今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

ローライフレックスの裏蓋へこみの巻

2023年10月21日 11時00分00秒 | ブログ

ローライフレックス2.8はあとでメンテナンスをするのですが、裏蓋のへこみが激しいので修復可能か先に作業をしておきたいと思います。この頃の二眼レフは重量がどんどん重くなっていて、しかし、裏蓋の材質はアルミですから打撃により簡単にへこんでしまうのです。画像ではあまりひどくは見えませが結構ひどいです。

このような場合、板金するためには圧板を外したいわけですが、のリベットで固定されていてそれができません。

 

ではどうするかですが、修理職人のご先輩方はどのように修復されるのでしょう? 私は師匠無しですのでお聞きすることもできません。裏から叩けない場合、自動車の板金などでは、へこんだ部分にワッシャーをスポット溶接して、そこをスライディングハンマーで引っ張るのですが、裏蓋が真鍮製であれば半田付けで引っ張ることも考えられますがアルミですからそれも出来ません。デントリペアでは、接着によって固定して引っ張るのですが、カメラでそれが可能か研究課題です。

ちなみに露出表の額縁は裏側のプレス形状と合わないと思っていましたが、このような別部品となっています。

 

まぁ、試行錯誤で大まかに修正しました。歪み取りは私のスキルでは無理です。多くの個体はここまでひどくなくとも歪みが出ているものも多いので許容範囲でしょうか? 

 

トミーのリペイント (tomys800.sakura.ne.jp)

 

 


ジャンクを生かすPEN-FTの巻

2023年10月17日 18時00分00秒 | ブログ

仕入れでの失敗事例ですが、PEN-FT #3611XXと後期の製造なのですが、電池の電解液漏れがこれだけダメージを与えるかという見本です。

 

電池蓋は完全に固着していて開けようとした形跡がありました。電解液のガスが内部に充満して本来であれば後期の個体ですから状態は良いはずのカメラをここまでダメにします。直近のボタンドメは固着していて動きません。シャッターは開いて停止していましたので画像上のスローガバナーが固着している可能性が高いです。

トップカバーを外しました。露出計は生きているでしょうか? 

 

 

電池室周辺と裏蓋下部が激しく腐食しています。カメラとして何とか生かそうと思っていましたが断念してユニット確保の良品化を目指します。

 

すみません。ガバナーはアンクルが完全に固着していて状態は最悪でしたので分解時の画像を撮る余裕がありませんでした。やっとシャッターユニットからスローガバナーを取り出して、まずは両方とも超音波洗浄をしましたが固着はびくともしません。分解をしてアンクルの洗浄をしました。

まず復活は無理と半ば諦めていましたが、幸い正常に作動するようになりましたのでシャッターユニットに組み込みます。シャッター幕は何とか無事の状態。これでシャッターユニットは確保できました。

次は欲しい露出計ユニット。しかし、残念ながら針は触れません。ガスに侵されたユニットは不良のことが多いです。しかし、腐食した基板を点検していくと露出メーターは生きている。画像の抵抗間の導通がありません。半田に熱をかけたら復活しました。ラッキー。

針は触れますね。経験的に感度は大丈夫と思います。

 

 

シャッターユニットと露出計ユニットが仕上がりました。本体にダメージがなければ個体として復活させることが出来たのに残念ですね。

 

と、思いましたが、これだけ状態の悪い個体を復活できるかという興味もありますので仕上げることにしました。完成後に部品扱いにするかもしれませんけど・・。ダイカスト側は電解液が浸透していてネジが緩まない部分が多いですが2か所は完全に固着しています。無理に緩めるとネジが折れますね。たぶん・・

ボタンドメを何とか分離しました。真鍮があり得ないほど腐食しています。

 

 

除錆剤に漬けて酸化被膜を除去しました。表面はかなり荒れていますけど、何とか使えます。

 

電池室からのリード線の新製と絶縁パッキンが欠落していましたので作って組み込みます。

 

ダイカストの腐食部分は白い粉を吹いていましたのでヤスリ掛けで修正してあります。何とかリカバリーできましたかね?

