守田です。(20160503 23:30)
熊本・九州地震が以前、継続しています。4月14日から本日5月3日午後6時までに観測された震度1以上の地震は1176回。
昨年1年間の日本全体の同様の揺れが1842回ですから、なんとその64%の回数が20日間で起こったことになります。
1日平均約5.0回だったものが約58.8回ですから、熊本・九州地震がいかにこれまでの地震のあり方とかけ離れたものなのかがよく分かると思います。
九州におられる方や断層の近くにお住いの方をはじめ、多くのみなさんに警戒の継続を訴えます。
またこのまったくの想定外の事態の繰り返しの中で、川内原発の稼働を続けるのは自殺行為そのもの。安全確保のために川内原発を停めよ!という声を繰り返しあげていきましょう。
さて昨日も触れたことですが、こうした事態が続く中で、ネット上にいろいろな情報が飛び交っています。中には明らかに間違っていながら、人々を惑わせているものもあります。
そのうちの一つが「川内原発は制御棒が入らなくなった。停めないのではなく停められないのだ」というものでした。
これに対して僕は、原発には仮に制御棒が入らなくなっても原子炉を停める他の仕組みがあることを明らかにし、この情報が正しくないことを示しました。詳しくは前号をご覧下さい。
明日に向けて(1255)「川内原発に制御棒が入らず停められない」は誤情報!惑わされないために構造を学ぼう!
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/2ede8e214c819d8af7f15857fefd7050
今回はこのような情報に接した時にどうしたら良いのかを考察していきましょう。
前提としておさえるべきことは、こうした不確定な情報に人々が惑わされやすい最大の要因は、福島原発事故の時に、政府と東京電力がちっとも真実を明らかにしようとせず、人々を根本的な不信の中に突き落としたことにあるということです。
とくに東京電力は少なくとも2011年3月14日には、メルトダウンが進行していることを把握していました。東電は今年になってこのことを認めましたが、これは本当にひどい裏切りです。
しかも多くの方が証言しているようにこの時、東京電力は社員の家族は逃がしました。もしあのとき東電がメルトダウンの事実を明らかにし、社員の家族を逃がしていることを明らかにしたら、たくさんの人が避難し被曝を免れることができたでしょう。
当時の民主党政権も、人々に進行している事態の深刻さを告げませんでした。いざとなったら福島原発から半径170キロは強制移住になるはずでしたが、そのことをまったく明らかにせず、安全論ばかりを振りまいていました。
重大事実が隠されていたことは他にも幾らでもあげられますが、肝心なことはこうした隠蔽がまったく裁かれていないことです。
このため多くの人々が政府や電力会社に対し「何か重大な危機を隠しているのではないか」と何かにつけて思うことはまったく自然です。いやむしろ、ぜひとも疑ってかかって欲しいと言いたいです。それでなければ私たちの命が守れないからです。
しかしだからこそ私たちは、情報の伝搬や拡散をするにあたって、冷静で慎重になる必要があります。
ぜひともしっかりと把握しておきたいのは、インターネット時代の私たちは、誰もが情報の受信者であると同時に発信者でもあるということです。私たち自身が情報を作りもするのです。
このとき大事なのは、情報の受け取り手のことを考えること、可能な限り思いを馳せて言葉を発することです。これは僕自身、常に自分の指針としていることです。
今は未曽有の地震が続いている時です。想定外のことが続いています。にもかかわらず政府が川内原発を停めようとせず、首相をはじめとする閣僚が外遊に旅立ってしまっています。
このあり方自身が多くの人々の不安を強めています。「何か起こっても助けてくれないどころか知らせてもくれない」・・・。多くの人々がそんな懸念と苛立ちを持っています。
だからこそ僕は、いざとなったら自力で「とっとと逃げる」こと、逃げられない場合は家に立て籠もって、耐え忍ぶことをこれまで訴え続けてきました。
しかしこの地震です。立て籠もれるはずの家の多くが瓦解しています。またやっと復旧しだしましたが、多くの道路が寸断されてしまい、大動脈の九州自動車道や新幹線も停まっていました。
「いざというときに逃げろと言われても、とても逃げられない!」そんな状態に置かれている方がたくさんいる状態が続いています。
また僕の知人の女性でも、かつてから原発事故があってもお連れ合いを介護していて逃げられないので家で凌ぐことを考えると語っている方がいます。しかし大地震の被害と重なったら極めて厳しい。現に九州には今まさにそうした状態にある方もおられるはずです。
今回発せられた「川内原発は制御棒が入らず停めたくても停められない状況だ」という情報は、こうした方たちにとって極めて打撃的なのです。恐ろしさばかりがかきたてられる以外にない。
