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富塚孝一
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リサイクルショップのPEN-Sブラックの巻

2015年06月20日 21時00分08秒 | ブログ

その前にと・・梅雨の晴れ間で夏の暑さが来る前にバイクを見てやります。ヤマハ・FS1ですが1969年ぐらいの生産です。このバイクより年下の読者の方も多くなったことでしょうね。私にしたら、ついこの間のことです。長期にエンジンを掛けなかったので、鋳鉄シリンダーが錆びてピストンが固着してからずいぶん経ちました。ダメ元でショックハンマーで打撃を与えて荒療治でピストンを離します。その後、1000番のペーパーでオイルを着けて研磨修正をしました。

エンジンを掛けようとタンクを確認すると・・あ~ダメだ。タンク内のガソリンが腐って錆びています。入院などでずいぶん長期間の放置をしてしまったようです。これではエンジンは掛かりません。「花咲G」でタンク洗浄しなければ・・

メッキのフェンダーやショックカバーなども錆が進行していましたので必死に磨きます。めっき屋さんに再めっき依頼かなぁ?

 

ハブは真鍮ブラシで磨いて、スポークとリムはビカールで磨きます。タイヤはミシュランのM38を履いてから走っていません。

 

意外にマフラーのメッキは丈夫なんですね。磨いたらピカピカになります。もう1本予備も持ってるし・・

 

さて本題です。リサイクルショップで購入して来たというPEN-Sブラック #1650XXです。本体は1961年5月の記録がありますが、シャッターは昭和38年1月の製造。38年は1963年ですから整合性が合いませんね。PEN-Sは1960年5月の発売ですから1961年表記は有りえますね。

で、オーナーさんが気にされていた、問題のブラックの真贋ですが、おめでとうございます。本物です~。シャッターは不動で、巻き戻しノブが欠落しています。

 

しかし、全体のコンディションは素晴らしいというところでしょう。Sのブラック塗装は、Wと違って劣化が少ないと感じます。個人的には時期的な問題で、塗装工場か塗料などが異なるのだと思っています。本体関係はすべて洗浄済み。これからファインダーのO/HとシャッターのO/Hをして行きます。

シャッターユニットを分解して行きますが、この#000番シャッターとしては、かなり初期の頃の個体ですので真鍮地板の酸化やホコリの混入が激しいです。例によって写っていませんが・・このシャッターは分解歴があるようです。

例によって、バネを曲げて細工がしてありました。正規に戻してあります。初期のシャッターとしては作動は悪くはありません。本体に組み込みます。

 

シボ革の接着。研磨をしておいたシャッターダイヤル(カム)をセットします。

 

レンズの分解清掃後、接着硬化を待ってトップカバーに取り付けます。接眼部のモルトの交換。駒数ガラスにはクラックがありますが、オーナーさんのご希望で再使用としています。

 

裏蓋も並行して作業をします。変質したモルトと接触していた上面端の錆が多いので、研磨後タッチアップをしておきます。モルトの交換。圧板の腐食が進んでおり、軽く研磨をして鏡面としてあります。

 

初期の個体はスプロケットはアルミアルマイト、スプールはグレーです。きれいになったと思います。

 

トップカバー横のネジはメッキタイプが使われています。ブラックモデルなので通常は黒塗装ネジのはずですが、分解機ですのでオリジナルか否かは判断できません。

 

巻き戻しダイヤルのレバーは良品と交換してあります。EE系の部品でも取り付けることは可能ですが、幅が僅かに細いので隙間が空きますのでPEN-S用を使います。本体とシャッターの製造記録ですが、私の資料を見てみると、#165033や#167136などシリアルが近い個体があって、いずれも本体の製造は1961年5月となっています。たぶん、今回の個体も同じロットで生産されたものと推測します。シャッター捺印は「61-1」となっています。通常の生産品はシャッターの完成月と本体完成月は同月か翌月が普通ですが、このブラックモデルのロットはシャッター完成後、約4か月後に製品化されたようです。ということから、この個体のシャッター「38-1」は後に交換された可能性があるようです。もちろん断定はできません。一般的には市販されなかったと言われるPEN-Sブラックのこの個体は、数奇な運命でリサイクルショップに流れ着いたのか? どちらにしても、救出されたオーナーさんのお手柄です。

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