今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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PEN-S 3.5のプラファインダーは弱いの巻

2015年04月06日 17時15分49秒 | ブログ

その前に。今日、本屋さんで立ち読みをしようかと立ち寄りましたら、あら~、この手のシリーズ物は素通り出来ないのですよね。ミリタリーウォッチコレクションの第1号らしいです。「ドイツ軍航空兵」とのことでオリジナルの復刻というよりはインスパイアードモデルということらしいです。ドーバー海峡を渡ってロンドンを空襲したハインケルHe111爆撃機の搭乗員が腕に嵌めていた時計の雰囲気。「時」より「分」が大きく表示されるのは爆撃用の観測が優先のため。どうせプラメッキのケースだろうと思ったら、ちゃんと金属でした。しかし、選んだつもりでしたが、ベルトのリベットの1つが潰れ気味。

解説本もついて、「これで良く990円で売れるよなぁ」と思いましたが、中身は想像通りの小さなクォーツユニット。「これなら売れるかぁ?」とも思えますけど、付属の電池だって買えば100円するよ。本当は写真の茶のベルトのモデルが欲しいけど、それはシリーズには入らないみたい。あっ、裏蓋を開けると手の圧力では嵌らないのでご注意です。

サイズ的には、このモデルが一番大きいようですけど、懐中時計と同サイズですね。実際には、手袋の上からするので、素肌に着けると細い腕には似合いません。竜頭ももっと大きい方が良いと思いますけど、標準品の流用なのでしょうね。文字盤はプリント印刷なので、平面的で雰囲気は今一です。本物の機械式ユニットでも入れてやろうかしら。第2号は「日本陸軍兵士」らしいけど、日本軍は特に官給品はなく、民生品を私物として使ったと思いますよ。将校用には、石数の多い高級品が使われたよう。私の父は、入営前に父親がこれで最後と高級な時計を買ってくれたようですが、内務班の洗面所に置き忘れて無くしたと言ってました。空中勤務者には航空時計がありましたが・・

PENと比較しても大きいこと。まぁ、990円で楽しめるのはお安いと思いますので、興味のある方は本屋さんへ・・

で、本題です。PEN-S3.5のファインダーは2.8のダイカスト製からプラ製となって、しかもPEN用よりもシャープに作ったために強度がなく、落下や衝突で簡単に割れてしまいます。在庫を探せばあるかと思いますが、今回は、2.8用のダイカスト製を艶消し黒塗装として(要するにPEN-W)強度に強い個体を作ろうと思います。

カメラ事体が重いのと、樹脂が劣化しているので、コツッと当てただけでこのように欠けてしまいます。オリジナルも大切ですが、安心して実用するためには、ダイカスト製とチェンジするのが安心かもしれません。

で、PEN-S2.8用とも思ったのですが、目につくところにPEN-W用がありましたので、これを使って塗装をしてあります。3.5っぽく、ちょっと艶は出気味ということで。。内部のレンズ、光枠や前面ガラスは3.5から移植しますが、前面ガラスは3.5用は本体がプラ製となって肉厚が薄いため横幅寸法が0.5mm程度大きいですから、サイズを小さく修正をして使用します。

どんどん分解をして行きます。スプールナットは黒のプラ製で(取り去っています)スプロケット軸のナットは分解をしようとしてスリ割りを壊していますね。シャッターユニットは未分解ですが、なんで分解したんでしょう?

