それにしても、こうなりますと、どちらの話を信じたら良いのか、それとも善三さんのことばが当を得ているのか……。
ご婦人方の間でも、ご意見が分かれたようでして。
「三郎さんのご実家に身をよせるということは、できなかったかしら」
「お嬢さま育ちのむすめさんが農家の嫁というのは。やっぱり、無理があるでしょ」
「若いむすめひとりが戦後をいきぬくなんて……。それに身ごもっているわけですし」
「身をおとさずにすんだのよ、良しとしましょうよ」
「でも、その後も使用人ふつかいではねえ」
吐き捨てるように善三さんがおっしゃいます。
「ふん。そらみろ! 人をひととも思わぬ所業だ。すこしばかり美人だからと鼻にかけよって」
善三さんのことばに、思わずわたしも頷いてしまいます。
たしかにこれではご老人が哀れでございます。
しかしこれで終わりではなかったのです。
小夜子さんの、ご老人に対する仕打ちは。
善三さん曰く、「男を虚仮にしおって」があったのでございます。
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みなさん、気がかりといいますか気になさっていることがございますよね。
若いツバメのことですよ。
わたくしが百貨店に出かけたおりのことでございますよ。
夫はさほどに気にしている様子はなかった?
大嘘でございますよ。大変でございましたから。
百貨店の方へも何度か電話をかけましたとか。
ほんとにもう、恥ずかしくて、もう行けませんわ。
では順を追ってお話ししましょう。
あの日は梅雨にはいる前の、火曜日? いえ水曜日でしたかしら。
どんよりとした空模様でして、お昼すぎには雨になるかもしれないという予報でした。
でも、当たりませんものねえ。
よっぽどに、昔から言われている「アリの行列を見たら雨がちかい」ですとか、「鐘の音がよく聞こえたら雨がちかい」とか、昔からの格言の方がよく当たりますもの。
まあ、経験則と申しますのですか?
ばかにはできませんもの。
三郎さまに教えていただいたのですが、気象協会の予測も、ある意味では経験則によるものだとか。
さすがに格言からのものではなく、空の雲の動きから判断するものだと。
はるか彼方にある雲の動きを観察して、その動きから過去の経験則に当てはめて予測を立てるのだそうでございますよ。
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