明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(156)地震で圧力抑制プールの機能が奪われたのでは?(原子力資料情報室の会見から)

2011年06月16日 23時30分00秒 | 明日に向けて6月1~30日
守田です。(20110616 23:30)

6月10日に行われた原子力資料情報室の会見で、沼津工業高等専門学校
特任教授の渡辺敦雄さんが、講演をされました。この方は、後藤政志さんの
東芝時代の先輩で、原子炉格納容器の設計士だった方です。

この日、行われた会見では、主に圧力抑制プールの問題が語られました。
圧力抑制プールとは、福島第一原発で使われているマーク1型原子炉の、
フラスコ型になっている格納容器をドーナツの用に取り囲んでいる装置で、
原子炉格納容器の圧力が上がった時に、それを「抑制」することを主な
役目としているものです。

これは原子炉内で深刻な事故が起こり、圧力容器の中で高圧の水蒸気が
発生すると、蒸気は弁が開放されて、格納容器の中に入ってくるのですが、
そのままでは、今度は格納容器の圧力があがってしまうために、この圧力を
減らすために設けられたものです。

どうするのかというと、蒸気を配管などによって、この圧力抑制室まで直接導き、
プール=水の中に直接に噴出させます。そうすると蒸気が水の中で、急激に
冷やされて気体から液体に戻り、体積が一気に縮小することにより、圧力が
減るわけです。それが圧力抑制プールの基本的な原理です。

この内容は図を見ながらでないと分かりにくいと思いますので、同じマーク1型
原子炉を使っている浜岡原発での説明のPDFを参照してください。
http://www.chuden.co.jp/torikumi/atom/hamaoka/detail/160/data/unten170420.pdf

さて問題はここがどのようなことが起こったことが考えられるかです。
圧力抑制プールへの蒸気の導入は「ダウンカマ」と言われる配管が、水の中に
直接に蒸気を吹くことで行われるのですが、このダウンカマが、何かの要因で
水面から上に出てしまっていると、蒸気は水の中に吹き込まれず、圧力抑制室の
空気の中に噴き出してしまうことになる。

ではそうしたことは起こりうるのかと言うと、一番、考えられるのは地震で、プール
の中の水が大きく揺れて、水面が一時的に下がってしまうときに起こりえる。
この現象はスロッシングと呼ばれます。揺れが水に伝わり、「揺動」が起こり、
水がチャポン、チャポンと左右に跳ね上がる。ことのき水面も上下するわけです。

このとき圧力抑制のために、原子炉圧力容器から格納容器へと放出された
蒸気がダウンカマを通じて、圧力抑制プールへと導入されようとする。しかし
スロッシングによって、蒸気はプールの水の中に導入されず、圧力抑制室の
空気中に吹いてしまう。

そうなると当然、圧力抑制室の気圧が上がってしまいます。このために圧力抑制
に失敗してしまい、それがさまざまな事故につながっていったのではないか
というのが、渡辺さんが行っている推論ですが、この際、重要なのは、こうした
圧力抑制の失敗が、地震によって起こった可能性が高いと考えられることです。

すでに後藤政志さんが、前回の原子力資料情報室での会見で、東電や保安院が、
事故解析の中で、原因を津波に限定しようとしていることを批判し、津波の
前の地震で、冷却材喪失事故などが起こっていた可能性があることを指摘
していることを紹介しましたが、今回の渡辺さんの会見でも、やはり津波ではなく
地震によって事故が深刻化した可能性が示唆されたと言えます。

なお渡辺さん自身、「余談」と述べられていますが、渡辺さんが原子炉格納容器を
設計したときに、「ベント」はつけられてなかったそうです。今回の事故までその
存在を知らなかったとか。

これは後藤さんが常々、「放射能を閉じ込めるのが任務の格納容器に、本来、
ベントなどというものがあってはならず、これは設計思想の破産を物語るものだ。
そのため設計士はこれを、格納容器の自殺と呼んでいる。これを開いたという
こと自身がとんでもないことだ」と怒りを込めて語られてきたことと強くマッチング
するものです。

