昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

[ライフ!] ボク、みつけたよ! (十二)入院時は、正直のところ 

2024-11-21 08:00:32 | 物語り

 入院時は、正直のところ「どうでもいいや」といった自暴自棄な気持ちでしたねえ。
離婚してまだ半年も経っていない、たしか五十三歳だったと思います。
娘が高一のときだったはずですから。
でその部屋に、わたしに遅れることふつか後でしたか、視覚・聴覚障害者の入院がありました。
大変でしたよ、それが。
気の毒だとは思うのですが、とにかく大声を発せられるわけです。
病室って静かでしょ? テレビにしてもイヤホン使用ですからねえ。
会話にしても他人に聞こえないようにと小声じゃないですか。

家族の方は手のひらに文字を書いての会話をされているのですが、その返事が大声になってしまうのです。
ご当人はその認識がないらしく――まあねえ、聞こえが悪いのですからそれも当然と言えばとうぜんなことですが。
すぐさま家族の方が大声を出さないようにと手のひらに書き込まれるのですが、なかなかに。

 それがいちにち中ですから、閉口します。
おひとりになられると大変です。
ご当人は昼夜のくべつが付かれない状態ですしね。
悪気はないのでしょうが、こちらはたまったものじゃありません。
お見舞い客のなかに幼稚園児だと思われる子どもさんが見えましてね、そのあまりの大声にびっくりして泣きだしたというわけです。
それで長期入院されているこの部屋のぬしのような方が我々の代表として、その方の個室への移動を病院側に申しいれされました。
すったもんだがありましたが、個室へ移られました。

 泣き出したと言えば、名古屋の東山動物園でのことです。
息子と出かけたのですが、えっと、3歳だったかな? 娘が生まれた年(4月1日生まれです)のお盆休みだったと思いますが。
わんぱく盛りのはずなのですが、電車で移動中に、わたしの顔をじっと見ているのです。
「窓の外を見てごらん」と何度も言うのですが、そのたびにちらりと視線を動かすだけで、すぐにまたわたしを見るんです。
そのたびに、にっこりと笑顔を渡してやるのですが。
外の景色に見とれていたら、わたしがどこかに行ってしまうのではなんて、そんな思いにでも囚われていたのでしょうか。
仕事しごとに追われて、あまり相手をしてやりませんでしたからねえ。
ほんと、可哀相なことをしてしまいました。

――・――・――
(十二)の2

  話を戻しましょう。
 人には向き不むきというものがあると思うのですが、他人からの指図が大嫌いなわたしのくせに、自ら予定を立てることができない――いや下手なわたしです。
そもそも予定を組むのは好きなんです、いろいろ思いえがきながら行程をくむのは楽しいです。
ただ、その予定というか時刻設定がだめなんです。
けっして無理な設定ではないんですよ。

 たとえば高速道路をはしる場合でも速度は70キロで計算しますし、2時間弱おきでの休憩をいれますし。
それでも目的地の到着時刻がおそくなっちゃうのです。
まあわたしとのお付きあいが長いお方なら、お分かりだと思うのですけれど。
そんな簡単にうなずかないで下さいな、せめて「そうだっけ?」といちどは首をかしげてくださいな。
わたしとあなたの仲じゃないですか。
「お前とは初だ」と仰います? 出会いというものには、必ずに“はじめて”ということがあるじゃないですか。
それにですね、ここまでおつきあいいただいたんです。
だったら、あなたとわたしの仲ですよ、もう。



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