同一賃金を貫徹することは不可能です。正社員同士でもそうですし、まして正規と非正規の間では「理論的に」成り立たないのです。

 欧米流の賃金制度導入の動きは戦後からありました。「職務給」の導入論は終戦直後から存在し、当時の労働問題専管団体の日経連は、その主唱者でした。
 真面目な日本企業は、職務給導入を真剣に検討したようです。しかし最終的には、賃金体系の一部に職務関連部分を設け、職務給を(部分的に)導入することで済ませ、最終的には職能資格給が一般的になりました。

 もう1つは、数年前までの円高不況の中で、「成果給」を導入しようという動きでした。成果給は賃金制度の発展の中で「出来高給」として存在したものですが、個人間の競争心をあおり、協調を壊すということで、欧米でも賃金の一部に導入(評価制度)が一般的です。
 日本でも、近年の話ですからご記憶の方も多いかと思いますが、一時盛り上がりすぐに消えました。企業の業績が毎年下がる時に「成果給」と言えば、賃金は下がるばかり、などと揶揄されました。

 欧米にない新卒一括採用という優れた雇用方式(若年層失業率が著しく低い日本です)で、「職務にあった技能を採用」するのではなく、「企業に合った人間を採用する」日本の雇用システムの中では、若い従業員は「1年先輩より低い賃金で当然」と考えているわけで、「同一労働・同一賃金」は貫徹しなくて当然なのです。
 基底には、「その人間の生涯の貢献に見合った処遇(含賃金)」という、従業員を人間として採用する(能力・技能は企業が仕込む)という日本独特の「企業と従業員の関係」があるのです。

「2020年度プライマリーバランス回復」の公約はどうする?

2017年05月26日 14時37分45秒 | 政治
「2020年度プライマリーバランス回復」の公約はどうする?
 安倍政権はかつてより、2020年度を目指す財政の プライマリーバランスの回復を公約として掲げ、国際的にも約束してきています。
 2020年は東京オリンピックの年ですから覚えやすくていいのですが、現実には、どう考えても不可能でしょう。

 安倍さんは 黒を白と言いくるめるようなこともいろいろしていますが、プライマリーバランスに関する限り言い訳はできないでしょう。

 にも拘らず、今準備しているのは、目標の言い方を変えることのようです。
「財政赤字を減らすことが目標で、プライマリーバランスはその手段。目標達成への通過点しすぎない」ということにして、「通過するのが遅くなっても問題ない」ということのようです。

 しかし、本当に問題ないのでしょうか。国際的な約束の手前もあり、G7やG20で、過度な不均衡を指摘される可能性の高くなりますし、国際的に不誠実と思われれば、国際投機資本などの動きも予断を許しません。日米FTA交渉でもいろいろと不利でしょう。

 それだけではありません、金融正常化(金利引き上げ)に動くアメリカが、日本の金融緩和の継続を懸念する可能性も高く、スティグリッツ氏も「金融緩和から財政政策へのシフトする時期」と言っているようです。

 勿論、いつまでもゼロ・マイナス金利というわけにはいかないことは明らかですから、金利が上がった時、政府は国債の利払いをどうするのか、日銀は国際価格の低落をどうするのかといった問題が、いずれは発生する可能性も高いでしょう。

 折しも、財政審会長の榊原経団連会長から、プライマリーバランスの2020年度の回復は絶対に実現すべきとの意見書が出されました。「これは国際公約でもある」と指摘し、国際経済関係の中で仕事をしなければならない日本産業・企業の意識も見えます。

 出来ない事を出来ると言いくるめたり、あることをないと断言したり、重いはずの言葉を軽く弄ぶような政治が長続きすることはないでしょう。
 この所目に余る異常さが多発するような状態から、早く、主権者である国民と真摯に向き合うような政権運営に戻ることを願うばかりです。

 何せ、政府にカネを貸している最大のスポンサーは、個人金融資産1800兆円を持つ国民なのですから。 (国民:国債にまともな利息を払ってほしいよ・・・。)

増加に転じるか、農業人口

2017年05月25日 11時25分04秒 | 労働
増加に転じるか、農業人口



 皆様ご承知のように、日本の農林業人口は減り続けてきました。高度成長の始まった1960年代のはじめ、 労働力調査によれば、農林業の就業者は1300万人近くいたのですが、その後、日本経済のなかで製造業が急速に発展し、更に流通業サービス業などの第三次産業の拡大という経済成長の趨勢の中で、減少の一途をたどり、バブル崩壊の1991年には390万人を切ることになりました。