 

仕上げておいたシャッターユニットを搭載しました。

 

 

前板関係を分解していきます。ダイカストは洗浄、ミラーユニットは超音波洗浄をします。リターンミラーのミラーも外周付近からメッキが飛んでいますので交換します。

 

後期のスクリーンは上下の位置決め角は省略されています。洗浄しましたがマスク部分の樹脂が変質しています。電解液は樹脂も侵すということです。プリズムの接着面の塗装も侵されていて光り漏れがあります。

後期のミラーですから本来は劣化はしていないはずですが蒸着メッキが飛んでいます。交換するのでミラーを外します。

 

ミラーを外しました。接着面に錆が発生していますので、いずれ剥離をしたことでしょう。

 

接着したリターンミラーを組み込んでスクリーン、プリズムやミラーユニットを組みました。接着の完全硬化を待って本体に組み込みシャッターをテストします。

 

リターンミラー接着の完全硬化後シャッターテストをしています。まずまず快調です。

 

この個体は検討やお客様へのご説明用としたいと思いますので組み立てはここまでとします。しかし、電池の電解液漏れはカメラに深刻な被害を及ぼしますので、みなさんも電池の入れ忘れにご注意と、液漏れが疑われる個体は入手を避けるようにしましょう。今回のように修復は可能ですが、かかった工数と品質が見合いませんので通常の作業としては現実的ではありません。

トミーのリペイント (tomys800.sakura.ne.jp)

 

 

 


頂いたPEN-Sの巻

2023年10月12日 20時00分00秒 | ブログ

オーバーホール作業は少し暇になりましたね。裏ではローライ35用のパーツを製作検討しています。なかなかコストが下がらないのが悩み。自分でフライス加工もしなければならないし・・で、うちのお客様からPEN-S2.8を頂いてしまいました。#3614XX は1963年7月製ですが、PEN-S2.8の発売は1960年6月とのことですから生産が安定したころの個体ではありますが、特徴的には初期型になります。しかし、ファインダーのリンクル塗装も完全で程度は良いです。頂いて良いのかなぁ・・

今回は長期保管でシャッターが不調となっていますのでシャッターのみ直しておきます。コパル#000番シャッターは非常に小さな動力で作動していますので、少しフリクションが大きくなると止まりが発生する神経質なところがありますね。セイコーシヤッターのように強力なバネでガチャンと動くほうがある意味楽です。ここが心臓部で、このバネ1本で作動しています。50年間もテンションを掛けられていますので、初期のバネ力も落ちていてシャッタースピードも上がりません。

このシャッターは生産完了間際に大きな変更を受けますが、駒かな部分の変更は初期にもあります。レリーズ関係の組み立てはのネジに寄りますが、この後から地板からネジ付きシャフトがカシメられていて、最後はスリ割ナットにより固定する逆の構造になります。ネジが緩みやすいのと、組み立て工程での作業の簡略化でしょうか。

シャッター羽根の表面も摩擦により鏡面になって来ていますので、それによって張り付き現象が起きやすいこともあります。新品のシャッター羽根があれば交換したいところ。

 

1枚については鋭利なもので突かれた形跡があります。

 

 

バックプレートの裏側に油が付着していることがあります。それがシャッター羽根に付着することによって止まり症状となりますので、分解洗浄をしておきます。

 

これで組み立て終了。

 

 

完成したシャッターユニットを本体に搭載しました。ストロボ発光のテストをしてシボ革を貼ります。

 

トップカバーを取り付けます。

 

 

最近、オークションなどを眺めているとPEN-Sの状態の良い個体が少なくなって来たと思います。特にレンズの状態が良い個体は貴重です。ご提供ありがとうございました。

 

トミーのリペイント (tomys800.sakura.ne.jp)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


