昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

小説・二十歳の日記  八月三日  (晴れ)

2024-10-13 08:00:49 | 物語り

だいぶ落ち着いてきた、ような気がする。が、まだわからん。
きょう、課長に叱られた。
「ミスが多すぎる!」
「気のゆるみだ!」とも、言われた。
ぼくだって人間です! って、言いかえす気力もない。
だまってうなだれていると、
「元気がない!」と、また叱られた。
そうなんだ、正直のところちっとも身がはいらない。
不思議なもので、体調の良いときにはなにをやってもほめられる。
すこしのミスをしても、不可抗力だと言ってもらえる。
けど、いったん歯車が狂うと、なにをやってもダメ。
もがけばもがくほど、深みにはまっていく。

「一体、どうしたって?」って、聞くのかい。
こっちが知りたいよ。
彼女に傘のことで笑われたせいじゃない。この前のデートが、休日出勤でオシャカになったせいでもない。
いや、すこしはあるかも?
 
だめだ。どうにも走馬燈のようだ。
グルグルと堂々めぐりをして、いよいよ沈んでいく。

さいきん、ゲバルト活動の新聞記事をよく見かける。
かれらの主張が正しいものかどうか、ぼくにはわからん。
信念にもとづいての行動は立派だ。
しかし 独善的すぎる点は、ざんねんだ。
現実の生活にまんぞくし得ない、血気にはやる若者が、ゲバルトという夢想的な境地のなかでもがいているように見える。
けれども、打ち込めるということは、羨ましい。

一日の、あれはなんだったんだ?
文学青年だ! なんていきがってるけど。
ひょっとして、ジェラシー? ゲバルト学生に嫉妬した? 
バカな!



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