tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

バーナンキさんは何をして来たか

2013年10月31日 10時01分11秒 | 経済
バーナンキさんは何をして来たか
 今度のFOMCについては、大方の意見は「サプライズなし」という事でしたが、結局そうなったようです。
 毎度書いていますように、出口戦略はなかなかうまくいきません。それは当然で、実は実体経済というものは本質的にそんな巧い具合には行かないものだという事でしょう。

 バーナンキさんは2006年にFRB議長に就任、2007~8年のサブプライム問題、リーマンショックによる世界不況対策に当たるという回り合わせになりました。
 考えてみればこれは大変な事なのですが、御本人は大恐慌の研究家で、「金融を緩めれば大恐慌は避けられた」という主張だったそうで、ある意味では「まさに腕の見せ所」ということだったのかもしれません。

 そして、アメリカは超金融緩和路線を取り、世界恐慌を何とか避けたという評価になったのでしょうか。 しかし、よく考えれば、問題はまだまだ解決されてはいないのです。出口戦略という仕上げは、まだ先送りでお茶を濁している段階です。

 もともとサブプライム・リーマンショックはグリーンスパンFRB議長の時代に準備され、優良債権でもない「サブプライムローンの証券化」をAAAと称して世界中に売り捌き、アメリカの住宅バブルの破裂とともに、世界中の大銀行のB/Sに大穴があき、アメリカの銀行も返り血を浴びたというのがリーマンショックでしょう。

 6年前、2007年5月に、このブログで、「アメリカ経済好調の秘密」を書きましたが、グリーンスパン議長も「米国はドルを刷れるので、米国債が債務不履行にはならない」という趣旨のことを言っていたそうです(wikipedia)。
 バーナンキさんはそれをさらに徹底した超金融緩和という手段で乗り切ろうと試みたというのが私の受ける率直な感じです。

 事の根本原因は、アメリカがいつまでたっても経常赤字を直せないことにあるわけです。赤字体質を直さずに、借金やドルの切り下げ、金融緩和(ドルの刷り増し)で済まそうという所に問題があるわけです。

 ドルは基軸通貨ですから、アメリカの金融緩和は、世界中の金融緩和となり、一部は途上国の経済成長に貢献し、一部は世界中にバブルの種をまいたようです。
 ということで、バーナンキさんは、自分の在任中に、金融緩和の矛を収めて、アメリカ経済の正常化に見通しを立て、引退の花道としたかったのでしょうが、実体経済はそれを許さないことが見えてきたというのが現状でしょう。

 今回のFOMCで、結局、出口戦略は先延ばしとなり、バーナンキさんはご自分の経済実験をやりかけで、後はイエレン女史に任せることになったわけです。
 出口戦略に自信があって、やり残しに心残りなのか、後片つけをしなくてよくなったのでほっとしているのか、バーナンキさんの心境は知る由もありませんが、金融緩和で実体経済の不況が救えるという「経済理論」は一体どうなるのでしょうか。


「いじめ」とハラスメントとストーカー行為

2013年10月27日 10時44分10秒 | 社会
「いじめ」とハラスメントとストーカー行為
 こんな問題は、あまり取り上げたくないですね。しかし、此の所の日本社会の中で、余りに目立つので、何とか防止の方法も徹底したらという意味も含め書いてみました。

 表題の3つは、基本的には共通の問題(ストーカー行為は多少異なる面も含みますが)だと思いますが、社会や責任当局の対応はかなり異なっているように思います。
 人間関係の問題として基本的に共通の問題であれば、それへの対応も基本的に共通にしていくことが大切ではないでしょうか。

 これらのうち、最も対応が徹底し、意識改革が進んでいるのは職場におけるハラスメントの問題でしょう。
 ストーカー行為については、考えられないような残虐な事件が起きたこともあって、今後、急速に警察などの対応の徹底が進んでいくのではないかと思っています
 最も遅れているのは、学校などにおける子供の「いじめ」の問題ではないでしょうか。まだ、いじめかそうでないかといった問題が議論されたりしています。

