円高を止める新機軸の経済政策-2
これまで見てきましたように、固定相場制の下での経済社会と変動相場制の下での経済社会では、採るべき経済行動の原理が全く違います。
固定相場制のもとでは健全で優れた経済活動であるものが、変動相場制のもとでは自らの経済基盤を崩すものになったりします。
その典型が「貯蓄に関する行動原理」です。固定相場制のもとでは、貯蓄は美徳であり、将来の生活を保障するものです。しかし変動相場制のもとでは他人(他国)に貸すほどお金があると、その国の通貨価値は高くなり(日本の場合円高)、これは一見、その国の経済的評価が上がったように見えますが、実はその国のコストを引き上げ、競争力を弱める働きをします。
そこで、競争力がなくなり、収入が減って貯蓄が出来なくなり、黒字がなくなると、その国の通貨価値は上がらなくなるか下がることになり、バランスが回復することになります。
これが変動相場制の理屈ですが、日本の場合はどうもそうなりません。何故でしょうか。
1つには、日本人は、円高になれば、円高によるコスト高を何とかコストダウンや新技術の開発で克服して、それでもやれるように、死に物狂いで努力する頑張り屋だからです。これは確かに素晴らしい事で、日本の技術力や経営力を高めます。
しかし今のように$1=¥82では、そうした努力も限界に近く、企業はコストの安い海外に展開し、日本の技術力や経営力は海外諸国に移転し、海外諸国の発展に貢献します。その結果、日本国内は空洞化し、雇用機会は減少、GDPも増えません。こうして企業は海外で利益を出しますが、日本経済はゼロ・マイナス成長 になります。
最近の状況はまさにそうなっています。日本は年々貧しくなりつつありますが、ここでもう1つの日本人の特性が出てきます。それは、日本人に染み付いている勤倹貯蓄の精神です。上に述べた「収入が減って貯蓄が出来なくなり」とはなりません。収入が減って苦しくても、その中で将来のために 貯蓄をしようと努める真面目さです。
実はこれが大変大きな問題で、この貯蓄超過は経済学の定義の通り「対外経常黒字」になります。ですから外国から見れば、日本は相変わらず黒字国だから、まだ国際競争力が強いのだろう、「円高には耐えられているのだ」ということになります。
この現象は、失われた10年の後半、またリーマンショック後の日本経済にはっきり見られます。GDPは縮小(マイナス成長)しながら、経常黒字だけは確り出しているのです。
政府経済見通しでも今年度16兆円、来年度17兆円の経常黒字の予想です。外国や国際投機資本から見れば、「日本経済はまだまだ健全だ、何かあれば差し当たって円を買っておけば大丈夫」と更なる円高を招き寄せることになります。
これまで見てきましたように、固定相場制の下での経済社会と変動相場制の下での経済社会では、採るべき経済行動の原理が全く違います。
固定相場制のもとでは健全で優れた経済活動であるものが、変動相場制のもとでは自らの経済基盤を崩すものになったりします。
その典型が「貯蓄に関する行動原理」です。固定相場制のもとでは、貯蓄は美徳であり、将来の生活を保障するものです。しかし変動相場制のもとでは他人(他国)に貸すほどお金があると、その国の通貨価値は高くなり(日本の場合円高)、これは一見、その国の経済的評価が上がったように見えますが、実はその国のコストを引き上げ、競争力を弱める働きをします。
そこで、競争力がなくなり、収入が減って貯蓄が出来なくなり、黒字がなくなると、その国の通貨価値は上がらなくなるか下がることになり、バランスが回復することになります。
これが変動相場制の理屈ですが、日本の場合はどうもそうなりません。何故でしょうか。
1つには、日本人は、円高になれば、円高によるコスト高を何とかコストダウンや新技術の開発で克服して、それでもやれるように、死に物狂いで努力する頑張り屋だからです。これは確かに素晴らしい事で、日本の技術力や経営力を高めます。
しかし今のように$1=¥82では、そうした努力も限界に近く、企業はコストの安い海外に展開し、日本の技術力や経営力は海外諸国に移転し、海外諸国の発展に貢献します。その結果、日本国内は空洞化し、雇用機会は減少、GDPも増えません。こうして企業は海外で利益を出しますが、日本経済はゼロ・マイナス成長 になります。
最近の状況はまさにそうなっています。日本は年々貧しくなりつつありますが、ここでもう1つの日本人の特性が出てきます。それは、日本人に染み付いている勤倹貯蓄の精神です。上に述べた「収入が減って貯蓄が出来なくなり」とはなりません。収入が減って苦しくても、その中で将来のために 貯蓄をしようと努める真面目さです。
実はこれが大変大きな問題で、この貯蓄超過は経済学の定義の通り「対外経常黒字」になります。ですから外国から見れば、日本は相変わらず黒字国だから、まだ国際競争力が強いのだろう、「円高には耐えられているのだ」ということになります。
この現象は、失われた10年の後半、またリーマンショック後の日本経済にはっきり見られます。GDPは縮小(マイナス成長)しながら、経常黒字だけは確り出しているのです。
政府経済見通しでも今年度16兆円、来年度17兆円の経常黒字の予想です。外国や国際投機資本から見れば、「日本経済はまだまだ健全だ、何かあれば差し当たって円を買っておけば大丈夫」と更なる円高を招き寄せることになります。