明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1257)危険性に満ちた川内原発!・・・再稼働を認めた新規制基準の誤りを解き明かす!

2016年05月04日 14時00分00秒 | 明日に向けて(1201~1300)

守田です。(20160504 14:00)

このところの熊本・九州地震の想定を大きく超えた連続の中で、川内原発の危険性を訴え続けてきましたが、もともと「明日に向けて」では再稼働強行の前から繰り返し川内原発の危険性を説いてきました。
いま川内原発への関心が以前よりも高まっていることを踏まえて再度、これらを論じておきたいと思いますが、最も重要なのは川内原発再稼働にゴーサインを与えた「新規制基準」のあやまりです。
このため「明日に向けて」(1060)~(1065)と(972)で連載した内容(2015年3月24日~4月6日と2014年11月15日)のダイジェストを再度ここに示しておこうと思います。

まずそれぞれの記事のエッセンスを小見出しとして提示し、続けて当該記事のアドレスを明らかにした上で、要約を書いていきたいと思います。
なお2015年3月~4月の連載は、福島原発事故以降、事故の進展や規制庁による新規制基準の提出などに即して、純技術的側面からもっとも適格な解説を行ってきてくださった元格納容器設計者・後藤政志さんの発言に学んで行ったもの。
同年1月に薩摩川内市で行われた講演会の文字起こしをベースとしています。記事の中で該当箇所が話されている時間帯も提示してありますが、お時間のある方はぜひこの講演録画全体をご覧下さい。

危険性に満ちた川内原発

1、あまりに杜撰だった川内原発再稼働対策に向けた許認可申請

 明日に向けて(1060)あまりに杜撰な川内原発工事認可申請(後藤政志さん談)
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/0870cd08844d3d12e17ae6345ae8b79b

第一に指摘すべきは、そもそもの九州電力が行った再稼働対策に向けた許認可申請があまりに杜撰に行われたことです。
後藤さんはこう語られています。「プラントの配置関係を全部伏せて白抜きになっている。どこに何があるか分からない状態になっている。耐震強度を計算する時に耐震の解析モデルがあるが、それの高さ方向の値がすべて白抜きになっている」。
このように川内原発再稼働に向けた許認可申請は、主要部分を公開せずに行われたのでした。あまりに杜撰で、安全性の担保がなんら社会に向けて開示されていません。

2、新規制基準は重大事故=過酷事故を前提としている

 明日に向けて(1062)原発再稼働に向けた新規制基準は大事故を前提にしている!
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/3d3e4b0cb07ae7a68734a3b52c9c693f 

第二も問題は再稼働の是非を審査する規制庁の新規制基準に重大な欠陥があるということです。端的に新しい規制基準では「重大事故」を防げないことがあることを前提にしているということです。
福島第一原発の教訓を踏まえて「重大事故」を絶対に起こさないようにする・・・とは言っておらず、起こさないように努力するが、それでも「重大事故」は発生しうる前提に転換したのです。
チェルノブイリ原発事故の時に、「あのような事故は日本では絶対に起こらない」と公言したことを捨て去り、「重大事故」が起こることを前提に再稼働を認めると開き直っているのです。

3、福島原発事故はまだ途上で教訓を生かすことなどできない

 明日に向けて(1063)福島の教訓に基づく重大事故対策などまだできるわけがない!
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/8718f402298f072498d32eb7f59478f8

第三に規制委は「福島第一原発事故の教訓」を参考に新基準を作ったと言っているのですが、そもそも福島原発事故はその全容がまだ解明されていません。
それどころか1号機から3号機は放射線値が高すぎて内部がほとんどみれず、溶け落ちた核燃料の状態やありかさえつかみ切れていないのです。
事故は継続中で、汚染水の発生から明らかなように格納容器のどこかが壊れているのは確実ですが、どこかが分かってすらいないのです。もちろん事故がどのように進展してどこが壊れたのかも分からないのであり、対策がとれる段階ではありません。
なお本年3月9日になされた大津地裁による高浜原発の稼働を禁止する仮処分決定は、この点を大きなポイントとしており、当然にも川内原発にも該当するものです。