 広く言えば、これらは皆人間の人間に対する「いじめ」の問題です。いじめの問題は、いわば人間性の悪い面の表れで、人間社会がある限り、無くならないものだと思います。これはいじめに限ったことではなく、放火や泥棒、喧嘩や詐欺行為などなど、人間社会につきものだからこそ、人間社会はその防止に努力しなければならないのです。

 セクハラについてはかつて、同じことを言っても、同じ行為をしても、相手が迷惑だと思わなければセクハラにはならないが、迷惑だと感じればセクハラになる、と聞かされ、「何それ、相手次第?」などと思ったものでしたが、こうした原則の徹底が職場でのセクハラ行為の減少に大きな効果があったように感じています。

 ストーカー行為は警察などの対応が曖昧だと、まさに致命的な結果をもたらすことがありうるという事が広く知られるようになり、過剰な対応などはないという認識が高まっているのではないでしょうか。

 それに対して学校におけるいじめの問題は、未だに「いじめかどうか」などという段階で議論されています。
 職場におけるハラスメントへの対応を準用すれば、いじめられた当人が、「いじめ」と感じた時点で、その行為はいじめと判定されるべきでしょう。

 過剰対応・過剰反応という意見もあるでしょう。しかしそこまで徹底しないといじめの減少にはつながらないように思います。何故なら、前述のように、人間の人間に対するいじめは、人間社会がある限り無くならないものだと考えるからです。

 学校当局や、担任の先生にとっては、多少の辛さもあるでしょう。しかし、かつて、「加害者と被害者」でも書きましたように「いじめの意識がなくていじめをしている」とか「いじめ意識の希薄化」が進んでいる子供たちの心に、他人をいじめることは「いけないことです」という明確な情報を刻み込むためには、対応は徹底したものでなくてはなりません。

 あまりいい例えではないかも知れませんが、「この程度の盗みなら」といったことはなく、「盗みはすべていけないこと」という意識を子供の時から徹底するのと同じではないでしょうか。
 出来るだけ早く、いじめの減少(根絶は無理としても)を望むものです。


デフレは脱出したのか

2013年10月23日 15時30分23秒 | 経済
デフレは脱出したのか
 今国会の冒頭でも「デフレは脱却したのかどうか」という論戦がやられていました。
 このところ日本が経験してきたデフレの原因についての理解がないままに論戦をしてるので、「していない」とか「しつつある」という見解は、単なる印象でしかないようで、大変心許なく感じました。
 という所で、デフレに関する現在の日本の立ち位置を、再確認してみたいと思います。

 もともと日本経済がデフレになったのは、自国の経済運営の故ではなく、外的に強いられた「円高』という為替要因でした。これに対抗する手段は2つです。
① 毎年日本の物価を下げ、(諸外国は皆インフレですから)円高で生じた物価高・コスト高が帳消しになるまで頑張る=これこそがデフレのプロセス。
② 円高にされた分、円安に戻して物価やコストを下げなくてもいいようにする。

 失われた20年というのが、①の過程で、この4月の20円の円安政策が②に当たるものです。
 このブログでも、かつてデフレ解消には$1=¥110~¥120と書きましたが、購買力平価からみて、ギリギリ$1=¥105~¥110辺りで、ほぼデフレ状態脱出という所でしょう。

 皆様の企業でも、恐らく105~110円になったら競争力上は大変楽になるというのが実感ではないでしょうか。それが無理だとすれば、デフレ脱出にはもう少し時間が必要ということのようです。

 勿論時間を掛ければ、自動的に脱出できるのではありません。諸外国は平均3パーセント程度のインフレですから、日本の物価が輸入インフレ(円安による)などで1パーセント前後上がっても年に2パーセント程度は格差が縮小しますから2~3年で5パーセント程度の格差は解消できるという前提です。(この論議では消費税は輸入品にも国内品にも共通ですから関係ありません)

 この物価上昇率の格差の背景には、日本の生産性と賃金の関係はかなりバランスが取れていて、一方、諸外国は一般的に生産性より賃金コストの方が上昇率が高いという実態があります。これこそが日本の強みなのです。

