(九)
男との生活を、思い浮かべることがないわけではない。
しかし決まってその後に
“こんなうわばみ女を嫁にするなんて、可哀相じゃないか”
と、収まるところに収まっていく。
“子ども、か。やっぱり、欲しかったねえ”
求婚した男の子供ではない。浮気と割り切っての男との子供だった。
生理不順の続いていた頃のことで、まさかという思いが強かった。
異変に気付いたのは、皮肉なことに男の方だった。
“食べ物の好みが変わったじゃないか”
そう言われてから、ひょっとして? と飛び込んだ婦人科で、妊娠を告げられた。
「五ヶ月だね。気付かなかったのか、お前さん。
他人のそれには敏感なくせに、自分のこととなるとからきしだな」
と、馴染みの医者にからかわれる始末だ。
「つわりは無かったのか? そうか。静かに静かに、生命ちを育んできたんだな。
で、どうするね? といっても、今さら堕ろすわけにもいかんがね。
お前さんに気付かれまいと、静かに成長を続けてきたんだ。
赤ん坊は、生まれたがっているぞ。
神さまも、そんな赤ちゃんを応援しているらしい」
男との生活を、思い浮かべることがないわけではない。
しかし決まってその後に
“こんなうわばみ女を嫁にするなんて、可哀相じゃないか”
と、収まるところに収まっていく。
“子ども、か。やっぱり、欲しかったねえ”
求婚した男の子供ではない。浮気と割り切っての男との子供だった。
生理不順の続いていた頃のことで、まさかという思いが強かった。
異変に気付いたのは、皮肉なことに男の方だった。
“食べ物の好みが変わったじゃないか”
そう言われてから、ひょっとして? と飛び込んだ婦人科で、妊娠を告げられた。
「五ヶ月だね。気付かなかったのか、お前さん。
他人のそれには敏感なくせに、自分のこととなるとからきしだな」
と、馴染みの医者にからかわれる始末だ。
「つわりは無かったのか? そうか。静かに静かに、生命ちを育んできたんだな。
で、どうするね? といっても、今さら堕ろすわけにもいかんがね。
お前さんに気付かれまいと、静かに成長を続けてきたんだ。
赤ん坊は、生まれたがっているぞ。
神さまも、そんな赤ちゃんを応援しているらしい」
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます