明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(482)悲しみの中から生まれつつあるもの(カライモブックスでの出合い)

2012年06月09日 23時30分00秒 | 明日に向けて(401)~(500)
守田です。(20120609 23:30)

みなさま。一昨日、広島を往復してきました。広島市の平和研究所を訪れ、
横川からバスで某診療所に治療を受けに行き、帰りに尾道に寄って、活発
な活動を続けている市民のみなさんとお話をしてきました。帰りの新幹線
の中でこの文章を書き、京都の我が家に帰って投稿をと思ったのですが、
帰ってから寝入ってしまいました・・・。

今朝は朝から知人たちと重要なスカイプ会議を行い、その後、宇治市に赴
いて、内部被曝も問題をお話してきました。宇治市の平和の会の方たちと
使い捨て時代を考える会の共催でした。いろいろな方が参加してください
ましたが、印象に残ったのは、広島で被爆され、その体験を切々と語られ
てこられた米澤鉄志さんや、使い捨て時代を考える会の槌田劭さんがご
参加くださり、その前でお話ができたことです。

槌田さんは、全原発の停止がカウントダウンに入ったときに、関西電力
京都支店前で、15日間にもおよぶハンストを決行をしてくださいました。
また今日まで、同会を主催して、大量生産大量消費の現代社会のあり方を
告発してこられました。その槌田さんは、終始、相槌を打たれながら僕が
語る内部被曝のメカニズムの問題、「がれき」の問題などを聴いてくだ
さいました。

ちょうど前日に、尾道市でみなさんとお話し、被ばくの地、広島からこそ
内部被曝の脅威を一緒に学んで告発していこうということになり、8月の
17日から19日あたりで、尾道・三原・福山あたりで僕の講演会を開催して
くださることになっただけに、米沢さんや、宇治で核兵器を問題にして
平和活動をされてきた「平和の会」のみなさん、そして、使い捨て時代を
考える会のみなさんの前でお話できることが、何か太い糸でつながって
いるように感じられ、気持ちが高揚しました。何かに導かれて、こうした
縁のつながりの中を歩いているように感じました。


さてそれで、尾道の帰りの新幹線の中で記した内容なのですが、それもまた
最近、僕が出会ったとても不思議な出合い、深い縁についてです。それは
この4日に行ったカライモブックス(京都市上京区)でのお話しの際にめぐ
り合えたものでした。

僕がこの素敵なお店で話するのは2度目。同書店が開催するカライモ学校に
呼んでいただいて、震災遺物(いわゆる「がれき」)問題についてお話した
のですが、このとき、福島市から二人の方が参加してくださいました。
子どもたちを放射能から守る福島ネットワークの吉野弘之さんと、福島の映
画館フォーラム福島支配人の阿部泰宏さんです。嬉しいご参加でした。

吉野さんとは福島市内での講演会の後の交流会でもご一緒しました。福島に
いったときに、市民の方がこういったことを僕は過去に紹介しました。
「放射能に苦しんでいるのは福島県民だけではありません。他の県の方も大
変、苦しんでいます。にもかかわらず市民的支援はどうしても福島に集中し
がちです。ありがたいことなのですが、他の県の方もどうか支援してくださ
いという声を、福島側からあげていかないと」。僕は福島の方は優しいと
書きましたが、この発言をされたのが吉野さんなのでした。

明日に向けて(473)福島市訪問を終えて・・・その1
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/fc1ee4b56bceefd3149277d79cdef224

実は宣伝できなかったのですが、その吉野さんは6月3日に、友人で絵本作家
のふしはらのじこさんの主宰する「堺町画廊」でお話をされたのでした。
その吉野さんが、阿部さんを伴ってあらわれた。お二人とも、お連れ合いと
お子さんが京都に避難しておられるのだそうです。このお二人の参加が嬉し
かったので、講演の後の質疑応答のときに話を振りました。

そうしたら阿部さん、冒頭に「福島から出た放射能のことで、本当にみなさん
に大変な苦しみを与えて申し訳ないです」とおしゃる。「県民のせいとちゃい
ますよ」と思わず参加者の女性が声をかけます。僕も「そんなあ、謝らないで
くださいよ」と声を出しました。

すると吉野さんが、「だって僕ら、佐藤知事に投票しているんですよ。県民が
あの知事を選んだんですよ」と言われる。「そうかあ」と僕。「佐藤知事と
共産党候補の一騎打ちで、共産党はどうもと思っている人は佐藤知事に投票し
てしまった。でも最初は原発に慎重なようなことを言っていた佐藤知事は、
プルサーマルを認めてしまい、原発の擁護に走った。それに投票した僕らの
責任があります」と吉野さん。