 こう見てくれば、デフレ経済解消には、最低でももう5円程度円安にするか、2007年以前の「いざなぎ越え」のような経済指標は経済上昇というが、企業にも従業員にもあまり実感がないといった状況を2~3年我慢するかといったところだろうという見当がつくのではないでしょうか。
 若し円高になれば、話はその分逆戻りです。

 
 経済事象というのは、原因があって結果があるので、その辺りの因果関係をきっちり押さえておかないと、論戦をしてもあまり実りあるものにはならないような気がして仕方ありません。



頑張った鈴虫(すずむし)

2013年10月17日 11時05分23秒 | 環境
頑張った鈴虫(すずむし)
 家内がご近所の友人から鈴虫の子を頂いてきたのが5月ごろだったでしょうか。その友人は、虫かごの中で毎年鈴虫を育てていて、ときどき鳴き始めた成虫を、我が家の庭に放してくれたりしていました。

 夏の夕べ、庭の片隅で「リーン、リーン」となく鈴虫の声を聴きながら風呂上がりのビールなどというのは最高で、何とか庭で繁殖しないかななどと思っていましたが、それはかなわぬ夢でした。

 戦後、山梨の、現在の笛吹市に疎開した時、夏になると、隣の田圃の石垣にたくさんの鈴虫がいました。懐中電灯も乾電池もなかった戦後です、提灯をつけて行って、石垣の石の先端に出て来て体を揺すって鳴いている鈴虫を捕まえ、古い蠅帳の中で胡瓜や茄子の輪切りを餌にやり、音色を楽しんだのは懐かしい想い出です。

 そんなこともあって、鈴虫の音色は昔馴染みですが、鈴虫の住環境というのは適度の湿り気のある土が必要で、そう簡単ではないと思っていました。

 「メダカの春」で書きましたが、雨水タンクを買って小さな池を作ってからその辺りで鈴虫の住環境が出来ないかなと考えていましたが、家内の友人は、「鈴虫なんて簡単よ、虫かごに土を入れて霧吹きで湿らせてやるだけでOKよ」というのだそうで、先ずそれをやってみようと孵化した子をもらってきたわけです。

 貰って来た子は、市販の「鈴虫の餌」やナスの切れ端を食べて次第に大きくなり、この夏は我が家の部屋の中で雅やかに鳴いてくれました。
 体を前後に揺すりながら鳴くオスたちをデジカメのムービーで 撮り、鳴かないときはその録音部分の声を聞かせてやると、競って鳴き出したりします。

 家内と「庭に放そうか」などと相談しましたが、今年はまだ数が少ないので、卵を取ることを優先し、来年数が増えたら庭にも放すようにしようということになり、今年はずっと屋内飼育でした。

 遅くまで暑かったせいか、9月中ぐらいは賑やかでしたが、10月に入ると急減、一匹の雄が残りました。これが大変な頑張り屋で、一昨日まで鳴いていました。家内が友達に聞いたら「もう全然鳴いていないわよ」と言われてから10日以上です。 
 この2日ほど急に寒くなり、オスもメスも動かなくなったようです。

 この頑張ったオスの子供も含めて、卵がたくさん取れたでしょう。家内の友人には大変な感謝です。
 来年は、庭の方も賑やかになって、表を通る人たちが、鈴虫の音色に気付いてくれるようになるといいな、などと考えています。


賃上げさせたい男たち

2013年10月15日 11時45分21秒 | 経済
賃上げさせたい男たち
 「歌わせたい男たち」という戯曲がありましたね。君が代斉唱の問題を取り上げているのですが、実は、君が代反対の教師が、音楽の先生に「聞かせてよ愛の言葉を」を謳ってほしかったのでした、で終わる喜劇です。


 此の所の賃上げしてほしいという安倍政権の言うのを聞いていて、何かあの喜劇を思い出してしまいました。
 自分の言うことが何かの本当の意味も解らずに、ただ「賃上げすれば景気が回復する」という説を盲信し、「賃上げ」「賃上げ」と騒いでいると言ったら言い過ぎでしょうか。

 最も単純に言ってしまえば、賃上げして景気が良くなるなら、世界中から不況はなくなるということになるはずですが、経済というのはそう単純ではないのです。賃上げして景気が良くなるためには、それなりの条件が揃っていなければなりません。

