昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

「祭りの夜(改)」 二十二

2013-07-14 12:25:52 | 小説
(二十二)

新一くん、元気ですか。

突然にこんな手紙が届いて、さぞかしびっくりしただろうね。
考えに考えたあげくのことなんだ。

君にだけは、ぼくの気持ちを分かっていて欲しくて。
母さんに話しても、多分泣くだけだろうと思うんだ。

いや、本音を言えば、母さんには知られずにいたいと思う。
こんな弱いぼくだなんて、絶対に知られたくない。

お願いだ、新一くん。母さんには内緒にしていて欲しい。

覚えているかい? 勿論覚えているよね、あのへび女のこと。
あの件で、唯一の親友とでも言うべき、君を失ってしまった。

君のひと言は、こたえました。
そんな風に考えていたなんて、ぼくにはほんとに思いもかけぬことだったから。
一時はね、君を憎んだりしたんだ。

なんて言ったか、覚えてる? 案外、覚えていないかもね。
「ぼく、帰る。こんなの、やっぱり変だよ。」
って、怒ったように言ったんだ。

そしてさっさと一人で帰ってしまったんだぜ。
分かる? その時のぼくの気持ち。

自分の馬鹿さ加減に腹を立てていたんだ。
冷静に考えれば、へび女なんて存在しないことぐらい、すぐに分かりそうなものなのに。

いや分かっていたのかも、案外に。
君と別れる淋しさが、あんな行動を起こさせたのかもしれない。


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