昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(八十四) 御手洗武蔵を叱ってくれ

2014-04-15 21:39:10 | 小説
(四)

翌日のこと。久しぶりの武蔵の訓示だ。
全社員が、直立不動で立っている。

「今日は、みんなを褒めようと思う。みんなだ、全員だ。俺以外の全員をだ。
そしてみんなして、社長であるこの俺を、御手洗武蔵を叱ってくれ」

何事かとざわつく面々に、
「皆の頑張りのおかげで、富士商会の業績は伸びている。
ひと頃ほどではないにしろ、他社よりはるかに良い業績だ。
しかし気になることが出てきた」と、切り出した。

「本来なら、社長である俺が、もっと早く気付くべきだった。
軽く考えすぎた。富士商会は、仕入れ値を抑えることに長けている。

そのことに胡坐をかきすぎたかもしれん。
一部とはいえ、集金時に値引き要求をする店がある。

小額だった故に、俺もやむ得ぬかと決済してきた。
しかし、よくよく調べてみると、偏った地域に限定されていることに気付いた。

それで専務に調べさせてみると、日の本商会なんてふざけた名前の会社が上がってきた。
富士商会に対抗しての、日の本商会だろう。然もだ、女社長だ」


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