 似たような問題を挙げれば、バーナンキ流の「金融さえ緩めれば不況は避けられる」とか、原子力村の「原発さえ動かせば電力は安く供給できる」と信じても、結果はそう単純ではない、などというのもあるような気がします。

 金融緩和では、アメリカが出口戦略で行き詰まっていますし、原発では「トイレの無いマンションは安いかもしれないが、トイレが高いので、本当に安いのかどうか誰も解らない」というのが本当の所でしょう。

 賃金の問題について言えば、「賃金を上げれば消費が増えて景気が良くなる」と単純に考える人が多いのですが、
① GDPが増えないのに賃金だけ上げても、国民の生活は良くならない
② 賃金が増えた分、利益が減るから、賃金と利益のどちらに分配したほうが経済成長に効果的か分析してみないと結果は見えてこない
という大きな2つの条件があります。

 この2つの条件を「日本の労使」は確り理解していたからこそ、オイルショックを乗り切って「ジャパンアズナンバーワン」になったという実績があります。
 欧米諸国の労使はその辺の理解が足りなかったがゆえに、スタグフレーションに苦しみ、果ては日本に円切り上げを要請したのです。

 経産相に至っては「円安で企業は利益が出たから賃上げを」などと言っていますが、これこそ、折角の円高の効果を相殺(やり過ぎれば帳消し)することでしかありません。

 来年の春闘への動きを見れば、売り上げが伸び、企業の成長が見えて来ている産業・企業では、経営側からも、雇用改善、賃金引き上げの動きが出始め、経済成長がプラスになる中で、労働組合サイドからも来春闘ではベースアップを要求しようという姿勢が打ち出されているようです。

 これは道理(経済合理性)に叶っています。企業や経済が成長するとき、それに応じて賃金(人件費コスト)を引き上げることは、経済の均衡成長の在り方そのものです。

 おそらく、来春闘では、経済成長、企業成長に見合った雇用、賃金の改善がみられるでしょう。これは賢明な日本の労使の行動の成果です。
 くれぐれも政府は「アベノミックスの成果」などと言わないでほしいと思います。それでは部下の業績を自分の業績と言い張る上司のようになってしまいます。


良薬はイヤ、当面の安定を優先へ

2013年10月11日 11時59分10秒 | 国際経済
良薬はイヤ、当面の安定を優先へ
 来年4月からのFRBの長官にはイエレン女史が決まるようです。金融緩和論者でバーナンキさんの跡継ぎにはいいのでしょう。

 イエレン女史は、議長就任が正式に決まれば、雇用の最大化と物価安定、金融システムの安定化を促進するため最善を尽くすと表明されたようで、アメリカという病人に対して、「手術よりも保存療法で」という立場のようです。
 それで元気になったら、ぼつぼつ手術(出口戦略)を考えるという事でしょうが、手術が出来るほど元気が回復(経常赤字改善)するとは思われません。

 雇用を大事にするということはいいことですが、そればかり重視していては、何時まで経っても出口は来ない可能性が高いように思われます。

 今回も、シェールガス・オイルという強力なフォローの風が吹いたのに、それを最大限有効に活用しようという国民の気概は希薄で、すでに省エネは忘れて、ガソリンがぶ飲みのフォードのピックアップの売り上げが大幅増などという報道もあります。

 為政者が、アメリカの真の危機を訴え、国民に、多少厳しくとも、こうしたチャンスをとらえ、健全なアメリカへの回帰を促すような方針が明示が出来ないものかなどと考えてしまいます。

 共和党も最終的には、負債の上限の引上げに(暫定という条件を付けながらも)賛成するでしょうし、問題は当面の弥縫策に矮小化され、近い将来また同じ問題が繰り返されることを知りながら、当面を糊塗することに終わるのでしょう。

 日本でも世界でも、此の所そちらを歓迎する状況のようで、為替や株価にそうした反応が端的に示されています。
 アメリカは世界のために金融緩和や財政政策をやっていてくれるという解釈も成り立つのでしょうが、最終的には、二日酔いに「迎え酒」のたぐいで、問題の本質解決は遠のくばかりです。