4、現代科学では地震動の大きさを正しく予測できない

 明日に向けて(1064)原子力規制庁・新規制基準の断層と地震動想定のあやまり(後藤政志さん談)
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/a3f0e8c33a857d8a36a56280845eedc1 

第四に、現在の熊本・九州地震につながることですが、規制委が新基準に盛り込んだ地震対策があやまっていることです。ここにはそもそも地震の揺れの大きさが現代科学で十分に解析できないという問題が横たわっています。
例えば柏崎・刈羽原発を襲った2007年中越沖地震の地震動ははるかに設計上の想定を上回っていました。この原発の設計基準地震動は450ガルでしたが、実際には1699ガルの地震動がここを襲ったからです。なんと4倍もの揺れでした。
この時すでに現代科学ではまだ地震動の揺れを正確に捉えることなどできていないことが明らかになったのです。にもかかわらずこの重大問題に目を伏せたまま規制委は認可を与えています。

5、新規制基準の「重大事故」対策はかえって危険。事故を拡大しかねない 

 明日に向けて(1065)新規制基準の「重大事故」対策はあまりに非現実的でむしろ危険だ!
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/d4c8272d4c01e698efd2e68600b4b4af

 明日に向けて(1075)川内原発再稼働も禁止すべきだ!~加圧水型原発過酷事故対策の誤りを後藤政志さんに学ぶ~
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/9605e1dc395c1d33815861dad65ac36a

第五に、新規制基準における「重大事故」対策の内容が、事故を収めるどころかむしろ拡大しかねないより危険な内容をも含んでいることです。
とくに重要なのは、川内原発や高浜原発で採用されている加圧型原子炉の格納容器には、東電の持つ沸騰水型原発と違って窒素が充填されていないため、水素爆発が起きやすいのですが、これへの対処があまりに危険なことです。
どうしているのかというと、イグナイタ―(着火装置)をつけて水素が溜まる前に燃やしてしまおうとしているのですが、重大事故時に非常用の装置が期待通りに動くとは限りません。水素が一定たまってから着火がされれば自爆になってしまいます。

6、火山の噴火も予測できず事前に察知して核燃料を降ろすことなどできない

 明日に向けて(972)原子力規制委の噴火評価はデタラメ!火山学会の誠実な提言を受け入れるべきだ!
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/9f924552b380fc1efc744322658a6fad 

第六に、火山に関する噴火評価が火山学会の誠実な提言を踏みにじって行われたことです。川内原発は日本の中で破局的な噴火を起こしうる10の火山のうちの5つが集中する地帯にあり、どの火山の大噴火でも深刻な被害を受ける可能性があります。
これに対して九電は大噴火の兆候は数年前に分かるので、核燃料を炉心から降ろして安全な場に移すと述べており、原子力規制もこれを承認しています。運転中の核燃料を降ろすには5年近くかかりますが、その5年前に分かると言うのです。
しかし火山学会は繰り返し現代の技術では数日から数時間の範囲でしか噴火が予測ができないと語っています。いわんや数年の規模での予想などまったく不可能というのが学会の常識です。再稼働は火山学会の提言を踏みにじってなされました。

以上、新規制基準はなんら原発の稼働の安全性を保障していません。
1、申請が杜撰、2、「重大事故」に開き直り、3、福島原発の教訓にはまだ学べない、4、地震の揺れは正しく予想できない、5、「重大事故」対策がかえって危険、6、火山噴火は数年前からの予知など絶対にできない
こんな矛盾だらけです。

ぜひこれらのことを学習し広めてください。反知性主義にも抗い、正しい認識を広めていきましょう!

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守田敏也 MORITA Toshiya
[blog] http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011
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[facebook] https://www.facebook.com/toshiya.morita.90

[著書]『原発からの命の守り方』(海象社)
http://www.kaizosha.co.jp/HTML/DEKaizo58.html
[共著]『内部被曝』(岩波ブックレット)
https://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/isearch?isbn=ISBN978-4-00-270832-4

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コメント (2)
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