最近の報道で、ベントをするのが遅れたから事故が深刻化したという指摘が
安易になされていますが、ベントがもともとある安全装置であるかのように
語られるこうした指摘は、そもそも絶対に放射能漏れが起きないことを前提に
認められてきた原子力発電の存立そのものを問うのがベントであることを
見過ごしたものでしかありません。この点を付記しておきたいと思います。


いずれにせよ、事故原因の解析、とくに地震と事故の連関性の問題について
継続的なウォッチと考察を重ねていきたいと思います。


以下、渡辺さんの会見をノートテークしたので紹介します。ただ内容がかなり
専門的ですので、語られているタームなどをあるいは間違って紹介してしまって
いるかもしれません。いずれにせよ、転載などされるときは、あくまでも
守田による聞き取りであることを明記されてください。

************************

マーク1型格納容器問題について

沼津工業高等専門学校特任教授
渡辺敦雄さん
http://www.ustream.tv/recorded/15284821

渡辺です。
私は1971年に東芝に入社し、格納容器を設計した。福島第一号機は
入社したときにはできていたが福島3号機、5号機、女川1号機、浜岡
1,2,3号機というマーク1型に関わる格納容器の設計に関わった。
後藤さんからその辺の話をしてほしいとのことで今日はうかがった。

原子炉格納容器は通常は機能は発揮していない。唯一発揮しているのは、
中に中性子を外に出さないものが入っていて、それが機能しているぐらいで、
事故時にならないと問題にならない装置だ。

原発では、「最大想定事故」というものを考える。配管破断による冷却材喪失
事故も考える。そのときに中に入っている放射能を、フラスコ型の容器に
閉じ込めてしまうというのが特徴だ。5重の壁のうちの4番目で、これが絶対
に破れてはいけないということになっている。

余談だが、1980年代の後半にこの格納容器にベントをつけたという話を
私は今回の事故までまったく知らなかった。
事故でベントを空けて放射能を出したという話を聞いて正直なところ、
愕然とした。え、そんな装置があったのと思った。

私が設計したときには、そのような装置はまったくなかった。現在では
シビアアクシデントの場合、格納容器が爆発することをふせぐために、ベントを
開放することになっていると認識している。私はそれがいいことだったかどうか
分からない。あまりよくないことだと思うのだが。


今日の話は圧力抑制プールについてだ。どうしてここにこのような名前が
ついているかというと、格納容器の中に(圧力容器から)蒸気が漏れてくると、
猛烈な勢い、音波を越えた勢いで出てくる。

格納容器の中には窒素が入っているが、これが蒸気によって急激に圧縮される。
これがベント管を通じて圧力抑制プールに入ってくる。正確に言うと、ベント管を
通じて、ぐるっとまわっているヘッダーというのを通じて、そのヘッダーにミノムシ
の足のようについているダウンカマーというものから蒸気は水の中に入って
圧縮される。

もっとも理想どおりにいくと、まず窒素が水の中に噴き出して、続いて蒸気が
水の中に噴き出して、圧力が正常状態に戻る。圧力容器からいったん漏れたもの
は正常状態には戻らないが、圧力そのものは下げることができる。このためここが
圧力抑制プールと呼ばれている。


今回、私が話そうとしているのは、この圧力抑制装置がもし何らかの要因で
損傷したり、(ダウンカマが)プールの水面の上に出てしまったりしたらどうなるか
ということだ。

これはありうることだ。現在の格納容器の設計では、そうしたことは起こらないと
いうことになっているが、今回、私がびっくりしたのは、格納容器の圧力が、0.8メガ
パスカルになったということだ。圧力抑制プールで、蒸気などの凝縮をして
いればそうしたことは起こらない。凝縮がなされなかったことと考えるのが
格納容器設計者の常識だ。

凝縮しなかったとなると、ダウンカマが故障するなど何らかの要因で、圧力抑制
プールの中に出てくるはずの蒸気が、水面の上から、抑制ブールを覆っている
圧力抑制室の中に漏れ出してしまったことが考えられる。