 折しも、G20、G7です。いつか誰かが本質論を言い出さなければならないのでしょうが、苦い良薬は飲みたくない、矢張りこのままダラダラということになるのでしょう。
 日本はその辺りを十分理解しながら、今後の内外政策を考えて行くべきでしょう。


政府・日銀、円買いへの備えは万全か

2013年10月08日 11時36分50秒 | 経済
政府・日銀、円買いへの備えは万全か
 前回触れました様に、アメリカの財政の崖は旬日に迫っています。民主、共和両党は如何なる対応をするのか世界が注視しています

 国債発行限度額の改定が政治抗争の中で遅れたり、暫定予算が不成立といった事態になれば、国債の利払いが滞り、政府の行政機能は不全となり、デフォルトなどとマスコミが報じれば、リーマンショックを上回る世界経済の大混乱を引き起こすといった論調もあります。

 実体社会、実体経済の分野では、こうした混乱は何とか回避したいと考えるのが当然で、IMFのラガルド専務理事も、事態の早期解決に向けてアメリカが良識を発揮するように促したようです。

 私は個人的には、問題の本質には触れずに、弥縫策ばかりに言及するのでは、ただ問題を先延ばしにし、より深刻にし、アメリカにとっても、世界にとっても決して良いことではないと思いますが、問題の期限が旬日に迫れば、それも致し方ないことかもしれません。

 やはり普段から、アメリカの経常赤字垂れ流しがいつまでたっても止まらないという状態を、出来るだけ早く是正し、世界経済に無用な混乱を招くことがないよう、アメリカ政府は勿論、アメリカ国民自体も認識し、改善への自覚を持つように促す発言や行動が必要なのでしょう。

 このままいけば、世界は、アメリカは益々頼りない国という認識を強め、次第にアメリカ離れ、アメリカ・パッシングを迫られることになるでしょう。
 今のアメリカを見て、何となく徳川幕府の末期を連想するのも、日本人なら多分私だけではないと思います。

 そうした中で、金融の混乱にビジネスチャンスをと手ぐすね引いているのは国際投機資本のギャンブラーたちでしょう。
 おそらくその時の安全通貨のターゲットになるのは相変わらず日本円ではないでしょうか。このところ既にじりじり円高が始まっています。

 日本としてはこれは大変なことです。リーマンショックで30円ほども円高になり日本経済は最悪の不況に呻吟しましたが、もしアメリカの失態のトバッチリで、改めて20円の円高にでもなれば、アベノミクスなどは雲散霧消し、昨年までのデフレに戻るでしょう。

 国民が、そして企業が「もう円高に戻ることはない」と思うことが、今の日本経済の回復基調を支えているのです。政府日銀は、その辺りを敏感に感じ取り、国際投機資本の円買いに対抗する徹底した手段と行動力を持っていることを国民に周知するべきでしょう。

 手の内を曝け出すことは、その手段の内容によっては得策ではないかも知れません。しかし、その備えがあることを明示することが、国民の安心だけでなく、国際投機資本の思惑を封じることにもなるでしょう。
 政府・日銀の早期の的確な意思表示が求められているような気がします。


混迷深まるアメリカ

2013年10月07日 08時11分21秒 | 国際政治
混迷深まるアメリカ
 アメリカの混乱が連日報道されます。
 議会のねじれで、いわゆるオバマケアが議会を通らないので10月からの新年度の予算も通らず、その影響で政府機関も一部停止、オバマ大統領はTPP出席を急遽取りやめということになりました。

 もともと、アメリカが自らの都合で言い出したTPP,今回もオバマさんが議長の予定でした。アメリカ自体がまさに迷走を始めたように見えます。自由の女神も閉鎖、自由の女神が「不自由」になったようです。

 世界の盟主を自認するアメリカがこの調子では本当に困ったことですが、問題の根は、もっともっと深い所になると感じている方々も多いともいます。

 確かに当面の議会混乱の原因はオバマケアでしょう。政府が国民全員に何らかの医療保険に入れということが、自助努力を旨とするアメリカ本来の在り方に反するという共和党に主張は、一見それらしく聞こえます。

