昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

[お取り扱い注意!] (二十八)

2013-08-24 18:05:47 | 小説
(二十八)

暫く無言を通すと、職員が訝しげに目を上げた。
「他の医師にしますか?」

今度は目を上げて、私を見た。

「いえ、その岩井先生で結構です。」
「それじゃ、お席でお待ち下さい。」

待合の席に座ろうとした私に、通りがかった看護婦が声をかけてきた。
この間の入院時に世話をしてくれた看護婦だった。

実に気立ての良い娘で、いつも明るく笑う娘だった。
「山本さん、ラッキーでしたね。」

「なんで?」
笑みを返しながら、尋ねてみた。

「良い先生ですよ、岩井先生って。
いつもは予約だけの先生なんですよ。ね、島田さん。」

「今日はね、畑中先生が休みなものだから、急遽ピンチヒッターでお願いしたの。」

「山本さん、ついてるわ。」
うんうんと頷きながら、一人納得して去って行った。

良い先生かどうかは、診察を受けてからだと、あまり期待もせずにいた。
しかしこの先生に会ったことで、私の人生が一変したと言っても過言ではなかった。


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