 その後日本経済の長期不振、いわゆる「失われた20数年」を経て、さらに減り続け、いまは200万人を切る水準です。
 折しもトランプ政権の誕生で、アメリカはTPPを放り出して、今後は日米自由貿易協定を迫る姿勢です。USUR代表に決まったライトハイザー氏も日本の農業分野をターゲットにしていると言っているそうです。

  食糧自給率39%(オリジナルカロリーベース)の日本で農業関係者の心配は尽きませんが、こうした問題を解決するには、長い目で見れば、やはり日本の農業の国際競争力強化が必須です。
 そんなことを言っても、アメリカの巨大農場と競争して勝てるのか、ということにもなりますが、先日発表されたこの3月の労働力調査で、何か新しい動きが出てきたことの兆しではないかと思われるような数字の動きがみられます。

 上の図は総務省の労働力調査の、この1年半ほどの動きをグラフにしたもので、青い柱は、就業者、茶色の柱が雇用者の動きす。示したのは前年の同じ月に比べて、それぞれ増えたか減ったかで、単位は万人です。
 
 農業の就業者は、もともと自営業主と家族従業者が中心ですから、青い柱がほとんどマイナスになっているのは、一目して解りますように、離農、後継者不足で減少する農林業就業者の動きを示していると思われます。2016年の10月、11月に見られる増加は、前年の10月11月が異常に減少、その後回復したことの反映です。その後,その後就業者はまた減少に転じましたが、今年の2月3月にかけて3~4万人の増加になって、います。

 一方、雇用者の方は、何となく増加基調を続けています。「自営業主・家族従業者+雇用者=就業者」ですから、この2月、3月について見れば、雇用者の増加が農林業従事者数の増加を引っ張ているという動きになっていることが解ります。

 雇用者というは、平たく言えば、企業の従業員ですから、この動きは、家族経営の農業従事者は減少傾向ですが、農林業、特に農業の会社化(法人化)が進み、農林業の就業者が雇用者増という形で増加するという傾向が出ているということではないでしょうか。

 農業はもう第1次産業ではなく、工場生産(第2次産業)や流通サービス(第3次産業)もひっくるめた第6次産業だ、などといわれて久しいのですが、それを実現する主たる担い手は、家族経営ではなく「農業企業」でしょう。

 これからの日本の農林業は、高付加価値農林業を目指すのが必然的な流れでしょう。そうした傾向が、就業構造の統計に表れ始めた、と言っては早合点に過ぎるとのご意見もありましょうが、そう思いたいな、日本の農業は、既にその方向に向かっていることの表れであってくれればいいなと思いつつ、統計数字を眺めた次第です。


  

企業業績を上げる人事管理はここから

2017年05月24日 15時12分04秒 | 経営
業績を上げる人事管理
 人事管理についての古い話です。
 ノルマを決め、従業員の尻を叩いて能率を上げ、会社の業績を上げようとしても、そういうものは長続きするものではありません。従業員が自主的に仕事をする気になるようなことを考えないと業績は上がらないのです。

 という趣旨で、人事管理に人間関係論が入ってきたのは100年近く前、1920年代の話です。(エルトン メイヨー:ホーソン実験など)
 その後の人事管理の研究には、心理学も含め、人間の考え方や行動を調査分析し、どうすれば従業員自体が、自分からやる気を起こし、いい仕事をしてくれるかという事が中心になり、動機づけ理論や、リーダーシップ論、いわゆる行動科学の分野が全盛になりました。
 
 多くは世界一の豊かさを実現したアメリカで開発されていますが、戦後の日本はそれを学び、実践して大きな成果を上げてきました。
 5S、QCサークル、TQM、カイゼンなどなど日本が世界に誇る現場中心の優れた人事(仕事)管理の手法は、輸入した理論を日本流に消化し、より良いものに作り上げ、現場で実践してきたものです。

 中には、6シグマのようにアメリカに逆輸入されたものもありますが、こうした成果は、まさに地道な現場の労使の努力の積み重ねによって可能になったのです。

 こうした世界が注目する成果を上げた日本企業ですが、プラザ合意による円高、 付随したバブル経済の破綻、そしてその後の「失われた20余年」の中で、日本の人事管理はかなり変わっていしまったようです。