この空間に漏れると、圧力抑制室の圧力が高くなり、ここに入ってきているベント
管の側の圧力が低くなるので、ここにザックス=押し付け力が生じるので、
それを避けるために真空破壊弁という圧力を均等にする装置がある。
どうやらこの装置も働いたようで、格納容器の圧力が0.8メガパスカルで、圧力
抑制室の圧力も均衡して0・8メガパスカルになったと私は推定している。

それではここでそのような異常な事態がどうして起こったのか。
もともと今の設計基準では、確率論的に設計されている。どういうことかと言うと、
蒸気破断が起こるということについては、原子炉設計者は必ず考えている。
これは10の-3乗ぐらいの確率でおきるだろう。これが地震でおきる、別の故障
で破断する、そういうことを全部内包して、1000年に1回ぐらいは起きるだろうと
考えられている。

そのときに、緊急炉心冷却系といって、蒸気を凝縮するだけではなくて、炉心の
中で、炉心溶融が起きないように水を送り込んでくる装置だ。これが完全に
動かなくなることも考えている。これも10の-3乗と考えている。

この両方がいっぺんに起きることも考えいるがその場合は、10の-3乗×
10の-3乗で、10の-6乗になる。
ただしおきてももう一つの系統が働くと考えられていて、炉心は緊急には冷却
されると考えられている。

それも壊れるとなると、さらに10の-3乗をかけるので、10の-9乗になる。
そういうことは設計条件として考えないというのが設計基準になっている。
そうだったら、正常にとまったはずなのに、どうして今回のような事故になったのか。

この10の-3乗で考えられる系統が、それぞれ独立していて、例えば東京と大阪に
あれば、こんなことにはならない。ところがほぼ同じ建屋の中にあったため、共通
故障モードと言って、同時に故障してしまった。

これを単一故障モードで考えるか、共通故障モードで考えるか、とても難しいこと
なのだが、考えないとしてしまった。だから今回のことは考えなかったことが
起こっといえると思う。

もう一つ、問題は、圧力抑制プールの中に蒸気が入ってきたときに、必ず蒸気が
圧縮されるということが前提になっている。まず猛烈に圧縮窒素が入ってくる。
続いて蒸気が入ってくる。これは圧縮されたものが開放されるので、猛烈に
大きくなって気泡が生じることがある。

プールスエリングといって、盛り上がって、この状態でもダウンカマがむき出しに
なることもある。かりにこれでも大丈夫だったとして、蒸気が圧縮されて安定
するのが理想的な状態だが、ちょっと考えてみて欲しい。この段階になったときに
余震があったらどうなるか。

このときスロッシング、地震揺動ということが起こる。水がパチャパチャ跳ねる。
このとき、液面がさがって、ダウンカマが水面から露出し、蒸気がそこに噴き出す
ことがあり得る。

私は今回、多分、その現象が起こったのではないかと予測している。
それならばこうした状態に備えておくべきだとなると思うが、ここで重要なのが先程
の確率論だ。もともと蒸気が噴出して、緊急炉心冷却系が喪失するということで、
確率では10の-6乗を使い果たしている。

したがってそれ以上に、もういっぱつ地震がくるとすると、これが10の-3乗ぐらいの
確率だとすると、それをかけると10の-9乗になるということで、結局考えないと
いうことになる。

今回のように余震が何度もくる、とくに大きな余震がくるということは考えに入って
いない。そういうものがくるということを設計条件に入れてないので、今回、ダウン
カマが露出してしまったということが大いにあると私は推測している。

そして圧力抑制室の圧力が非常に高まり、中でドライウェルの中で圧力が弱
まっても、真空破壊弁が働いてベント管の中と、圧力抑制室の圧力を一緒に
しようとするので、この繰り返しで、ここが高圧になったのではないかと見ている。

もちろんこんなものは短時間でおこる。スロッシングが余震の時に起こって、凄い
勢いで蒸気が出ているからそれで圧力室がすぐにいっぱいになった。
その点で、今回の事故は地震が要因の一つになっていると考えざるをえないと思う。

