今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

簡単じゃなかった19セイコーの巻

2025年03月20日 18時00分00秒 | ブログ

久しぶりの時計作業は老眼には厳しいです。懐中時計の19セイコーは昭和4年から昭和46年まで生産されて国鉄や私鉄などに採用された鉄道時計で、以後はムーブメントをクォーツに変えて現在でも生産されています。また、戦時中は飛行時計の基礎にもなりましたね。もっとも海軍のお偉いさん達は国産は使わずウォルサムなど舶来時計を愛用されていたようですが・・で、昔に手に入れていた昭和28年国鉄採用の個体をオーバーホールして動かそうと考えました。この頃の針は美しいブルースチール仕上げです。文字盤はずいぶんと劣化していて♬「思えば遠くへ来たもんだぁ」としみじみ感じます。

あぁ、ダメです。天真が折れているのとガンギ車のホゾも折れています。天真は社外なら新品があったと思いますけど、どこへ仕舞い込んだか。

 

昭和33年製のジャンクを見つけて来ました。(左)今回の運転会にはこれで代用しようと思います。19セイコーは細かな改良を受けながら生産されましたが、この時代は基本的に同じ仕様と思います。

カメラ用のドライバーとはサイズが違います。極細なので先端が変形しやすく、研ぎ出してから作業に掛かります。

 

波模様のコート・ド・ジュネーブが施された美しい機械です。超音波洗浄をしました。

 

友人から貰ったデジカメは光物に弱くきれいに撮れません。まずは日の裏側から組んで行きます。

 

裏押さえを取り付けます。

 

 

アンクル受けに注油をします。

 

 

サイズの大きな懐中時計の方が、久しぶりの組み立てが楽だろうと考えましたが・・石数は7石と15石があるとのことですが、この個体は7石です。それもあってか四番車とガンギ車のホゾ穴を合わせるのが一苦労です。

どちらのモデルも秒針規正装置(といっても棒状の板片)が付いていますが昭和33年製には取り去られて部品が有りません。

 

では、昭和28製から移植と思いましたが幅が大きくセットできません。溝の幅を計測すると昭和28製は1.12mm、昭和33年製は0.9mmでした。まぁ、部品を削ってしまえば使えますが、昭和28年製もいずれ直したいので秒針規正は諦めます。

天真の受石に注油をしますが、このサイズのネジの締め付けは久しぶりだと手が震えてきびしいです。

 

何とか動き出しましたね。きれいなコート・ド・ジュネーブ。これからエージングと調整をして行きます。古い懐中時計より70年代の腕時計の方がよっぽど組立は楽です。

 

一晩エージングをさせて「止まり」はありませんでした。ブレゲヒゲの形状を修正するとビュンビュン回るようになりました。すでに摩耗をしている天真で姿勢差が殆ど出ない。感心しました。

文字盤と針を取り付けました。右はホンダS800のダッシュボード取付け用に40年近く前に新品で購入したクォーツ仕様。未だに私の部屋の標準機。

 

洗浄したケースにケーシングしました。「〇廃」が打刻されていますので正式に国鉄から払い下げられた個体と思われます。

 

風防は何度も交換されたようで傷の研磨のみで透明度は復活しましたので交換しません。好ましいビンテージ具合。今度はオリジナルの28年の機械を復活させたいと思います。

 

トミーのリペイント

 

 

 

 

 


意外に難儀ローライC35の巻

2025年03月18日 17時00分00秒 | ブログ

ローライC35#5072XXX(ドイツ製)が来ました。ケース入りでしたので一見良さそうに見えますが、点検するといろいろと問題があります。まず、沈胴がスムーズでない。ヘリコイドグリスが抜けている。シャッター不調。フィルムカウンター不動。トップカバー中央へこみ。ファインダーとレンズカビ多数など。

まず、フィルムカウンター不動ですが、C(B)35の持病とも言えるのですが、アドバンスレバーの不具合が多いと思います。この個体はレバーの動きが固着気味で、分解をしようと見てみると過去にこじって結局外せなかったような傷があります。そもそも横の孔はシンガポールでは無かったと思いますが、観察するとポンチが打たれていて抜けないようにしてあります。なんで??

