その他にはぐるりと見回しても、取り立てて言うほどのものはない。
強いて言うなら、紺に彩られた扉がある。
そしてその紺色の中で、
あるベき筈の鈍く銀色に光るドアノブのないことが、不思議なことに感じられる。
以前は興味を持ったような記憶もあるが、
それとてすぐに消えてしまう程つまらない些細なものだった。
そういえば、音がするでもないドアの開閉の折りに瞬時見えたのは、同じようなドアと廊下だった。
窓の外にはポプラがそびえ立ち、その葉を透ける太陽の光、
そして遙か彼方の霞にかすむ山々の連なり。
何よりも、どこかにあるのだろう滝のゴーゴーという轟音と、
水しぶきがキラリキラリと光る様が目に浮かぶ。
そして小鳥のさえずりも、また。窓の外には、生きた音があった。
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