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明日に向けて(155)福島の子どもたちが鼻血を出している・・・

2011年06月16日 22時00分00秒 | 明日に向けて6月1~30日
守田です。 (20110616 22:00)

福島の子どもたちが、鼻血を出している・・・。

そんな情報がツイッターなどでまわってきたのはもうだいぶん前のことです。
何度かこれへの意見を聞かれました。内部被ばくの影響を感じましたが、
僕自身は自分で直接にその情報に 接したことがなくて、どれがぐらいの規模で
起こっているか分からず、あまりうまくお答えできませんでした。

しかしその後、何度もこうしたお話に接するようになりました。
ある福島から避難されてきた方は、友人が今も福島市内の小学校で教員として
働いているそうですが、鼻血を出す子どもたちが多く、胸が痛いという話を聞いた
といいます。

それだけではなくて、東京から京都に逃げてきた女性2人から、自分自身が鼻血を
出したという話をお聞きしました。相変わらず「規模」は分かりませんが、どうも
大人も含めてかなり広範囲に鼻血を出す現象が起こっていると思われます。

この件について、 報道での情報などを探していたところ、「京都から東日本大地震
被災者を支援する会」の滝澤さんが、東京新聞に載った情報を、転送してきて
くださいました。

「記事内容は、有料でロックされていますので、文字起こししたものを下に掲示
します。東京新聞さん御免なさい」との但し書きをつきです。
非常に重要な情報ですので、みなさんとシェアしたいと思い、ここでも紹介する
ことにします。

内部被ばくと鼻血の関係について、継続的な考察を進めます。

**************************

子の体調異変じわり
原発50キロ 福島・郡山は今
http://www.asyura.us/bigdata/up1/source/4837.jpg

東京新聞6.16特報
 「上の子が一週間くらい毎日大量に鼻血が出続けていたので、心配で…。下の
子も時期は違うけれど、やはり1週間くらい鼻血が出て」。思いつめた表情で
母親(39)が、医師に相談していた。

 NPO法人「チェルノブイリへのかけはし」が12日、福島県郡山市で開いた医師に
よる無料問診会。放射線被害を心配する親子連れ計50組が参加した。同市は
福島原発から約50キロ。

 この親子の場合、震災後いったん埼玉県内に避難したが、3月下旬に郡山市に
戻った。すると小学校1年の長女(六つ)が、4月上旬から3週間、鼻血が出続けた。
このうち1週間は両方の鼻から大量に出血。耳鼻科で診察を受けたが、「花粉症
では」と言われた。「花粉症なんて初めて言われたし、普段は滅多に鼻血を出さ
ないんですけど…」と母親は言う。長男(二つ)も4月下旬から5月に鼻血を出し
続けた。

 診察した小児科医の橋本百合香さんは、「放射線被害かどうかは判断できないが、
ひとまず小児科で血液検査をして白血球を詳しくみてもらって。記録を残すことが
大事」と助言した。

 母親によると、小学校ではクラスの1割が避難していなくなった。次々と児童が
転校するので、新入生に出席番号がつけられていない。放射性物質が濃縮され
やすい牛乳を給食で出すかどうか、学校ごとに対応が異なる。「うちは保護者の
選択制。娘が仲間外れにされたくないというので、今は飲ませています」

 福島市から4カ月の長女咲空(さくら)ちゃんを連れてきた平中昭一さん(40)は
「症状は出ていないが、24時間不安で、外出を一切させていない。自衛といって
もどうしたらいいのか」と苦悩の表情。生後、他人をほとんど見たことがないという
咲空ちゃんは、記者が近づくとおびえた。

 問診会場近くの植え込みで、放射線測定器をかざすと、毎時2.33マイクロ
シーベルトの値を示した。地面から離すと1マイクロシーベルトに下がる。郡山市内
の12日の最大値は1.38マイクロシーベルト。東京都内で計測された同日の最大値
が0.0635マイクロシーベルト。約22倍だ。市内の最大値は3月15日の8.26
マイクロシーベルトで、5月中旬からは1.3マイクロシーベルト前後で推移している。