 相次ぐ大企業での不祥事の発覚、政府系金融機関での貸し出し現場の不正、異常な長時間労働や過労死(現実には上司のいじめによる自死?)などなどの現実は何を示すのでしょうか。

 短期の業績を上げることに懸命なトップ、その意を戴して現場で部下の尻を叩く管理監督者たち、100年前から研究がなされ、戦後の日本で立派な花を咲かせた人間中心の人事管理論はどこに消えたのでしょうか。

 企業経営者の長期的視点の欠如、そして長期的視点の基盤である従業員教育の手抜き、特にトップと現場とをつなぐ中間管理職(管理監督者)の重要性が見落とされてきた結果ではないでしょうか。従業員の教育訓練は、継続こそが力で、失われて20余年の業績悪化の中で削った教育訓練費のツケが、今、回ってきているように感じられます。

 企業の盛衰は「人を育てられるかどうか」で決まる、経営者、管理者の最も重要な仕事は部下を育てること。「部下を課長の仕事が出来るように育てた課長は、課長を管理する部長になれる」などと、かつては言われたものです。

 「長期的視点」「人間中心」の2つの柱に拠って立つ日本的経営、日本的人事管理の再建がこれからの日本企業、日本経済の成長に必要なようです。

政府主導の「働き方改革」を越えて

2017年05月22日 17時48分50秒 | 労働
政府主導の「働き方改革」を越えて
 現政権は、これからも働き方改革を進めようとするでしょう。この働き方改革には大きく2つの側面があるように思われます。

その1つは、労働期間の短縮でしょう。この関連では話はある程度、労使間でも煮詰まっているようですし、これからの日本人にとって、これまでのような長時間労働は見直されて当然と私も思っています。

 もう1つは、同一労働・同一賃金に代表される人事・賃金制度の問題でしょう。この問題は、日本の伝統文化、日本的な文化社会の在り方と密接にかかわる問題で、何もわからずに欧米流を善しとする現政権の政策は多分換骨奪胎されるでしょう。

 今後、本格的に進められることになる、この「働き方改革」については、これまでも書いてきていますが、何よりも、働く現場の当事者である「日本の労使」が、本気で取り組まなければならない問題だと考えています。

 政権に出来ることは、結局は法律を作ることだけです。その法律に「仏作って魂入れず」ではありませんが、魂を入れるのは産業活動を担う現場の労使でしょう。
 であってみれば、法律を作る段階から、労使が、あるべき理想の形を協力して探り、その姿に見合う形での法律を作り上げる努力をすべきでしょう。

 働き方改革の主人公は、政府ではありません、仕事の現場を担当する労使こそが主人公ですし、現実に労使の知恵と熱意がなければ、良いものが出来るはずはありません。

 春闘は景気回復の中で、何とか復活してきたようです。かつて秋闘と言われた、労使の「政策制度問題」の討議の復活が必要な時期が来たようです。

 働くのは人間です。当事者は労使です。「失われた20年」の中で影が薄くなった日本的労使関係ですが、いよいよ新たな出番の時期が来たと思っています。
 
 日本産業の一層の高度化、さらなる生産性の向上、再び「ジャパンアズナンバーワン」と言われるような日本経済の発展のためのベースとなるのは、矢張り法律ではなく、日本の労使の知恵だと考えています。

 労使の代表である「連合」と「経団連」さらに、産業別、地域別組織、そして最も重要な企業レベルの労使関係の活性化が、日本経済の発展のために求められていのではないでしょうか。

忖度と諫言

2017年05月21日 12時12分05秒 | 社会
忖度と諫言
 先日も書きましたが「忖度」という言葉がはやります。そしてその使われ方は、あまり良い意味ではありません。長い物には巻かれろといったような意味で、事の是非を問わず、権力者おもねるという態度や行動として使われています。

 もともと忖度というのは「他人の気持ちを推し量ること」の意ですから、決して悪い意味の言葉ではありません。
 それが最近のような「忖度の行き過ぎ」のような使われ方ばかりになるというのは、言葉のせいではなく、人間の精神や行動が怠惰になり劣化して、事の是非を判断しようとしないからでしょう。
 「忖度」が泣いているかもしれません。

 では、忖度でない行動、いわば、最近の「行き過ぎた忖度」の反対語は何でしょうか。ピタリというわけではありませんが、それは「諫言」でしょう。
 目上の者が言うことでも、それが正しくないと判断すれば、「それを諫め、正す」ことです。

