昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(九十一) こんなうわばみ女を嫁にするなんて

2014-07-07 20:33:32 | 小説
(九)

男との生活を、思い浮かべることがないわけではない。
しかし決まってその後に
“こんなうわばみ女を嫁にするなんて、可哀相じゃないか”
と、収まるところに収まっていく。

“子ども、か。やっぱり、欲しかったねえ”

求婚した男の子供ではない。浮気と割り切っての男との子供だった。
生理不順の続いていた頃のことで、まさかという思いが強かった。
異変に気付いたのは、皮肉なことに男の方だった。

“食べ物の好みが変わったじゃないか”
そう言われてから、ひょっとして? と飛び込んだ婦人科で、妊娠を告げられた。

「五ヶ月だね。気付かなかったのか、お前さん。
他人のそれには敏感なくせに、自分のこととなるとからきしだな」
と、馴染みの医者にからかわれる始末だ。

「つわりは無かったのか? そうか。静かに静かに、生命ちを育んできたんだな。
で、どうするね? といっても、今さら堕ろすわけにもいかんがね。
お前さんに気付かれまいと、静かに成長を続けてきたんだ。
赤ん坊は、生まれたがっているぞ。
神さまも、そんな赤ちゃんを応援しているらしい」


最新の画像もっと見る

コメントを投稿