 しかし、オバマケアで妥協が成立したとしても、その先には、財政の壁(崖)があります。国債発行額の限度16兆7000億ドルという限度を外さない限り、これ以上の財政支出は出来ないという所(10月17日)まで来ているのです。

 もともと、こういう限度を決めたのは、際限のない財政の不健全化を止めようということですから、当然限度の中で遣り繰りするのが政府の義務でしょう。
 しかし、それは国民の反発を買って、とても無理というのが、民主、共和両党に、最終的には多分共通(?)の認識ではないでしょうか。

 実はこちらの方が、ずっと重要な問題だという解説は多いようです。そしていずれ限度を改定して、何とか解決し、アメリカがデフォルトにならないようにするのだろうとか、しなければ世界経済が安定しないといったのが多くの論調です

 確かに借金(国債発行)の限度を引き上げれば、デフォルトは回避できるでしょう。では、妥協が成立して、デフォルト回避が出来たら、それで「メデタシ、メデタシ」になるのでしょうか。
 皆様疾うにお解りのように、またこのブログでも繰り返し繰り返し何度も指摘していますように、これは問題解決の単なる先延ばしでしかないのです。

 日本と違って、アメリカは経常赤字の国ですから、借金は外国からすることになります。今、アメリカに喜んで金を貸すところがあるでしょうか
不健全な超金融緩和を継続し、当面無理な工面で遣り繰りしても、同じ問題は規模を拡大してまた起こります。
 こんなことを繰り返しても何ら、問題の本質的解決にはつながりません。本質的解決は、アメリカ人が、自分の稼ぎの範囲で暮らすという「本来の自助努力」の在り方に立ち帰った時、初めて一歩を踏み出すのです。

 しかし、誰もそこまで厳しく指摘しないようです。ポピュリズム蔓延のせいでしょうか、かつて、「国が国民に何をしてくれるかではなく、国民が国に対して何が出来るかが重要だ」と国民に訴えたケネディ大統領は暗殺されました。
 アメリカのリーダーにはそのトラウマがあるのではないかというのは勘ぐり過ぎでしょうか。


事業所別の付加価値を測る簡便法の検討

2013年10月06日 07時48分36秒 | 経営
事業所別の付加価値を測る簡便法の検討
 付加価値と付加価値率で1つの大きな問題は、企業レベルでは容易に計算できるが、事業所別(部門別)に付加価値、付加価値率を計算しようとすると通常行き詰まってしまいます。
 そんなわけで、企業内の部門別の生産性、効率性、収益性などの指標としては部門別・事業所別の粗利益が使われます。

 粗利益(売上総利益)、販売業でいえばマージンを時系列で比較していけば、近似的には事業所別の付加価値率の傾向は把握できると思います。
 しかし毎度述べて来ていますように、付加価値というのは、利益と人件費の合計で、それこそが、人間が資本を使って創出した新たな価値を示すものです。

 しかし、販売業のマージンは人件費を差し引いていませんから、近似的な指標として時系列比較をすることは可能と思いますが、製造業の場合には、直接部門の人件費は差し引かれてしまっていますから、その部分の人件費の抜けたものとなり、直接部門の人件費は
原材料費並みの扱いになり、最も重要な工場の人達の貢献に対して支払われた人件費が付加価値から抜けてしまします。

 製造業の場合は、部門別の付加価値率の時系列比較の近似指標としては、そんな訳で、粗利益にその部門の人件費(製造原価に含まれる人件費に相当する分)を加えたものがより適切と思われます(注)。

 人件費を入れて計算をすれば、高度技能者(したがって人件費も高い)工場の付加価値率が高いということは実証できるでしょう、収益性という側面だけから見れば、付加価値率は高いが、人件費も高いから粗利益率はそれほど高くないといった場合でも、人件費を加えた付加価値率が高ければ、それだけ、高度技能者の雇用という意味で、また、技術的に高度な製品を生み出しているという意味で、社会に貢献しているという実態を反映する指標、付加価値率本来の意味を示す指標ということになります。

 一般的に見れば、こうしたより高度な現場というのは、企業内でも新しい分野も仕事、新事業新製品の分野が多いのではないでしょうか。そういう分野が多くなれば、企業としても高付加価値の企業に脱皮できる可能性を持つ職場が多くなるわけで、それは大変望ましい事でしょう。