また同時に「停めないのではなく停められない状況」ということは「川内原発を停めろ!」と叫ぶのは意味がないということになってしまいます。それを信じた方から、危険な原発を停めようとするパワーを削ぐことにもなってしまいます。
僕はあまり裏での操作に頭を回さない方ですが(根拠の確認という枠を取っ払ってしまえば何でも言えてしまうからですが)、しかしあえて言えば「原発を停めろ」という声の鎮静化を狙った誰かのリークだとすれば思う壺にもなってしまいます。
この点で情報を受け取って、誰かに流そうとするときに、まずはこうして、受け取り手の様々な状況を考えて欲しいのです。そうすれば情報を拡散することに今よりも重みを感じるようになると思います。
そしてその上でして欲しいのは「本当なのだろうか」と考えて、情報の確からしさを調べてみること、「裏を取る」ことです。
お勧めの方法は、インターネットに求めたい情報に近いキーワードを入力して検索を繰り返すことです。これでだんだんと確からしいことに近づくことができますし、情報を精査する能力そのものがついていきます。。
もう一つ、可能ならばで良いですが、情報の発信元に問いを投げ返す作業をしていただきたいです。情報の根拠を問うのです。
とくに今回の情報には「知人の九州電力の社員から聞いた」との一言が枕に書かれているのですが、何より、ではなぜその当人がこれほど大事な情報を根拠をもって世にだそうとしないのかを問い返していただきたいです。
先に述べたように、原発が停められなくなっているというのは誤まった情報ですが、百歩譲ってそれが真実だとするなら、すぐにも周りの人々が避難しなければならないわけで、それを電力会社内部にいて知っているならば、外に出さないことは大罪です。
それやこれやで、不確かだけれどもインパクトの大きい情報に接した時は、けしてそのまま情報を拡散してしまわずに、自ら調べた上で、問いを発信源へ押し返していただきたい。それ自身が情報の確からしさを知ることにもつながります。
誰もがこのような冷静な作業を行うようにすると、誤まった情報が拡散する可能性をその分だけ小さくすることができます。
こうして私たちの手で、情報交換の場であるネット空間をよりよいものに変えていくことが可能です。
また必ずアフターフォローもすることを心がけて下さい。やりとりした情報は結局、どこにどう落ち着いたのか、最後まできちんとフォローし、より確からしくなったことをきちんと発信してこの件への関わりを終えるのです。
いたちごっごになる面もあるかもしれませんが、こうした粘り強い関わりで、私たちの立っている場をよりよいものに変えていきましょう。
最後に大事なのは、そうはいっても間違ったことを発信してしまったり、誤まった情報を拡散してしまうこともありうるわけでそのときにどうするかです。
答えはシンプルで、誤まった情報を出してしまったことに気付いたらただちに真摯に訂正を行って発信することです。誤まったものを拡散してしまった場合も同じです。
これも僕自身が指針としていることですが、人間、素直に過ちを認めることはなかなか辛いもので、いつも訂正を出すときには恥ずかしい気持ちにまとわりつかれます。だからできるだけ早く発信してしまうことを強くお勧めします!
ネット社会で情報の受け取りと発信を行う多くの人がこうした態度を貫くようにすれば、それだけ人々が誤まった情報に振り回される可能性を低めることができます。
同時にこの点を踏まえて発信元をウォッチしていると、信頼に足るかどうかの判断もわりと容易にできるようになっていきます。間違ったことが明らかになったときに訂正を出さない情報元の発信は信頼性が低いからです。
また自らもそのように見られるのだと考えると、辛い訂正もきちんと行えるようになります。そのことで情報分析・発信能力は必ず上がります。
以上、まだまだ留意すべき点もあるかもしれませんが、政府と電力会社があまりに嘘つきだからこそ、私たちはより誠実になっていきましょう。
それが真実に近づく道であり、世の中を真っ当なものへ変えていく道だと思います。
すべての人の命を守るために、世の中を今よりもずっと良くするために、一生懸命に、情報分析と発信を行っていきましょう!
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守田敏也 MORITA Toshiya
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[著書]『原発からの命の守り方』(海象社)
http://www.kaizosha.co.jp/HTML/DEKaizo58.html
[共著]『内部被曝』(岩波ブックレット)
https://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/isearch?isbn=ISBN978-4-00-270832-4
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