昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(七十六) 快方に向かってらっしゃるの?

2014-01-02 13:24:36 | 小説
(六)

「はーい!」と明るく返事をして、小夜子の手を握ったまま上がらせた。

「お茶、持ってくるわね」と、いそいそと勝子が離れた隙に
「竹田。ほんとのところは、どうなの? ほんとに快方に向かってらっしゃるの?」
と、声を潜めて問い質した。

「は? はい、もちろんですけど。どうしてですか?」

怪訝そうな顔付きで小夜子の真意を図りかねるといった風に、逆に問い返す竹田だ。

「なら、いいけど。確認しただけよ。お元気すぎるから、ちょっとね。驚いちゃってね」

“おかしいわ、おかしい。あんなどか身なのに。なんとも思わないの?
それとも、竹田には知らされていないとか。有りうるわね、母親だけに告げてるとか”

どうしても腑に落ちない小夜子だが、その時ふと千勢の言葉が思い出された。

「小夜子奥さまご自身の体温、ご存知ですか? 平熱とか言うらしいのですけれど。
大事なことですから、これって。先のお屋敷で、ちょっとした騒ぎがありまして。
あたしも気にするようになったんですけど」

「なぁに、どんなこと?」

「はい。ご主人さまが出社される直前に、奥さまがお倒れになられまして。
前夜のお熱は七度ちょっとで、微熱だと思われていたのですけど。
で慌ててお医者に診ていただかれたのですけど、肺炎一歩手前だとのご診断がでました」


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