大きくため息をついた浅田は、ティーカップを手にして窓辺に向かった。
「彼女には…。
今の君と同じ立場に立たされたのですよ、わたしも。
そう、二歳の女の子が居たのです。
信じられますか? 敬虔なクリスチャンで、未婚の女性で、理知的な女性に、です。
子供が居たんです。
そりゃもう、気が狂わんばかりでした。
『なぜだ、なぜだ!』
何度彼女に叫んだことか、彼女の胸に槍を、何本もの槍を突き刺してしまったんです。
彼女は言いました。
『皆に祝福される子供ばかりが生まれてくるわけではありません。
でも、この子は、きっと神の祝福を受けているはずです。
わたくしとて、望んだことではありません。
でも、わたくしの子供なのです』とね。
彼女は、涙ながらに訴えてきました。
でも私は、ひどいことを言ってしまった。
『なぜ私を騙した!』と」
髪を掻きむしらんが如くに、取り乱す浅田だった。
初めて見せる醜態だった。吉田は、ただ狼狽するだけだった。
「申し訳ない。私としたことが、とんだ醜態を見せてしまったね。
そう、彼女の名誉のためにも真実を話す必要があるね。
彼女自身も望んだわけではない、というのは本当のことでした。
レイプでした、おぞましいことです、まったく。
たった一度のことで、彼女は妊娠してしまったのです。
周囲からは、当然の如くに堕胎を勧められたそうです。
彼女自身も悩みは深かったことでしょう。
しかし彼女は、受け入れた。
神の子、と受け入れたのです。
誰からも祝福されない子供であっても、神の祝福さえあればいい、と」
突然、浅田が歌い始めた。
♪あんな女に未練はないが…
「吉田君、この歌は知ってますよね。
佐藤惣之助先生作詞の[人生劇場]です。
私はこの唄が好きでしてねえ。
いや、申し訳ない。驚かせてしまったね。
私の愛唱歌でねえ。ハハハ、その顔を見ると、信じられませんか?
私には合いませんか。
それじゃあ、もっと驚かせましょうか。
園まりさんの[夢は夜ひらく]も好きなんですよ」
「彼女には…。
今の君と同じ立場に立たされたのですよ、わたしも。
そう、二歳の女の子が居たのです。
信じられますか? 敬虔なクリスチャンで、未婚の女性で、理知的な女性に、です。
子供が居たんです。
そりゃもう、気が狂わんばかりでした。
『なぜだ、なぜだ!』
何度彼女に叫んだことか、彼女の胸に槍を、何本もの槍を突き刺してしまったんです。
彼女は言いました。
『皆に祝福される子供ばかりが生まれてくるわけではありません。
でも、この子は、きっと神の祝福を受けているはずです。
わたくしとて、望んだことではありません。
でも、わたくしの子供なのです』とね。
彼女は、涙ながらに訴えてきました。
でも私は、ひどいことを言ってしまった。
『なぜ私を騙した!』と」
髪を掻きむしらんが如くに、取り乱す浅田だった。
初めて見せる醜態だった。吉田は、ただ狼狽するだけだった。
「申し訳ない。私としたことが、とんだ醜態を見せてしまったね。
そう、彼女の名誉のためにも真実を話す必要があるね。
彼女自身も望んだわけではない、というのは本当のことでした。
レイプでした、おぞましいことです、まったく。
たった一度のことで、彼女は妊娠してしまったのです。
周囲からは、当然の如くに堕胎を勧められたそうです。
彼女自身も悩みは深かったことでしょう。
しかし彼女は、受け入れた。
神の子、と受け入れたのです。
誰からも祝福されない子供であっても、神の祝福さえあればいい、と」
突然、浅田が歌い始めた。
♪あんな女に未練はないが…
「吉田君、この歌は知ってますよね。
佐藤惣之助先生作詞の[人生劇場]です。
私はこの唄が好きでしてねえ。
いや、申し訳ない。驚かせてしまったね。
私の愛唱歌でねえ。ハハハ、その顔を見ると、信じられませんか?
私には合いませんか。
それじゃあ、もっと驚かせましょうか。
園まりさんの[夢は夜ひらく]も好きなんですよ」
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