で、抜きました。この個体は相当長い期間放置をされたようで軸部が完全に粉を吹いています。これではスムーズにカウンターを動かせません。

 

メンテナンスとレバーの形状の修正で正常にカウンターが動くようになりました。

 

C35はコストダウンのために再設計をされていますが、ローライ35では比較的容易に沈胴調整が出来たものが、C35では前板を分離しなければ調整が出来ないなど、返ってメンテナンスに手間が掛かる部分もあります。廉価版だと言って工賃は安くなりません。メカは基本的にはローライ35と同設計ですが共通部品は無いと思います。

問題のシャッターです。こちらはシャッター羽根など関連がローライ35(S)と共通部品が有ります。

 

レンズのカビを清掃してシャッターを組み立てると、どうもシャッター羽根の復帰がスムーズでない。引っ掛かり現象があります。原因を特定するために、別の良品部品と入れ替えて行くと・・シャッター羽根(ブレード)が原因でした。

小判穴の部分に錆が発生していて端面が荒れています。これだけの原因でシャッター羽根の開閉が不調となります。本来は良品と交換ですが、部品は貴重なので簡単には交換しません。小判穴の内周を研磨修正して解決しました。

前板を反対に戻して前玉を取り付けます。

 

 

∞調整後、フィート(ft)でしたのでm表示に変更して距離リングを取り付けます。

 

後は裏蓋の巻き戻しダイヤルの動きが渋いや白化などを改善しますが、大体先が見えて来ましたかね。右は精工舎の19(イチキュウ)セイコーで、昭和28年製の国鉄採用機です。今度の運転会に持って行く車両の準備が出来ていないので、現在は不動ですがO/Hをして鉄道時計でお茶を濁そうという算段です。次に作業をする予定です。

 

 

 

 


シャッター不動のPEN-Fの巻

2025年03月14日 21時00分00秒 | ブログ

足が冷え性の私としては、やっと足元の電気ストーブがいらなくなって来ました。長い冬がやっと終わりますかね。ブログの閲覧ランキングを見ると、意外にも上位は腕時計のページなんですね。最近は目がきつくて腕時計を組んでいませんけど、トレーニングで私の生まれた年代の精工舎の懐中時計でも組んでみましょうかね。で、先日、PEN-FのO/Hをご依頼頂きました方から、もう一台PEN-F #2156XXが来ています。シャッターは不動状態ですが、過去にメンテナンスを受けているようです。

事前に「シボ革が縮んでいるので修正希望」とのことでした。殆どの場合は、過去にシボ革を剥がされて、両面テープで再接着をされている個体に多いのですけど・・やっぱりです。

 

両面テープがはみ出していますよね。貼った時は縮んでいなかった証拠です。本来はグッドイヤーの強力な糊で貼ってあるので、剥離をしなければ縮まないのですが、両面テープの接着力では縮みを止めることは出来ません。ですから、私は必要最小限の部分のみしか剥がさないのです。

シャッター不動の原因を探ると・・チャージが完了していませんね。画像のブレーキが固着気味で右側のブレーキ領域まで動いていないためです。

 

はしょって、シャッターユニットはO/Hを終えました。ブレーキの動きを見ます。やはり固着状態。

 

ブチルゴムと金属は相性が悪いようでOリングが嵌っていた部分が錆びています。錆が膨張してブレーキ固着となります。

 

ダイカスト本体の洗浄をして巻き上げ関係を組み立てます。

 

 

錆が発生しているOリングホルダーを研磨して新しいOリングをセットします。

 

プリズムに黒点腐食はありませんが、角が少し欠けています。

 

 

キズがある接眼枠を軽く磨いてから取り付けます。

 

 

全反射ミラーは再使用も可能ですが、ご希望により新品をセットしました。

 

シボ革の塩化ビニールは古くなると軟化成分が生地から流失して硬化や縮みが発生するようです。乾燥や紫外線が劣化を促進するので保管には注意をします。洗濯業界では、軟化剤が使われているようですが、手に入れることは出来ません。

トミーのリペイント

 

 

 

 

 


ボチボチの作業の巻

2025年03月11日 12時00分00秒 | ブログ

少し更新に間が開きました。寒い早朝から定期健診のため新宿まで出掛けたりで少々疲れまして、カミさんにも少し休みなさいと言われてそうしています。かと言って全く作業をしていないわけではなく、ご常連さんは2台のPEN-Wを所有されていて、程度の良いレンズを入れ替えて欲しいとのこと。PEN-Wでは意外に多いご相談です。レンズの入れ替えはあまりお勧めできませんが、2台はずっと所有されてきれいなレンズでの写りを確かめてみたいとのことで、すぐに原状復帰が出来るように前群のみ入れ替えて組みました。工業製品で同じように見えるユニットですが、∞は変化しますね。

こちらはミノルタALSですが、裏蓋のラッチの掛かりが浅く開いてしまう時があるとのことです。「カギイタ」はPEN-FTなどに比較して板厚も厚いのですが、先端のロック爪の部分に変形があるようです。そもそも、裏蓋のロックピンの収まりも完全ではなく、設計が良くないようにも思えます。これはロック爪部を慎重に矯正します。