    
(注):粗利益には、間接部門の「外部購入費用」がすべて含まれていますが、これらは企業全体の分析の際に検討していただくことにして、部門別の場合は、上記の形で 「時系列の比較をする」という意味での便宜的方法です。

平成13年度上半期のテーマ

2013年10月03日 19時15分29秒 | インポート
平成13年度上半期のテーマ

9月 付加価値と付加価値率  付加価値率の把握と活用を  ME化と雇用問題  権力の誘惑?  日本は過去の行為についての反省が足りないのか  改めて日本らしい雇用の在り方を考えよう  途上国が通貨安を恐れるわけ  2020年のオリンピック・パラリンピック東京開催決定おめでとうございます  アメリカの出口作戦は結局上手くいかないのでは?  世界の安定と発展には多様性の尊重が必要では
8月  格差問題、スーパーリッチ、社会不安  TPPが本来目指すべきものは?  TPPで日本がやるべき最も大事なこと  消費税増税:メリットを生かし、マイナスを最小限に  消費税増税:消費税導入で消費が萎縮するか  68年前の今日  消費税増税:財政の「プライマリーバランス」は矢張り重要  消費税増税:日本の国債残高はなぜ多い?  消費税増税論議を少し整理してみましょう  日銀政策決定会合と円高  日本の自信回復に期待する  きめ細かい高付加価値経営を目指して:日本復活の核心  

7月 企業に求めたい国内労働力の活用  消費者物価の反転上昇は自然  変動相場制の帰結  世界経済の混乱とアメリカの責任  政治家と官僚  本質論議を避ける?G20  参議院の存在意義  ポピュリズム支配の困った社会  参院選に向けての経済論争:規制撤廃、規制緩和、規制改革  参院選に向けての経済論争:消費税増税は是か非か  参院選に向けての経済論争:物価だけ上がっていく  軍隊と戦争  

6月  毛を吹いて疵を求めるの愚  2013年 今年のホタルは  政治と経済と平和  出口戦略:アメリカと日本  日本型技術開発の強み  海外進出とコスト問題  日本経済と株価の動き  雇用問題を考える:雇用の日本らしさとは  

5月  前3回の物価論議の補論:景気の現状認識  物価論議は実証分析をベースに その3  物価論議は実証分析をベースに その2  物価論議は実証分析をベースに その1  日本経済再建を確実なものにするために  緊縮か緩和か:判断基準は「生産性  多様共存  強まる円安への反感と日本の対応  アベノミクス、これまでと今後  改めて「あぶく銭」論議、日本人本来の金銭感覚  日本らしさの基本「和の心」の国際関係を  

4月  「日本らしさ」を考えよう  雇用削減・教育訓練費削減の恐ろしさ  見かけは危うく、芯の強い日本経済へ  早めですが、2013年「春闘総括」  むささびたけ(ムササビ茸)  消費者に求められる意識と行動  いよいよ企業(企業労使)の出番  様変わりの日本経済、今後は?  アメリカは経常黒字国になるか(偏見予見)  アメリカ経済とシェールガス  


付加価値率を上げる経営

2013年10月03日 11時39分34秒 | 経営
付加価値率を上げる経営
 $1=100でほぼデフレから脱却した日本経済ですが、輸出より現地生産ということで、企業の海外進出は常態化し、他方で人口減少問題もあり、国内で量的拡大は以前のようにはいかないでしょう。典型は自動車産業です。

 ということで、今後は量的拡大より、質の向上の時代でしょう。これが高付加価値経営を要求するのです。例え、生産量は同じでも、寄り高品質のものを拡充、更に転換してゆけば、売上高はあまり伸びなくても付加価値率が上がり、付加価値は増え、当然GDPも増え、労使への配分は増えます。

 新製品導入の可能性があらゆる場合に重要になるでしょう。
 自動車の場合には、ハイブリッド、電気自動車、燃料電池車、総突防止装置付き、自動運転装置の開発といったアプローチです。

