昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(八十九) 富士商会を、調子付かせるな

2014-06-01 11:53:56 | 小説
(二)

「まあまあ、良いじゃないですか。単なる息抜きですから。
課長も、色々とご苦労が多いことでしょう?

部長あたりに、言われてるんじゃないですか?
『富士商会を、調子付かせるな』なんて。

分かってますって、分かってます。課長がね、色々と骨を折ってくださっていることは。
だから、感謝の気持ちです。ね、あたしなんか、大きい声じゃ言えませんが」

しどろもどろになっている課長の肩を抱いて、小声で話す。

「接待なんて気はないんですよ、正直のところは。
戦友と一夜を共にしたいんですわ。

いやいや、その気はありませんよ。女一筋ですよ、あたしは。
途中で女としけこみましょうや。

どこかの旅館でですな、課長の人生観をお聞きしたいのですよ。
そしてね、その後で、ちょっと自分に対するご褒美を、ね」

「はあはあ、自分に対する褒美ですか? なるほど、なるほど」
「というところで、課長。明日の夜あたり、如何です? 何か、予定でもありますか?」

「明日、ですか? うん、大丈夫です」
手帳をパラパラとめくりながら、頷いた。

“あんたの方からサインが出たんだぜ。
奥さん、里帰りするんだろうが。まったく手間暇かけさせる男だ”


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