 今の社会では、諫言が流行らず、忖度がはやるというのは、下手すれば身の危険があることより、事なかれ主義を選ぶ、つまり、正しいか否かは目上の者に任せ、自分では判断しないという思考停止が一般的なっているということなのでしょう。

 これは大変恐ろしいことのように思います。
 民主主義というのは、一人一票が保障されていて、そうした主体性のある一人ひとりが投票して、その結果の多数で決めるというシステムです。

 その中で、判断を他人(目上の人)に委ねて、自分は判断しない、判断することから逃げる(E.フロム『自由からの逃走』)ような人が増えてくれば、民主主義は簡単に独裁制に変化します。

 こんなことは、本当は誰でも解っているはずです。しかし、ここまで「忖度」という言葉が「行き過ぎた忖度」という意味で使われなければならない世の中というのは、組織の中の人間が、自ら判断することに「より怠惰」になっているからでしょう。

 「諫言」という言葉がマスコミに載るような、健全な社会にするにはどうしたらいいのでしょうか。

「IR」の変遷と経済・社会

2017年05月20日 11時20分26秒 | 経済
「IR」の変遷と経済・社会
 IRという略語をご覧になって、皆様は何のことだと理解されるでしょうか。多分、お仕事の専門領域や年代によって違うのではないかと思います。

 私が学生の頃(昭和30年前後)から、高度成長期を経て、 二度のオイルショックなどもあってその後ジャパンアズナンバーワンなどといわれた昭和の末期から平成のはじめまで、ほぼ1980年代まで、IRといえば Industrial Relation つまり、「労使関係」という読み方が普通だったように思います。

 戦後の荒れた労使紛争の時代から、世界屈指の良好な労使関係を実現し、それに支えられて、ジャパンアズナンバーワンと言われるような 経済社会を作り上げたというのがエズラ・ボーゲルの指摘でもあります。日本が世界の花形の時代でした。

 1985年のプラザ合意で大幅な円高になり、その対策として取られた大幅な金融緩和がバブル景気を作り、それが崩壊(1990-91年)して、「失われた20数年」に入り、リーマンショックによる経済どん底も経験した時代になって、IRは別の意味で使われることが多くなりました。

 日本の実体経済は円高で極度に不振となり、アメリカ流のマネー資本主義が滔々と流入する中で、IRといえば Investor Relations つまり「投資家情報」という理解がマスコミの中でも定着することになりました。
 実体経済の影が薄くなり、 マネー経済が主役のような時代でした。

 この時代はまだ続きていますが、最近はまたIRが全く違った意味で使われることが多くなりました。
 それは  Integrated Resort です。直訳すれば、「統合娯楽施設」でしょうが、その娯楽施設の中に「カジノ」が入っていなければ、Integrated Resort(IR)とは言わないようですから、はっきり言ってしまえば、「Casino」ということでしょう。
 このIRは今後、マスコミの中でも頻繁に使われることになるような情勢です。

 ということなのですが、この変遷を、このブログの趣旨である「付加価値の重視」という立場から考えてみると、そこには大きな問題があります。

 先ず、労使関係のIRは、まさに生産現場の問題です、社会のために付加価値を生産する場で起こる問題がテーマです。
 
 次に、投資家情報のIRは、投資の対象は、付加価値生産を業とする企業ですが、マネー市場でで飛び交うおカネが目的とするのは、付加価値生産よりも、カネでカネを稼ぐ投機資本です。

 そして統合娯楽施設のIRになりますと、これはもう投機も超えたギャンブルそのものの世界です。公認賭博で自分のカネさえ増えればいいということでしょう。社会を豊かにする付加価値生産は影も形もありません。

 IRの世界は、自分たちで付加価値を創って豊かになろうという人間本来の社会から、誰かが付加価値生産をしてくれるから、俺たちは持っているカネさえ増やせばいいという社会への「 進化(劣化)」のように感じられます。

 さて、これからどうなっていくのでしょうか。真面目な日本人の多くが心配しているようです。

シジュウカラ巣立ちご報告

2017年05月19日 12時07分41秒 | 環境
シジュウカラ巣立ちご報告

 
 