 文部科学省では3.8マイクロシーベルトが計測された学校では屋外活動を制限する
としているが、一方で年間の積算線量の子どもの上限値を1ミリシーベルトから
20ミリシーベルトとしている。これは毎時1.3マイクロシーベルトの場所で1年間
暮らせば十分に到達してしまう値でもある。

 「医者や学者も言うことが違い、避難の基準が分からない。飯舘村は1カ月も
放射能を浴びさせて、値が低くなってから避難させた。国も県も信用できない」。
長男(六つ)を連れた母親(40)は、こう憤る。自宅は新築。避難しても経済的に
やっていけるのか、何年後に戻れるのか…。費用や子どもの心に与える影響を
考えると踏み切れない。

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明日に向けて(154)福島で「放射能除染・回復プロジェクト」が始動中!

2011年06月16日 00時00分00秒 | 明日に向けて6月1~30日
守田です。(20110616 00:00)

福島市で「放射能除染・回復プロジェクト」が行われています。
福島大学准教授の中里見博さん、京都精華大学教授の山田国廣さん、
細川弘明さんらをはじめ、多くの方たちが関わっているようです。

非常に重要な活動です。ぜひ全国から支援を寄せていただきたいと思います。
とくに目を引くのは、子どもの通学路付近のホットスポットの放射能を除去する
ために草刈りなどの実効性のあることを行っていることや、山田さんの発案で、
洗濯のりをつけたシートで放射性物質を除去する方法などを採っていることです。

放射能で汚染されたものを高圧放水などで洗浄しても、放射性物質は水で流されて
別の場所に行くだけ。かえって汚染を拡大してしまうことにもなります。そこで、のりを
つけたシートに吸着させ、除去しようというのです。

同プロジェクトは、こうした手軽だけれども効果の高い方法を開発・実行中で、これを
はじめ、活動に対する意見も求めています。

僕自身は、こうした実効性ある放射能除染方法を考案し、実践することは
素晴らしいことだと思います。

後に紹介する細川さんからのメールには、「「除染活動をすること」は必ずしも
「避難しなくてもなんとかなる」という考え方を前提にしたものではありません」と
あります。僕も、やはり除染しなければならない放射線物質がある場所、そうした
物質が多い地域からは、出来るかぎり避難を進めた方が良いと思います。

しかしさまざまな事情から離れられない現実があるのならば、徹底して除染を
進め、少しでも放射線被ばくを少なくすることが大切です。
その場合にできること、とくにローテクでできるアイデアを重ねて実効していく
ことはとても重要だと思います。

またすでにこの「明日に向けて」の中で配信したように、現在、全国16の都道府県
の汚泥処理施設から、高濃度の放射能が検出されており、その周辺地域の
放射能汚染が強まってしまっています。このことにより、除染が必要な地域もまた
急速に拡大しつつあります。

ここで紹介してきた、気仙沼のアビスさん宅、正確には岩手県一関ですが、福島
原発から170キロ離れていても、毎時0.4マイクロシーベルトという高い値の
放射線が計測されています。この例からも、今後、ますますあちこちから汚染が
見つかる可能性があります。

そのために、私たちが自ら実践できる汚染の除去方法、可能性もまた広げて
いく必要があると思います。その意味で、同プロジェクトの実践に注目し、応援
していきたいと思います。


プロジェクトの一員である京都精華大学の細川弘明さんより、緊急で内容を
紹介するメールが届きましたのでここに転載します。

メールの中で、この活動を伝える「ニュースJAPAN」の6月13日の報道内容が、
FNNのサイトで、本日木曜日まで見れると報告されていますが、ネット上にも
アップされたので、以下のアドレスからも見ることができます。
http://www.youtube.com/watch?v=M_z_P8jrZ-w
みなさん。是非、ご覧下さい。

また同番組の内容が、文字起こしされていますでの、これも細川さんからの
メールの下に貼り付けておきます。

僕もこのプロジェクトに何らかのお手伝いをしたいと思っています。
みんなで放射能汚染に立ち向かっていきましょう!

