(三)
「なあに、それって。あたしの全ての表情が良いってことなの?」
「Yes! That's rigght! You winner!」
両手を広げて大声で叫ぶ武蔵に、すれ違う通行人が皆が皆おどろきの顔を見せる。
そして慌てて体をかわして行く。
「もう、武蔵ったら。恥ずかしいでしょ、そんな大声で。やめて、やめてったら」
武蔵に抱きしめられて、身動きの出来ない小夜子。
全身の力が抜けて空を浮く錯覚に襲われる。
武蔵の愛情を一身に感じる時ではある。
「世の妻帯者の三割が、十分な金を稼いでいるはずだ。
そして家族に贅沢をさせている。
しかし俺のように、細君にたんまりの金を遣っている、遣わせている夫は一割にも満たんぞ。
どうだ、残りの九割の中に入りたいのか?」
「そんなの、嫌!」
「だろう? 心配するな、俺は浮気なんぞしていない。
もう昔みたいな、女遊びはしていない。
そうだ、梅子に聞いてみろ。今度行ったら聞いてみろ」
“また、ごまかされた。
でも、いいか。確かに、香水の匂いをさて帰ってくることはなくなったし。
出張先でといっても、そんな時間もないでしょうし”
「武蔵!」
突然に素っ頓狂な声を上げて、立ち止まった小夜子。
「どうした? なにか、欲しいものを見つけたか?
約束だから、何でも勝ってやるぞ。
小夜子のおかげで商売も順調なことだし」
「ここ、ここ、入ってみたい。
歌声喫茶、カチューシャですって。
カチューシャって、ロシアよ。
アーシアの国よ」
目を輝かせて、武蔵の手を引っ張る。
しかし武蔵の一番の苦手とする場所だ。
何とか説き伏せにかかる武蔵だった。
「なあに、それって。あたしの全ての表情が良いってことなの?」
「Yes! That's rigght! You winner!」
両手を広げて大声で叫ぶ武蔵に、すれ違う通行人が皆が皆おどろきの顔を見せる。
そして慌てて体をかわして行く。
「もう、武蔵ったら。恥ずかしいでしょ、そんな大声で。やめて、やめてったら」
武蔵に抱きしめられて、身動きの出来ない小夜子。
全身の力が抜けて空を浮く錯覚に襲われる。
武蔵の愛情を一身に感じる時ではある。
「世の妻帯者の三割が、十分な金を稼いでいるはずだ。
そして家族に贅沢をさせている。
しかし俺のように、細君にたんまりの金を遣っている、遣わせている夫は一割にも満たんぞ。
どうだ、残りの九割の中に入りたいのか?」
「そんなの、嫌!」
「だろう? 心配するな、俺は浮気なんぞしていない。
もう昔みたいな、女遊びはしていない。
そうだ、梅子に聞いてみろ。今度行ったら聞いてみろ」
“また、ごまかされた。
でも、いいか。確かに、香水の匂いをさて帰ってくることはなくなったし。
出張先でといっても、そんな時間もないでしょうし”
「武蔵!」
突然に素っ頓狂な声を上げて、立ち止まった小夜子。
「どうした? なにか、欲しいものを見つけたか?
約束だから、何でも勝ってやるぞ。
小夜子のおかげで商売も順調なことだし」
「ここ、ここ、入ってみたい。
歌声喫茶、カチューシャですって。
カチューシャって、ロシアよ。
アーシアの国よ」
目を輝かせて、武蔵の手を引っ張る。
しかし武蔵の一番の苦手とする場所だ。
何とか説き伏せにかかる武蔵だった。
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