 庭の豊後梅の木に小鳥の巣箱を掛けてから数年になりますが、今年は、初めて、シジュウカラの巣立ちを見ることが出来ました。

 直接目撃者は家内ですが、注意深くない私は気が付かず、家内に言われて、「あ、そうか、あれが巣立ちだったのか」という情けない話でした。

 そんなことで、写真は撮れませんでした。上の写真は最近の親鳥の餌運びのシーンです。
 ・・・ということで顛末を多少記せば・・・、
 
 親鳥が白くて丸い玉のようなものを巣から運び出しているのに一昨日気付きました。ネットで調べたら、雛の糞を運び出しているとのことでした。腐って汚れないように、また臭いが出ると他の鳥や蛇に狙われる恐れがあるという解説です。
 スマートなシジュウカラは綺麗好きのようです。

 昨日の朝も2羽の親鳥が頻繁に出入りしていました、忙しそうだな、餌運びも大変かな、などとちらちら見ていましたが、昼近く、窓ガラスの近くまで飛んできたりして、いつものすば早い行動とは違うな、などと思っていたのですが、これが親鳥ではなく、巣立ち直後の雛の飛翔でした。

 丁度昼頃、家内が「巣箱から顔を出していますよ」「あら、飛び出しましたよ。ほらここにきてる」とガラス戸の先を指さします。確かに、先ほど見たように、親と変わらない大きさのシジュウカラが、よく見れば、多少拙い羽ばたきで、上に上がっていきました。

 「なんだ、そうなのか、それならまだ雛が中にいるかもしれないと、急いで三脚を構えましたが、残念ながらそれが最後でした。
 
 失敗の原因は、「巣立ちはまだだろう」という油断でした。株売買ではありませんが「マダはモウなり」、油断すると失敗するということの実証で、合計何羽巣立ったかも確認出来ないという情けない顛末でした。

安定成長の期待:2017年1-3月期GDP速報

2017年05月18日 12時06分57秒 | 経済
安定成長の期待:2017年1-3月期GDP速報
 今日、内閣府から2017年1-3月期のGDP速報が発表になりました。
 マスコミは実質成長率対前期比0.5%、年率換算2.2%、個人消費、輸出が牽引といった報道をしています。

  長らく低迷している個人消費ですが、今後も個人消費が多少でも回復の状況を見せれば、日本経済の安定成長路線への復帰も、その可能性が見えてくるということではないではないでしょうか。

 いつも通り、マスコミの報道は昨年の10-12月と今年に入っての1-3月の比較の数字を中心としたものですが、ここではいつも見ていますように、対前年同期比、つまり1年前の2016年の1-3月期からの動きをベースに見てみましょう。

 対前年同期比の実質成長率の推移を過去5四半期について見てみますと、
 0.5% 0.9% 1.1% 1.7% 1.6% となっていて、2017年1-3月期は前年同期比1.6%の成長です。

 同じ期間で家計最終所費支出(実質)を見ますと、
 -0.3% 0.3% 0.2% 0.8% 0.9%となっていて、前四半期から伸び率が高くなっています。家計支出は、主婦感覚では名目値(店頭の価格)重視ですから名目支出を見ますと
 -0.5% -0.2% -0.4% 0.7% 1.0% で前四半期から財布の紐が緩んでいます。

 同じ期間で企業の設備投資(実質)を見ますと
 -0.5% 2.0% 0.9% 3.3% 3.0% とこれも堅調です。
財政難の政府支出はマイナスですが、国内需要は着実に堅調となっています。

 日本経済のムードも少し変わってきたのでしょうか。雇用者報酬のこの1-3月期の対前年伸びは名目値で0.8%、昨年平均の2パーセント強から大きく減っていますが、消費支出の方は1.0%の増加ですから、サラリーマン家庭でも、多少財布の紐を緩めたのかもしれません。

 海外はまさに多事多端で、アメリカのトランプさん関係の困ったニュースで今日の日経平均は大幅下落ですが、日本経済自体としては、何とか安定成長への可能性が感じられるという所でしょうか。
 国民全体が、先行きに自信を持ってくれば、日本経済はさらの好転するのではないでしょうか。期待を持って見守りたいと思います。

一帯一路、AIIB、中国の構想

2017年05月16日 12時45分10秒 | 国際経済
一帯一路、AIIB、中国の構想
 北京で14、15両日開催された「一帯一路」についての初めての国際会議が、昨日終了しました。29カ国の首脳をはじめ130カ国以上の国、さらに国連、IMFなどの国際機関からも参加、中国の一帯一路構想についての世界の関心の深さを示しました。