***************************

こんにちは、京都)細川弘明です。
Bccで失礼します。
一部内容既報、ツイッター既報
また、複数のMLにも配信しますので、重複してご覧になる方、ごめんなさい。


----------------------------------------------
6月13日(月曜)放映の「ニュースJAPAN」(FNN全国ネット、首都圏ではフジテレビ、
近畿では関西テレビ、ほか)で、小生も参加しておこなわれた福島市での「放射能
除染・回復プロジェクト」の作業のようすが紹介されました。

FNNのサイトで(3日間限定、木曜まで)録画を御覧いただけます。
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00201382.html

前回(5月26日と27日)の放送の録画は、下記で御覧いただけます。
http://bit.Ly/josen526
http://bit.Ly/josen527

ぜひ御覧いただき、お気づきの点やご感想などお知らせください。
現地の皆さん(とりわけ、小さいお子さんをお持ちの若いお母さん・お父さんたち)
へのメッセージもありましたら、ぜひどうぞ!

プロジェクトでは、5月と6月の実験をふまえ、市民のための放射能除染マニュアル
DVD(+資料)を作成し、多くの方に呼びかけていく予定です。類似の活動・実践を
すすめている他の市民グループとの連携もとっていきます。

もちろん、一方で、避難・学童疎開の必要性・緊急性についても、認識をひろめて
いきたいと考えています。「除染活動をすること」は必ずしも「避難しなくてもなんとか
なる」という考え方を前提にしたものではありません。

現在のところ、「放射能除染・回復プロジェクト」は全くの手弁当でおこなっている
プロジェクトです(とりわけ山田國廣先生個人の金銭的負担が多大! 福島市民
の皆さんの時間と労力の貢献も多大!!)。今後、なんらかの助成金なり補助金を
得ていく必要がありますが、仮に得られなくても、継続していく所存です。カンパは
もちろん大歓迎ですが、受け入れ口座などまだ整っていませんので、また
あらためて呼びかけをさせて下さい。

所要経費としては、交通費、宿泊費、放射線測定器の購入費、除染用資材(PVA液、
不織布、防護服、はしご、脚立、土嚢袋、ビニール袋類などなど)の購入費、土壌
サンプルの郵送費、撮影費用、通信費などなど。

放射線測定データや土壌汚染濃度のデータについては、個人宅・私有地での計測
ということもあり、不特定多数への情報公開はいたしませんが、お問い合わせ
いただければ、プライバシーに配慮する措置をとったうえで、適宜、提供いたします。

皆さまの応援・ご支援をよろしくお願いします。ご助言、アイデアもぜひ!


細川 弘明 拝 <(_ _)>
http://twilog.org/ngalyak

<<被災地救援 ↓ 活動展開中☆応援よろしく>>
http://bit.ly/999parcic
(PARCの緊急物資調達の取り組みは4/23をもって終了しました。
 姉妹組織 PARCIC の現地支援は、中長期モードに組み直して、継続中。)

***********

ニュースJAPAN 文字起こし

福島市では、福島第1原子力発電所の事故による高い放射線量が、子どもの健康に
及ぼす影響に懸念が強まっています。
住民自身の手によって、子どもの生活圏から放射性物質を取り除く「除染」を行う
試みが始動しました。

福島第1原発からおよそ60kmの福島市には、高い放射線量のホットスポットが
存在する。
明らかにしたのは、研究者と地元市民による放射能除染・回復プロジェクトの
メンバーだった。

3週間前の調査では、平常時の560倍にあたる放射線量、28マイクロシーベルトを
記録した通学路で、新たな現象が起きていた。
95.58、99.50、100.93などと、測定器が示す数値に緊張感が高まる中、152.76マイクロ
シーベルトの表示も出た。

名古屋大学環境学研究科の高野雅夫准教授は、「相当高いですよね、これね。
なんて言いますか、あまり居たくないですね、ここに。そんなレベルです」と語った。

避難区域外の通学路に存在する平常時の3,000倍を超える放射線量。
原発から飛散した放射性物質が、雨などで流されて集まり、局部的に濃縮された
可能性があるという。