代替えのPEN-FTの巻

2023年10月06日 17時00分00秒 | ブログ

カメラ店様経由でPEN-FTの修理が来ていましたが、露出計が不良なのと本体の信頼性も落ちると判断しましたのでご相談の結果、当方のストックから代替えを仕上げます。#3601XXと後期の個体を選びました。あまり疲労していません。

 

レンズマウントも傷が少なく光学系もきれいです。

 

 

ダイカスト本体の洗浄後組み立てていきます。

 

 

シャッターユニットをオーバーホールしました。全く摩耗がありません。シャッター幕も良好です。この分では書くことはないかもしれません。

 

完成したシャッターユニットを本体に組み込みました。巻き上げも軽くスムーズです。

 

 

前板関係はリターンミラーユニットは過去にピント調整を受けていました。他の部分の分解はありませんのでピント調整のみ受けたようです。プリズムのコーティングは完全です。

 

デザイン上、苦肉のシューの取り付けは接眼枠に大きなストレスを掛けますので割れているものが多いです。この個体も割れを修理してありましたので交換してあります。ハーフミラーは清掃で使えないこともありませんが、折角ですので新品と交換しておきます。

 

ピント調整、露出計調整を終えて最後に駒数ギヤ関係を組み立てます。レバーカバーも接着しておきます。

 

完成後、ストロボの発光テストをします。

 

 

オーナーになられる方が内蔵露出計のTTLナンバーで撮影をしたいとのご希望でしたので感度の良い個体を選んで仕上げました。後期型としては巻き上げもスムーズでどこにも欠点の無い良い個体と思います。

 

 

トミーのリペイント (tomys800.sakura.ne.jp)

 

 

 

 

 

 

 


里帰りのリペイントPEN-Wの巻

2023年10月05日 10時00分00秒 | ブログ

現オーナーさんが「トミーさん、この個体はオリジナルですか」と送られて来たPEN-W #1093XX 。きれいな塗りですけど、どこかで見たような・・実は過去に私がリペイントをした個体でした。塗膜のスレも全くないので使用せずに保管されていたのでしょうけど・・

 

過去の伝票を調べれば、いつどなたからのご依頼だったかは分かりますが意味はないのでしません。

 

 

しかし、その個体がうちのお客さんの手に渡るとはPENの世界は狭いです。使用せずに長期間置かれますと、このコパル#000番シャッターは不調になるのです。今回はオーナーさんから「使えるようにして」とのご依頼ですので、うちの子ですので責任をもってお世話しますね。

 

シャッターはすべて分解洗浄のうえ組み立てていきます。

 

 

ハウジングと合体して組み立て終了です。シャッター羽根の表面の粗面が鏡面に近くなっているのも張り付き易い原因の一つでしょう。

 

シャッターの調子は良好です。完成したシャッターを本体に搭載しました。

 

 

ここでストロボの発光テストをしておきます。

 

 

製作当時は焼付塗装と言えども塗装直後に塗膜にストレスを掛けたくない(傷の防止)ことからシボ革は両面テープ貼りとしていましたが、経年により外周の剥離と生地の縮みが発生していて再使用が不可と判断しました。そこで、別の個体からシボ革を調達して貼ってあります。

 

シボ革の材質は塩ビ? かと思いますが、塩ビは軟化剤が抜けると硬化(縮み)が発生するようです。OM-1の時代はすでに両面テープ貼りとなっていますので、純正と言えどもシボ革の剥離は発生していますね。私がカメラを製造していた頃はシボ革裏にグッドイヤーの糊が塗られていて(乾燥状態)それを筆につけたケトンで溶かしながら貼ったものです。この糊は強力で、貼って圧力をかけると簡単には剥がせないぐらい強力なものでした。現在の市販接着剤では到底得られない接着力でした。

これで完全な状態となりました。じつは私の手元には自分でリペイントをした個体は米谷さんにサインを頂いたオリーブFVしか無いのです。

 

それとコメント欄に書き込みを頂きました〇下さん。対応致しますのでメールでご連絡を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。

トミーのリペイント (tomys800.sakura.ne.jp)