 習主席は「幅広い合意に達し、前向きの成果が得られた」と今後の活動についての積極的な姿勢を示したと報道されています。

 折しも、自由貿易のリーダーを自認してきたアメリカではトランプ大統領が、「アメリカ・ファースト」「保護主義容認」打ち出したところです。今度は、社会主義市場経済を標榜し、自由化とは一線を画してきた中国が、一帯一路では「あらゆる保護主義に反対する」とまさに攻守所を変えた形となりました。

 一帯一路構想で中国が打ち出しているような陸と海のシルクロード、ユーラシア大陸から南アジア、アフリカまで含む経済圏ということになりますと、これはまさに巨大です。

 中国には「愚公山を移す」という諺がありますが、いずれにしても長期の話です。今回の会議で議論されたような、インフラ建設を中心に、経済基盤の充実が図られれば、その効果は計り知れないでしょう。
 AIIBを増資し、勿論その程度では足りないでしょうから広く資金を調達し、相対的な経済発展を目指すとすれば、膨大な投資と、成功すれば巨大な経済圏の発展が可能になるでしょう。

 ところで、この巨大構想が成功するか否かの分かれ目は何でしょうか。
 見方はいろいろあると思います。しかし、長い目で見れば、中心となる国・組織が自国の利益を中心に行動するか、コストを払ってでも、全体の繁栄を図り、その上でその成果を共有するか、どちらの態度をとるかでしょう。

 現在の中国を見ますと、周辺を収奪し、自国の利益を図るのか、という危惧を持つ国も多でしょう。南沙諸島に見られる版図拡大、軍事利用へといった動きは、皆見ています。
 
 しかし、こうした試みは、いずれ失敗するようです。旧ソ連も崩壊しました。アメリカが自国中心に転換したのも、自国の利益を図るつもりが結局そのコスト高に耐えかねたからでしょう。

 古くは植民地崩壊から始まり、単なる「富の移転」による収益確保(収奪)は次第に許されなくなってきているのです。
 一帯一路もこうした地球市民の意識の進化の中で考えれば、この巨大な地域全体の経済の底上げが現実になって、初めて成功すると考えなければならないのでしょう。

 広い関心を得て、スムーズな出発の情景を見せた「一帯一路」構想です。今後のさらなるスムーズな発展を期待したいと思います。

自由貿易と保護主義の間

2017年05月15日 10時27分54秒 | 国際経済
自由貿易と保護主義の間
 今回のイタリアのバーリでのG7でも、常套句の「あらゆる保護主義に対抗」という文言は入りませんでした。

 覇権国・基軸通貨国アメリカのトランプ大統領が「保護主義」を主張しているからということで、議論の末そうなったというより、何か「忖度」したような雰囲気もありそうです。

 ここで、些か考えてみたいと思うのは、トランプ大統領の保護主義と、これまで主要な国際経済会議ではまさに常套句になっていた「反保護主義」と、本当に違うものだろうかという問題です。

 マスコミは通常、「自由貿易」対「保護主義」という形で取り上げます。確かにその方が感覚的には解り易いということもあるでしょう。
 しかし、それぞれの主張の中身に入ってみれば、実は、どうも本質的な違いではなく、「程度」や「進め方」の問題だということになるようです。

 アメリカ自体、日本とは「日米自由貿易協定」を目指し、自動車や農産物の自由化問題を持ち出してくるだろうと言われています。日本では当然、関係省庁が身構えています。

 こうした状況を、「自国には保護主義を、他国には自由貿易を」と言ってしまえば実も蓋もない話ですが、本当の所は、
 ・理想としての自由貿易を旗幟に掲げる主張
 ・まともに自由化したら勝ち負けがハッキリしすぎるから交渉しつつ漸進的に
という自由化の仕方、速度の違いでしょう。

 勿論理想を掲げることは大事ですが、TPP のような多国間でも、FTAのような2国間でも、各国政府が一生懸命やっていることは、「自国の特定の産業の保護をどこまで認めてもらうか」ということがメインのようです。

 これは当然で、その努力の成否に政権の維持や、国の産業構造の盛衰がかかっているからです。
 
 自由競争(自由貿易)は競争の刺激によって、競争力の弱い産業の生産性を引き上げ、経済発展を進めるための重要の手段です。
 国内競争だけでは往々にして甘くなるので、国際競争の中で、みんなが生産性向上に努力し、世界経済のより良い成長発展を目指そうというのに反対の国はないでしょう。

