昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(七十八) 若くして死ぬのよ

2014-01-25 19:12:48 | 小説
(八)

「勝子!あんたも少しは見習いなさい。
ちっとも手伝いしないで。

あたしの料理の味は、本来あんたが受け継がなくちゃ。
分かってるの、ほんとに」

「あたしは良いのよ。どうせ料理を食べてくれる相手はいないんだから。
それに、長生きなんかできないし。若くして死ぬのよ、薄幸の美女なのよ」

「なに言うんだ、姉さん。治るよ、きっと。
いや、治ってきてるじゃないか。

この分だと、退院だって。
そしたらお見合いでもなんでもして、お嫁に行かなくちゃ」

「そうだよ、勝子。
何といっても、女の幸せは結婚だからね。

旦那さまにお尽くしをして、最期を看取るときに『お前、ありがとう』と言われてごらんな。
そりゃもう、そりゃもう…」

感極まって、割烹着の裾で顔をおおってしまった。


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