昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(七十六) そんな微熱なのに?

2014-01-03 11:52:48 | 小説
(七)

「でも、そんな微熱なのに?」

「はい、それがくせ者でございました。
実はその奥さま。平熱が何とまぁ、五度でございました。

ですので、七度を越えますと、本当は大変な高熱だったのでございます。
ですから、平熱が大切なのだと言われました」

「そうなの、そんなことが。怖いわねえ、ほんとに。千勢は、どうなの? 調べたの?」

「あたしですか? あたしは、六度五分の標準でございました。
でも小夜子奥さまは、きっと低いのじゃないかと思いますよ。

そうだ、計っておきませんか? お風呂上りではいけないので、しばらく間を置いてからでも。
それから、明日の朝にお計りになってください。
そうすれば、より正確な平熱が出ますから」

そんな経緯から、小夜子もまたほぼ三十五度の平熱と分かった。

“あたしが低いから、そう感じるのかしら?
ううん、違うわよ。あの感じは、絶対に熱があるはず。

微熱かもしれないけれど、見過ごして良いものじゃないわ。
興奮しての体温上昇ならいいけれど。悪い兆候でなければいいけれど”

そう思って勝子を見ると、確かに顔が赤みがかっている。
元々青白い顔の勝子に、ほんのり赤みがさしている。
健常なら喜ばしいことでも、勝子には悪い兆候に見えてならない。


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