次に気になった不具合は、露出計の針の動きが安定せず、針が振れない時もあります。これは対角2か所の接点ブラシがシャッターリング内周の抵抗帯に接していますが、抵抗帯の摩耗により安定した導通が確保できないもの。このモデルだけではなく、同様な構造のカメラは同じような症状を見ることがありますね。

シャッターはSEIKO SLVを搭載してミノルタの作りも良質な高級機ですね。

 

 

コシナ35EですがPASSEDシールが貼ってありますので輸出された個体でしょう。どうも無限がズレているとのことで調整をしますが、画像に見えるレンズの固定ネジはピントリングが無限の位置でなければドライバーが挿入出来ないので面倒な設計。

距離計の連動ピンの動きが変。ピンがダイカスト側の孔径に対して細過ぎで正確な前後運動ではなく、遊んでいるような動きになっている。過去分解機なのでこれでオリジナルなのかは不明。これもピント不良の要因かもしれません。

ターミナルのリード線が外れているので半田付けをしておきます。

 

 

レリーズボタンとフィルムカウンター窓のデザインがPEN-F系のパクリのような感じですね。

 

ご常連のオーナーさんはコンパクト系35の輸出機を収集されている方で、このKONICA Auto S3もPASEEDシール付きの里帰り機。このジャンルのカメラはメーカー違いでも構造が似通っています。しかし、コニカの方が品質が上。の距離計連動ピンは線径が太く、正確に前後運動をしています。

特に不具合が無いのでファインダーの清掃などメンテナンスをします。

 

 

一番苦手なのはモルトの交換。まだ粘度の残ったモルトを除去し接着剤を完全に取り除くには多くの工数が必要です。

 

やっと貼ったところ。

 

 

ピントレバーの形状からは中央に白い線が入っても良さそうな・・

 

 

その他各部の清掃と注油をして完成。

 

 

EXAKTA FE2000 はペトリがIHAGEE WEST社にOEM供給をしたカメラだそうで、中島飛行機の戦闘機の翼の前縁が後退せず一直線になっているのに似たボディー。キヤノンのFT系とも似ています。で、また難儀なご依頼で、前面にある電池蓋が剥げているので焼付塗装で塗り直して欲しいとのこと。

確認をすると、固着で緩まないものをペンチで銜えて無理に回した? ようで、ローレットの部分が損傷と塗装剥離をしています。

 

その他の部分は無傷のためと、電池蓋の位置が体裁面ですので全体を塗り直すとボディーとの釣り合いが崩れることから、ローレット部分のみを塗装することにします。こちらの方が面倒ですが・・

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ペトリカラー35は久しぶりの巻

2025年03月03日 18時00分00秒 | ブログ

久しぶりのペトリカラー35ですけどね。カメラ市に間に合わせたかったのですけど。汚れ放題でしたけど作業前に清掃をしました。PASSEDシールが貼られたままの輸出向けフィート機のブラックモデルです。

シャッター羽根の張付きで不動が多いシャッターですがこの個体もです。海外帰りのためかレンズは曇りもなくきれい。未分解機と思いましたが良く見るとレンズリングのすり割りが傷になっていますので分解されています。

シャッターの洗浄注油をして行きますが、カム板とシャッターダイヤルとの合いマークがひと歯違っていない?

 

スローガバナーを洗浄して戻します。

 

 

トップカバーを開けます。シューレールが腐食気味、巻き戻しレバー下のリングナットも錆びついて回りません。

 

まず、フィルムカウンターのカバーを外しておきませんと無意識に触って曲げてしまうので取り外しておきます。ファインダーの清掃と各ギヤの清掃注油。

 

対物レンズ2枚の間の清掃は困難ですので前側を取り外して清掃します。

 

その他、各部の清掃注油などでトップカバーを閉めます。ゴムのローレットはピントリングかと思いきやASAダイヤルなんですね。

 

和製ローライ35などとも言われますが、それほど共通点は無いと思いますね。サイズは102X65X44 (397g)だそうですけど、ローライ35の幅は約99mm(ストラップ金具含む)とほとんど同じかと思うと実際にはペトリカラー35の方が完全に一回り大きいです。

レンズのくり出しノブは使用によるギヤの摩耗と複数のギヤを連動させる設計なのでバックラッシュが大きいのが気になる。

 

電池はローライ35と同様で裏蓋を外さなくては電池交換が出来ない。

 

売は1968年7月だそうで、それまでのペトリ標準とは一線を画す意欲作と思います。湿度の低い北米辺りにあったためかレンズやミラーなど光学系の状態は大変良い個体でした。

 

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