昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~ふたまわり・第二部~(二十五)の七と八

2011-12-17 21:10:22 | 小説


「左様で。宅は、22年の冬でございました。
ひょっこり帰って参りまして。
一年ほど、どうもあちこち尋ね歩いていたようでございまして。
でもどうして、何も言ってくれないのか。」
「言いたくない事情があるんでしょう。
我々だって墓場まで持って行くものがありますから。」

「でも・・妻のあたくしなら・・」
「光子さん。そりゃ、無理だ。
ぼくには、ご亭主の気持ちが良く分かる。
内地の僕だから、人づてに聞いたことでもあり、本当の意味で分かっているとは言えんのですが。
戦争はね、地獄です。」
「お二人はご戦友で?」
「そうです。
親兄弟より強い絆があります。」
「男の方は、お宜しいですね・・」
嘆息交じりの言葉を洩らし、ゆっくりと立ち上がった。
「女将らしくないですな、そんな弱気は。」
「あら。取られましたね、あたくしの言葉を。」



商談は、女将の尽力の甲斐があってスムーズに進んだ。
複数の仲介業者を通して購入していた組合としては、廉価に購入できるというメリットを享受できた。
富士商会としても新しい販路を確保でき、又販売方法を築き上げることができた。
“各地の商工会やら組合やら、これからは利用していかなくちゃな。
熱海くんだりまで、来た甲斐があったというもんだ。”


最新の画像もっと見る

コメントを投稿