久しぶりの時計作業は老眼には厳しいです。懐中時計の19セイコーは昭和4年から昭和46年まで生産されて国鉄や私鉄などに採用された鉄道時計で、以後はムーブメントをクォーツに変えて現在でも生産されています。また、戦時中は飛行時計の基礎にもなりましたね。もっとも海軍のお偉いさん達は国産は使わずウォルサムなど舶来時計を愛用されていたようですが・・で、昔に手に入れていた昭和28年国鉄採用の個体をオーバーホールして動かそうと考えました。この頃の針は美しいブルースチール仕上げです。文字盤はずいぶんと劣化していて♬「思えば遠くへ来たもんだぁ」としみじみ感じます。
あぁ、ダメです。天真が折れているのとガンギ車のホゾも折れています。天真は社外なら新品があったと思いますけど、どこへ仕舞い込んだか。
昭和33年製のジャンクを見つけて来ました。(左)今回の運転会にはこれで代用しようと思います。19セイコーは細かな改良を受けながら生産されましたが、この時代は基本的に同じ仕様と思います。
カメラ用のドライバーとはサイズが違います。極細なので先端が変形しやすく、研ぎ出してから作業に掛かります。
波模様のコート・ド・ジュネーブが施された美しい機械です。超音波洗浄をしました。
友人から貰ったデジカメは光物に弱くきれいに撮れません。まずは日の裏側から組んで行きます。
サイズの大きな懐中時計の方が、久しぶりの組み立てが楽だろうと考えましたが・・石数は7石と15石があるとのことですが、この個体は7石です。それもあってか四番車とガンギ車のホゾ穴を合わせるのが一苦労です。
どちらのモデルも秒針規正装置(といっても棒状の板片)が付いていますが昭和33年製には取り去られて部品が有りません。
では、昭和28製から移植と思いましたが幅が大きくセットできません。溝の幅を計測すると昭和28製は1.12mm、昭和33年製は0.9mmでした。まぁ、部品を削ってしまえば使えますが、昭和28年製もいずれ直したいので秒針規正は諦めます。
天真の受石に注油をしますが、このサイズのネジの締め付けは久しぶりだと手が震えてきびしいです。
何とか動き出しましたね。きれいなコート・ド・ジュネーブ。これからエージングと調整をして行きます。古い懐中時計より70年代の腕時計の方がよっぽど組立は楽です。
一晩エージングをさせて「止まり」はありませんでした。ブレゲヒゲの形状を修正するとビュンビュン回るようになりました。すでに摩耗をしている天真で姿勢差が殆ど出ない。感心しました。
文字盤と針を取り付けました。右はホンダS800のダッシュボード取付け用に40年近く前に新品で購入したクォーツ仕様。未だに私の部屋の標準機。
洗浄したケースにケーシングしました。「〇廃」が打刻されていますので正式に国鉄から払い下げられた個体と思われます。
風防は何度も交換されたようで傷の研磨のみで透明度は復活しましたので交換しません。好ましいビンテージ具合。今度はオリジナルの28年の機械を復活させたいと思います。