京都精華大学人文科学部の細川弘明教授は、「ほっといて改善するっていうことは、
まったく期待できないので、少なくとも子どもが普通に暮らす環境で、この状態を
放置するということは考えられない」と語った。

通学路のホットスポットについて、5月26日、文科省の坪井 裕審議官は、「町全体
とか通学路全体が高いということではないと思いますので、たぶん局所的だと
思いますが、それはちょっと実測値を見ながら、またどういった形でそれを除くことが
できるかは、測定のあとで考えていかなければいけない問題かと思います」と話した。
文科省は、通学路の被ばく対策に腰が重い。

こうした中、京都精華大学人文科学部の山田国廣教授らは、住民が自らできる
放射性物質の除染テストを開始した。

京都精華大学人文科学部の山田国廣教授は、「まず草を刈りましょう」と語った。
現在、確認されている放射性物質は、セシウム134と137。
除染作業はすなわち草刈りだが、高規格マスクにゴム手袋、ゴーグルなどを装着して、
内部被ばくを防止する必要がある。

除染前に152.76を示した数値は、除染後は5.69と劇的に下がった。
京都精華大学人文科学部の細川弘明教授は、「草の葉っぱにセシウムが積もっていた
状態だと思われますので、草を取ったのが一番、効いていますね」と語った。

アスファルトに付着した土は、粘着テープで除去し、除染の仕上げはとろりとした
透明の液体だった。
実は100円ショップでも販売されている洗濯のりで、「山田式除染」の最大のポイント
だという。

京都精華大学人文科学部の山田国廣教授は、「(ポイントは)水でも流さないというか、
全部こういうテープではがして、最後、はがし液(PVA洗濯のり)を塗って、乾燥して
からはがします。それで完了です」と語った。

一般に除染で広く採用されているのが、高圧洗浄水で流す方法だが、水で洗い流す
ことで放射能汚染を拡大させていると、山田教授は指摘する。

京都精華大学人文科学部の山田国廣教授は、「固めて取るか、とにかくフィルム、
(洗濯のりで)膜を作って取るかということをしないと、結局、まあ言えば汚染の
押しつけ合いになるというか」と語った。

除染作業は、誰でも入手できる材料や道具で可能という。
次は住宅の除染に、持ち主の男性も参加して取りかかった。

住宅の放射線量が高いポイントは、軒下や雨どいなど、雨水が集中する場所だった。
計測してみると、10マイクロシーベルトを超えて、計測不能となってしまった。
住宅敷地の中にあるホットスポットを8cm掘り下げて、汚染されていない土をかぶせると、
0.451、0.454と、数値が下がった。

しかし、汚染された土を除去しても、放射線量が高い部分があった。
雨水をためておくタンクとパイプ周りで3.122マイクロシーベルト、そして庭の土や
草木、敷石でも放射線量が高い値を示した。

2.425マイクロシーベルトは、思い出の詰まったブルーベリーの木の周辺だった。
これを伐採して、表面およそ5cmの土を入れ替えたところ、0.418マイクロシーベルトに
下がった。

一方、今回の除染テストで課題も見つかった。
放射性物質を固めてはがすはずの洗濯のりが、雨の影響を受けて思うように
固まらなかった。
京都精華大学人文科学部の山田国廣教授は、「ほとんど取れてない。乾燥しないと
だめ」と話した。

さらに問題なのは、除去した放射性物質の行き先だった。
今回、家の裏側を掘り込み、汚染された土などを一時的に保管したが、引受先は
未定となっている。
1年半前、この家を新築した吉川寛之さんは、被ばくを避けて、妻が2人の子どもを
連れ、他県に避難していた。

吉川寛之さんは「学校に行くまでとか、福島市の中でみんなこう、全体的にそういう
(除染する)ふうになっていかないと、子どもたちはやっぱり帰って来られないですね」
と話した。

今回のテストをもとに、山田教授らは、近く地域住民が実施できる除染マニュアルを
作成、提案していくという。
(06/14 00:39)


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