 テレビならば、4K、3D、マホとの接続、双方向機能の拡充・・・。その他白物家電でもいわゆるスマート家電といった活用範囲の広いより便利、より快適、より面白いものなら多少高くても売れる、といった傾向は既にかなりはっきりしているように思います。

 温暖化問題の中で、CO2からプラスチックを作る技術、新たな触媒を使って光合成を人工的に行う技術、などというものも動き始めているようです。人間の知恵には限りがありません。

 これはらすべて人間が資本を使ってやるのです。ですから、ますます重要になるのは、「人材の育成」と技術開発に必要な「資本蓄積」です。そして、労使の理解でこれが順調に進む環境という意味においては、1985年までの日本、そしてこれからの日本は世界のトップに位置していると思います。

 企業の売り上げは、大きく2つの部分に分かれます。1つは、外部から財やサービスを買ってくる部分、売り上げからそれを引いたものが、わが社の労使が創り出した付加価値です。

 ですから、外部購入費用を減らすことも、高付加価値実現の重要な方法です。5S やQC,TQC,TQM,さらにあらゆるカイゼン活動もこれの主役になり得ます。
更には、レアアースが足りなければ、レアアースの使用量10分の1で、同じ磁力を実現するような技術開発も行われています。

 製品(サービス)の質を上げて売り上げを増やし付加価値率を高める方法、外部購入費用を減らして付加価値率を高める方法、この2つが高付加価値経営の基本でしょう。

 以下に Fishbone Chart(特性要因図)で高付加価値化の要因を分析してみたものを掲げます。これはごく一般的なものですから、それぞれの企業や職場で、こうした高付加価値化の方法の検討が要請されるところです。

     

付加価値率検討の基本は時系列分析

2013年10月01日 10時57分46秒 | 経営
付加価値率検討の基本は時系列分析
 前回、「付加価値率=付加価値/売上高」と書きましたが、これは厳密には「売上高付加価値率」で売上高の代わりに総資本を持ってくれば「総資本付加価値率」ということになります。両者の関係は「総資本付加価値率=売上高付加価値率×総資本回転率」ということは簡単にお解りいただけるとおもますが、こうした財務比率の相互関係を常に頭に入れておおいて、企業の実態を見るときに活用することが大切だと思います。

 余計なことを書きましたが、付加価値の定義にいろいろあり。従って付加価値率にもいろいろあるということですから、最も納得のいく統計を1つ選んで、その方式でわが社の実績を時系列分析するのが最も適切だと思います。

 また、財務比率というのは、産業別にかなり変化がありますし、同じ産業でも、その企業の規模や財務状態によって、違いますから、同業平均とは、直接比較するのではなく企業別の条件を顧慮に入れながら、あくまでも参考として比べて見るといった態度が大事でしょう。
 やはり最も役に立つのは、常に同じ付加価値率の定義で、付加価値率を計算し、その年々の変化をしっかり見て、その変化の原因が何かを的確に把握するのが一番いいと思います。

 年々付加価値率を上げていくといったことは容易ではありません。同じことを繰り返していれば、売価は弱含み、コストは上昇、というのが一般的な傾向で、その結果は付加価値率の低下傾向という形で現れます。
 付加価値率の動向が、企業の元気さ、バイタリティーの強さ、エネルギーレベルの高さを表す、などと言われるのはそのためです。

 例えば、この十数年で見ますと、製造業、特に輸出関連部門の付加価値率は異常に低下しているのが目立ちますが、これは明らかに円高の影響です。円高で日本の輸出産業の売値とコストはともに大幅上昇したのですが、国内コストはなかなか下がらず、ドル建ての売値の方は、国際競争力の中で下げざるを得ないという状況が続いたためです。

 同じような現象は、輸入品と競合する国内産業でも起こりましたが、どちらかというと、輸出産業の方が当然影響は大きかったわけで、こうした数字(財務比率)の変化は経済経営の実態を常に反映するわけです。
 数字と実体を常に関連させて見ることによって、数字の向こうに、現実の経営の実態が透けて見えるようになれば、財務分析も本物でしょう。

 そんな意味で、現実の経営上のどんな変化が、付加価値率にどんな影響を与えるかを、いろいろなケースについて見てみましょう。