昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

[お取り扱い注意!] (十四)

2013-08-10 16:36:20 | 小説
(十四)

空耳かと、耳を疑った。
「後がつかえてますから、早く上がって下さいな。」

間違いない、妻の声だ。
しかしおかしい。

妻に背中を流してもらったことなど、一度としてない。
新婚時は風呂場が狭すぎて、入りたくても一緒というのは無理だった。

子供が生まれてから、風呂場の大きいアパートに移ったが、
その時は子供に妻を取られてしまった。

今思えば、風呂を一緒にして背中を流してくれていたら…
浮気心など起きなかった…いやいや、それはどうだったか…。

湯舟を出て、妻に背中を向けて腰を下ろした。

“ギッギッ、ギギィ…”
擬音がする。

“シンジャエ、シンジャエ!”

慌てて後ろを振り向くと、そこには妻ではなく、大きく口を開いた鬼女人形が居た。

ギィギィと音を立てて首が回り、さよこが現れて…大きく口を開けた鬼女人形が居た。


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