仕入れでの失敗事例ですが、PEN-FT #3611XXと後期の製造なのですが、電池の電解液漏れがこれだけダメージを与えるかという見本です。
電池蓋は完全に固着していて開けようとした形跡がありました。電解液のガスが内部に充満して本来であれば後期の個体ですから状態は良いはずのカメラをここまでダメにします。直近のボタンドメは固着していて動きません。シャッターは開いて停止していましたので画像上のスローガバナーが固着している可能性が高いです。
トップカバーを外しました。露出計は生きているでしょうか?
電池室周辺と裏蓋下部が激しく腐食しています。カメラとして何とか生かそうと思っていましたが断念してユニット確保の良品化を目指します。
すみません。ガバナーはアンクルが完全に固着していて状態は最悪でしたので分解時の画像を撮る余裕がありませんでした。やっとシャッターユニットからスローガバナーを取り出して、まずは両方とも超音波洗浄をしましたが固着はびくともしません。分解をしてアンクルの洗浄をしました。
まず復活は無理と半ば諦めていましたが、幸い正常に作動するようになりましたのでシャッターユニットに組み込みます。シャッター幕は何とか無事の状態。これでシャッターユニットは確保できました。
次は欲しい露出計ユニット。しかし、残念ながら針は触れません。ガスに侵されたユニットは不良のことが多いです。しかし、腐食した基板を点検していくと露出メーターは生きている。画像の抵抗間の導通がありません。半田に熱をかけたら復活しました。ラッキー。
針は触れますね。経験的に感度は大丈夫と思います。
シャッターユニットと露出計ユニットが仕上がりました。本体にダメージがなければ個体として復活させることが出来たのに残念ですね。
と、思いましたが、これだけ状態の悪い個体を復活できるかという興味もありますので仕上げることにしました。完成後に部品扱いにするかもしれませんけど・・。ダイカスト側は電解液が浸透していてネジが緩まない部分が多いですが2か所は完全に固着しています。無理に緩めるとネジが折れますね。たぶん・・
ボタンドメを何とか分離しました。真鍮があり得ないほど腐食しています。
除錆剤に漬けて酸化被膜を除去しました。表面はかなり荒れていますけど、何とか使えます。
電池室からのリード線の新製と絶縁パッキンが欠落していましたので作って組み込みます。
ダイカストの腐食部分は白い粉を吹いていましたのでヤスリ掛けで修正してあります。何とかリカバリーできましたかね?
仕上げておいたシャッターユニットを搭載しました。
前板関係を分解していきます。ダイカストは洗浄、ミラーユニットは超音波洗浄をします。リターンミラーのミラーも外周付近からメッキが飛んでいますので交換します。
後期のスクリーンは上下の位置決め角は省略されています。洗浄しましたがマスク部分の樹脂が変質しています。電解液は樹脂も侵すということです。プリズムの接着面の塗装も侵されていて光り漏れがあります。
後期のミラーですから本来は劣化はしていないはずですが蒸着メッキが飛んでいます。交換するのでミラーを外します。
ミラーを外しました。接着面に錆が発生していますので、いずれ剥離をしたことでしょう。
接着したリターンミラーを組み込んでスクリーン、プリズムやミラーユニットを組みました。接着の完全硬化を待って本体に組み込みシャッターをテストします。
リターンミラー接着の完全硬化後シャッターテストをしています。まずまず快調です。
この個体は検討やお客様へのご説明用としたいと思いますので組み立てはここまでとします。しかし、電池の電解液漏れはカメラに深刻な被害を及ぼしますので、みなさんも電池の入れ忘れにご注意と、液漏れが疑われる個体は入手を避けるようにしましょう。今回のように修復は可能ですが、かかった工数と品質が見合いませんので通常の作業としては現実的ではありません。
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