シャッターユニットの地板。シンクロ接点の形状が変更になっています。

 

シャッターユニット完成。[1968-6]コパル製造のユニット(#1614XX)。ファインダーユニット完成。ダイカスト本体は洗浄済み。

 

レンズのカビを清掃。シャッターリングと距離リングも洗浄してあります。

 

スプールナットはこれです。駒数ギヤも同様にプラ製としてコストダウンを図っています。

 

きれいに収まっていますね。

 

 

PEN-Wよりは意識的に艶を出していますので、プラ製とあまり違和感はないと思います。PEN(グレー)のプラ製ファインダーより、PEN-S3.5のプラ製ファインダーの方が肉厚を薄くモールドされているため、欠けや割れを起こしている個体が多く存在します。安心して実用するために、ダイカスト製に変更することも選択肢だと思います。

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SEIKO ゴールドフェザーを復活させるの巻

2015年04月03日 16時43分32秒 | ブログ

笹原PENさんから突っ込みで時計が来ましたので続けてやります。笹原PENさんから送られてくる個体はお世辞にも程度が良いものはないのでGSで一難去ってまた一難というところです。セイコー・ゴールドフェザーという1961年4月製造の第二精工舎製の高級薄型時計です。25石でケースは14K GOLD FILLEDなので、EGPよりはメッキの剥げは少ない? のですが、艶は全く無し。おまけに金属ベルトが装着されていたのでラグが削られていて、強度の弱いラグも大きく変形をしている状態です。この頃の非防水ケースは革ベルトが基本です。秒針も落ちているし・・針は細く、当時の紳士向け時計ですね。

中身の機械は水の侵入はないのですが、ゼンマイの先端の二枚部分が切れているので、車のタイヤのスローパンクチャーのように、ゼンマイが一気に解放はされないが、ヨロヨロと動いてトルクが掛からないという状態。手持ちのゼンマイを探さなくては・・

確かに薄いですね。それは良いとして、ラグが曲がっているのです。金属ベルトでねじられて変形をしたものです。発売当時は非防水の時代でしたから革ベルトが普通でしたが、たぶん70年代近くの防水時計の時代に途中から金属ベルトに替えられたのでしょう。勿体ないことをしてくれました・・

金属ベルトにねじられたのでラグの片側が大きく変形しています。しかも両側ともです。普通に戻すために曲げると、まず間違いなく折れてしまいます。

 

普通じゃなく戻しました。じゃあ、機械も治そうかな。まず、ケースの緑青取りと研磨です。14Kですが、慎重にカドを磨かないようにして研磨をします。

 

研磨終了。裏蓋も14Kですね。本当は風防と竜頭は交換した方がベストですが、笹原PENさんの場合は、なるべくオリジナルのままという主義なので磨いて再使用とします。

 

すべて分解洗浄を終えてゼンマイも交換してあります。

 

 

このモデル用に開発されたcal.60Aは厚さ2.95mmと非常に薄いですが、一般的な機械とは輪列配置が全く異なります。コハゼがこんなところに付いています。

 

いつもの景色とは違いますね。

 

 

外観よりは機械の状態は摩耗や腐食も少なく、悪くはないと思いますね。しかし、ゼンマイのトルクの関係か、ガンギとアンクルのつめに注油の有り無しで全く作動が変化しますね。

 

クロノス系のダブルブリッジのテンプ受け。組立は面倒ですが、精度は良いのでしょう。

 

日の裏側は何もないのでシンプルです。地板に少し腐食があります。

 

 

文字盤は高級なSD文字盤も存在するようですが、この個体は普通のものです。問題は針でした。短針と秒針は孔の拡大で全く固定出来ない状態でした。少し締めて何とか留まりました。

 

「世界一薄い中三針腕時計」がキャッチフレーズだそうです。しかし、それほど軽い機械と言うわけではなく、ゴールドフェザーの「羽根」は軽いということではなく、薄いという意味でしょうか? この個体の風防は交換されてそれほど古くはありませんでしたが、厚みが少し厚いタイプですので、折角の薄型がスポイル気味です。薄い風防に交換すれば、もっと薄さが際立つでしょう。

左からマーベル、クラウン、ゴールドフェザーです。ゴールドフェザーの金の色が薄いイエローゴールドになっていることが分かります。品が良いですね。J14060は当時の大学初任給と同じぐらい高価な高級時計だったようです。時計の世界ではジャンクのことを「ガラ」というそうですが、ガラから復活することが出来ましたね。

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