ああ、主体的だなと思いました。否定できない高い志だなとも。もちろん福島
県民にそこまでの責任があるのなら、同様に僕らにもある。そうして僕自身も
僕の責任を感じて行動しているので、やはり自分の責任を感じている阿部さん
の言葉にうなづくものがありました。でもだからといって、あれほどの被曝が
許されていいはずなどあるわけがない。家に住めなくなり、家族がバラバラの
生活が強いられて良いはずがない。福島県民が主体的に捉え返すことがあった
にせよ、受けている仕打ちはあまりに理不尽です。
 
その後に続いた阿部さんの発言は、さらに圧巻でした。これについては、さき
ほどご本人の承諾が得られたので、ここで要点を載せずに、文字起こしして
後日、紹介させていただきますが、驚いたのは最後の方で阿部さんが触れた、
カライモブックスとのかかわり、そしてまた僕とのかかわりについてした。

というのは福島の出口のない現実の中で、心が沈むばかりの苦しい日々を送っ
てきた阿部さんは、あるときふと、今の福島は、水俣につながっているのでは
ないかと思われたのだそうです。それで京都で水俣につながる場を求めた。
そうして石牟礼道子さんにこだわり、水俣関連の本をそろえてきたカライモ
ブックスのことを知ることになりました。

水俣のつながりとの中に心のよりどころがあるのではと感じた阿部さんは、
お連れ合いとカライモブックスを訪ねに来られたそうです。しかし不案内な
京都でのこと。道に迷いながら苦労しながらカライモブックスに来られた。
ところがです。その日、カライモブックスは第5回のカライモ学校を行ってい
て、店を閉めていたのです。そうして中で講演を行っていたのが、なんと
僕だったのでした。

そのとき頼まれたのは僕が見た福島や被災地の様子についての講演でした。そ
の前に、「京都ママパパの会」で僕が被災地のことを話したことを聞いた同
書店の奥田直美さんが、その話をカライモでもして欲しいと頼んでくださっ
たのです。その日、カライモブックスはそのことを店のドアに貼り出してい
ました。ガラス越しに内部の様子も見ることができました。それで阿部さん
はそこで福島のことが話し合われていることを知ったのでした。

やっとのことで探し当てた店で、中に入れなくて、何だと思ったのだけれど、
そこで人が集って、福島のことを話し合っている。のぞいてみると、若い学生
さんたちや、赤ちゃんを連れた女性たちがたくさんいて、真剣な討論が行われ
ている。その予期しなかった光景に、阿部さんの胸はいっぱいになったそうで
す。「ああ、こんなところで福島のことを思ってくれる人たちがいる。」そう
して阿部さんは心が癒されるのを感じたといいます。

そんな縁でカライモブックスと結ばれた阿部さん、それから何度も、このお店
を訪れたそうですが、今回、僕が再度、お話しすると聞いて、満を持して来て
下さったのでした。大震災以前から親友だった吉野さんも一緒でした。そうし
て僕と阿部さんはカライモブックスを通じて、そうして水俣を通じて、出会う
ことができたのです。もちろんそれは福島の痛みの上での出会いです。だから
きっかけは深い悲しみによっています。でも僕はこの出会いから何かを生み出
せるに違いないと直感しました。そうしてまたしても誰かが、あるいは何かが、
僕の背中を押して、阿部さんや吉野さんと出会わせたのだなとも・・・。


みなさま。今、私たちの国を深い苦しみと悲しみが襲っています。そこで私たち
は血の涙を流し続けてきました。でも泣いているだけではなくて、事態を何とか
好転させようと、必死の努力を続けてきました。そうしてその途上で、本当に
無数の新たな出会いが生まれました。僕自身を振り返っても、この1年あまりほど、
多くの方と出合い、熱い思いの交換を行った日々はありません。

そしてそこで日々生まれている新たなつながり、あらたな熱こそが、私たちの国
を根本から変えていくエネルギーに転換しつつあるのだと僕は思うのです。まさ
に我がこと、我が身に起こりつつあることとして実感します。そうしてそれは
革命の流れと言ってよいのだと思います。革命とは人と人のつながり方が変わる
ことです。まさに私たちは今、その途上にあるのではないでしょうか。僕には
そんな風に思えるのです。

明日はそんな縁の一つを結びに、京都府京丹波町に行きます。ここに肥田舜太郎
さんをお招きして、講演していただくのです。僕も京都駅までお迎えし、一緒に
会場にいき、司会などさせていただきます。「がれき」問題へのコメントも行い
ます。映画「内部被ばくを生き抜く」の上映もあります。企画の詳細については
以下をご参照ください。
http://kyotanba.org/ev/20120610_hida/

新たなるつながりを求めて、何かに背中を押されるままに、僕は、みなさんと
一緒に、前に進みます。


*****

以下、カライモブックスについて書いた記事を紹介しておきます。

明日に向けて(322)水俣から日本の今を見る! エッセー「私の石牟礼道子」に触れて
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/9d63546d11c359004805e91c04683439
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