 しかしスポーツ選手などと同じで、無理して鍛えることは禁物で、故障の原因にもなります。自分の体に合わせて、徐々に力をつけることが重要なのです。
 「自由貿易」対「保護貿易」というのも、実はこの「スピードの差」という問題に尽きるのではないでしょうか。

G7とG8

2017年05月14日 17時34分23秒 | 国際関係
G7とG8
 イタリアサミットを前に、イタリア各地でG7の外相会議や、G7の財務相・中央銀行総裁会議が行われています。

 外相会議の方では、コミュニケの中で、具体的な国名を挙げ、テロ組織ISILをはじめ、シリア、イラク、リビア、さらに、各地の内戦、紛争などについての取り組みなどを丁寧に取り上げています。

 財務相・中央銀行総裁会議の方では、世界経済は成長を取り戻しつつあるが、各国の一層の努力が必要で格差と不均衡を是正し、包摂的な成長の実現のためのアジェンダへの指針を提供するとして、国際金融機関の役割からテロと資金の問題、関連する資金洗浄、さらにサイバー攻撃問題まで具体的問題を提起しています。

 夫々がイタリア・サミットに向けての重要なメッセージとなるのでしょうが、政治、テロ、金融、サイバー攻撃などが複雑に絡み合ってきている今日、やはりG7というロシア抜きでは、地球市民の結束という意味では本当の問題解決には遠いでしょう。
 
 クリミヤ併合以来、ロシアが排除され、G8はG7になってしまっていますが、何といっても、ロシアは国連安全保障理事会の常任理事国です。地球市民全体のためにはやはり、国連の旗印、安全保障理事会の結束があって然るべきでしょう。

 現実に、二国間では、日ロの首脳交流もあり、米ロ首脳の電話会談もあるのです。国同士でも、人間同士でも、矢張り面と向かって話合わなければ、本当の解決はないでしょう。
 立場や理屈が食い違っているから話し合わないというのでは、物事の本当の解決につながらないと考えるべきでしょう。

 意見が食い違うからこそ、出来るだけ頻繁に話し合うというのが、地球市民の幸福のために、リーダーたるべき国の、本来のあるべき姿勢なのではないでしょうか。
 なるべく早く、G7が「G8」になることを期待します。

主要国の経常黒字と赤字、日本の進路

2017年05月13日 11時48分52秒 | 経済
主要国の経常黒字と赤字、日本の進路
 いつもアメリカの経常収支は万年赤字と書いてきていますが、これは単純に言えば、アメリカは「所得以上に支出をしている」ということです。赤字の家庭と同じです。

 赤字幅を比べてみますとこんな具合です。絶対額では感じが解らないので、対GDP比で見てみます(2016年、資料:世界経済のネタ帳)。
・ドイツ +8.4%  
・日本 +3.87% 
・中国 +1.75%(前年は+2.71%) 
・アメリカ -2.59%
ということになっています。

 ところで、経常収支というのは、下の4つの収支の合計です。
「貿易収支」モノの輸出入
「サービス収支」旅行などのサービスの収支
「第一次所得収支」対外投資からの収益
「第二次所得収支」援助や贈与の収支

 黒字国では、ドイツと中国は貿易収支の黒字が圧倒的に多く、日本は第一次所得収支が大きく、この所貿易収支も次第に増えそうな様子です。そして、アメリカは貿易収支の赤字が圧倒的に大きいということになっています。

 そんな状況ですから、貿易赤字の大きいアメリカは「貿易不均衡」と主張するわけです。
 しかし最も貿易黒字幅の大きい(GDP比)ドイツは、EUの一員で、EUのほかの国の赤字を何とか支えている状態なので、アメリカとしても物が言いにくいのでしょうか。
 アメリカの当面の相手は中国と日本ということになるようです。

 中国は、対北朝鮮戦略の中で、為替操作国でないことになりました。日本は第一次所得収支は大幅黒字ですが、貿易収支は現状ではそれほど大きくありません。

 さてこれからのアメリカの貿易不均衡是正のための政策はどう展開するのでしょうか。
 日本にとっては、日米貿易交渉という問題と、大幅化する経常収支に対して、国際投機資本がどういう反応を示すかという2つの問題があるようです。

 対策の王道は日本自体が自分で、経済・金融政策の見直し、税・社会保障の一体改革、格差社会化の阻止、消費を中心にした内需拡大政策を進めることでしょうが、政権は何か別のことにかまけてしまっているようで心配です。