昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(八十七) 新入りが頬を膨らませて

2014-05-22 21:04:26 | 小説
(六)

「あの男が気付かなかったから良かったけど、危なかったわね」

「そんなことないですよ、神田さんだろうと田山さんだろうと、
警察に知り合いが居るってことが大事なんです!」

一番の新入りが頬を膨らませて、抗議した。

「そうそう、結果オーライよ。最悪でも警察に繋がってれば、何とかなるでしょうし」
「えぇっ! かけてませんよ、あたし。受話器を持ってただけで」

ところがそれからすぐに、交番勤務の警官が駆けつけた。
「どうしました、大丈夫ですか?」

通りがかった通行人が連絡していたのだ。
で、評判の美人を拝めるぞとばかりに、どしゃ降りの雨も何のそのと駆けつけてきたというわけだ。

「それにしてもお手柄でした。実は…」

警官の話では、男たちが出払った店を狙って、
難癖を付けては小金を要求する不届き者が出没しているとのこと。

どうやらその男ではなかったのか、と言うのだ。
そしてこの顛末を、この警官が面白おかしく吹聴して回った。


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